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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十九章 私の兄がこんなにかっこいいわけない。 ーわたあにー
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第665話 √d-44 わたあに。 『ユウジ・ミユ視点』『二月十四日』



 ミユは今受験勉強真っ盛りだ、最近聞いた話だが秋頃から始めクリスマス頃にはもう本腰を入れていたという。

 ミユ曰く「引きこもりに時間は無限にあるからね! ……なんか、ごめんなさい」自虐ネタは反応し辛いからやめてほしい。

 そして正月休みを最後にミユはひたすら勉強している、あれほど見ていた深夜アニメでさえもしばらく見ていないという。


 中学受験以降エスカレーター組で無試験で高校に上がった俺にはあまり言えることがなく、見守ることしかできない。

 ちょくちょくミナ姉や、稀に俺に分からないことを聞きに来る程度だ。

 何もできないことがもどかしいが、俺は信じて待つほかないのだろう。


 深夜まで勉強するという日は夜食やコーヒーとかの差し入れをしにミユの顔を見に行く、真剣そのものにノートに向き合う姿に声もかけずに手近なテーブルに夜食の載ったおぼんを置くとひっそり退室。

 内心で頑張れと応援するのだ、声に出してしまうとミユにプレッシャーをかけてしまいそうだからだった。

 


* *



二月十四日



 私は今受験勉強真っ盛り、今年の春の藍浜高校入学を目指して受験勉強をしていた。

 のに!


「まずくは……ないよね」


 正直ここ二週間はあまり勉強に身が入っていなかった、受験生失格だ。

 だけども……けれども!


「それでもライバルが多すぎる……」


 バレインタインデー、お菓子会社の陰謀によって作られてしまった好きな女子が異性にチョコレートを渡す日。

 料理ベタな私にとってはまるで向いていないイベントだと思う、しかしだからといって苦手だからと投げ出せない理由がある。


 まず私の好きな異性は兄であり、それでいて恋人のユウ兄だ。

 これまでは義理チョコと称してバレンタイン前日にコンビニで買ってきた板チョコをあげて、ホワイトデーに三倍返しを目論んでいただけだった。

 けども今回ばっかりは事情が違う、なにせ私はユウ兄の彼女なのだ。

 そしてユウ兄の周りには可愛い女の子ばかりだ、そしてそいつらこぞってユウ兄にチョコレートをきっとあげやがる……く、くそう!

 というかモテモテすぎるんだよユウ兄、なんでそんなモテるの、ラノベ主人公なの? ……ギャルゲー主人公だった。

 更に皆割と料理が出来る、てんでダメな私とは天と地の差……勝ち目なんてあるわけがない。

 

 それでも諦めるわけにはいかないと、ここ二週間ミナ姉に教えてもらいながらもどうにかチョコづくりに励んできた。

 しかし私にはまるで才能が無く、お約束のチョコを溶かす工程において湯せんせずにそのまま鍋で焼き、鍋焼きチョコを作ってしまった……もちろん鍋が焦げ付いてるんだけど。

 チョコなんて溶かして固めれば美味しいものだと思っていた……しかしそれでは物足りないとバニラエッセンスなどを足して台無しにしてしまう私である。

 いや絶対美味しいじゃんバニラチョコ! ……アレンジするのダメだって分かってるけども、ついやっちゃうんだよ。


 そうして昨日紆余曲折あってチョコレートは完成。

 そういえばよく見ると冷蔵庫の見えにくい場所にチョコが隠されている……どうせ皆ユウ兄に渡すんじゃん、そんなにユウ兄にチョコ食べさせて糖尿一直線にさせる気なのかと。

 

 そう私が思考しているのが深夜も二時、本来ならば寝る時間なのに起きている。

 というのも私のバレンタインチョコレートは二つ用意していた。

 片方は昨日作ったもの、そしてもう片方は自販機で見つけたクソ甘いチョコレートドリンクだ。

 

「とりあえず……第一陣行こう」


 昨日作り上げた本命チョコが美味しいことを信じて、とりあえずはチョコレートドリンクの入った缶を持ってキッチンの冷蔵庫を後にする。

 そうして訪れたのは――ユウ兄の部屋だった。


「おはようございまあす」


 寝起きドッキリ風にドリンク缶を手に持りマイクに見立てながらやってきた今の時間は深夜二時……おはようじゃないなこれ、こんばんは? おやすみ?

 

「ユウ兄の部屋に来ていまーす……おっ歯ブラシがありますね」


 こんなこともあろうかとポケットに忍ばせていたユウ兄が実際に使っているハブラシを……なめ……なめ。

 

「……いや流石にこれは」


 変態っぽいからやめておく……ちょっとやりたかったけど、ポケットに再度締まった。

 茶番はここまで……いやここからも茶番風味なんだけども、寝息を立てるユウ兄の枕元に向かう。


「……おおう」


 げへへ……ユウ兄はノーガードだぜ、これなら何をやってもバレ無い気がする!

 バレなきゃ犯罪じゃないんですよ…………この方向性はまずい! 一度軌道修正だ。


 ……にしてもユウ兄の笑顔、かわいい。

 ちょっと触ってもバレないかな…………おおう、寝てる寝てる。


「さて……と」


 ついに私は作戦を結構する。

 

 まず服を脱ぎます、そしてこのチョコレートドリンクを素肌にまとわり……つかせないよ、何言ってんの。

 本当はこのチョコレートドリンクを口に含み――毒霧……じゃなかった、ごめん真面目になるから。


 口に少量含んだ状態でユウ兄に迫り、そしてユウ兄が起きるぐらいに身体を揺さる。


「んっ……んっ」

「……んぅ? なんだ、なんだ」

「んっ!」

「っ!?」


 一応起こしたところで私はユウ兄とマウストゥマウス、からの口内のチョコレートをユウ兄に送り込む!


「んー!? んー!?」

「ぷふぁっ」


 寝起きに突然私が襲来して、突然キスされたかと思えば甘い何かが流し込まれるというホラー一歩手前な状況を今ユウ兄が味わっている。

 ……あれ、思ったよりロマンチックじゃない。


「げほっげほっ!」

「おはよ、ユウ兄」

「な、何すんだよ!?」


 完全にパニックを起こしている……ドッキリとしての作戦は成功だ(?)。


「ハッピーバレンタイン!」

「え、あ、うん……なんでド深夜にした!?」


 ようやく意識を覚醒させ、状況を理解し始めたユウ兄のツッコミがやってくる。


「彼女の私としては、他の誰にも出来ない上に一番最初にバレンタインデーイベントをしたかった」

「誰にもで出来ないというか誰も思いつかねえよ!」


 不評だった。

 私はド深夜に叩き起こしてユウ兄にチョコレートを流し込んだだけなのに…………あれ、これすっごい迷惑なのでは!?


「おかしいなー、こういう口移しイベントってドキドキしそうなのに」

「顔もよく見えないド深夜にやってる時点で企画倒れだと思うんだが!?」

「じゃあ電気点けるね」

「ちょ」


 電気を点けると口元から吐血したかのようにだらーとチョコを流すユウ兄の姿が。


「……暗いところでやるもんじゃないね」

「分かってくれたか」

「じゃあ仕切り直しね、はいこのハブラシで磨いて」

「おう気が利くな……ん? なんでミユがハブラシ持ってんだ?」

「さあ、リセットしたら仕切り直ししよー」


 ……舐めてないから、未遂だから問題ないんだよ。


「……いい?」

「あ、ああ」

「じゃあ……んくっ」


 また私は口にチョコレートドリンクを含み……そして――


「んっ」

「…………」


 ユウ兄とまた唇を重ね、口の中にチョコレートドリンクを流し込む。

 ユウ兄に流し込まれたチョコレートドリンクは純粋なものでなく、私の唾液とかの混ざった――


「ぷふぁ……どう?」

「(ごくん)」


 少ししてユウ兄は喉を鳴らして飲み込んだ……微妙に顔が赤く見えるのは気のせい。


「……甘かった」

「だよね」

「まあ、寝起きはやめてほしかったけど……チョコありがとな」

「うん、うん」


 最初こそ戸惑ったものの、バレンタインチョコをこんな形とはいえ貰えたことをユウ兄は喜んでいるようだった……よかった。


「じゃあホワイトデーはホワイトチョコジュースにしないとな」

「え、それは下ネタ的な意味で?」


 いやん、ユウ兄のすけべ(ハート)。


「このエロ妹が! そんな意図はねえよ!」

「え、えろ妹!? て、撤回して! 純情清廉乙女の私がエロいわけないじゃん!」

「純情とか臍が茶を沸かすわ! 発想がエロいんだよ、男としてはドギマギするからほどほどにしてくれ!」

「な、なにおう! ……ん? ほどほどならいいんだ。ほー、へえ、まぁ善処するよ」


 つまり多少ならいいと! …………なるほどなるほど。

 ユウ兄のお墨付きをもらったし、私もちょっと考えてみようかな。


「まあ、ありがとうな」

「うん、どういたしまして」

「そして寝ろ、受験勉強しなきゃだろ」

「う……現実に引き戻された」

「ミユと学校行きたいんだから、頑張れよ」

「っ……! うんっ」


 そう、言ってくれると嬉しいなあ。

 叶わないことだと思っていても、そうユウ兄の口から出ると頑張ろうと言う気になれる。


 バレンタインデーを過ぎれば私も、また本腰だ……がんばるぞ!


「明日から本気出す!」

「ぉい……」 

 

 いやだってバレンタインデーはこれからだし、ファーストリザルトは取ったけど……これからが本当の闘い!

 ユウ兄へのバレンタインチョコ攻勢が続き、そしてギリギリのタイミングで私手作りチョコを渡す。

 はじまりとおわりは私ものだ! だからこそ、今日は受験勉強はお休みだ。

 別に口実にしているわけじゃないんだよ、だって実際他の女の子気になるし――

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