第608話 √+1-7 彼らはこうして繋がっている。
「井口って……あの井口で、この井口か!?」
下之君は大人びた風貌になった井口さんと、画面の中に居る高校時代の井口さんを見比べてそう彼女に問いました。
「は、はい! お久しぶりです、ユージさん」
……というかさりげなくさっきこの人元カノアピールしてたな。
現在進行形であの手この手で彼氏彼女な関係になろうとして空回りしている私への当てつけですかね!
「ええと、はーとふるでいずっのメインライターって……あの私や巳原さんやミナさんとかの元になったゲームですよね」
「はい、そのシナリオライターです」
……でもそれって変ですよね?
はーとふるでいずっとルリキャベが発売されたのは数年違いで、ということは学生時代に井口さんがシナリオを書いたことになるのですが。
お前が言うな禁止です!
「いやぁ、井口さんはギャルゲーシナリオ大賞に学生時代応募して見事優秀賞を勝ち取って! ヒロイン四人の全シナリオを担当したんですよ~」
「学生時代にヒロイン四人のシナリオシナリオを!? 井口さん凄いですね……」
私が書いたのは元は小説であって、それを過去に戻ってギャルゲーに組み込んだものなわけです。
文章量作業量考えると学業兼任で執筆業は相当大変だったのではと思い、素直に井口さんを素直に評価するほかありません。
「そんな! ”MANAKA”先生にそう言われると感激です! あと○○読みました! 面白かったです!」
「う、うん……ありがとね」
私の著者名もバレているらしい、まぁ名前まんまなんだけど。
自称売れっ子小説家の私のファンでもいてくれたらしい彼女は、最初の登場と裏腹に空気はゆるい具合になってきていた。
「というかあの有名かつ今も一線で活躍するギャルゲーライター”なな”が井口だとはなぁ」
「あ、ありがとうございます」
そう考えると、この場にいるのは自称売れっ子小説家にベテランギャルゲーライターに敏腕プロデューサーに半端ない発明家?が揃っているわけで。
「そんな井口はどうしてここに来たんだ?」
「あっ、そうですよ! 確かに今書いてるギャルゲーシナリオが佳境だったとはいえ、一人のけ者ってのは酷いじゃないですかアイシアさん!」
「あーはは……すっかり紹介するタイミングとか失っちゃって」
「……アイシアは何か事情を知ってそうだな。井口はこの”おれのかんがえたさいきょうのギャルゲープロジェクト”にどう関わってるんだ?」
今さらっとこのプロジェクト名が発表されましたけど、名前もうちょっとどうにかならなかったんですか!
「はい、事象の書き換え担当です。これまでもアイシアさんに依頼されて仕事していたのですけれど」
「事象の書き換え……?」
なんでしょう、唐突なその言葉に少し変な予感があります。
それも突拍子もないというか、いわゆるトンデモというか――
「私ですね、”書きなおし・書き足すことで現実に干渉”することが出来るんです」
ああ、果てしないデジャブ!
それもそのはず、もし本当ならば私の”見える力”と類似した特殊な力なのですから――
井口さんとアイシアさん曰く。
はーとふるでいずの世界の際の登場人物の設定書き換えを担当したそうで、プログラム書き換え云々でしたいたと思っていただけに衝撃です。
「そういえば嵩鳥さんは”読み取る力”を持ってますねー。メガネ外すと色々見えちゃうんですよね? それを元にルリキャベを作ったそうで」
「っ! た、確かにそうですけどいきなり言われましても!?」
変な能力を持っているのは私だけだと思っていただけに、突然の私以外の特殊能力者に動揺しているのです。
「ルリキャベのキャラクターがユージさんの周りに似ていたのはそのせいなんですか!?」
「はい! 嵩鳥さんが学生時代に書き溜めた小説状のキャラクター情報を元に、ルリキャベが出来たのです!」
アイシアさんに得意げに語られている!?
「そしてわたくしアイシアはというと”管理する”を持っていたりします」
「「えっ」」
私のみならず、下之君も井口さんも同じように驚きます。
特殊能力者二人どころじゃなかった!? というか管理する力ってなんでしょう!?
「”おれの考えた以下略”のデバッグ用に使っている一年間の間ループする藍浜町の空間を管理しているのは私ですからね」
「えー! あれアイシアさんの力だったんですか!?」
それもプログラムが云々だと勝手に解釈してました、そうですよね誰かの手によりますよね。
「そしてユウさんこそ”あらゆるものを作り出す力”を持っているのです」
「え、そうなのか!?」
本人ですら知らない!?
「いや、だって別に高校時代普通に過ごして。いくら卒業後に頑張ってもタイムマシンも仮想現実ソフトも現実投影ソフトも出来るわけないですよ、”モテたい!”という原動力でも無理があります。そういう能力です」
こうして全部能力で片付けることが無理ありますよ!?
「まぁそれを狙って人を集めたんですよね。嵩鳥さんが見て得た情報を元に、井口さんが現実の情報を書き換えて、ユウさんの現実投影ソフトで展開し、私がその空間を維持する……完璧な布陣なわけですよ!」
な、なんということでしょう。
気づけば同級生は超能力者ばかりでした、それは自分も含めて。
そして三人でワイワイやってましたが、井口さんの役割も重大だと思うんですけれど!?
「あ、そうそう。√3で唐突に井口さんエンドがあったのも、井口さんが私に許可を得て書き足し……ぐむむむ!」
「あ、それは、言わないでください!」
確かにギャルゲーの展開的には変でもありませんでしたが、私のもとになったギャルゲーシナリオであの分岐は無かっただけに今納得です。
「と、ともかく私もこれから混ぜてください!」
井口さんの登場を発端に巻き起こった衝撃の事実の連続ののち、彼女のデバッグチーム入りとなったのです。
それならまぁ昔の同窓会のようになって、緩さが加速していくようにも思えましたが。
「じゃあ、これで全員揃ったことだし――本格的なネタばらしようかな」
突然アイシアさんがそう一人呟いたのです。
「さぁ、今度は私が吐き出す番ですよ――嵩鳥さんやユウさん」
そうして私たちの視界は一度暗転します――
==創造神~特殊能力者達~==
嵩鳥マナカ
<リーダー>:あらゆるものを「読む」力を持つ
井口七美
<ライター>:あらゆるものを「書き直し、書き足す」力を持つ
下之ユウジ
<クリエイター>:あらゆるものを「作り出す」力を持つ
アイシア=ゼクシズ
<マネージャー>:あらゆるものを「管理する」力を持つ
巳原ユイ
<イラストレイター>:可愛い絵を描く、特に特殊な力はない