第603話 √c-17 ずっと近くに居た私と、世界のこと
委員長:なんですか!? もともと話数に余裕ないのに二話も下之家エピソードに尺割くとか頭おかしいんですか!?
ユウジ:そういえば委員長、俺たちいつまでプリントをホチキス留めする作業しなきゃならないんだろうな……。
委員長:そんなことどうでもいいですよ!? それよりもヒロインの私の扱いが不適切です! 待遇改善を要求します!
ユウジ:プリント束ねてホチキスでパチッ……プリント束ねてホチキスでスイッチ……目標をセンターに入れてスイ――
委員長:もう二十話も無いのに……! どうすればどうすれば私は唯一無二のヒロインに……本当にどうすればいいんでしょう?
ユウジ:笑えばいいと――
委員長:やかましいわ!
五月二十四日
毎週恒例の学級委員会活動、最近はといえば三枚つづりの生活態度アンケートをホチキスで止めながら至って普通の友人間の会話を繰り広げていた。
しかし今週はいつもと違うようで、集まるのは教室ではなかった――
俺と嵩鳥が前もって担任からの連絡で呼び出されたのは生徒会近くにある空き教室で、そこには全学年全クラスの学級委員が集まっていた。
各クラスから二人も集まれば三十人は座れる机椅子も埋まり始め、集合時間の午後三時半教壇に――
「今日集まってもらったのはほかでもありません!」
……教壇に誰かいるっぽいのに見えない、よく見れば頭の先は見えているけども。
もしかすればこの学校でも時折噂されているロリ生徒会長でありお飾りであり実質権力は書記や副会長が握っているという傀儡マスコット会長葉桜アスカその人なのだろうか。
「急きょこの時期に体育祭を行うことが決まりましたぁ!」
教卓によって容姿が隠された会長はそんなことを言い放ったのだった。
もちろんそれには各クラス学級委員も動揺を見せる、それもそのはず――
「この学校で行う体育祭は基本的に秋でしたがぁ……シナリオイベントの都合でそうなりました!」
なにいってんだこの人。
「いや正直ねストーリーの盛り上がりイベントが文化祭と被るんだよね。うーん文化祭と体育祭で祭りが被ってしまった」
ストーリーってなんだよ! 盛り上がりイベントってなんだよ! そういえばこの世界ギャルゲーハイブリッド世界でしたね!
時々忘れかけるけども、だからって会長がなんで……というか会長なんで知ってんの、そっち側の人間なの。
「だからほぼ三週間後の六月十二日に体育祭やるんでよろしく!」
「……ということで、体育祭資料を配るので次のロングホームルームに種目決めをしてください」
好き勝手言ってようやく姿を現したロリ会長が言い切ったかのような満更でない表情で去っていくのと同時に、黒髪美人の生徒会書記こと暁知沙さんが資料を配り始めるのだった――
ちなみにロングホームルームがあるのは月曜であり、今日から一週間後であった。
……いや、色々と無茶ぶりじゃねえ!?
* *
五月三十一日
一応クラスに予告はしていたものの訪れた種目決めの日である。
ちなみに渡された資料は完璧なものだったとはいえ、以降の生徒会からのフォローは一切なくロングホームルームを迎えた。
……どうにかこの時間に決めないと、いよいよ体育祭の練習時間がなくなってしまうだけに深刻だ。
俺は資料を見ながら種目を黒板に書きだしていく書記代行で、進行は嵩鳥が行うようだ。
一方の担任は椅子に座ってイビキをかいて眠りこけている……PTAあたりに告発すれば職務放棄でこの担任の給料減らしとか出来ねえかな。
「ということで体育祭種目を決めます。はじめに二人三脚ですが――」
しかし嵩鳥、何年間も委員長やっているだけあって進行が様になっていて頼もしい。
これならとんとん拍子に決まっていきそうなそんな気がして、俺はチョークを強く持つ。
「例えば私と下之君で一組、のように――」
「え」
そんな強く持っていたチョークを一瞬で奪い取ったかと思えば、二人三脚の欄に俺と嵩鳥の名前を書き知るしはじめた嵩鳥がいた。
そのナチュラルでありながらも強引なやり方に反論する者がいる――
「異議あり!」
「はい、巳原さん」
「例えばと言っておきながら委員長とユウジが組むのを確定事項のように扱っているのはなぜですかい!?」
「それは――」
「それは?」
それは……と息を吸いこんでおおよそ五秒……十秒……十五秒、いくらなんでも溜め過ぎだ嵩鳥さっさと言ってくれ。
「委員長特権ですが?」
やばい、結果出てきたのは清々しいまでの職権濫用だ。
「そ、そういうのどうかと思う!」
「ユキさんに同意です、ユウジ様と組むのはわた………委員長は厳正であり中立であるべきかと思います」
委員長特権と言い切った嵩鳥に反論するユキと姫城さん。
……当事者の俺としてはなんとも言えないが、やっぱり公平性に欠けている気がしないでもない。
さて嵩鳥、どう返す?
「聞く耳持ちません、委員長となった以上私がルールです」
恐怖政治が始まっていた。
あ、これトントン拍子の種目決めは諦めた方が良さそう。
「な……! ここはくじ引きにすべきだよ!」
「そうです、でなければジャンケンで決めましょう」
「ダメです、決定事項です。そもそも私と下之君が二人三脚で組むのだけは既に生徒会に提出しておりますし」
「え」
思わず声が出てしまう俺の動揺。
さすが嵩鳥きたない! というかいつの間に、そもそもそんな個人の申請通るものなの? 生徒会役員泣かせだよ、主に姉貴が可愛そう。
「……いいでしょう、ならば生徒会に訂正を求めるべく行きましょう」
「私も居っしょに行くよマイ!」
「アタシもいくぜい」
「ふふ……委員長の私も見くびられたものですね、面白い! 握りつぶしてくれます」
あ、だめだ大事になってきてキャットファイト寸前だ。
当事者だけど俺は見ざる聞かざる参加せざるを……参加しないを決め込むこととして、種目決めを進行させることとする。
「えー、とりあえず借り物競争の方を決めます。参加したい人」
「アタシそれやってみたい」「なんか資料見る限りは面白そうだしやってみようかな」「モテ男下之死ね」「ハゲろ」
「っと福島と愛坂……あ、死ねはやめようよ、俺が傷つくよ」
あと地味に十数年後効いてきそうな呪いはやめてくだせえ。
こうしてロングホームルーム内で種目決めは終わらず、そのまま次の国語の授業を半分潰してようやく決まったのだった……主に俺の進行で。
「……はぁはぁ……なかなかやりますね皆さん」
「嵩鳥さんこそ、今回だけは譲りましょう。次はないと思ってください」
「あー、悔しいけど認めるよ」
「しゃーなしだな」
女子勢激闘のあと、何故か息を切らしている嵩鳥と、負けたのに清々しい表情をした姫城さんとユキとユイがそこには居た。
とりあえず嵩鳥のゴリ押しで、俺と嵩鳥の二人三脚は決まったらしい。
いや正直、おっかなくてまったく干渉できなかったけども俺にも言わせてほしい――
俺の意思は……?
今月更新ギリギリセウト。
訂正:
委員長→嵩鳥呼びへ