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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第八章 ※独占禁止法は適応されませんでした。
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第169~173話 √1-23 ※独占禁止法は適応されませんでした。



12月17日



 放課後。

 授業終わりの毎にストーブへと人が集まった光景も今日は見おさめ。

 クラスメイトはストーブで体を温めると、男子の場合は保温をするがごとくに服へ熱気を送り込み、そのままさっさと下校する。

 俺もストーブにたかっていたが、そろそろだなと思いマイへと声をかけた。


「マ、マイ」

「はい?」

「あのさー」

「はい」



「クリスマスイブ一緒にどうだ?」



「え、はいっ!」

「クリスマス、マイと一緒に過ごしたいんだよな」

「はい! もちろんです! 既に3年前から24日のクリスマスイブは空けてあります!」

「え、そう? じゃあ、オーケーってことでいいんかな?」

「はいっ! 楽しみですっ!」


 そして自然と二人手を繋いで教室を出る。

 何故かマイと手を繋いでいるとストーブよりも心から温まれるから不思議だ。



* *



一一月ニ九日



「(どういたしましょうか……)」


   

 今からほぼ一ヵ月後には、大きなイベントがあります。

 あ、ユウジ様とのそれぞれのデートは個人的に大・大イベントですが、一般的な話でも私にとってもなイベントです。

 家でぼんやりと夕方のワイドショーを見ていると改めて思いました


『今年のクリスマスまで一ヵ月を切り、クリスマス商戦に備えた各企業が――』


 そう、クリスマスです。

 好きな相手が居て、それも付き合ってる方が居るのならその方と時間を共にしたい恒例行事です。


「(……クリスマスだからという訳ではありませんが)」


 とにかくユウジ様と多くの時間を共にしたいのです! クリスマスデートとなれば……予想共有時間は午前9時から午後9時と――12時間!

 1日の半分の時間を二人で共に出来ることを考えてしまうと嬉しさのあまり紅いスイートピーを熱唱してしまいそうです。

 毎年おじいちゃんとおばあちゃんとで過ごしていましたけれど……今年はユウジ様というお方がいますからね。

 おじいちゃん、おばあちゃん。とりあえず今年はゴメンなさい。これだけは譲れないんです、お願いします。


「(出来れば、出来ればです! クリスマスの締めくくりにキスなど出来たら……)」


 嬉しさのあまりその後は回想を繰り返してしまいそう――あ、いつものことでしたね。

 ……最高のシチュエーションの為にお預けですね、ああ、はやくクリスマスにならないかなあ。



12月10日



 私はクリスマスにユウジ様を誘おうと決めていました。2ヵ月前からもです。

 何十パターンのデートコースを考え居ました。例えば映画か公園かゲームセンターなどを色々組み合わせていたりします――

 でも私は情けないです……テスト期間のせいか、最初は話す機会も有りませんでした。

 そして言いだせなくなるような、でも私にとっては全くもって素晴らしい事態が起こったのです。


『あのさ、マイ。今日から一緒に帰らないか?』


『えっ!』


 そのユウジ様の仰る意味が一時理解出来ました。それ程に私にとっては耳を疑うことだったのです。


『それはどういう――』

『ちょっと商店街内でバイトし始めてな、その店までってことなんだが……ダメか?』

『ダメなんかじゃありません! むしろ良いです! というか神様ありがとうございます!』


 前々から運に見放され神なんてものは疫病神しかいないものとばかり思っていましたが、居るものなのですね!

 神様万歳です。ユウジ様大好きです!


 と、放課後デートが始まったのです! それもほぼ毎日! ああっ、幸せ! 

 今度こそ「私、死期が近づいてるのかな……」なんて思ったりもしてしまいましたが、そんなことはありません!

 ユウジ様の隣に居ることで受け取れるユウジ様エネルギーのおかげで元気ピンピンです!


 ユウジ様と共にする下校……色々のお話をしました、というか今まで”ユウジ様との会話”を想定したマニュアルを使う時がきました!

 マニュアルといっても授業中や電車の中で書き溜めた色々な会話内容なのですが、会話が弾みに弾むのです!

 優先順位的に後ろでは完全に無いのですが……つい言いだす機会を失ってしまい、ダラダラと話せていませんでした。

 クリスマスも大事ですが、共に下校する時間もとにかく貴重ですから! 後悔はしているようでしていません!

 いや、でも言えないのは流石にユウジ様へのお気持ちが弱いようにも見えますし……ああ、なんてひどい女なのでしょうか、私は!

 言いだそうとしても、口は言う事を聞かないのです……は、はずかしくとも、言わなきゃいけないのに――

 でもおかげ大きくユウジ様との仲が縮まりました! ……手を繋げだんです。そう、ユウジ様とお手を!

 ああ、嬉しい! 家に帰ってその繋いだ手を何度頬ずりしたことか! 風邪の季節なのに手を洗えないなんて……嬉しい悲鳴です。

 それもある日から毎日! ……こんなに幸せで良いのでしょうか。



一二月一七日


 

 ……私は情けないです。手を繋げたことに浮かれて、クリスマスのことを言い出せずにいました。

 このままではあっという間にクリスマスが訪れてしまいます……ダメです! 今年はユウジ様とっ!

 言いだすタイミングを掴めぬまま放課後に……こんなヘタレ女、いっそ死んだ方がよいのかもしれません。 

 そんな風に自分を責めまくっていると、ユウジ様は私に言ったのです。


「マ、マイ」

「はい?」


 思わず聞き返しました。ユウジ様の照れ表情をゲットしました! ……けれどもなぜそんな表情を?

 まるで、何か重要なことを告白するような……! もしかして、もしかしてもしかしてもしかして!

 残念過ぎる私に愛想を尽かして、フ、フフフフラれてしまうのでしょうか! そんなユウジ様の告白に内心怯えていました。


「あのさー」

「はい」



「クリスマスイブ一緒にどうだ?」



「え、はいっ!」

 

 とにかく即答しました。そしてユウジ様の仰ったことを理解していきます……クリスマスを一緒に?

 そ、それは……!


「クリスマス、マイと一緒に過ごしたいんだよな」


 デ、デートですか! それもクリスマスデートのお誘い!


「はい! もちろんです! 既に3年前から24日のクリスマスイブは空けてあります!」


 嘘じゃないんです! いつもはおじいちゃんやおばあちゃんと一緒にいますけど!

 毎年予定もなく、家で過ごしていただけですから! でも、ごめんなさい! 


「え、そう? じゃあ、オーケーってことでいいんかな?」


 オーケーどころか、こちらからお願いします。後生です、心の底から宜しくお願い致します!


「はいっ! 楽しみですっ!」


 楽しみ、なんて言葉で表現できないほど内心は舞い上がってます。ハイになってます、ハイに!

 でも、ユウジ様も困らせてもいけませんし……心の中だけで。心の中だけです!

 その時のどれだけ嬉しかったことかユウジ様からお誘い頂けたこと。心の底から喜びました

 でも少しわがままを言えるなら――そう思いながら私とユウジ様は教室を出ました。手を繋いでで、です!



* *



一二月ニ〇日(月)


 もう曜日とかは正直気にしないでいいかもしれない。

 土日挟んで、今日やっとのこと今年の学業が終了する。

 正直先週の金曜に終業式と通信簿渡しを終わらせておけば冬休みが土日含めて実質3日間増えるのに、と大多数の生徒が思うとのこと。

 しかし俺は例外であった。学校に行けば必ず下校がある(?)つまりはマイとの放課後デートが何の理由付けも無しに出来るということ!

 いや、まあ。学校ナシでも誘ってもいいのだけども……いや、正直あと4日でアレじゃん。アレ。


 通信簿の数字は結構波が有ったり無かったり。まあ、全部平凡で10段階の5と6を彷徨うだけにとどまった。

 しかしユイやマイの通信簿に並ぶ”9”とか”10”俺の通信簿に過去一度も露わしていない数字とか目の当たりにすると、なんというか虚しくなる。

 マサヒロは1学期中間はやらかしたのもあって「3」だった国語だが、今回はあまり変わらず「難しくなった」とのことで結局「4」だったそうな。

 その他クラスメイトはその通信簿を見て一喜一憂してたり、ガクブルだったり、世界の中心で愛を叫んでいたりして終業日まで相変わらずこのクラスは賑やかだった。

 愛坂は「あちゃー、保健だけ10だよぉー」と言っていたので「ムッ●リーニィィィ」と呼んでおいた。

 「あんなテストなら私も召喚●争で優位に立てるのに!」とネタ理解の上で返答してきたのには少し驚いたような驚かないような。


 コートを見に包み、今日もバイト――の前に生徒会。マイには悪いので先に帰って貰った……無念。

 生徒会の年末大掃除を数日間に及んでやったのにもかかわらず、懐かしい品々に作業進まず。終業日までなだれ込むという体たらく。

 やっぱ生徒会だなーとおもいつつも、なんとか切り上げ。バイトへと向かった。

 バイトでは「下之くん、ろりこんにちは」と凄い挨拶でお出迎え「店長、趣味が挨拶まで滲みでてます」「はっ、つい!」

 やっぱ店長だなーとおもいつつも、ユイが着替えてからやってきたりして今日のバイトは楽しくかつ品だしとかでしっかり働いて終了となった。

 家に帰ると「ユウくーん、おかえりー」「ただいま」「私にする?」「……はい?」「だ・か・ら! お風呂にする? ご飯にする? わ――」

 「A.部屋に戻る」「ああん、ユウくん! そんな別の選択肢はダメだよー!」「姉貴もそんな選択肢はダメだぞ?」「あ、ユウくんが優しく怒ってくれた……」

 やっぱ姉貴だなー、とおもいつつも半ば治らないブラコンに呆れながら外よりはマシレベルな2階へのひんやりした階段を上って行く。

 部屋に戻ると「おお、ユウジ来たか」「またお前か」「その台詞も今年は38回聞いた」「それほど不法侵入したということだな」「不法侵入も愛故じゃ」

 やっぱ桐だなー、とおもいつつもいつもの要領で首根っこ掴むと、部屋の外へ放り出した。廊下は寒いだろうからはんてんも一応渡したけど。

 パソコンを立ち上げインターネットブラウザを熟練の手さばきで起動してグーグルさんを発動。地味にデートプランを再考中。

 「どうしたものかー」もはやパズルであるが、藍浜はあまりスポットが無いのが不幸中の幸いなのかもしれない。

 「マイが喜んでくれる場所ねえ……」……と考えると、ナルシストではないが思いだす「ユウジ様がいればいいんです(おおよそそんな感じ)」

 じゃあ、公園巡りしようZE! なんてこんな寒空の下とか、ネロとパトラッシュの末路にする気かと色々な人から怒られそうなので。一応はちゃんと考えている。

 まあぶっちゃけ「俺もマイがいればいいし……」……言わせんなよはずかしい。そして背後から「ぷくく」と聞きなれた笑い声。

 「その声はッ……ユイか! ユイなのか!」「おうよ、ぷっぷくくく」「わしもおるぞ」まだ居たのかよ。そしてユイにも聞かれたのかよ!

 「俺……マイがいればいいし、マジマイアイラビュー」「誰だよそれ」「要約したユウジ」「そんなチャラチャラしたように聞こえるなら、俺大ショックだわ」

 「……未来のユウジ?」「最悪の予言だな」「大丈夫じゃ、チャラくなっても引き取り手は数多じゃ……わ、わしとか」「いやならねえよ」

 「未来少年ユウジ」「こらこら」「なんか、名作にありそうじゃな! 映画化決定!」「気がはええどころの話じゃねえ」

 「べ、べつにユウジのハズカシイ台詞を聞きたかったわけじゃないんだからね!」「いや、ここでツンデレテンプレートは合わない」「べ、べじゅに――」「無理すんな」

 「小説のネタが出来たところでさらばだユウジ」「なにしに扉前まで来てたんだよ」「愛故じゃ!」「どうせ開けて貰えるとでも思ったんだろうが、開けるつもりはない。なぜなら開けると寒い」

 「わしと寒さを天秤にかけるなんて……ひ、ひどい」「だからそのはんてん持って部屋に戻ってろ。後で返せな」「……仕方ないこれで楽しむか」「汚すなよ」「なにもせんわ!」

 やっぱユイと桐のコンビは鉄板だなー……悪い意味で、とおもいつつ――って、何度繰り返すんだよこのフレーズ。

 

 そうしてクリスマスも数日前に迫った夜は更けていくのだった。



一二月ニ三日



 その日、俺はバイトに出ていた。

 コート必須で白い息を吐きながら冬休みを迎えた少しばかりいつもより明るく賑やかな冬休み一色な藍浜商店街を歩いていた。

 商売人にとって何かと呼び寄せる口実であり、今年では年末商戦を最後としその前の商売人の腕の見せ所でもある。

 そう、恋人から友人に家族までもが何だかんだで体験するであろうクリスマスと言うイベントだ。

 宗教にあまり執着のない日本人は24日にキリストの誕生祭ことクリスマス、神社まで出向きお参りをする仏教方面な翌年1日という。

 多宗でない外国から見たら毎年宗教を二股とか何考えし腐ってんだとか思われていそうだが。

 宗教間争いで血が流れるなんて事例とは遠くに遠すぎて対岸の火事どころか名前も知らない町でのボヤ騒ぎレベルがおおよそな日本人としては――

 「ケーキ食ってとりあえず祝っとけばいいんじゃね?」が俺含めての大衆の意見なんじゃないかなあと思う。

 あとは行事にカッコつけて好きなあの子とwithデートしてしまう感じだろうか。そして俺は前述の好きなあの子とフォーリンラブな訳で。

 クリスマスの1週間前に誘うことに成功し見事オーケーサインを貰った。そりゃあ、嬉しいってもんですよ。

 バイトにも熱が入り「やあユユユギ君、元気いいねえ、何かいいことでもあったのかい?」と店長に聞かれたので「原型なくなりかけてんじゃないすかー」と突っ込みをいれつつも頷いた。

 

 そうして冬休みかつ祝日故に混雑を極める商店街の一角のゲームショップは当社比3.5倍で繁盛していた。

 マニアさんからサラリーマンに子供の方々まで訪れる当店はクリスマス前日での駆け込み購入を狙ってゲームを大量仕入れ。

 売れるに売れて大忙しで、店員を増員した意味が大きいことを最近知った。……まあ今までも普通に忙しい時は忙しかったけども。

 ちなみに俺とユイと店長以外にも店員が居る。久原さんといって俺とユイの居ない日に来ているらしく、成人でなんとも締まった顔つきをする20代前半の男性だ。

 店長曰く働き者でかなりアニメ・ゲームに精通してるとのこと。ユイや店長ほどには話さないが、たまに放送中にアニメを話題にあげたりして会話している。


 そうして営業終了時間である9時まで迫った時に「下之くん、巳原くん! お疲れさま、上がってくれー」二人同じく「はーい」と返事をして。

 「あ、ちょっとまって……あ、久原くんちょっと頼むー」「わかりましたー」と久原さんにレジを任せて着替えに店奥へ行こうとした俺らを呼びとめた。

 「はい、1ヵ月おつかれさん。今月分の給料」「あ、ありがとうございます」少しその給料が気になっていたことでそわそわしていたのが分かったのか、俺に第一に渡してくれた。

 「巳原くんも」「ありがとうございますー」ユイもグルグル眼鏡でどんな瞳をしているかは分からないが上機嫌にみえる。

 「それで、下之くんは明日は休みだっけか?」「はい、どうしても外せない――」「ちっちっ、言わないでいいぞ下之くん」「はぁ、店長」

 「巳原さんは明日来るんだっけ?」「夕方まで……独り者のクリスマスは寂しいからぬ」「分かるよ、分かるよ!」「……なんかすみません」

 「いやー、店の前までデートする彼女さんとクリスマスの夜を楽しんで来い」「ば、バレてたんすか!?」「それはバレるよ、ユウジ」

 「まー、下之くんもよく働いてるし、ご褒美ってことで」「あ、ありがとうございますっ」じゃあお疲れ~、と店長が笑顔で手を振りながら店内へと戻っていった。


 気遣って貰い給料袋の入った茶封筒をコートの右ポケットに突っ込むと外へと出る。店内とは打って変わっての天国と地獄。膨大な寒気が俺を襲撃してきてむっちゃ寒い。

 ユキでも――おっと、雪でも降るんじゃないかってほどに寒く薄暗く雲に包まれた灰色の空。その下を手をかじかませながら歩いて行く――

 しかし俺は商店街を抜け出していなかった。俺はまだ商店街に用事があった。そう、限界ギリギリでのプレゼント購入だ。

 以前からチラチラ外から店内を覗いたり、中に入ってみたりするアクセサリーショップがあった。

 

「まだ……あった」


 よかった、と安堵の息を漏らす。俺には既に目ぼしをつけている商品があったのだ。営業時間も予め調べておいて良かったと思う。閉まってたら洒落にならない。

 お目当てのものはピカピカに磨かれたガラスケースの中に特別製のケースを開いた状態で大切に展示されている。

 エメラルドで純銀が縁取られたクローバーのネックレス。落ちついた色合いで見ていると癒さたりする。

 俺が見て「いいな」と思ったのもあるが、マイにはこの落ちついた色合いが似合うかなー、なんてマイが喜ぶかは分からないが選んだ。

 悲しいことだがギャルゲとかを参考にするに指輪がプレゼントでも良さそうなものの、マイなだけあって曲解されそう……それにはちと早い。

 ピアスは俺が好かないという理由で回避すると、収納もラクで首にかけるだけなネックレスを選んだ……ってなんか変な選び方だな。

 値段が学生というのを考えると張るし、デート費用も合わせるとそれほど給料での余裕はない。 

 俺的には価値が必要ではないけれども、働いてマイの為に買うことに意味があった。だから少しハードルを上げてもいたのだ。


「お買い上げありがとうございましたー」


 特別製のケースに入れられた上で包装紙で包みこみ、白い光沢を放つ店のロゴ入り紙袋に入れて大切に抱えながら店内を後にする。

 相変わらずさっむい。さきほどまで手をポケットに突っこんでいただけまだマシだったが、今は外に出ていて冷えてくるのを感じる。

 

 家に帰る頃には完全に真っ暗で、姉貴がそろそろ心配で携帯にコールしてきそうだ。

 時折吹く風に体を少しばかりううと震えさせながら帰路へとつく。

 

 家に入って「ただいまー」と言うと「おかえりー、ユウくーん」とキッチンから声が聞こえる。

 今タイミングを図って夕食をつくってくれたのかもしれないが、まずは……「少し経ってから下りるわ」と自室へと向かう。

 部屋に付き、プレゼントを卓上においてまたまた安堵の息を漏らすと「ブルルブルル」と携帯の着信音とバイブレーションの鳴る音が聞こえる。

 どこかどこかと体ををまさぐるがコートの中が発信元だと気付き、慌てて携帯を開いて通話ボタンを押した。


「もしもし」

「あ、ユウジ様!」


 落ちついて画面を見ると、そこに踊るのは”姫城 舞”の文字。

 さて、いつ電話番号など知ったかと言えば。最近のことで「不便だから連絡先交換しようか」「はいっ」と嬉しそうに交換……電話番号だけを。

 「ん? メールはいい?」「はい! メールというのものは便利で少々惜しいですが、ユウジ様とは文字を通してでなく声でお話したいですから」

 そのマイの理由に少しばかりドキッっとするが「それに私なんかにメールアドレス渡したら、四六時中しちゃいますよ?」と、最近自己分析が上手になったなー、とマイを見て思う。

 ということで、自制するようにメールアドレスの件は断られた。


「明日の件か?」

「はい」

「集合場所は商店街高校側入り口前で、集合時間は午前9時……でいいんだよな?」

「はい、それで合ってるんですが……」

「?」


「あ、あの! ユウジ様にお願いしたいことがありまして!」


 なんだろうか。もしかしてデートコースのことだろうか。

 これでも一時は徹夜しながら考えたこともあり、様々なパターンを作りだし、最終的なルートが決まっていた。

 

「なに?」

「あの……ユウジ様を私がお連れしたいのです」

「?」

「明日だけは、ユウジ様を連れまわしたいのです」

「連れまわす? 俺を?」

「はい! ……ダメでしょうか、出過ぎたマネでしょうか」

「とんでもない! いやー、マイに連れまわして貰えるなら嬉しいな~」


 今までのデートコース選択に割いた時間がボロボロ崩れ去って行く音が聞こえるが、マイ主導デートとあればそんなの関係ねえ。些細なことだ。

 生意気に今まで連れまわしていたこともあってか、クリスマスという特別な日にそんなことをしてくれるのはなんとも新鮮だ。

 

「ほ、本当ですか!?」

「ああ、期待していいか?」

「えーっと、はい! 一生懸命頑張ります!」


 あー、なんか可愛いなあ! そして嬉しい! 俺の為に一生懸命っ――いいねっ!


「マイ、じゃあ明日はよろしくお願いします」

「あ、あああこちらこそ!」


 テンパるマイかわええー。


「ではまた明日」

「ああ、また明日」


 と俺もマイも名残惜しそうに通話を終わらせた。明日が楽しみすぎる。

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