第662話 √d-41 わたあに。 『ミユ視点』『↓』
なんか勢いでここまで来ちゃったけど……冷静になってきて死ぬほど恥ずかしくなってきた。
なんで私ユウ兄の背中流してるんだろう、というかおっきくてゴツゴツしてて男性的な骨格にドキドキしてしまうのは私が変態だからですか?
さっきさりげなく私の背中だけでなく腋とか脇腹とか……普通に洗ったよね!?
ユウ兄に洗われちゃったんだよね……ほああああああああああああああああああすっごい恥ずかしい!
肉付き良くなったってユウ兄に言われてから数か月は経ってほどほどを維持しているとはいえ、ぷにぷにし過ぎてないよね、でぶってないよね!?
というかこうして背中を流し合って、それで……どうなる!?
いわゆるこれは前振りなのかな!? 本当にその……一線を超えちゃう的な!?
ああいやまってやっぱりまだ心の準備がああどうしたものか上手くやれる気がしないのにあああああ!
「もう背中はいい感じだ、ありがとミユ」
「え、あ、うん!」
そう言って私からスポンジを取ると前を洗い始めた。
前ということはつまり………………ちょ、ちょっとぐらい覗いてもバレナイヨネ?
「はぁはぁはぁ」
「……鼻息荒くしてどうしたんだ」
「お構いなく」
ほ、ほおおおおおおおおおおおおこれは――ああ、見えない!
不自然な湯気とか謎の光線でまったく見えない! ああ、くそう自主規制め! 円盤を買えと言うことかそうですか風呂シーンだけでも三万円まで出す。
「というかミユは先に風呂入れよ、風邪ひくぞ」
「そ、そうだね」
浴槽からはもしかして規制逃れでアレが見えたりしないかな……とか思いつつも現実はそんなに甘くなくて結局は見えず仕舞いだったけど。
どうしてギャルゲーとハイブリッドにした! エ○ゲーとハイブリッドにしてよ!
ユウ兄の入浴シーンのモニタリング映像が保存できない今となっては、私がこの網膜に焼き付け脳裏に刻み付けるしか手はないというのに!
そうしてユウ兄が浴槽に入る時にでも、湯気は晴れず光線は消えなかった。
くそう!
本当のところユウ兄もいよいよ恥ずかしくなってきたのか、私に先に風呂を上がるように促したものの。
私としてはユウ兄と風呂に入りたい以上は譲らない、かといってユウ兄は遠慮して入ろうとしないので強引に引きずり込んだ。
しかしユウ兄は最後の抵抗のごとく私に背を向けるように風呂に入り、いつの間にか二人が入ると手狭になった浴槽に背中合わせで入ることになった。
ユウ兄の背中と私の背中が触れ合っていると思うとこれはこれで……エロい!
「……小さい頃は同じ向きでユウ兄が後ろで、私が前だったはずだけど」
「いや無茶言うなよ……」
「間違いが起こってもしょうがないと思うんだよね」
「しょうがなくねえよ!?」
背中合わせだとどうやってもユウ兄のアレが見えない! 今のユウ兄のアレは一体、そして状態や如何に!?
だから私は探りを入れてみることにする。
「…………もしかして興奮してるの?」
ここでの返答は呆れ半分にそんなわけねーだろか、動揺気味に興奮してねーし! の選択肢が有り得る。
後者ならばまだ私の女体はユウ兄にとって一応脈アリということにになる……くぅ、私は全体的に貧しいばっかりに。
「……ノーコメント」
「はいかイエスで答えてよ」
「俺が答えたからってどうにでもなるもんじゃないだろ……」
「なるよ」
「なんでだよ」
「――私はユウ兄のとって私は”まだ”妹でしかないの?」
そう、私はユウ兄に妹以上に一人の女の子としてもみてもらいたいのだ。
別に邪な考えだけではなく、性に対して好奇心旺盛なだけだからでなく――私をどう見てくれているか。
「……背中合わせで見ないようにしてる時点で察してほしいんだが」
「見るに値しないほど貧相と……」
自分で言ってて大ダメージだけども、どうにかユウ兄から言葉を引き出したかった――
「何年も前に一緒に風呂入った時と全然違いすぎて……女の子の身体しすぎて直視できねえんだよ!」
「…………そ、そっか」
女の子、として見てくれるんだ。
そっか、ふーん、なるほどね…………どうせ魅力的とかエロいとかの感想は引き出せなかったけど、まあまあかな。
「……先にあがるぞ」
「だ、だめ」
風呂を上がろうとしたユウ兄にどういうわけか振り返って――抱き付いてしまった。
「お、おおおおい!?」
「まってよ」
「あああああ、背中にその当たってるんだって!」
「ああああああててんのよ!」
ぎりぎり当たるほどしかないけど。
「……他の女の子のいるタイミングでこんなこと出来ないよ」
「……こ、こんなことってなんだよ」
「最後までしちゃおうよ」
「おおおおおおおお前!?」
一度恥ずかしくなったかと思えば、今度は風呂の熱に冒されたようにとんでもないことを私は口走っている、感情が暴走してしまっている。
「ギャルゲーだってそのシーンが丸ごと切り取られてるだけで、きっとやることやってるよ」
「……さりげなく夢を壊すようなこと言うなよ」
「いいじゃんゲームなんだから、兄妹でもしたかったらすればいいじゃん」
「俺は……」
いずれリセットする世界で、そんな思い出を作ってもどうしようもないかもしれない。
それでも私は、ユウ兄と確かに結ばれたくて……繋がりたくて。
「そんなに私じゃ無理?」
そうして私は卑怯な聞き方をしてしまう。
「無理なわけ……ないだろ!」
ここまで煽ったのだ、今まで理性をどうにか保ってきたユウ兄がどうにかなってしまうのは仕方のないこと。
「…………どうなっても知らねえぞ」
「うん、私も知らない」
今私とユウ兄は向き合っている。
あそこまでしつこく曇っていた湯気や、どこからは指していた光線が消えていき――
「ユウ、にい……」
そう覚悟を決めた私はユウ兄と触れ合い――以降の描写は出来ないし、話すことも出来なかった。
果たして私とユウ兄がどうしたのかは、私とユウ兄と神のみぞ知るということで。
某所にて
嵩鳥「創造神ですが」
アイシア「創造神だけど」
嵩鳥「…………」
アイシア「…………」
嵩鳥「神のみぞ知るとか言うから出てきたけどさ、いや確かに知ってるけど」
アイシア「うん、まあ正直さ……規制する為の湯気と光線は手作業だからやめてほしい。こっちがもろに見てるし」
嵩鳥「そう! 大きなお友達向けアニメーションも自主規制で隠していたはずが、隠しモレということも万に一つの可能性がありえるんです!」
アイシア「私は深夜アニメに造詣深くないから分かんないけど、私の作業の大変さは主人公とヒロインに分かってもらいたい」