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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十七章 ずっと近くに居た私と、世界のこと
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第616話 √c-28 わたせか 『十二月二十四日』

かーっ!

クリスマスエピソードをクリスマスイブ当日に投稿するなんて粋だねえ!


……今年もまた作者はお一人様ですとも。

 あっという間に時間は過ぎ、委員会活動のピークは終えて後期中間テストも乗り切ると念願の冬休みを迎えた。

 それまで嵩……マナカとは委員会活動で顔を合わせるだけで、意外にも関係は進展しなかった。

 どっちも恋愛初心者ということもあり、何をしていいか分からなかったのもあったのだと思う。

 

 しかしこれではいけないと、カレンダーを見つめて思ったのは”クリスマス”の文字だった。

 俺のクリスマスというのは家族で過ごすものであり、姉貴力作のクリスマスケーキや料理が振舞われる……そういう日だった。

 確かに浮いた噂も無い俺としては、これまでリアル充実者共(通称リア充)に対して何も思うところがないと言ったら嘘になるが。

 そこまで憎らしいとか、爆発しろ! などと思う感情はなかった、まぁ勝手に幸せにしてくれという気分。

 しかし今年俺はそのリアル充実者共っぽいことに挑む!

 

 そしてマナカにクリスマスについてのメールを送ると――


『行きます! 全然空いてます! 行きましょう――クリスマスデート!』


 ……ということでクリスマスデートが決まったのだった。

 思えば付き合い始めて二ヶ月近くになるのに、まともなデートの一つもないというのは甲斐性が無さすぎたのだが。

 ともあれキリスト生誕祭がいつしか恋人達の格好のデートデイにされてしまったクリスマスの、実際はイブ。

 マナカとのデートが決まったのだった。



十二月二十四日


 

 都会とかならばデートの待ち合わせは格好のデート待ち合わせスポットがあったり駅前の広場になるのだが。

 藍浜町は微妙に田舎気味、人の流れから外れたところにある駅前は寂れている上に列車の本数も多くない。

 更には田舎気味のはずなのだが、待ち合わせスポットは無くてもそれなりに話題作は仕入れてくる映画館もあれば本屋もありファーストフードもあり不便さは感じない……そんな不思議な町である。

 そんなこの町で学生のデート待ち合わせに使われる場所と言えば――


「よう、マナカ」

「こんばんは、ユウジ君」


 それは藍浜高校前だった。

 現に学校前にいくらか待ち合わせと思しき男女が立っている。

 

「制服にコートなんだな」

「はい……デートに行く服を買いに行く服が生憎無く。け、決して私がファッションに疎いわけじゃないんですよ! 家では芋ジャージで過ごしているなんて口が裂けても言えません」


 言ってる言ってる。

 というかジャージなんだ……委員長。


「俺もファッション良く分からんし気にしないな……というか俺もジーンズにシャツにコートだから褒められたもんじゃない」

「それに……個人的に制服デートというのに憧れていたんです」

「ああ、まあ学生の時だけだからな」


 まだ俺たちは一年生だが、あと二年で卒業し大学生か社会人になるのだ。

 制服を着れるのもあと二年……コスプレは除いておくとして。


「いえ、それもあるのですが……それについてはいつかお話し出来ることがあったら」

「? ……そうか、なら俺も制服で来れば良かったかな」


 気が利かなかったなこれは、まぁ男子制服はコート着ると黒ズボンぐらいしか分からないのだが。


「いいえ! いいんです、春頃になったらできれば制服デートリベンジとかいいと思います……けど」

「……そうだな、また春の予定が出来たな」

「は、はい……」


 これからクリスマスデートだというのに、もう数か月あとの予定を立てる俺たち……なんて気の早いことか。


「行くか」

「はい」

「……手冷たくないか?」

「いいえ、大丈夫で――」


 少し強引だったかもしれないな、嫌がられたら仕方ないけども。


「……ちょっとは違うか」

「いえ、良いと思います……嬉しいです」

「なら良かった」


 彼女の手を握る、少しは男の俺が何かしないととは思っていた。

 せっかくのデートだからこれぐらいは……いいはず。


 そうして寒空の下二人並んで歩き出した。


「とりあえず映画は行こうと思ってるんだが、それまで何か行きたいところあるか?」

「行きたいところですか……それなら!」





 そうして訪れたのは――本屋だった。


「まぁ寒い中歩くのはきついし、丁度いいな」


 娯楽設備はそれなりにあるが、デートスポットらしいものは少ない藍浜町である。

 いわゆるいつも通うような商業施設も一応デート場所になる。

 更には気温が一ケタで冷え切っている外を出歩くのは得策でなく、こうして暖房が遠慮なく効いている本屋で過ごすというのもアリだろう。


「じゃあちょっと買いたいもの見てきますね」

「なら俺もテキトーに立ち読みするかな」


 そうして二人別々の方向に歩きだす――かと思えばそうでもなく。


「……マナカ、ラノベ読むんだな」

「ええっ、はい! 割とアニメも見ますし、それで気に入った原作も買いますし」

「意外だな、マナカそういう趣味もあったのか」

「ユウジ君もアニメとか見るんですよね」

「ああ、最近だと冴●カノとか原作読んでるわ」

「いいですよね! 冴え●ノ! 最新巻の加藤ちゃんが可愛くて――」


 マナカがオタク趣味ということを俺は知らなかった、今日初めて知ったのだ。

 アニメやマンガについて話すのもユイかマサヒロ相手ばかりだっただけに新鮮な気分。

 本屋、意外にもマナカの趣味について知れて収穫だった。





「ってことは映画も……」

「はい、アニメが実は良かったりします」


 一応目星付けてたのはそこそこ人気っぽい実写恋愛映画だったが、マナカがアニメでいいなら都合がいい。


「じゃあガ●パンでも見るか」

「それにしましょう! やっぱり映画で見ると違うんですよねー、ガ●パン」 

 

 ……実はマナカ、俺たち並にオタクなんじゃ。

 それならそれで大歓迎だけど。





「ガ●パンはいいな……」

「ガル●ンはいいですね……」


 映画館だからこその大迫力の音響で、ドッカンバッコーンと爽快感ある戦車道を見れて俺たちは満足していた。


「西住姉妹の共闘シーン良かったわ……」

「あそこは熱かったですね、姉妹だから息ピッタリって。個人的に私は看板に砲塔隠して不意打ち狙うところが面白かったですね!」

「あの天丼は良かった――」


 などと語れてしまっていた、実写恋愛映画よりも正解だったかもしれない。

 そうして映画館を出ると――


「ああ、寒いと思ったら」

「雪、ですね」


 雪が降っていた。

 今日の天気予報では雪の予報ではなかっただけに俺たちにとってはサプライズだった。


「ホワイトクリスマス、ですね」

「藍浜じゃ珍しいな……」


 はらはらと降る雪と、二人の白い息。

 ちょっといい雰囲気かもしれないかもな――





 そう思っていた時期が俺にもありました。


「やばい! なんだこの雪!?」

「吹雪ですよねこれ!?」


 最初はロマンチックに見えた粉雪がいつしか風を纏い、勢いを増してすぐさま吹雪になっていた。


「あああああ、メガネが雪で見えません」

「天気予報仕事しろ! ……と、とりあえずそこの店に入ろう」

「は、はい」


 そうして眼鏡のガラスがすっかり雪に埋没したマナカの手を牽いて近場のファーストフード店に逃げ込んだ。


「大丈夫かマナカ」

「は、はい……なんとか」


 寒さと雪で死にかけた俺たちは逃げ込んだファーストフード店の暖房で生気を取り戻し始めた。


「雪止む……感じではないな」

「ここで休憩しちゃいましょうか」

「そうだな……」


 俺たちに続くように次々と逃げ込んでくるカップルや帰宅途中のサラリーマンが入店してきた。

 これは席が埋まる前に、と俺とマナカは販売カウンターに並んだのだった。





 俺はホットコーヒーとポテトを、マナカはホットティーとアップルパイを注文した。

 三百円ぐらいだから格好もつかないが、マナカの注文した分も一緒に払うと言ったら断られてしまった。


「あ、もう混んできましたね」

「発想は同じなんだな……」


 俺たちは窓際のカウンター席に座り、猛吹雪が荒れる外を眺めながら暖かい飲み物をすする。

 その間にも次々とファーストフード店の席は埋まっていく……やはりクリスマスイブだけにカップルが多く、時折会社員や主婦が混ざる具合だ。


「そういえば文化祭の買い出しの時も雨に降られましたね」

「あー……思い切り土砂降りだったな、それで俺は風邪ひいたっけ」

「同じシチュエーションだったのに私はピンピンしてたので、ちょっと複雑でしたよ」

「日頃の行いが俺は悪いんだろうな、差が付いたのは」


 そう二人共通の話題を笑いながら話す、二人いると雨や雪に振られたばかりだと冗談めかす。

 そこで俺はふと聞きたいことがあったことを思い出した。


「なあマナカ、やっぱり風邪で見舞いに来てくれた時……俺変なこと口走ってたよな」

「変なこと……ですか?」

「変なことっていうか弱音だな。割と情けないことばかり言ってた気がして」

「変じゃないですよ。情けないなんてことない、ですよ」

「……そうか?」

「はい、ユウジ君は覚えているか分かりませんけれど……誰しも不安になるんです。一人になるんじゃないかとか、嫌われるんじゃないかとか」


 ああ、やっぱり本当にその類のことを話してたんだな俺。


「私だって委員長委員長言われても、卒業したら元委員長ですし実際は単なるクラスメイトの一人でしかないんですから」

「それは……」

「私も卒業して、一体どれだけの人と関係が続くのか分かりませんし……寂しくもなるんです」

「そう、か……」


 俺一人が想っていることだと、考えすぎなだけかもしれなくても将来訪れる孤独に俺は怯えていた。

 そうか、俺だけじゃなかったんだな……。


「でも今は寂しくないですよ。だって……ユウジ君が居ますから」

「俺もマナカいれば……大丈夫な気がする」

 

 …………。


「い、言ってて恥ずかしくなってきました」

「あ、ああ……慣れないことはするもんじゃないな」


 まったくもって本当に。


「……あの、そういえばコーヒー一口いただけますか?」

「ん? いいけどガムシロップしか入れてないぞ」


 ミルクは入れない派だった。


「大丈夫です、いただきますね――んく……ありがとうございました」

「普通のコーヒーだよな」

「そうですね。でも――今日の進展はこの間接キスということで」


 ……え?

 少しの間をおいてマナカの言ったことを理解する。 


「…………あ、うん、そうか」

「…………やってみましたけど世のカップルのメンタルすごいですね」


 そうして二人照れて、少ししたら顔を見合わせて笑う。

 何気ないけども幸せな時間がそこにはあった――


某所にて

ホニ「ユウジさんのムード作りの為に雪降らせてあげようかな」

桐「力使っても大丈夫なのかの?」

ホニ「これぐらいなら大丈夫大丈夫……でも今頃ユウジさんは委員長さんとデートかあ……きっと楽しいんだろうなあ……いいなあ……」

桐「ホ、ホニ。雪ちょっと強くないかの」

ホニ「大丈夫だいじょ……あ、あれ? 加減間違えちゃったかも、あ、あれー!?」

桐「吹雪いておる!? 完全に吹雪になっておるぞ!?」

ホニ「あああああああああごめんなさああああああああい」

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