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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第二十章 この中にもう一人、幼馴染がいる! ーなかおさー
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第687話 √7-20 『ユウジ視点』『↓』

 テストが終わってもユキとの関係修復(?)は未だ出来ていない。

 いや、別に関係が壊れたというよりも修復というよりも……前進? 何故か後退してしまった関係を前に進めるというか。

 告白前はちょいプラスぐらいだったのが今ではそこそこマイナスになってしまっているのを、どうにかちょいプラスぐらいには戻したい。


 そして現にユキは挨拶などすれど足早に帰って言ってしまった。

 ……果たしてこのままの関係性でいいのだろうか、こんなまともに話せないような間柄になってしまってゲーム的にいいのだろうか。

 いや、そうだな……それは建前だな。

 本当のところは、俺がユキと話せないのが少なからず寂しく思っているのだ。

 そして俺だって、ゲームだからという理由がすべてでユキの告白を受け入れた――わけじゃないのだから。


 これまでの世界の俺、というとまるで他人事のようになってしまうが。

 そもそもユキと親しくなりたいと思っていた俺がかつては存在していたのだ。

 なにせ俺がこのハイブリッドなセカイでの最初の女の子との出会いは――篠文ユキに違いないのだから。

 その時俺は可愛いと思った、超が付くほどの美少女に違いなかった、ポニーテールが良く似合っていて、明るくて女の子らしくて。

 もしその時の俺に勇気があるのなら、玉砕してもいい覚悟を持てたのなら、衝動と熱情に行動してしまう無謀さを無視出来ていたのなら、俺はユキと付き合いたいと思ったかもしれない。

 

 だから俺がゲームだから仕方なく、ユキと付き合い始めたわけじゃない。

 確かに記憶の中にある告白のタイミングと違ったり、その告白のシチュエーションも面食らうものに違いはなかったけども。

 ――それでも俺は、主人公を演じつつも一人の男子としてもユキと付き合い始めたのだ。


 両者は両立をさせよう、というのは歪んだ考えなのかもしれない。

 それでも俺はこのゲームを終わらせる使命があるに違いなくて、その一方で純粋にユキとの交際を楽しみたいという気持ちもあって。

 ハイブリッドなセカイなのだから、俺の気持ちもハイブリッドであってもいいじゃないか……全然うまいこと言えなかったけども。


 ともかく!

 ここで足踏みしているだけなのは、俺が嫌だ!

 せめてユキと普通に話せるように戻りたい!


 だから俺は今思考しながら、テストだけに午前中にも学校が終わった為に下校してしばらくしてから自室で携帯を打っている。

 夕方も近づき始めた頃にそうして打ち終わったメールの文章を、ユキに送るべく送信ボタンに手をかける。


「ままよっ!」


 そうして俺はメールを送信すると――なんとも奇妙なことに、俺のメールが送信されましたから数秒間も無くメールが着信するのだった。

 そのメールの差出人はこれまた運命的にユキだった。




 

 俺は公園にやってきていた、藍浜高校近くにある公園で……そうだな。

 秋は紅葉が綺麗だし、学校に近いからと運動部の休憩場所に使われてもいるし、それでも意外と穴場のスポットで。

 雨澄とよく落ち合うのもこの場所だったし――姫城との初めてのデート場所がここだったな。

 

 何の偶然か、原作にもなかったはずの展開なのだが、俺とユキの送ったメールの内容は大体同じだった。

 どちらかの家に呼ぶのも今回の趣旨を考えれば違うし、学校に入れたとしても午前下校だから帰れと教師につまみ出される、そうして考えついた結論は――公園で二人話がしたい(しよう!)というものだった。

 三十分後に公園で、ということで俺は適当な私服に身を包んでやってきていた。

 三十分後だというのに、俺は着替えてすぐに家を出て公園まで走って来てしまったために時間を持て余していた。


 どう言ったものかと考える。

 内緒にするのはもうやめよう、違うか。

 ユキと普通に話せないのは寂しい、は少し女々しすぎるか。

 こうして時々でも公園で会わないか……落としどころはそんなところか。

 結果としてはなんともヘタレているのだが、ユキがどうしたいか分からないから消極的にならざるを得ない。

 それでも少しでいい、少しずつでも関係を戻していければいい、なに時間はまだいくらでもあるのだから。

 ユキが納得できるタイミングまで、俺はいくらでも付き合えるつもりだ。


 だから――


「!」

「よう」


 俺の姿を見つけるなり驚いたユキが駆け寄ってくる、別に集合時間より前なんだから急がなくてもいいのに。


「ま、待った?」

「いや?」


 考え事に費やす時間だったので待った感じはしない、という言い訳を内心に閉じ込めてそう答える。


「そ、そっか……」

「おう」


 そうして、ユキは少しだけ安堵する表情を形作ったあと――


「あの、あのね!」

「ユキ、あのさ」

 

 見事に話し始めが被ってしまう。


「ユキが先に言ってくれ」

「そ、そう? ……えっと、じゃあね」


 そうして俺はユキが何故か、覚悟を決めたような表情をしたものだから警戒を強めてしまう。

 何を言われるのかと、もしかすると予想外にも破局の結末がというネガティブな発想が脳内を駆け巡りはじめた頃――



「改めて私と付き合って! ユウジ!」



「…………え?」


 改めてとはなんぞや、付き合ってというのはもう聞いたはずだし、一体どういうことなのかと。


「……そんなにスケベ的な行動とのセットがダメだったか、まあそうだよな」

「そうじゃないけど! いや本当ならダメだと思うけど、そういう意味じゃなくて!」 

 

 そうしてユキは、言葉を連ねた。


「私が曖昧な態度取ってごめん、覚悟決めれてなくてごめん、ユウジをその振り回してごめん」

「いや、それは……」


 ユキの行動は突拍子もないことだとしても、いわゆるユキの立場になれば分からないことでもあって。

 全てを覚えていて、俺がユキに告白されて振られる場面もおそらくは記憶にあって、この世界で俺はきっと姫城さんに近くて。

 だから焦って、先を急いで、見切り発車にも告白をしてしまう気持ちは分かってしまって。


 

「だからやり直し! ちゃんと彼氏彼女の関係になろうよ!」



 それは、つまり。


「……いいのか? 姫城さんがどう反応するかとか」

「それは分かったんだ、でもごめん。ユウジには言えないんだ」


 姫城さんの反応が分かってる……? それはまるでユキと姫城さんの間に何かあったかのようで――


「このまま付き合っているはずなのに、遠慮して、気持ちを捻じ曲げるのはもう嫌だから」

「ユキ……」

「考えたら周りを気にしてる方が変だったんだよね、そんなの気にせず付き合えばいいんだから! 私はユウジが好きなんだからっ!」


 その直球の”好き”という言葉は、俺を激しく動揺させつつも――そう言われて嬉しくて仕方ない。


「そもそも俺がここで話そうとしたのもさ……ユキが好きだ! ユキといつものように話せない窮屈さに比べたら周囲なんて関係ないね! それに友達でも親友でもない、それ以上の間柄に俺はなりたい!」

「っ! じゃあ、いいの? 私たち、ちゃんと恋人になっていいの?」

「俺はユキに告白された時からそのつもりだ! 俺からも付き合ってくれユキ!」

「うん! うんっ! ありがとう、ユウジ――」


 そう、ユキは思いもよらぬ行動に出た。

 この世界が始まってから二ヶ月も経っていない、仮にも付き合いはじめて時間が経ったわけでもない、それでも――


 ユキが俺に抱き付いてくるかと思えば、少し背伸びをして俺と唇を合わせたのだ。


「――これでもう、完全に二人は恋人だからっ」

「お、おう」


 び、びっくりしたぞ!?

 原作にないどころの話じゃないというか、これまでのヒロインの中でも最速記録というか!

 すげえ最低なこと考えてるのは仕方ないだろう! これでも相当に動揺してるんだからよ!


 というかπタッチ以上のものは無いと思ったが油断だった、ユキの攻めがすごい。


「とりあえず今から学校に行って私たち付き合いましたって、垂れ幕を学校の屋上から流しにいかない!?」

「いやいやいやそれはなに言ってんだ落ち着けユキ」

「じゃ、じゃあラインズで皆に交際宣言を宣言!」

「ラインズ俺やってねえから!?」


 これまでにラインズ描写出てこないのに今更出せないし。


「とりあえずさ、学校で普通に話すとこからはじめようぜ。で、隠すつもりはなくていつかクラスメイトとかに付き合ってることがバレる、そんな感じでいいじゃないか」

「そ、そうかな!? 今すぐにでも両親に挨拶し合った方が良くない!?」

「気がはやいはやい!」


 もしかしたら生きているかもしれない俺の親父に会うには途方もないところを探し出さなきゃいけない無理ゲーだし。


「こ、婚約届を売ってるのって役所だっけ」

「だから急ぎすぎだって!? 大体五月の初めなんだから、まだ時間はたっぷりあるだろ――」


 婚約届というか婚姻届けは買うもんじゃねえ!


 そう、その言い方はまるで期限が分かっているかのような言い方で。

 そしてその言い方に、ユキは少しだけクールダウンして――


「そう、だね。そうだったよね、ごめん熱くなって」

「いや、いいんだ。まあ、とりあえずこれからよろしくな、ユキ」

「うん……よろしくね、ユウジ」


 そうして再びの告白は幕を閉じるのだった。

 ユキはこんな極端な子な印象はなかったのだが、やっぱり色々覚えているとどうしても変わってくるものもあるのかもしれないな。


 紆余曲折あって、そうして俺とユキは恋人になったのだった。


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