第697話 √7-30 『ユウジ視点』『↓』
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ちょっとアレな話数を削除したのでリンクがズレているかもしれません、ごめんなさい
いわゆる黒歴史というかエイプリルなフールの跡地というか
夕方コテージに戻ると、実質俺一人である。
マサヒロは二階に籠りっぱなしのようで、下に降りてきた形跡もなく本当に二階を根城にしてしまっているらしい。
広いコテージに一人きりというのは少し寂しい、今頃女子四人が集まるコテージはかしましく賑やかなんだろうかと考えてしまう。
これではいけない、とテレビを点ける。
BSもちゃんと見れるらしい有能なテレビで、夕方のニュース番組を垂れ流しながら俺は持ってきた荷物の点検をし始める。
そういえばテントと寝袋を持ってきたけども、明日の気温は夜にかけても三十度前後を推移、とそとキャン! しようものなら人間の蒸し焼きの完成だろう。
一体この無駄にかさばる一式は何に使うのだろうと改めて考えてしまう、ちなみにテント一式を持っていたのは俺だけだったので俺だけなんか損した気分……まあいいや。
もっとも赤飯五分クッキング用ネタセットを持ってきた姫城も大荷物だったが、ユイに比べるとユキもそこそこ大荷物だったような……まぁ特に気にすることでもないか。
暇つぶし用に持ってきた積みラノベ数冊と、タッチパネル付き二画面的ゲーム機・スフトと、ワイワイ用にトランプやUUNOも持ってきた、なんとなく気分は修学旅行的である。
今日持ってきたバーベキュー用食材は美味しく頂いたこともあって無くなっており、残された食品は姉貴が絶対に持たせると言って聞かなかった非常食と、お菓子やカップ麺のみになる。
そういえば夕食はどうするんだっけと考えて、何故か委員長が「ボクニマカセテ」とか言ってたのをそのまま頷くままだったが……。
「!?」
そんな時ガチャガチャと、本来空くはずのないコテージの玄関扉の鍵が音を立てる。
コテージと言っても入り口は完全に住宅の玄関スタイルで、防犯上などから内側から鍵を閉めることも出来るようになっている。
そしてコテージに最初に足を踏み入れる際にマサヒロが鍵を使って開けたのだが、その鍵はマサヒロが居間のテーブルに置いて行ったので、そんな鍵は今はなんと俺の手元にある。
俺の手元に鍵があるのに、外から鍵が開けられているという状況に一体何が起こっているのかとしばらく硬直していると、空き巣やら泥棒やら不法侵入などのワードが浮かんでくる。
いや俺とマサヒロがいる時点で空き巣じゃねえし、泥棒したところで金目のものはないし、不法侵入なら、まさか俺を恨む者らの犯行か!
いやいやそんな俺が恨まれることなんて……あるじゃん、ユキ・マイファンクラブから十分あるじゃん!
そんな両ファンクラブが俺とユキ・姫城とキャンプしているなどと知ればタダで済まないだろう。
ということはどうなるのか、ここにきてアクションシーンが来てしまうのか。
そして俺は特に考える間も無く――
「行でよナタリー」
『えっ!?』
武器を手に取った、鉈のナタリーである。
こう呼び出すと手元になくても召喚できてしまう、バトル展開の際には世話になった俺の相棒のような存在だ。
『ここ、あれ!? キャンp』
「しっ」
『何があったんですかユウさん』
「敵かもしれない」
『そんなまさか』
「そのまさかかもしれない、今こうして玄関がこじ開けられようとしているな」
『……なるほど、ユウさんを快く思わない者の襲撃ですか。わかりました、私も待機していましょう』
「助かる」
それから俺は鉈を構えながら訪問者に警戒心を強める、冷や汗をかきながら心臓をバクバクとさせながら待っていた。
そうして妙に手こずっていた玄関扉がガチャリと開くと――
「あ、鍵開いた」
「遊びにきたよー」
「失礼します」
「うぇーい」
……そうして顔を出したのは委員長を筆頭に、ユキ・姫城・ユイだった。
あれ? どういうことなんだ?
この四人の来客を前に鉈を持っているわけにもいかず、とりあえず瞬時に鉈をキーチェーン大にミニチュア化させた上でポケットに隠した。
「いやいや! なんで委員長鍵持ってんの!」
「これですか? 運営しているのが親族ということからの特権、その合鍵というやつです!」
そんな特権濫用されたらコテージ自体の信用がた落ちなんだが!
「普通にノックすればいいだろ!」
「そこはサプライズで」
本当にサプライズすぎて肝が冷えるからやめてほしい、もうこの夏の肝試しはお腹いっぱいだわ。
まぁなんにせよ、ファンクラブメンバー襲撃とかではなくて良かった。
「夕食食べるなら皆で集まる方がいいかと思いまして」
「まぁそれはそうだな」
夕食はどうなるのかと考えていたが、確かに集まって食べるなら女子勢コテージよりもこちらの方がいいだろう。
もし女子勢四人が万が一にもカモンカモン言ってくれても俺が気まずいし、来てくれる分には全く問題ない。
「じゃあご飯にしましょうか」
「「おー」」
と、委員長が音頭を取るように言ったので釣られてしまったが――
「今から何か作るのか? 手持ちの食材はもう無いんだが……」
「そこは大丈夫です。私が用意しますから」
「え、委員長が料理か……」
「……なんですか、私が作る料理は嫌ですか」
「昼にすっぽんスープ持ってきた人に言われても」
ちなみにすっぽんスープは封印されたので使用していない、チキンヌード●スープ缶は頂いた、麺はフニャフニャだが結構おいしかった。
「ユウジ君はそれはもう料理がお上手ですから」
「いや話聞けよマナカ」
「でも私も未来ではそこそこなんですからね!」
「そう言われても俺にはどうすることも出来ない!」
と、なんとなく以前の調子で掛け合いをしていると――
「ユウジ、君?」
「マナカ、と呼び捨てとは。お二人はいつほどから親密になったのでしょうか」
「…………」
「「あ」」
はっと気づくと委員長以外の三人が疑惑の目を向けるやら不機嫌そうにやらしていた、ユイは沈黙してジトっと睨んでる(グルグルメガネ越しなのでそんな気がする)。
確かに以前の調子というか、彼氏彼女時代の雰囲気になってしまったこともあってつい呼び捨てで呼んでしまったかもしれない。
これはやってしまった、とこれまた冷汗が流れ落ちる――
「……今は夕飯時なので、あとで委員長を問い詰めることとしましょう」
「じゃあユウジの詰問は私に任せて」
「アタシは審判役を」
なんか裁判みたいになってる……怖い。
「じょ……冗談だよな」
「「たぶん(おそらく・きっと)」」
「こわい!」
言葉は違えどタイミングは三人揃ってたのが余計怖い!
「ま、まぁとにかくそろそろ夕飯が来ますから」
夕飯が来る……? 夕飯とは夕ご飯のことではなく夕飯という名前の新キャラなのではないかとか、それとも今のご時世なら夕飯でさえも擬人化してしまうのかなどと考えが巡る中。
そう、委員長が微妙に気まずそうに言ったのち外にバイクというよりも原付の音が聞こえ、コテージの玄関扉がノックされる。
「はーい」
「どもー、ドミハットピザーラですー。ご注文の~~で~~円になりますー」
「ではこれで」
「ちょうど頂きやした。ありやとやしたー」
そうして遠ざかっていく原付の音と、委員長が抱えるのは何個もの薄く大判のダンボールだった。
「……もしかしてピザ頼んだのか」
「はい、実はこれも親戚の~」
あーはいはい、そういうことでいいや。
「前もって話しておいた夕食代、各自五百円でお願いしますね」
安っ! ピザ五枚ぐらいあるんだが、絶対赤字だろこれ。
というか――
この町にピザ屋があったんだ、とか。
出前サービスをやってるんだ、とか。
それよりも車が通行できるぐらいにはここまでの道が整備されているとはいえ、この裏山の道を原付で配達しに来てもらったのかと思うと、なんだか配達員に申し訳なくなってしまった。
もちろんピザは美味しく頂いた、スーパーで売ってる薄いピザとは違うぜ。
階段を上がった先にあるマサヒロの部屋の前にピザを置いて戻る、その時になんとなくミユが引きこもっていた頃のことを思い出していた。
しばらくして見に行くとピザが無くなっているのでマサヒロも食べたようである。
ピザは一部切りづらかったので、丁度呼び出したナタリーを使ったが流石の切れ味だった。
まったくユウさんはまったく!
鉈でピザを切るなんて信じられません、チーズのネチョッとして熱い感じとかが気持ちが悪かったですが、特に言わせてもらえれば……ピザがすっごい美味しそうだったのが許せません!
こうなれば曖昧な空間でデリバリーピザ頼んでやりますよ!
ナタリー「……チーズの匂いが取れそうな気がしません」
ユウジ「丁度手元にあったから……すまん」
ナタリー「せ、責任とってください!」
ユウジ「ああ、分かった」
ナタリー「ゆ、ユウさん!?」
まさかユウさん、私と責任をとって結婚を……?
ジャーーー(水道の音)
え、え、あれ?
ユウジ「責任取って洗うから!」
ナタリー「ま、待って! そ、そのですね! この状態でも刃先に触れられると、本当に身体を撫で回されているようになってですね、ああああああ!」
このあと滅茶苦茶キレイにされた。