第667話 √7-0
『ダイヤル4』
それは俺が、俺たちが幼い頃。
俺の目の間には幼いミユと――誰だ?
ミユと話しているのは何故か顔がボヤけていて、名前が思い出せない。
「――ちゃん、ひっこしちゃうの?」
「うん」
「さびしいなあ」
「……うん」
「いつ帰ってくるの?」
「……わかんない」
「そっか」
ミユが悲しそうな表情をしているのを俺が見ていて、隣のサクラは涙ぐんでいる。
俺だって男だからと堪えてるだけで悲しくて寂しい気持ちなのは同じなはずだった。
「元気でね」
「うん……ミユちゃん」
そうして抱きしめ合うミユと――誰が?
「サクラちゃんも遊んでくれて、ありがと」
「ううっ、うう」
幼い頃のサクラは泣き虫だったんだなあ、そうだったのかあ……。
こうしたサクラが焦点にあたってない場面でも、彼女のことを知ることが出来て……悪くない気持ちだ。
「ユウジくん」
そうして彼女が俺の名前を呼ぶ。
俺は彼女を悲しく送り出したくはなくて、男だからとどうにか強がってもいて――
「またいつか会える、きっと大丈夫」
「……っ! うんっ!」
「帰ってくるの待ってる」
「……私、忘れないから! ユウジくんのこと忘れないからっ」
泣きながら笑おうとする彼女の表情はぐちゃぐちゃでも、不格好には見えなくて。
そしてふっと俺から見て彼女のピントがズレていたようなぼやけた顔が、鮮明になってくる――
「またね、ユキカ」
ああ……思い出した。
彼女は、篠ノ井雪花と言って――――ポニテがトレードマークな、元気で可愛い女の子だったんだ。
* *
??月??日
「ねえ、ユウジ」
どこか悲しそうに言葉を紡ぎ続ける彼女に、俺はただただ見つめることしかできない――。
俺の幼馴染の”はず”の彼女は――
「私は……幼馴染になりそこねちゃった私はさ」
その告白は辛そうで、
「私……覚えちゃってるんだよ、これまでユウジ君が――色んな女の子と付き合ってたのを、さ」
「何も無かったように振舞うべきだったかなぁ……ねえ、ユウジ君」
彼女は俺と同じように――かつての記憶を持っていたのだ。




