第600話 √c-14 ずっと近くに居た私と、世界のこと
祝600話です!
と言っても何もありませんし、内容も平常運行ではありますが
600話なんてアニメだと軽く12話1クール換算だと50クール分です、12年半の放送期間です
もう立派な長寿アニメですよこの話数は
とまぁ、出来れば年内の完全な完結を目指して頑張ります
こうしてようやくと言いますか、何年越しか分かりませんが学生時代に下之君と友達になれたのです。
……確かに段階飛ばして交際というのは飛びすぎでしたね、下之君視点なら尚更ですが。
「そういえば嵩鳥ってなんで委員長やってるんだ? それも小学校? の頃から何年も」
「ああ、それはですね――」
さりげなく私のことを名字で読む下之君に内心感動しつつ……未来の下之君はもちろんノーカンです、この時代のこの容姿の下之君にそう呼んでもらう事に意味があるのです!
下之君のことならほぼ知ってしまっている私の一方で、私のことを知らないが故に友達からと下之君が言ったのを思うと不公平です、フェアじゃありませんから。
だからこそあくまでも”友達”としての日常会話としてお話させていただきましょう。
* *
私嵩鳥マナカ、真菜香と書きます。
由来はなんでしょう、聞いたことはありませんが真中のようにまっすぐ育ってほしい……自分で言ってて意味が分からなくなってくるのでこの辺にしておきましょうか。
藍浜産まれの藍浜育ちの根っからの藍浜っ子、おそらくそれは下之君と同じでしょう。
実は私が”見て”知ったのですが同じ幼稚園でいくらか下之君と会話も果たしているのですが。
もちろん私も覚えていないので下之君も当然覚えていないのです。
それから小学校の頃も六年間、どうしてそこまでの偶然なのかは分かりませんが同じクラスだったのを再度”見て”確認しました。
ということで最低でも十年間は同じクラスということになりますね、そこまで時間があってもどうして下之君と友達に至るまで十年かかったというと――
ぶっちゃけて言うと、別に下之君のことはなんとも思っていなかったのです。
当時は別にギャルゲーなどにも目覚めていない、妹と幼馴染に囲まれたリア充にしてアウトドア派だった下之君に対して。
私は小学校の頃からとにかくがり勉、勉強が好きというよりも物を書くことが好きで、作文のコンテストでは何回も賞をもらいました(ドヤ顔)。
というわけで同じクラスなのに趣味は違うし、下之君は妹と幼馴染にガードされていたので自然と交わることはなかったのです。
ある意味妹と幼馴染が離れた瞬間はチャンスでした、私と趣味も合いそうでしたし。
しかしその枠にはすっぽりとオープンオタクな巳原さんと高橋さんが入ることとなり……一応隠れオタク的な私が入る隙はなくなってしまったのです。
それでもその頃からちょくちょくと下之君に意識を向けるようになって、本格的に向けることになったのが今の高校一年――
っと、今は未来の話はいいのです。
それで私はと言うと、趣味は読者やもの書き、映画とか見るのも好きですね。
そして母親の影響でギャルゲーを幼い頃から嗜み、それに付随するようにアニメもマンガもオタク寄りなほどには触れていました。
動物系ゲームが流行していた時もラブコメ系ギャルゲーをやっていて、ラ●アンドベリーの頃もSF系ギャルゲーでした。
私一応女の子ですけれど、テキストとCGで表現されているだけなのに主人公から見つめているヒロイン達が可愛くて仕方なかったのです。
かといって私はそのヒロインになりたいかと言うとそうではなく、どちらかというと幸せそうな主人公とヒロインの関係を眺めているのが好きだったのでした。
ギャルゲーの選択肢を間違えて振られたり、バッドエンドを迎えた日には心が折れてリアルでも不調になってしまうほどのめりこんでいたのを覚えています。
好きな食べ物はなんでしょうか、意外とジャンキーなものが好きですね。
甘い物よりもジャンキー! なカップ麺とかファーストフードに惹かれてしまいます。
……なので、体重管理にかなり気を使ってはいるのですが時々油断すると大変なことになります。
というよりも大変な時期に小学生の半ばはなっていたので、より下之君と接触がなかったのもあるのでしょう。
私の交友関係は広く浅い具合で、親友と呼べるのは小学校時代からの女友達数人です。
今もちょくちょくクラスは違えどメールしたり電話したりしています、私だって女子ですから休日にその親友たちと集まって話すこともあります。
ちなみにその親友は私のギャルゲー好きに関しても理解はあります「マナは好きだねえ」「ブレないな」などと受け流す具合です。
私も布教するつもりはなく、その親友たちも別段興味を示しているわけでもないので、あくまで私がそういう人間なのを知っているだけです。
それでも今の今まで付き合いが続いているのはありがたいものです。
もちろん私が以前話した”友達だと思っていた”人たちとは別でした。
そしてまあ……その、ここまでギャルゲー好きの普通の女の子の説明ではあったのですが。
肝心の”見えてしまう”力についてですね。
その力に目覚めたというよりも、自覚したのがその時だったのでしょう。
小学生の頃、ふと話している相手の考えていることが手に取るように分かってしまって。
いわゆるその相手が次に言うことをあまりに正確に”予測”出来てしまったのです。
最初は察しがいいだけなんだろうと思っていましたが、年を経るごとに私に流れ込んでくる情報量は増加の一途をたどりました。
当初は相手の”次に言う言葉”だったのが”今考えていること”なども加わっていき”その相手の隠していること”や”その相手に関わる人や物”なども分かってしまいました。
私なりの考え方ではあるのですが――
例えば人を小説の一つのキャラクターで描写するにあたり、それが語り部も兼ねるなら内情描写も、そして付随する設定なども記す必要があります。
私が自分の目で見ると、その人間の構成される情報がすべて一度小説風に変換されたのち、再度私が認識する際にはそれを崩した箇条書きの情報だけが私には残る……といったところでしょうか。
メガネを外して私がその人を見ると「あ、○○君が好きなんだな」などという心に秘める気持ちが分かってしまったり、あとは「××さんの妹は背が高いんだ」などという容姿などに至る情報も得ることができてしまうのです。
しかし情報を好きなように取り出せることはなく、あまりにも無差別的な情報が私に流れ込んでくるのです。
無差別でジャンルも問わなくても、脳内でその人=情報という紐づけだけは完璧なのでそこだけは間違うことがないというのも不思議な話です。
なので最初に見た時には「下之君は妹のミユさんが心配で心配でたまらない」といった情報と、次に見た時には「スクール水着が実は気になっている」といった情報が入ってきたり、そして「下之家は母子家庭ながらも姉のミナ先輩が家事全般をやっている」といった風に時系列も関連性も何もなく入り込んでくるのです。
そのこれまでに見てきた際の蓄積で、溜まった情報を繋ぎ合わせて私の中で”本当の下之君象”を形作るに至るのです。
人間の脳の容量的にどうなのか分かりませんが、そんな一人に対しての膨大な情報を知りえてしまうのがメガネをかけるまでの私だったのです。
* *
「小学一年の頃にね、誰にも委員長に立候補する人がいなくて。クソ担任が『早く決まらないと帰れないぞ~』って脅しかけてきたもんだから、もう面倒だから私でいいやと」
「そうだったのか」
「それからはなし崩し的にね、まぁ委員長としてちょくちょく壇上に立って少し高いところからクラスメイトを見下ろすのが気持ちいいのもあるけど」
「……壇上そんな高くないし誤差じゃね」
それと、私が”見た”ことで何か口を滑らせて際の誤魔化し方として。
「なんでもは知らないわよ、知っていることだけ」……とは言わずに「委員長パワーってやつかな」などと言う為でもあったり。
「てっきり何年もやってるから嵩鳥が好きなもんだと」
「まぁ嫌いではないけどね、面倒だとは思ってるけど。まぁでも歴戦の委員長を経験してきた私以外のどこの馬の骨とも分からない人に委員長やらせるぐらいなら私がやるかな」
「い、意識がたけえ」
「それに内申的にはポイント高そうだしね、まぁあと私が委員長じゃなくなったらクラスメイトに”元委員長”って言われるのなんかシャクだしね」
「いや委員長じゃなかったら嵩鳥って呼ぶんじゃ……」
ところがどっこい、委員長でなくても委員長っぽいand元委員長なこともあって、同窓会で委員長呼ばわりされたのですよ。
あ、それは未来の話であってね。
「しかし十年委員長か……すげえな嵩鳥は」
「そう? もっと褒めてもいいのよ」
「よっ! 万年委員長」
「それ全く褒めてないよね」
そんな友達らしい会話をしながら私と下之君の時間は過ぎていくのです。
何年も夢見た光景が今まさに繰り広げられていたのでした。