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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第二十章 この中にもう一人、幼馴染がいる! ーなかおさー
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第698話 √7-31 『ユウジ視点』『↓』


 夕食も終わり、また一人の時間がやってくる。

 テレビのバラエティをBGMに積みラノベを読み始める、なんとなく買ったがこの原作ラノベがいい意味でアニメ版と雰囲気が変わらねえ……原作読みながらのアニメBGM脳内再生余裕。

 よくあるんだよな、アニメ見てから原作ラノベ読むと「あれ? こんな作品だったっけ?」と地の文やアニメへの改変などのメディアの違いで良くも悪くも印象が変わってしまうパターン……それがこの原作ではまるでない。

 特にこの実質ハーレムだというのに正ヒロインは決定していて、それでいて修羅場もなく緩いという、なんだか今の俺には五臓六腑に染みわたるような作品だった。

 でも正ヒロインより俺は断然セッテさん推しであって――


 そんな中またガチャガチャガチャリと玄関扉が開く。

 ちなみに一応何があるか分からないので桐の能力の一つにあった”サーチ”を使って接近してきた者が分かるようになっている。

 少なくとも俺の見知った人間に違いなかった。

 

「だからノックしろよ」

「よいではないかよいではないか」


 こうウザい口調でやってきたのはグルグルメガネに長身セミショートなユイだった。


「何で来たし」

「あの空間で深夜アニメは見辛いお」

「ぐう分かる」


 まぁ基本的にオタクな感じじゃないしなあの三人は……いや委員長はラノベは読んでるらしいけど。


「一緒に実況しようぜユウジ殿」

「実況はせんでいい」


 そうこうして、なし崩し的にユイがコテージにやってきて居座るのだった。

 まぁ合宿みたいなノリで一人は寂しいし、夜更かしはするつもりではあったから嫌ではないけども。


「しかし地方民の味方、BS111は助かるぬあ」

「まぁ深夜三時の放送枠はきついけどな」

「リアタイ実況は実況民の務めお」

「実況民じゃねえし俺」

 

 そんなどこのインターネッツの掲示板的な事は分からないだろ、常識的に考えて……。


「アニメまで何かするか」

「デスゲームやろうず」


 それはゲームでもないし遊びでもない。


「……ユキからデスソース借りてくるか」

「ごめんなさい舌がしんでしまいます」


 結局ユイも持ってきたというタッチパネル式二次画面的ゲーム機でミリオカートをすることにした。


「なあユイ」

「お、お、おっ、なんだ?」

「ユイってゲーム下手だよね」


 見た目アニメ・マンガ・ゲームに精通していそうなユイだが、実はゲームが下手だった……麻雀以外。

 なんかやたらボタン連打してる時あるし。


「へ、下手じゃないわあ! ……とは言えぬ」

「ゲーム上手そうな見た目してんのに」

「偏見ですぞ!」


 まぁユイがオタクになった経緯を知っていれば、別に下手でも何ら不思議ではないのだが。


「なあユウジ」

「んー」

「アタシ、ユウジのこと好きかもしんない」

「ブフォッ」


 突然のリアルでの攻撃で噴き出すと同時にゲームで自分の運転しているカートが崖に真っ逆さま落ちてしまっていた。 


「な、なんだ友人として好きとか照れること言ってくれるじゃねえか」

「うんにゃ、異性としても、かもしんない」

「…………マジでか」


 いやいやいや、この世界でユイとのフラグとか無かっただろ!?

 着替え覗きもないし、体育祭競技は別だし……マジでどうしたんだ。


 俺がそう返してからは微妙に気まずい沈黙が続く、ユイらしくねえからマジで勘弁して。


「なあユウジ」

「……おう」


 そう言ってユイは――メガネを外したのだ。

 自分を守る術、自分を飾り付けるやり方、形から入って今は立派にオタクになったユイの、その強烈なビジュアルなグルグルメガネを外したのだった。


「アタシの見た目言うならさ。どうだユウジ、このアタシは可愛いか?」


 可愛いか可愛くないかで言えば可愛いのだこいつは、というかギャップ萌えとかの割合が非常に強い。

 グルグルメガネが本当に絶大なカモフラージュになっていて、ユイ自体の素材の良さをすべて覆い隠していたのだった。

 しかし俺は、ここで可愛いと言うわけにはいかなかった。


 だって俺はユキと付き合っているのだから、ユキが居ないからと他の女の子を可愛いなどと言えはしなかった。


「普通」

「普通かー」

「あ、ゲームクリヤー」

「おつカラーズ」


 普通に、可愛いとは続けない。

 しかしユイは満更でない様子だった、少なくともユイを否定できるほど俺に畜生さはなかった。

 悪友で、時折適当な語尾がウザいと思うユイ相手でさえも、嘘は言えなかった。


「……なんでメガネ外してみたんだ?」

「なんか、外しても失望はされない気がしたっぽい」

「失望て……普通にありえねえから」


 見た目で判断できるほど俺は出来た顔をしてないし、心もねじ曲がっちゃいない。


「そうそう、ユウジなら否定はしないだろうなって、そんな感じがしたにゃしぃ」

「まぁそりゃ……」

「笑われるかもしんないけどさ。私吹雪、提督……じゃなかった。アタシがユウジと付き合っちゃう夢見たんだよね。その時のアタシがものすっごくユウジのことが好きになっててさ、夢オチだってのに感化されちまったのさ」

「…………」


 それは、夢じゃない……と俺の口からは言えない。

 俺とユイが付き合った、実際に存在した世界の記憶。

 

「まあ気の迷いってやつじゃんよ。さあアニメ楽しむぞい」

「お、おう」


 そうしてユイは本当に気持ちが切り替わっていた、さっきのいつになく本心を曝け出すようで真面目なユイが幻のように思えるほど今は「なにやってんだよ団長!」とアニメに発狂している。

 ユキは完全にこれまでのことを覚えているという、そしてユイは自分がヒロインだった世界を夢に見て知っている。

 もしかしたらセクハラ時の反応が劇的でなかったクランナも、姫城との最初の戦いからの展開のズレも、もしかするのかもしれない。

 俺がこれまでのことを思い出して、桐の能力が消失し、俺が使えるようになってことも踏まえて――もしかすると、この世界は狂い始めているのかもしれない。


 そう、そんな思いが過ってしまうのだった。

 



 深夜アニメが終わり(深夜三時半過ぎ)ユイが帰ったあと、流石に寝付こうと思っていると―― 


「そういえば」


 このコテージの一階部分、俺が寝る予定の寝室の横に謎の部屋があることを思い出していた。

 寝室もシングルベッドが二つ置かれ簡単なクローゼットもあって十分広い、場所的にリビングな気はしないし大人数用の和室とかか?

 そう考えながら扉を開けると――


「なにこれ」


 照明を点けるとそこには部屋一面芝が広がっていた、更に広がるのは雄大な景色と見上げれば晴天の青空……ここは一体どこなんです?

 よく見れば、壁紙は景色風のもので、天井には青空風に塗られている。

 照明用スイッチには何故か「朝」「昼」「夜」とあり、今は「昼」を押していた。

 そして更に芝自体は触ってみると人工芝のようであり土っぽさはない、そして部屋備え付けのものといえばキャンプで使うような折りたたみ椅子がニ脚だけ。


「なんだこの空間……」


 コテージの設備としては似つかわしくないというより、意図が分からない。

 

「……いや、もしかして」


 委員長がキャンプ道具のテントと寝袋を持って来いと言ったことを思い出す。

 この真夏に屋外でテントを張って寝袋で寝るというのは現実的ではない、しかしもしそれが冷房が効いて虫刺されの心配もない屋内ならば。


 これはもしや……小さな屋内キャンプ場なのか?

 

 しかしなんとも凝った造りで、照明を「夜」にすると壁紙の色も暗くなり天井は星空へと変わる……謎の技術である。

 トレンドたなごあたりで紹介されそうだ。


 見つけてしまっただけに、俺としては好奇心を抑えられなくなる。

 もしかすれば明日あたりにでも委員長がこの屋内キャンプ場を使うアクティビティみたいのを企画しているのかもしれない。

 それでも俺はこの人工芝にテントを組み立てて、キャンプ気分を先取りしたいと思ってしまったのだ。


 そうして扉前に思えば不自然に置かれていたサンダルを履き、深夜中テント組み立てに没頭した。

 説明書を見ながら杭を打ち組み立てていく。

 

「出来た……」

  

 完成したのは手馴れていないこともあって五時近く、キャンプ場を模した部屋にテントが現れた。


「これはこれは」


 テントに入ってみると二人は寝れるサイズだろう、セットされていたシートもテント下に敷いている上に人工芝のおかげで寝るであろう床は思ったよりは硬くない。

 そして屋内だけに空調も効き、虫刺されも気にすることもないという優秀なキャンプ空間。

 ここでなら夏場でも、涼しい季節のキャンプ気分で眠ることも容易だろう。


「満足した」



 よし、ベッドで寝るか。 

 


 そりゃベッドがあるならベッドで寝るわな、正直テント組み立てと完成風景で満足してしまった。

 いわゆる走行可能なプラモデルを買ったら組み立て完成のディスプレイ状態で満足してしまうのと大体同じ。

 そうして俺はベッドに……行きかけて。


「そういえば風呂入ってねえな……朝風呂行って来てひと眠りするか」


 ちなみにこの二泊三日のキャンプ、特にスケジュールが決まっていないのでとりあえず明日昼飯を買い出しに行くぐらいしか分かっていない。

 ということは買い物しに行く時間までは寝れるという寸法だ。

 それでもこの暑さとテント作業などで汗をかいたこともあって、風呂には入っておきたい。

 しかしコテージ付属の家族用風呂を使うのは、せっかく露天風呂がキャンプ場内に設定されているのにもったいない。


 と、いうことで。


「ちゃちゃっと入ってくるか」


 そうして着替えやタオル一式と、一応石鹸なども持ってコテージを少し歩いた先の露天風呂を目指す。

 俺はこの時、というよりもテント組み立てに夢中になって二階の住人がいつの間にか姿を消していることに気付かなかったのである。

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