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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十七章 ずっと近くに居た私と、世界のこと
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第596話 √c-10 ずっと近くに居た私と、世界のこと

== ==



「どうしてくれるんですかー!」


 私は過去から意識を戻して――君……はもういいですね。

 濁すことなく、○○という呼び方でもなく――タイムマシンを作り・二次元世界に意識を投影できるゲーム……そして現実に二次元を投影できるゲームを開発したかつての学生時代のクラスメイトである下之君に向かって私は抗議しました。


「いやー、おかしいな。嵩鳥の書いたあの小説、かなりギャルゲー向きだと思ったのに」

「……私としても予想外です、これは売れると思ったのですけど」


 いやぁ、確かに売れたことには売れたのです。

 あまりの前評判の良さに予約完売、発売初日は瞬殺だったほどです、後方がよっぽど優秀だったのでしょう。

 実際原画の出来は良く、音楽なども良く、私の書いたシナリオも……そこまで悪くないはずだったのです。



「私の処女作がクソゲーになっちゃったんですよ!」



 結果的に言えば、私のシナリオをどうにか小細工をして親の名義を実質借り、組み込んだギャルゲーは――クソゲーになってしまわれました。

 ギャルゲーのタイトルは『Ruriiro Days ~キャベツとヤシガニ~』というもので、実はこのタイトルの時点でおかしいです。

 少なくとも私のシナリオ中にはキャベツは料理の描写で出てくることがあってもメインテーマではなく、ヤシガニに関してはヤの字も出て来ません。


 更にはジャンルが『恋愛・泣き・アクション・ファンタジー・RPG・パズル』となっており。

 私は恋愛ラブコメを書いただけなのに、ギャルゲーになった途端にあらゆる要素が付加されています。

 地雷臭たっぷりで……もちろんその通りになります。


 そして私のシナリオ、随所に意図を外れた改変がなされていました。

 それも仕方のないことだとは思うのです、まだ私がプロになる前の学生時代に書き溜めた文章なのですから、多少の手直しは必要不可欠でしょう。 

 それにしても……! はい、まず一つ一つ文句を言っていきましょう。


 

 まずユキシナリオに関して、本来ユキの”交通事故”エピソードはストーリーが進行したシナリオ中盤に存在するものなのです。

 何を思ったか共通ルートのそれも最序盤に配置されました、そして選択を誤るとユキが事故死するというものとなっていました。

 おかしいでしょう! 普通にギャルゲー始めて選択肢を間違えると、ほぼ即ゲームオーバーって! プレイヤーのやる気を削ぐだけでしょうに!


 そしてマイシナリオ、異常な選択肢の量に、一度選択肢を間違えるとゲームオーバー直行という遊びの無い構成もダメ過ぎました。

 更にユキルートも一部共通ルートとしているために、もちろんユキルートでの共通ルートで選択肢を間違えるとゲームオーバーです。

 こまめにセーブをしていない場合にはもちろん序盤まで戻される仕様です、単純なノベルゲーなのにクソすぎる!


 ホニさんシナリオに関してはほぼオリジナルで、私が用意したホニさんのキャラクターのプロットのみです。

 ここでジャンルのアクションが登場します、私が実際にプレイしてみましたが操作性も決して良くは有りません。

 おそらくは制作会社の他のゲームの”アクションモノ”に用意されていたプログラムを流用したのでしょう。

 難易度も基本が鬼畜仕様であり、バトルでパーティメンバーにホニさんが居て使うことができるのですが……一度でもホニさんに能力を使わせるとハッピーエンドを迎えることができません。

 というかハッピーエンドでもバッドエンドでもない中途半端なエンディングを迎えるしかありえなくなるのです。

 もちろんバトルで敵に敗北した場合もそのままバッドエンドです、そしてその敵が恐ろしく強く、主人公をレベルマックスで能力フルカンストにしないとほぼほぼ勝てないほどです。

 

 ホニさんと共通ルートとされたヨリルートも同じくアクション中心のルートで操作性も鬼畜仕様も同様です。

 更には選択肢を間違えるとバッドエンド直行、場合によっては世界滅亡エンドを迎えます。


 ここまでで仮にギャルゲー的にシナリオが良かったとしてもシステムがダメすぎて、まったく頭に入りません!

 私もプレイする際は攻略サイト通りでしたので、そのサイトに情報を集めた猛者たちには頭が下がります。


 オルリス・コナツルートはなぜか私のシナリオにはないヒロインが生徒会役員にされて、オリジナルキャラが二人追加されます。

 そのオリジナルキャラ二人はどうやらまた制作会社が企画していた”生徒会モノ”の設定など活用したもののようです。

 まぁその生徒会自体はいいのですがオルリスルートでは何故かアイシアが婚約者になり、未来のオルリスの意識がやってくるようなぶっ飛んだシナリオに仕上げられました。

 一番改変や無茶なストーリー進行が無いのがコナツルートで、精々は生徒会役員設定にされたぐらいになっています。


 そしてアオルート、シナリオ自体はそこそこ評価されました。

 しかしここでジャンルの”パズル”が登場します。

 アオルートでの主人公との文通はプレイヤーが”複数の単語を組み合わせて手紙の文章を作る”するという面倒な仕様となっています。

 それもかなりシビアで、一単語でも足りなかったり余計だったりすると文通が終わりバッドエンドを迎えます。

 果てにはユーザーからの要望で公式HPに”正答”が公開されるなど、非常にグダグダです。

 いわゆる正答をコピペさえすればシナリオは殆ど改変されていないので、内容の評価が一番プレイヤーに届いたはずです。

 

 最後に桐ルートは誤字脱字が目立つ程度で、他のルートと比べると手が入っていません。

 


 こうして、話したルートの内。

 制作を一部外注に任せたのが、コナツルート・アオルート・桐ルートでした。

 皮肉にもその外注の下請け会社が担当したルートは大きく手が入らずにゲームの中では評判の良いルートとなったのです。 

 いや、本当を言えばその三ルートはシナリオを良く解釈してギャルゲーに落とし込めていました。

 ……アオルートのパズル要素も制作会社が取ってつけたものになるので、下請けに罪はありません。


 ちなみにその外注であり下請け会社のスタッフが、少しして『はーとふる☆でいずっ!』を制作しました。

 その私のシナリオをベースにギャルゲーに仕立ててくれた、シナリオライターがそのゲームのメインライターでもあったのです。

 はーとふるでいずが売れて評判もいいわけです。

 

 

 そんなこともあって、私の母親の脚本ネームバリューとキャラデザ原画の良さで購入したプレイヤーは酷い目に会うことになります。

 更に私が個別ルートであげた問題点以外にも、ローディングの多さ・長さ、フリーズの頻度、そして誤字脱字の多さが評判を落としていきました。

 のちに配布されたパッチも不完全なもので、仕舞にはしばらくしてルリキャベの制作会社はギャルゲー制作事業から撤退することとなります。

 

 そして現在二〇××年を迎える今になっても、ちょくちょくクソゲーの一つとして語られるキッカケになってしまいました。

 ……もっとも名義として使われた母親はプレイヤーからのバッシングで目が覚めたとかなんとかで、なんとスランプを脱却します。

 それ以降の母親シナリオライターのゲームは総じて評判が良く”スランプ時代のゴミ”やら”何かの間違い”とルリキャベは揶揄されることになりました。


「……ふ、不幸な事故だったな」

「他人事だと思ってー!」


 下之さん自分が主人公なのに他人事です、私としてはまったくもって腑に落ちません!


「ま、まぁ嵩鳥さん。一応これで布石は打てたんですよね?」

「……それは、はい。過去の下之君がこのゲームを手に取ることは確実だと思います」

「なら問題ないな。それにアイシアが昔の俺のパソコンに小細工をしてくれたから、あとは昔の俺が起動するのを待つのみだ」


 私が過去に意識を飛ばしている間にも、アイシアさんも過去に戻って下之君のパソコンに”現実とギャルゲーをハイブリッド”にさせる『ファーストワールド』ゲームプログラムを打ち込んできたようでした。


「はい、やってきましたよー……おまけも付けてありますが」

「……アイシア何やってきたんだ」

「それは秘密です」


 アイシアさんの言うおまけが気になりますが……これで私の仕事も終わりでしょう。


 私シナリオをベースとしたギャルゲーこと『ルリキャベ』を、過去の下之君が起動することがキーとなり『ファーストワールド』が展開。

 ファーストワールドによってギャルゲーの設定が現実に投影されて、晴れて過去の下之君は名実共に主人公となるのでしょう。。

 私たちの過去の街と、過去の下之君を選んで、一年間をループする世界を作り上げ”ファーストワールド”の実験場としました。

 そしてそんなファーストワールドによって生み出される”ギャルゲーと現実がハイブリッドになった世界”のゲームをこれから私たちでデバッグするのです

 このデバッグによるバグなどの修正によって、現在の下之君が作り出した現実投影ソフトウェアのファーストワールドが実用に値するか決まるのです――


「あ、嵩鳥。多分過去の俺だけじゃモノローグ足りないから嵩鳥も”ナレーション”としてやってほしいんだが頼めるか?」

「え……はい?」


 ……そして半ば強引にも私がナレーションをするに至ったのです。

 いや無理あるでしょう! そんなことこれまで全く聞いてない――



 == == 



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