第586話 √+1-5 彼らはこうして繋がっている。/√c-0
今年もよろしくお願いします
√c-5まで予約済みです
そこは静止した世界。
次の世界と世界の間の時間。
そんな境界で、下之家の一つの部屋だけに明かりが灯っていた。
二〇一一年**月**日
「いやー、大変だった」
パソコン越しに話すのは、一人の女子でした。
そのパソコン画面には――という男Aこと○○の名前が表示されています。
「苦労かけたな××」
「まぁ、割と大変でしたけど。なんとかなって、実際特にバグもなくエンディングを迎えられましたから」
「しかしこうして××が出向いて調整をしなければならないというのも、重大な欠陥だな」
「そういうもんだと思いますよー、ネトゲだってサービスを続けている内はメンテは避けられませんしね」
「うーむ、しかしなぁ」
「というか今回の場合は楽しかったんで気にしないでいいですよ――神をやってみるのも意外と面白いものです」
女Aこと××は、そんなことを言います。
「神裁のシステムが思いのほか複雑だったからな、それぞれの神裁への見返りとか手間だっただろう?」
「見返りとかは途中から自動にしましたよ、キリがないですからね。神として仕事してたのは願いを聞き届ける時でした」
「そういえばプレイヤーが覚えていないはずのキャラクターNo.2との記憶を有しているのか、ヒヤッとさせられた」
「特に今回はそんなイレギュラーな事態が起こらずによかったです」
男Aが言うのは、ユウジがホニさんとの結ばれた記憶を夢と言う形であれ思い出してしまったイレギュラーな事態のことを言っているのでしょう。
「大変だと思うが、これからも頼むぞ――アイシア」
「いいですよ、私も学生時代を追体験出来てお得ですから――」
女Aアイシアはそう言ってパソコン画面に笑いかけると、男Aとの通話を切りました。
「さてっと……次のシナリオは予測通りなら――かな……あの人、大人しそうに見えて突拍子もない行動するからなぁ」
はてさて誰のことでしょう。
「まぁ、とりあえず次の世界に行って様子見としますか」
そうして世界は終わり、次の世界が始まるのです。
* *
見慣れた教室で、私ことナタリーであり中原蒼は自分の席に座っていた。
見慣れたといってもそこは現実のものではない、現実と仮想の境界……曖昧な空間。
一度こそやり直したけれど、なんとかユウさんは前の世界でハッピーエンドを迎えた。
……もっとも終盤の私空気でしたけどね! サポート役ってなんだったんでしょうね!
そして今後私はどうなるのだろうとも思っていた、おそらくは鉈を使う機会なんて今後ないのだ。
つまり私は今後倉庫で眠りっぱなしになるのでは、という懸念があったのだ。
「そういえば中原蒼に、お知らせです」
「……何、ユミジ?」
「次の世界も鉈に転生します」
「うん」
「そして妖精形態にもチェンジできるようになります」
「……うん?」
何を言っているのか分からない。
「次の世界ではナタリーが活躍することはありませんから、体長十センチほどにデフォルメされたフェアリータイプの中原蒼として活動することが出来ます」
「……ごめん、本当に良く分からない」
「つまり次の世界では妖精に変身して、好き勝手できます」
「なるほど! 分からん!」
でも……そういうことらしかった。
前の世界では鉈にしかなれなかった私が、次の世界では体長十センチのミニチュアサイズの妖精になれるらしい。
妖精……妖精かぁ、そうきたかぁ。
「……嫌ですか?」
「えと、妖精になったことで私には何が出来るの?」
「下之ユウジの話し相手になれます。あと一か月に一回ぐらい一分の一スケールになれます、それと自由に動き回れます」
「ちょっと待って! 一分の一スケールってなに!?」
と、まぁユミジに唐突に良く分からないことを話されたのだけど。
ようは次の世界では私は妖精になれるということで……倉庫で眠るか妖精になるかの二択だったので、後者を選ばざるを得なかった。
そしてさらっと話された内容は、個人的には衝撃的なことでもあって――
* *
「ファーストワールドver.α」起動を確認。
媒体ソフトに「はーとふるっ☆でいず!」を指定。
キャラクター書き換えの準備が整いました。
メインキャラクターデータ――
適合する人物No.4「木山 麻名」の検索――該当1件。
「嵩鳥マナカ」への移植・書き換えの実行。プロフィールの書き換え――実行中23%――57%――71%――100%完了。
人物の適合化に成功。
現状の整合化――実行中18%――37%――93%――100%。
「木山麻名」のキャラクターが今シナリオ上に出現するのを確認しました。
「ファーストワールドver.α」起動成功。