第661話 √d-40 わたあに。 『ユウジ視点』『十ニ月二十四日』
気づけば短かった秋も過ぎて冬が訪れる。
思えばミユと再び出会ってからもう半年以上が経ったのだと、改めて思う。
ミユは最初の断髪から、最近また髪を切って少し短くしたの時間の流れを感じさせる。
そうして今年の学校も終わりを迎え冬休みを迎えた。
十二月二十四日
「十二月二十四日の午後九時から翌二十五日の午前三時までの六時間は一年間で最も<規制>をする人の多い「性の六時間」です」
「突然なに言ってんだお前は」
そんなどこぞの掲示板の特定の人物を煽るようなコピペを口に出した妹に割と本気で呆れつつも言葉を返す。
ちなみにミユにクリスマスイブだからどこか出かけようと提案したものの。
『寒いからやだ』と一蹴された、引きこもりに戻りやがって!
ということでまたどういう訳か俺とミユ以外出かけてしまって二人きりの我が家で、俺の部屋でゲームをして過ごしていた。
……春夏秋冬俺たち何も変わってない。
「だから私は<規制>がしたい!」
「だからさっきから何言ってんだよお前は!」
書き手が書いてるもう一つの小説と中身がゴッチャになってるのではないか、ユーくんとユウくんが本気で混ざって修正するハメになってたりしてたし。
…………いやまあ今のはどうでもいい話だったけども。
「せっかくのクリスマスイブだよ! どうせなら恋人らしいことしたい」
「それは分かる」
「キスも済ませちゃったし、じゃあ<規制>するしかないじゃん」
「これギャルゲーとのハイブリッド世界なんだよな!? 十八禁ゲームとハイブリッドしてないよな!?」
やはり俺の妹の倫理的思考は間違っている。
「ユウ兄文句ばっかじゃん!」
「恋人でもあるけども兄でもある俺は言いたくもなるわ! 将来が心配だわ」
本当にこんな脳みそピンク妹がこのまま大人になったらと心配で。
「私の将来はユウ兄に託してるから大丈夫だよ」
「な」
そ、そんあ唐突に恥ずかしいことを…………。
「……その言い方だと、なんか俺のヒモになるつもりなのか」
「私は主婦担当だからー」
あっこいつ。
「お前ミナ姉より上手い飯とホニさん並の手際の良い家事こなせんの」
「ああああああああ! それ言っちゃダメだしょ、反則でしょ! ひどいよユウ兄、イジメって言うんだよそれ!」
知らんがな……。
「……まぁ私の家事能力は置いておいて」
いやそこ置いちゃだめだろ、戻して来い。
「私がエプロン着てユウ兄を”あなた♪”って言いながら会社に送り出す感じは若妻感あって良くない?」
「いや同い年じゃん俺ら……」
エプロンミユを想像したらなかなかになかなかだったけど。
「なんでそんなユウ兄冷めてんの、もうちょっとオトコノコ的にドキっとしてくれてもいいじゃん……ハッ! まさか私に裸エプロンを……!」
「少し頭冷やそうか」
こうして妹をここまでのピンク思考に誰がした!
それもこれもインターネットってヤツが悪いんだ、回線切ると本気で泣かれかねないので年齢フィルター設定しておこう。
「というかユウ兄はそういうエッチなこと興味ないの? 私は興味津々なのに」
「そういうこと臆面なく言えるミユに割と引いてるんだよ……」
……男子高校生が興味ないわけあらへんがな。
「<規制>もダメ、裸エプロンもダメ……じゃあ私はどうやって脱げばいいのよ!」
「なんで脱ごうとするんだよ、露出性癖でもあんのかよ」
もうやだよこのエロ妹。
「それともおっぱい星人のユウ兄には私の身体では満足いただけない、と」
「いやいやいや」
「揉めるぐらいはあるのに」
そうして不服そうに自分の胸を抑えるミユの姿を見て俺もプツンときた。
…………本当にこの妹は!
俺をなんだと思ってるんだ、目の前に可愛い女の子が居て何も感じない、男として死んでいるような人間とでも思っているのか!
そんなに男の純情とか劣情を弄ぶのかがそんなに楽しいか!
なら、やったろうじゃねえか!
「おいミユ、そんなに脱ぎたいなら脱がせてやる」
「えっ、マジで? 本当にここで脱がすの、えっと、ちょっと待って」
「違う着替え持ってこっち来い」
「着替え……よ、汚れるの? 本当に? いやでもやっぱり心の準備が――」
色々言っておいて今更ヘタレるのは許さん。
「うるせえ散々煽りやがって、いい加減こっちも頭に来てんだ。ここから先は俺の戦争だ!」
「……いいえ先輩私たちの聖戦です?」
先輩じゃねえし、いや来年から先輩にはなるけどもそんなことはどうでもいい。
そうして俺たちはそれぞれ着替えを持って――自宅の風呂にやってきた。
着替えを持って少しの間考えこむミユは少しして。
「まさかユウ兄私に泡泡なプレイを……?」
「ちげえよ!」
「つまり三十分で三ま」
危ないことを言いかけたミユの口を俺が塞いでやった。
今日は強気形の兄で行くと決めたんだ、少女漫画のイケメン主人公なら許される……俺は許されるかは分からない。
「…………いきなりはやめてよ」
「こうすりゃ黙るだろ、いいから脱げ。俺も脱ぐ」
「…………うん」
ミユにはこうして強気に攻めるくらいのがいいのだと、いい加減分かってきた。
恋人の前に兄でもある俺としては、妹に主導権を取られっぱなしなのはシャクだしな。
そうして兄妹いつ以来かスッポンポンになった俺たちは風呂に入った。
「あ、追い炊きしてなかった」
「詰めが甘いよユウ兄!」
なんということだ、湯船に入れないということは二人まずは湯が温まるまで身体を洗わないといけないことになるわけか。
とりあえず追い炊きボタンを押して湯船に張ってある水を温め始める、それまでは――
「よし、風呂が沸くまで背中流してやる」
「えぇっ」
「なんだ? 俺と<規制>したいとか言っておいて背中を洗うのはダメなのか?」
「…………い、いいよ」
劣勢のミユ可愛い、たまんない……とよくわからないサド的な方面に目覚めつつあるのはおいておいて。
それからミユの背中をスポンジで洗い始める。
……しかし肌つるつるだしなんかやわもちしてるし、思ったよりも小さいし、肩甲骨あたりがちょっと色っぽい。
いかんいかん……目の前のは妹目の前のは妹、よし。
「っ…………」
「なあミユ」
「ひゃいっ!」
なにその面白い声。
「俺と風呂入って良かったの?」
「今更それ言うの!? 背中洗いながらそれ言うの!?」
「ちょ」
今振り返ったらその……見える!
しかし今の俺には何故か湯気とかどっかから現れた光線で見えないけど、多分ブルーレイ版では見える!
「いや、俺は別にいいんだがミユの意見聞いてなかったなと」
俺らしくなく強気に攻めてきたが、これでミユに嫌われるのなら辛い……やってること思えば当然だけども。
「それは……別にいいけど」
「ならいいか」
「痒いところはございませんかお客さん」
「切り替えはやくない!? な、ないけど」
「じゃあサービスで腋もやりますね」
「え、なんで、そこは、やめっ!」
くすぐったく身をよじるミユが面白くて俺はつい調子に乗ってスポンジで腋やわき腹などを重点的にやってしまう。
…………色々冗談めかしてやってるけど、これ本当はまずいんじゃ。
成人してない上に兄妹で風呂に入ってる状況って……いやいやそんな、あくまで風呂を介したコミュニケーションであり。
決して、決してやましい気持ちは!
「は、はぁっ……つ、次は私がユウ兄を洗う番だよ!」
「っ! あ、あそうだな」
……思わず前かがみです。
「…………前から洗った方がいい?」
「いやそれは本当にマズイんで背中だけで」
正直もう十八禁小説が寸前まで来てるから、まずいから。
そうは言っても背中を洗われる時でも、俺は気が気でなかったのだった。
嵩鳥家
嵩鳥「私ルートもここまでえっちくなかったですけど! 直接的な描写なかったですけど!」
桐「というかミユがアグレッシブすぎるじゃろ……」
ホニ「…………」
ユミジ『ここまでミユがすけべだとは……』




