第618話 √c-30 わたせか 『二月二十日』
二月も中旬を過ぎ後期期末テストも間近に迫っていた。
マナカとする委員会活動は、やることが終わるとイチャイチャ……ということはなく勉強会を一緒にしていた。
しかしどうにも数学に自信がない、そこでマナカは俺に「良かったらウチで勉強しませんか?」と誘ってきたのだった。
それは、いわゆる、彼女の家への、お誘い、というやつ、では。
少し思いを巡らせたのち「じ、じゃあお邪魔するかな」と言葉を返したのだった……お呼ばれというヤツだった。
二月二十日
学校で待ち合わせて、案内してもらったマナカの家は俺の家からは少し離れた商店街側にあった。
「おおこれがマナカの……」
「普通の家でごめんね」
「いやいや、そっかマナカはここで……」
過ごしてきたんだな、と少し思いに耽る。
「じゃあ、気兼ねなく入ってください」
「ああ、お邪魔します」
そうして俺は初めて彼女の家に――そして部屋に足を踏み入れたのだった。
「その……どうぞ」
「あ、ああ……」
マナカの部屋はあまり女の子女の子している様子はなかった、しかし掃除が行き届き綺麗に整頓されている。
でもちょっと女の子らしい花の香水の香りがほのかに漂っている。
「あ、ファブ●ーズの匂い残ってる!? 換気したのに……」
「…………」
……香水じゃなかったよ、すまんねこういう女子の部屋に免疫なくて。
しかし別に防臭剤を吹きかけるほど変な匂いは残っていなさそうなんだがなあ。
「ちょっと飲み物持ってきますから待っててくださいね……あ、そこのテーブルで勉強しますからそこで待っててもらえると」
「ああ、お構いなく」
そうして彼女は部屋を出ていった。
……一人で勉強する気にもなれず、座りながら部屋を見渡した。
参考書とかも教科順とかに並んでて綺麗だな……おっと普通にラノベ棚もある。
やっぱりそういう趣味もあるんだな、確かに時折アニメの話はするけども。
…………ん?
するとなんとなく見た先のベッドの下に何か光るものが。
気になって立ち上がり、自分の携帯で照らすと――
「…………まくろ色シンフォニーか?」
さすがに引っ張り出すわけにもいかないが、見えたタイトルとパッケージはそのギャルゲーなパッケージだった。
「あ、ユウジ君ドク●ーペッパーとドデ●ミンとっちが……って!? ベッドの下を見てなにしてるんですか!」
「ああ、悪い! 何か見えたもんだからつい!」
「そ、そこにエロ本はないですよ!」
女子高生がエロ本持ってんの!?
「い、いや見間違えでなければ知ってるギャルゲーのパッケージが」
「ああ、それなら問題ないです。でも女の子の部屋を詮索するのはよくないですよ」
「申し訳ない……」
「それでド●ペかドデカ●ン、どちらがお好みで」
「あ、じゃあドデカ●ンで」
ギャルゲーは問題ないのか……確かに俺もなんとも思わないけども。
じゃあ問題あるものとは――
「……”あの小説”じゃなくてよかった」
と呟くのが聞こえたが、あの小説とはなんだろうか。
しかし流石にこれ以上探し回って怒らせてしまうわけにもいかず、その疑問は胸にしまっておく。
それから勉強をした。
時折世間話をしながらの気軽な感じの勉強会だった。
さっきのギャルゲーも話題にあがった、やっぱりサナルートだという見解で一致した。
そうして時間は楽しくそして有意義に過ぎていく。
「今日はここまでにしておきましょうか」
「そうだなー、あー肩が」
同じ姿勢をしていたばっかりに身体がカチコチだった、しかしテスト勉強はかなり進んだ。
数学に強いマナカの助けもあり、分からない箇所が大体理解出来るようになったのは収穫だ。
「もう日も暮れてきたしそろそろお暇するかな」
「え」
え、とは。
「……その、勉強会はぶっちゃけユウジ君を家にお呼びする口実で」
「……そう、なのか」
「出来れば……恋人らしいことしたいなーって」
「ああ、そうだな。いいかもな」
「今日は親の帰りも遅いですから」
「……っ!?」
確かに付き合い始めて三か月と経つのに、かなり健全な関係である。
キスでさえもバレンタインデーのサプライズが最初だったのだ。
「その……まず出来れば”キス”してもらえまえせんか?」
まず、とは。
ああ、いきなり言われたことで脳が混乱する。
しかしマナカたっての望みだ、それを無下にすることは――
「あ、ああ……わかった」
俺とマナカは勉強道具を片付けると、マナカのベッドに腰を掛けた。
このベッドがマナカがいつも寝起きしている寝具だと思うと……男子高校生的にはドキっとしてしまう。
「…………その」
「あ、ああ……して……いいか?」
「……はい」
そうしてマナカは目を瞑った。
ああ、こんなに顔を間近で見るのは初めてだなあとか。
よく見ると頬にほくろがあるんだなあとか。
髪サラサラで触り心地良さそうだなあとか。
余計な思考ばかりが働いてしまう。
……待たせちゃいけないよな、そうだよな。
「…………」
「…………」
俺は出来るだけ優しく、触れるようにマナカの唇に顔を近づけ――ドラマなどの見様見真似でキスをした。
「え、えへへ……ユウジ君からの初チューですね」
「っ!」
そうはにかむマナカがとんでもなく可愛く見えてしょうがない。
「……もう一度いいか?」
「……もちろんです」
そうしてまた軽い口づけを交わす。
柔らかい、彼女の確かの体温を感じる、心地いい唇。
「舌とか……入れてみてもいいんです……よ」
「なっ……」
それは流石に勇気が……いや、でも。
マナカが求めてくれるのなら……!
「んっ…………」
加減なんて分からない、けれども想像でそれをする。
俺の舌が彼女の口内に入っていく、そして一方で彼女の舌が俺の中に入ってくる。
なんだこれ……なんだこれ、なんだこの……この!
「ぷふあ……はぁふぁ……気持ち、いいですね」
「…………そ、そうだな」
気持ちいい、舌がとろけるところじゃなくて、身体が溶けてしまいそうな――熱さ。
それからは覚えてしまった快感をまた追い求めるように、何度も深く深くキスをした。
みっともない顔をしていたかもしれないし、がっつきすぎと思われたかもしれない。
それでもマナカとこんなに気持ちよくなれることが嬉しくて。
「私……いいですよ。これ以上のことをしても」
これ以上、とは。
それは、キス以上とは、深いキス以上とは。
それは――
「俺も……マナカとしたい」
そうして俺は彼女と交わったのだ。
事後。
マナカ「…………まさか事中描写全カットとは思いもしませんでした」
ユウジ「…………想像に任せるということで」
マナカ「あ、ちゃんとコンド――」
ユウジ「アウト、多分ギリギリアウトだから!」
ナレーション視点でも、普通にR-18というか描写するなら完全にサイトを間違えていますから。
あくまでギャルゲーですから! 頑張ってもCERO:Cですから!