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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十七章 ずっと近くに居た私と、世界のこと
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第588話 √c-2 ずっと近くに居た私と、世界のこと

== ==



 人の思う事が分かる、人の過去や未来を知れる、人の願いを感じ取れる。

 もしそれが本当に出来るならば、神だろう。

 そんな私は人を言葉巧みに煽動して、神を名乗って宗教のうまいこと教祖にでもなって一儲けできるかもしれない。

 しかし現実はというと、とにかくこの力は目障りでしかない。


 都合良く使えない力なんて邪魔でしかなく、見境なく自分の望んだようなものが見えるわけでもない――

 私のいつからか覚えてしまった特殊な能力は、欠陥でしかなかった。


 むしろ生活に支障を来した、仲の良かったと思っていた友人のまっ黒な心中を知ってしまうのはまだ良かった。

 時には歯止めが効かないほどの情報が目から耳から流れ込んできて脳を混乱させる。

 幻覚が見える時もあった、吐き気が収まらずに頭痛が数日続くこともあった。


 だからメガネという簡単な手段で、その能力を遮断できると知った時はどれほど嬉しかったことか。


 あれから視力も悪くないのに私はメガネをかけている。

 何も見えない世界は、何倍も何十倍もさっぱりとしていて心地が良かった。

 見えないことがこんなに、素晴らしいこととは。



 そんな私は、メガネをかけ始めてふと外した瞬間に――とある一人の男子生徒を見つめた。


 

 おそらくは小学校の頃もクラスが一緒だったのかもしれない。

 少女漫画なら運命の赤い糸で繋がれているようなロマンチックさがあるが、その男子とは殆ど接点がなかった。

 私はクラスの男女問わず話す方ではあった、メガネをかける前に身に着いた”人の心が見えてしまうことからの世渡りの良さ”話し相手には困らなかったと言える。

 もちろんその男子とも話す機会がないわけではなかったが、彼には親しい女子が二人ほどいた。


 一人は幼馴染らしく、もう一人は産まれたのが数か月違いの妹。

 その三人で仲良く話して、仲良く過ごしている姿が目に入った。

 彼らには見えない絆があった、きっとそれは――ある種の愛情が。


 メガネを外して、都合よく見えたのはその二人の彼に対する好意だった。

 そんな野暮なことも見えてしまう、人の心に意図せずとも土足で踏み入るようでいい気はしない。

 そして私がメガネを外して良く見つめるようになった彼は――その好意に気付くことは無かった。


 そんな彼の周囲に変化が訪れた。

 中学三年を迎えた春、彼の周りにその二人の女子の姿はなかった。

 

 しかし時間が経たずに一人の女子と男子が彼の周りには現れ始める。

 一人はグルグルメガネというどこで売っているのか分からないパーティグッズのようなメガネをかけた女子。

 もう一人は印象に残らない男子A。

 それでも彼ら三人は休み時間になるとアニメやマンガの話題で盛り上がっていた。


 彼の周りにはほぼ必ず誰かが居たのだ。

 もちろんその男女二人に関わらず――私以外にも彼を気にかける存在が何人も居たのを私は知っている。


 ある人は彼と親しい間柄になりたかったが、キッカケを逃し続けた。

 ある人は憧れ、彼を見て変わりたいと思っていた。

 ある人は彼と友達になりたかった。


 それ以外にも、クラス外でも彼を気にしている人は少なからずいたのを私は知っている。

 そう、彼は本当ならば色々な人に好かれていたのだ。

 しかし彼は気づかなかった、否気づけなかったのかもしれない。



 彼の幼馴染への実質的な失恋と、妹が不登校になったことによる――トラウマ。

 それが彼が高校時代、ギャルゲーも真っ青なレベルでモテてモテていたというのに……誰とも付き合うことなく、卒業していった理由。



 それからしばらく経って、私は彼と思わぬ再会を果たすこととなるのだった。

 私はゲームのライターとして、彼はゲームの製作者として。



== ==



 委員長が「この世界では私がヒロイン」発言が気になっていた、その後。

 

 たまたま一緒に学校に行くべく家に迎えに来ていた幼馴染のユキと登校しようとした矢先、車に跳ねられた。

 それから時間は巻き戻って”いつの間にかそこにいた”桐という自称妹によってこの現実とゲームのハイブリッドな世界であることが説明された。

 違和感こそ持っていなかったが――ユキが本来の幼馴染ではないことや、家で家事などをやってくれているホニさん、ホームステイしている留学生二人もゲームのヒロインであることなども話された。 


「おはよう主人公、とりあえず女を攻略オトセ。でないと世界は止まったままじゃ」

 

 この桐の言う事が本当であり、委員長が言っていたことが絵空事でないのならば。

 俺は委員長を攻略……付き合って恋人同士になる必要があるのだという。


「ということは俺は委員長と付き合うことになるのか?」

「うむ? いや、確かにそうなのじゃが……なぜ分かる?」

「委員長が自分でヒロインって言ってたんだよな」  

「……!? それは本当かユウジ! 確かに今回の√はルリキャベではなくハートフルの方らしいとはいえこんなイレギュラーは――」


 桐はぶつぶつと何か言っているがよく分からない。


「ともかくおそらく今回攻略すべきは委員長じゃが、注意した方がよい……」

「注意しろって言われてもなぁ」


 ぶっちゃけ接点こそあまりなかったが、委員長とは長い付き合いになるからそっちの方を信じるべきかと。

 こんなぽっと出の怪しい”のじゃロリ”の言う事よりは信用出来そうな気がしないでもない。

 


* *



 ここはとある家、至って普通の女子の部屋。

 しかし下之家ではない――委員長、嵩鳥マナカの家の彼女の部屋だった。


「ふふ……ついに私のヒロインのターンがやってきましたね」


 そう不気味に笑う彼女が居ました、なかなかに見ていると気持ち悪いですね。


「ここまでロクな出番もなく、もしかして忘れ去られたか話がカットされるんじゃないかという懸念の中……!」


 凄いメタメタなことを言う彼女は瞳をキラキラさせながら立ち上がります。


「やっと来たっ! イエーイ! 下之君とこれまでのヒロインよりも先に進んでしまおうっ」


 なんですかねこの痛い人は、見ていられないです。


「今回は冗長な手紙のやり取りもなければ、異能バトルもないし、私と下之君の関係はクラスメイト同士で近親的な壁もなし!」


 ……あの、ちょっと。


「これはこれまでにない、純愛が期待できそうですねっ! いやぁ楽しみです、ついでにこの世界のことを暴露するのも楽しみで仕方ないですよ」


 …………ちょっとですね、もう少し抑え目に。


「あー、イライラしてたんですよ! 散々他の女とのイチャコラとか見せられて、挙句台本とかも読まされる始末、発散しないと気が済みません!」


 ダメみたいですね。


「勢いで下之君を学級副委員に指定して、私とのフラグ構築に当てられる時間を確保は出来た……あとは――」


 もうこれ以上ナレーション出来る気がしません。

 痛い、痛すぎます。


 まさか自分のこんなはしゃぎっぷりもナレーションすることになるなんて聞いてないですよ!


 あ、紹介遅れました。

 ナレーションのナレーターとして、ちょくちょく都合よくユウジ視点以外で使われてきた私。

 正確にはナレーターという名前ではなく――



 ええと改めて、どうもナレーションの嵩鳥マナカです。

 ずっと私は彼の世界を見てきた者になります。 

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