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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第二十章 この中にもう一人、幼馴染がいる! ーなかおさー
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第688話 √7-21 『ユウジ視点』『五月二十四日』



五月二十四日



 今朝がた身支度を終え家を出たのは生徒会に入っていた時と変わらない時間だった。 

 実際姉貴とクランナなどと一緒に玄関を出て、待ち合わせがあるからと途中で別れているのだ。

 どうして朝も七時過ぎに俺が家を出たかというと――


「おはよ!」

「おはよ」


 そうして俺とユキは示しを合わせ、待ち合わせ場所で顔を合わせた。

 ユキからの提案で、ちゃんとした彼氏彼女になったというのだから登下校を一緒にしても何ら不思議はないだろうとのことだった。

 まあ幼馴染の頃でも時々していたことで、傍から見てもそこまで違和感はないだろうし、おそらくは急激な関係の変化には見えないだろう。


 と、思っていたのだが――


「…………ん」

「…………」


 目の前のユキは、俺よりも少し低い背丈を補うべく背伸びをした状態で口を軽く突き出して目をやんわりと瞑っていた。

 なんとユキさんや、完全にキス待ちの表情である。

 いや昨日の今日というか、正確には一昨日の出来事ではあるものの、流石に早過ぎるんじゃないか……? 

 それにしても目瞑ってるユキくそ可愛いな、これはいざ付き合い始めたからこその彼女補正なのか、もとからこんなにごっつ可愛かったのか、今派と前から派で俺の脳内派閥間での議論が白熱しそうだ。


 しかしここでいきなりチューアンドチューというのは、俺が恥ずかしいし照れるということのほか、周囲の人物に目撃されるものならご近所の目が厳しくなること請け合いだ。

 かといって惚ける気にもならず、実際俺だって時と場所をさえ違えばしたい気持ちはあるのだ、だからこそ今は妥協案で納得してもらうよう試みる――


「……うむ、くるしゅうない」

「お、おう」


 俺は少し広めのユキのおでこ目がけて顔を近づけ、そっと口を付けた。

 いわゆるデコチューである、その行動はかなりヘタレ寄りの行動ではあるもののしかしユキ当人は割と満足気だったので許してほしい。


「じゃあ、行こっ」

「ああ」


 そうしてユキは俺の手を取って歩き出す……それも指をめっちゃ絡めて来て、まさに恋人繋ぎよろしくに。

 この一連の出来事を傍から見ていた者がいたとして、果たして俺たちの関係は幼馴染で済まされるだろうか……今は考えないことにしよう。





 テスト明けはじめの日、いわゆるテストが採点され教師より返される日でもある。

 一部の生徒には波乱があったと巷で噂の中間テストを終えて、いわゆる勉強会組の俺たちはといえばそこそこ以上にいい成績を収めたのだった。

 まあ俺は変に浮かないように、少しテスト点数が下がるように回答はしたので上の中ぐらいだろうか。

 ……とか自分で言ってて俺TUEEEE感が酷くてゾクゾクとするのだが、事実なのだから仕方ない。


 そんなテスト返しをされている間に俺がなんともユキをチラりと見てモヤモヤしてしまうのは、今日の朝ことホームルームに遡る。



* *



「いよいよ体育祭の季節です。ということで各出場種目別の出場者を決めたいと思います。ええ分かりますよ皆さんの気持ちは。正直体育祭とか怠いなあと思うことでしょうし、テスト返しの前にこんなこと聞かなくたってと思う気持ちも痛いほどわかります。しかしこれが私委員長の職務なのです、罵詈雑言甘んじて受けましょう、それでもとにかくこの種目決めの決着を付ける、それが私にとっての指名であり宿命であり不可避の事象であって――」

「いや……多分皆そこまで思ってねえから」


 文字数稼ぎよろしくに話していた委員長に、いよいよ我慢できず俺はツッコミを入れた。

 委員長が長々と早口でまくしたてた言葉の数々は、よく吟味すると殆どが正直無駄なことだった。

 体育祭の各参加種別を決めます、ただそれだけである。

 

「そうですか、では男子一〇〇メートル走から。開始価格は一〇〇円!」

「俺は一一〇円行くぞ!」

「一二〇円いけるね!」

「僕は下之弟の魂賭ける」


 おいそこのマサヒロ俺の魂勝手に賭けるんじゃない。

 そして前にもあったような良く分からない競り、そして金額は上がっていき最終的に誰かが落札となるのだが、実際のところ金銭の動きはまるでない競売ごっこ。

 ようは牙の鋭い方が勝つ……わけではなく、粘り自分の意思を貫いたからこそ役職を得られるという、体育祭の種目決めに置いては実のところすげえ無駄なんじゃないかという時間だ。

 なんかもっとジャンケンとか話し合いで決めなよ。


「次は二人三脚です。まず最初の募集だと下之君は確定として……」

「いやいやどうしてそうなった」

「そんな下之君の相手を務める方です! はい私委員長十万円から!」

「初っ端からインフレがやべえな!?」


 いわゆる競売の進行役も参加してくるのかよ、そしてクソたけえし。


「篠文ユキ! 十二万円!」

「姫城マイ、十五万です!」

「一応巳原ユイ、十六万でござる」

「福島コナツだ! 十八万いけるぜ!」

『中原アオ、二十万円』

「はいはいはーい! 下之ミナ、百万円!」


 いやあとの二人おかしくね、というかアオの席空いたままなんだけど。

 さては基本俺だけにしか聞こえないともっぱら噂のナタリーだなオメー。

 そして姉貴は自分のクラスにかえりなさい。


「他学年と妖精は無効とします。さぁついに競りも天井の一千万円です! 最後に粘り続けた篠文さんと姫城さんのジャンケン一騎打ちになります」


 本当に最初からジャンケンしろよ。


「負けられない戦いがここにあるんだよ、マイ」

「ふふ、私も手加減するつもりはありませんユキ」


 そんな懐かしいキャッチコピーみたいなこと言ってるユキに、ジャンケンに手加減もクソもないんじゃないかというツッコミと、完全に二人呼び捨てで呼び合う間柄になってるのね、という驚きを内心に抑え込んで勝負を見守る。


「「じゃーんけん――」」


 そうして俺の二人三脚の相手は――






「よろしくお願いしますね、ユウジ様!」

「あ、ああ」


 どうしてこうなった! 

 あろうことか、ユキはジャンケンで姫城さんに負けてしまったのである。

 もちろん彼氏彼女であることを公表しておらず、例え公表したからとペア変えてとは筋が通らないことは分かる。

 そんなこともあって俺は彼女を差しおいての姫城さんとの二人三脚になってしまったのだった。


「ぐぬぬぬぬ……」

「さあ私たちも練習しようぜ篠文!」


 運動大好きキャラな福島と組むことになったユキ様が唸りながらも俺たちをじとっと睨んでらっしゃる、今回はたぶん俺は悪くない。


「あら」

「!?」


 一方で俺たちは足首あたりを結んで二人立ち上がったのだが、姫城さんが微妙によろめいて俺にぴとっ。

 まぁなんというか腕あたりに柔らかいものがですがね――


「……えっち」

「無罪を主張するぞ!」


 不可抗力! 不可抗力ですぞ!


「ごめんなさいユウジ様、当ててしまって」

「いや、大丈夫だ」


 俺は大丈夫だけど、実はちょっと嬉しいけど、ユキが多分大丈夫じゃない。


「それでは練習しましょうかユウジ様」

「お、おう」


 すると姫城さんはチラッとユキを一瞥してから俺と二人三脚の練習をし始めた。

 それはまるで宣戦布告のようで、煽りのようで、挑発のようで――もしや姫城さん、俺たちの関係をあるていど分かって今の行動を……?

 いやいやまさか……無いとも言いきれんわなあ。


 



 で、放課後。

 イベント的には二人三脚がゲーム的には主人公とヒロインのイチャイチャ的イベントだった(はずな)だけに、やっぱり原作とズレている。

 というかこれ本当にユキルートなのか、間違って姫城さんルートに入っていたりしない?


 そんな疑念を抱き始めた矢先に携帯へユキからメールが届き――


「ユウジ、さっき目がえっちだった!」

「そんなつもりはなかったが、すまん!」


 公園にジャージで二人集合していた。

 というのも俺はメールでユキから呼び出しを受けていたのだった、動きやすい恰好ということでジャージにしたのだがユキも学校指定ジャージである。

 初夏手前ということもあって学校での普段使いはハーフパンツにシャツではあるのだが、普通に公園でその格好は悪目立ちしてしまうのが分かっていた。

 そんなこともあって秋冬用とも言えるジャージをファブ○ーズをかけて引っ張り出してきたのだった。


「……じゃあ、これ」

「これって……」

 

 手渡されたのは二人三脚で使うような細長い布だった、つまりは――


「練習付き合って」

「あ、ああ!」


 幼馴染相手に練習に放課後付き合わせるという建前のもと、学校で出来なかったからこその提案だったのだろう。

 もちろん言い訳用の幼馴染俺相手の練習ならしょうがないなと納得もさせて、もちろん受け入れる。

 そうして俺とユキは足首をその布で結んで――


「あ、あ~足がよろけて」

「はい?」


 棒演技よろしくのセリフのち、そしてぴとっ……完全にさっきの姫城さんとの一連の出来事再現である。


「よろけてごめんユウジ」

「あ、ああ大丈夫だ」


 再現、とか言ったがもしかしたら天然だったかもしれないし疑うのはよくないな。 

 いやあ偶然偶然。

 そしてボリュームは姫城さんに及ばなくても、ちゃんとある……ハリはこっちかな、というあまりにも酷い批評を考えてしまった事実は墓まで持って行く。


「……嬉しい?」

「おう?」

「マイとどっちが嬉しい?」

「え」


 めっちゃ対抗心燃やしてますがな!

 そしてその質問に俺はどう答えればいいんでい? 正直に答えるべきなんでい?

 いやでもこれは彼女を立てる流れであって、優しい(?)嘘なのだからきっと許されるはずだ。


「あ――」

「私に気遣って嘘ついちゃだめだよ」


 逃げ道を塞がれた。


「……姫城さん――ん!?」


 そして逃げ道どころか唇も塞がれた、いったいどうしたことなのか分からない。


「お、おま……」

「んっ……これは嘘をついてない味。うむ正直でよろしい、じゃあ練習しよっか」

「お、おう……」


 何だったんだ今の件は、というか正解だったのか、どうなんだ、分からねえまるで分からねえ~!?

 そして不意打ち気味のチュー心臓止まるからマジでやめて、微妙なパロ挟むのもやめて!


「……牛乳のも」


 という謎のつぶやきがあまりにも近いために聞こえてしまったが、聞かなかったフリを決め込む。

 身体にいいもんな! うん……そりゃ姫城さんの方が大きいから仕方ないけども、なんかすまん。 

 そして俺の彼女はどうもチューが気に入ってしまったようである、実際今日だけで四回はキス関連があったというのだから、俺の彼女はなかなかに肉食なようである。

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