第193~194話 √1-30 ※独占禁止法は適応されませんでした。(終)
この回は既に半年前完成していましたー
いやーやっとこさ辿りついた感じですねー
三月ニ五日
終業式を終えて、春休みを向かえた俺はマイと近くの公園へと来ていた。
「わぁ……」
「おお……」
二人して感嘆の声を漏らすのは、目の前のなんとも美麗な光景を目の当たりにしたからで。
「きれいですね……」
「見事な満開だな」
二人が見ているのは桜の木。学校から近くの公園には桜の木は咲き誇っている。
「じゃ、そこら辺に座るか」
「はい!」
俺とマイは適当なベンチに腰をかけた。もっと人が居るかと思ったが、殆どいない。
まばらどころでなく、見渡しても犬を散歩させている爺さんぐらいしかいない。
そう考えると──
「二人きりですね……ユウジ様」
「あ、ああ」
"約"だけど。でも、まあ……悪くないな。
「それではっ」
だきっ。マイが俺の右腕に抱きついてきた……なんとも心地よい感触を腕に感じる。
少し自慢のようで「死ね!」と言われそうなことを言うけども――
この感触に慣れ始めてしまった、だからかあまりドキドキしない。
……慣れってのは恐ろしいね、今はなんというか……安心する、だろうか?
そして俺の腕に抱きつくマイの頬が緩んで、いかにも幸せそうな表情を見ていると更に安心してしまう。
「えへへ……」
なんというかムチャクチャ可愛い。もう抱き締めたいね、やばい。
彼女がここまで自然な表情や呟きを漏らすようにもなったのは、やはり付き合い始めてからだ。
そして過去を俺に打ち明けてくれた時からで。それからは順調にバカップル化していった。
「えへへー」
おうふっ……可愛いさに磨きがかかってやがるぜ。首を左右に動かして、マイが俺の腕に等間隔で当たってくる。
正直今、幸せだ。
もうかつてマイが口にしていた「死んでもいい」という発言も比喩表現としてだけでなくとも思えてきた。
「あ、あの……いいですか?」
「! ああ」
理解した彼女が望んでいることを。彼女は紅潮した頬のままこちらをみると目をつぶった。そして俺は──
「──」
彼女の、マイの温かくて柔らかい唇に口付けをした。
なんとなくだ。なんとなく甘い余韻が残った。唇を離すと──
「……っ」
ニコッ、今日一番の満面の笑みをもらった。
もう、その時にはマイをぎゅっと抱き締めていたと思うね、てかそうせざるを得ない可愛さ。
キャラ崩壊? ハッ、知ったことか! 可愛けりゃいいし、なによりマイだからいいんだよ!
そんな俺も完全にマイラバーであった。
「ユウジ様、大好きですっ」
「俺も、マイが大好きだ」
……本当に幸せで仕方ない。この時が長く永く続いて欲しい。この幸せな時間が終わらないで欲しい。
永遠を願うように、俺はマイを抱き締めた。
あのあと……マイとの関係を取り戻したあと、佐藤さんに会った。
「ありがとう、またあの子に笑顔が戻りました――」
マイが飛びだされた時はどうなるか分かりませんでした。
あのマイの不安定な精神状態で会わせるのは酷なものでした……ごめんなさい。
それでも、ユウジ様は……あの子に笑顔を戻してくれて――本当に、本当にありがとう。
……と言ってくれた。そしてまた愛想のよい笑顔をみせてくれた。
そういえば3月を待たずして、バレた。え、何がって? それは、だな――
「ユウジ様! 聞いてないです!」
「ああ、悪い。言えなかった」
「そんなのないですよ! なんで……なんで!」
「ユイさんと暮らしてるんですか!」
……まあ、バレなかったのが不思議というかなんというか。
ということでユイが同居しているのがバレた。
今考えれば隣に住めば「隣なんて……羨ましい」とは言ってきそうだが、ここまでにはならなかった気がする。
でもどうやら、ユイの強い希望らしく。だからユイの同居隠ぺいの協力も積極的だったのかもしれない。
「いや、あれだ……俺の母が再婚して、その娘が――」
「ユイさんなんですか! ええええええ、そんな! ということは……家族なんですか!」
これはもう隠してた俺が悪い。
「ごめん」
素直に謝ることにした。本当にすまない。
「……ふふ、でもいいですよ」
「え」
「いずれ、私も下之家の一員になるのですから」
「それは、どういう……」
「結婚しましょう! 卒業したらすぐに!」
「ええええええええええええええ」
とまあ、まさかの展開に驚きつつも。幸せに満ちた日々な訳で。
「へぇー、らぶらぶだなー」
「そう思うか、ユキさん」
話すのはユキとユイだった。
「……振り切ったつもりなんだけど、どうにもあそこまでベタベタイチャイチャされると」
「まったく! リア充どもめ!」
「私も、したくなっちゃうね」
「…………え、アタシ?」
なんかユイの叫び声が聞こえ……って、ユキがユイを食ってる!
おおう、なんか凄いことになっとる!
「ユウジ様こっち向いてください、あーん」
「あーん」
周囲の目線は痛いけれども、マイの弁当は美味しかった。
「お、おいしいです!」
「そう?」
出来なかった新レシピ試食会を開いていた。
「私も見習わなければ!」
「あ、そういえばマイ、肉じゃが美味しかったから教えて欲しいんだけど」
「! いいですよ! まずはですねー」
そう俺の家のキッチンでらぶらぶ新婚のごとく、二人料理をするシーンを眺める。
ハンカチを噛み、水道の元詮大で涙を流す……姉貴。
「うーん、羨ましいなあ……私も、私もマイさんになりすませば!」
「いや、ユウジのお姉さん。それはだめだと思うよ……」
居間にはミナとホニさんが座りながら物珍しそうに料理風景を見せていた。
「お似合いだねー」
「……ひ、否定できないのが。悲しいっ」
あんだけ言ったのに、やっぱりブラコンは治りそうもない姉貴がそこには居るのだった。
「マイと一緒にこれからの人生を歩いて行く」
「山も谷も溝もあるだろうが、助け合いながら乗り越えて」
「マイは俺の歩く道を、共に歩いてくれるか?」
「……手を、手を繋いで歩いて行きましょう。ユウジ様っ」
演劇の練習でもするように、俺は改めてマイへと言った。
思い切りの笑顔でそう答えてくれた。頬を桃色に淡く染めながらも、左手をそっと俺の右手に合わせる。
それに答えて、俺はマイの手をそっと握る。
「……ユウジ様の手、とっても温かいです」
こんな可愛い彼女を持てて幸せ者だよ、まったく。
マイを見る俺の顔がどれほど緩んでいるか想像したくない。そりゃあもう自分でも引くぐらいの有様なんだろう。
それでも構わないさ。相応に幸せなんだから。かつてない幸せを噛み締められているのだから。
「……」
ふいっと、彼女がそっぽを向いた。
「!」
マイの方を見るが、目を逸らされてしまった……悲しみに暮れようとしたその時に。
「//」
俺に顔を見せながら、手の握る力を強めてきた。もちろん俺もそに答えてマイの手を握り返す。
「……」
にこっと笑うマイ。
言葉こそないが、それには殺されかけた。可愛い過ぎて、萌え死ぬところだった。
ああ、これまでに何度殺されかけたことか。でも、今なら死んでもよかったかもしれない。
悔いは……もっと二人で居る時間が欲しかったくらいだ。
「……」
「……」
どこまで手を繋ごうか?そんな野暮な事は聞かず。いつまでもいつまでも手を繋いで歩いて行くことにしよう。
マイの家に着く、その時まで。 至福の時間は続いてく。幸せ過ぎて、嬉し過ぎて。無かった頭が更に溶けて無くなっていくようだ。
べつにいいか。
などと思い始めたのも、救いようのないバカになったからかもしれない。
でもいつまでも続いて欲しい。このまま時が止まってしまえばいいのに……そう思う俺がいた。
「もう少しで二年かー」
この一年色々あったもんだ。
あんなに可愛く美しい彼女を持てるなんて――
「(一年前の俺、分からないだろ?)」
わかんねぇよなあ? こんなに幸せだなんて。
「……いやー、また明日マイに会うのが楽しみだわー」
春休みが始まっても、頻繁にマイと会って居るのは公然の秘密……にはなってないか。
と言うわけで、俺は今幸せです。ものすんごく、彼女もあの時から更に変わって……純真のマイが見れるようになった。
「……ほんと、もう幸せで」
ベッドに寝ていたので、眠気が襲ってくる。そうだ……明日も有るしさっさと寝よう。
俺は布団をかぶり、眠りに堕ちて行く。
「(おやすみ)」
明日が来ることに胸が高鳴り、そうして俺は夢の世界へ――
カチ、カチ、カチ、カチリ。
何かが止まる音……それは今まで刻んできた時計の針が止まっていた。
電池切れ? そうではなかった。
電池を故意に抜き取った……それもそうだが、そして。
時が止まった。
「ユウジ、すまないことをする……じゃが、これしか方法がないのじゃよ。だから、本当にすまぬ」
その声の主は手に持つ時計の時針を制御して、逆戻りさせていく。
そして時針は反時計回りを終えて、そこで外していた電池を入れる。
「これで、終わりじゃ。そして始まりじゃ」
そして時は動き出す。
また、あの時へと戻って。
* *
「もしもユウジが”病んだ心を持っていた美女”と結ばれたら」
これはそんなユウジの一つの”イフ”の話。
出来はどうあれマイ編完結! ああ、長かった! アニメで言う2クール分とか超なげえよ! もうね、マイ可愛すぎてね、描写増やしまくったんですよ? もっとイチャデレシーン書いても良かったけども、流石にね! 次の√進まないとね……読者のみなさんにどう映るかは分からないけれども、今キラワケは満足です。ありがとうございましたーーー
2022年5月追記:
ルート1-18からここまでの話を微修正とカットと再構成をして話数をまとめました。
微修正しただけなので、今後はちまちま今の自分のスタイルの文章・最新準拠の設定に直していきます。
話の流れは大きく変わらない……はずです、よろしくお願いします。
並行して現在連載中のルート6は執筆進行中です、しばらくおまちください。