第152~155話 √1-20 ※独占禁止法は適応されませんでした。
えー、こんにちは。ナレーションのナレーターです。
さてさて、あれからどした? と、お思いの方多いですよね?
えーと、一応こんなことがありました――
職員室に向かったユキは、捕まえた教師に事情を伝えました。
「先生こっちです!」
と、ユキが職員室に居た先生(体育教師)を引き連れて、屋上に向かいました。
ちなみに、鍵が閉めて立てこもっていることも考えて、鍵も一応用意したそうですね。
それで、いざ屋上に着いてみれば、鈍器やら鋭器やらを持って待ち構える男子生徒達。
一部はどこからかロープを持ってきて、丁度屋上から脱出を図ろうとしていた頃合いでした。
体育教師はそれはもう大爆発。立てこもりの上に立ち入り禁止の屋上で鈍器を持って居る訳ですから。
一方のユキは男子生徒の額に輝く「ユキ様LOVE」の文字に絶句していました。
長々と体育教師が説教を始め「だとしても下之ユウジが――」といい訳を展開しようとしても体育教師は止まりません。
そんな時に屋上を大きな風が吹き抜けました。
バサバサと音を立てて吹き飛んできたのは一枚の紙。
そこには「ユキ様告白 下之断る 武器を持って集合 ユウジ張り倒す」と書かれており、その四つの単語で想像が付きました。
実は風の噂で、ちらっと聞いていた「私」のファンクラブ思い出し「私」がユウジに断られたことでファンクラブの反感を買ったのでしょう。
それを考えた途端にユキはそれはもう大爆発。体育教師との双璧をなす怒りっぷりを披露し、信仰していたユキに怒られてファンクラブメンバーはどん底へ。
一方その頃保健室では、意識がぷっつん途切れたユウジを見守る姫城の姿。
あーもう、なんか見てるだけでイライラしちゃうな。
お二人がたがこうして二人居れるのはユキとユイの背中押しがあったからなんですからね?
でも、まあ、くっつけて良かったですね。一応祝福しておきますー
ユウジが起きる頃には日は傾いていて、姫城は椅子に座りながらすぅすぅと寝息をたてていました。
彼女には彼女なりに考えていて、更に文化祭の準備とユウジ関連で疲れたのでしょう。
ユウジはあまりに心地よさそうに眠っている為、起こすのを躊躇しましたが、これ以上日が暮れるのは良くないと。
「マイ、マイ」
と、肩を叩きました。
「……はっ、すみません!」
と条件反射のごとくビクリと背筋を伸ばして謝ってきます。
「いやいや、俺こそ……なんか寝ちゃったみたいで」
「お疲れのようでしたし、それに……ユウジ様の寝顔は格別でした!」
なんとハズカシイことを言うんでしょうね。
「え、えと……日も暮れたし帰っろか?」
「は、はいっ!」
夕暮れに向かって校門を出る二人の男女、影は並んで歩いて行きます。
――と言えば、なんとなくロマンチックですが。
「くぁー、慣れねぇな」
「だ、大丈夫ですか?」
松葉杖を付きながら歩くユウジとその歩調に合わせて歩く姫城。
う~ん、ユウジのせいで台無しといったところでしょうか。
「まー……2、3週間で治るってんだからいいけどね」
と、苦笑しながらユウジは言います。
「……これじゃマイと文化祭回りづらいのが、残念だ」
「え」
なんか告白した辺りから調子づいて言ってるのか、それとも天然かは分からないですけど。
何言ってるんですか、ユウジ。そんな口説き文句通じる訳――
「っっっ!」
あーあ、姫城顔真っ赤。まあ姫城だもんね……ユウジにベタ惚れだし。
「ま、松葉杖で歩ける程度でさ。マイ……付き合ってくれるか?」
「は、はははははいっ!」
あーあ、リア充なんか爆発すればいいんですよ。
そしてこのノリなら、どーせ手を繋ぐのにも一月ぐらい要するんでしょう?
なんですかねー、本当に。
まあ、いいですよ。
ナレーションでグチグチいっても仕方ないですし。
そんなこんなで文化祭準備の一日は終わります。
「はぁ~、やっと松葉杖取れた」
おかげ様で骨折はほぼ完治しましたー。いやー、なんというか治癒力が常人よりも凄い気がするんだけど?
流石クソゲー、歪みねえな! 関節じゃあるまいし、骨そのものの復元早過ぎだろよ! ……いや、好都合だけど。
「なんというか、祭りの後の静けさって奴かねぇ」
文化祭からほぼ1週間。あの喧騒はどこへやら、今は平常を取り戻した藍浜高校。
ユキ様ファンクラブの活動は無期限休止にさせられたらしい、それもユキ自身の手で。
あちらこちらと走り回った生徒会メンバーはと言えば――
「ああ、真っ白に燃え尽きたぜ」と福島が某ボクサー漫画のラストを思わせる雰囲気を漂わせ。
「ふぁぁ」と、盛大に眠気全開なごとくに欠伸をしている会長。
「…………」いつものクールさはどこに行ったか、船をこいでいるチサさんがなんとも新鮮だ。
「つ、疲れました……」心底疲れた表情でため息を吐くオルリス。
「この学校の文化祭は楽しいいなぁっ!」と、何故か一人テンション高いままのユイ。
文化祭の翌日の生徒会による反省会はそんな悲惨な物だった。
それ程に疲労困憊してしまっているのだろう。俺も前日にフィードアウトというのは申し訳なかった気がしてならない。
それでもチサさんは――
「しっかり体治すのよ」と、なんという気遣いに溢れた言葉を頂いた。
甲斐あって、1週間のスピード完治で。なんとか今日からは普通に歩けるようになった。
「ね、ユウくん……本当に大丈夫? 辛くない? 痛くない?」
玄関で顔を覗きこんでまで心配する姉貴。
「だから大丈夫だって」
主人公パワー恐るべしと言ったところだろうか?
「じゃあ学校行ってくるかな」
「私も」
ちなみに例によってユイとは登校を同じにしない。先に出て貰っている。
いや、だとしても「遅刻遅刻~」と食パン銜えながら走って行く意味はあったのだろうか……いや、多分ないな。
というか、家からそれほど遠くないから登校にも余裕を持たせてるし。
「いってれっしゃいじゃー」
「いってらっしゃーい」
桐とホニさんの見送りを背に、俺と姉貴は通学路を歩いて行く。
「ねぇ、本当に大丈夫? 肩貸せるよ?」
「だから、このとーり」
と少し乱暴に足をブンブン振ってみる、実際痛みはない。
「で、でも! 私が肩貸したいというか!」
「……はい?」
「だって! ユウくんと密着出来るチャンスなのに!」
「本人目の前にして堂々言うなよ……」
はぁ、姉貴がここまで俺の事気にしてくれるのも嬉しいことには嬉しいけどブラコン過ぎだよなあ。
「でも、本当に心配したんだからね! まさかユウくんが喧嘩だなんて……取り返しのつかないことになったらどうするの!」
「ご、ごめん」
俺は素直に怒られる。あの事柄を説明すれば、ぞれは当然のことで、それほど心配をかけてしまった。
なんかんだ姉貴は良い姉さんで、こうして本気で心配もしてくれ――
「だからバツとして……お、お姉ちゃんにキスを」
「なんか大胆になってね? もちろんダメな方向に」
冷静に返した。……なんだこの姉は、そんなことまで言いだすのか!
「ユウくんが良いなら、く、唇もいい……よ?」
「自分で言って照れるなよ……」
自分で言いだした癖して顔真っ赤である。ああ、良い姉なんだか、悪い姉なんだか……
そんな風に時折行う姉弟の掛け合いをしていると、いつものユキ合流ポイントに着く。
「あ、おはようユウジ」
「おはようユキ……って、え?」
ユキの外見が変わった。
「ん? どうかした?」
ユキのその変貌振りに驚いていた訳で……どこがどうかと言えば――
「その髪……」
「え? この坊主似合う?」
えええええええええええええ――
「って違うだろ! 髪短くなってるってことで……って言っても坊主じゃないから」
「あらユキちゃん、髪切ったんだー。短髪も似合ってるよ!」
「ありがとう、ミナさん」
「それで、どうしたんだ突然? あんなに伸ばしてたってのに……」
「……ふーん、ユウジ”が”そんなこと聞くんだ?」
「え、いや、その……」
「幻滅しちゃうよ?」
さりげなくショックを受ける俺。
「いやいや! 似合ってるから、大丈夫だな! なんというか新鮮だな!」
「ふふ、ありがと」
よく見ればユキは小悪魔的表情を浮かべていた……か、からかわれていたのかっ!
「まあ、でも言えることだとしたら……一区切りかな?」
「え?」
「なんでもなーい、早く学校いこ」
「あ、ああ」
そうして俺達は学校へと向かった。すこし駆け足で、ユキを追うように俺と姉貴が。
いつもの日常のようで、少し変化している。ユキの髪のみならず、関係も。
文化祭前準備のあの頃から――それでもかつての日常へと戻ろうとしていた。
戻ろうとしても出来ない、したくない事が俺には有った。
学校に着き下駄箱で履き替え、教室で待っていたのは――
「おはようございます! ユウジ様っ」
朝一番とびきりの笑顔をくれるマイの姿。そう彼女と俺の関係は変化を遂げた。
かつてのクラスメイトから友人、親友と――
「ああ、おはよう」
マイは彼女になった。俺はマイの彼氏になった。
俺とマイはあの時から付き合い始めたのだった――
「おー、ユウジ松葉杖取れたのかー」
「ああ、おかげさまで完治だぜ!」
なんだかんだでユイも気にしてくれている。
……というか同じ家なのだから、本当は知っているのだが。
「ああ、色々サンクスな。マイ」
「いえ、そんな! ユウジ様のお怪我が良くなって本当にうれしいです!」
実は、まあこんな感じで。今まで照れまくっていた俺は何処へやら。
次第に平常心を保てるように、特に意識しなくなった。……いや、もちろんマイのこてゃ大好きだけども?
胸のつっかえが取れたというか、俺はマイと付き合っているという安心感からだろうか?
「ふぅーん」
「な、なんだよユイ」
「あの動揺しまくりんぐなユウジはいずこへ?」
「フッ、そんな昔のこと穿り出すなよ」
「うわ、なんだその返し」
「俺は変わったのさ、イメチェンしたのさ」
「いや……なんか使い方おかしくなってるぞ?」
「まあ、ユイには感謝してるぞ」
そろそろ言わないとな、うん。
「いやさ、色々背中押してくれてありがとな」
「……ああ、そんなことか」
「そんなこと? 俺はユイに背中を押されたからこうして……」
「いやあ、友人の恋のキューピッドになるなんてステキジャン」
「そ、そうなのか?」
「んだ。それで結果は……聞かなくても分かるか」
「おかげさまで」
「ふん、せいぜいイチャイチャするのは二人だけの時にしろ。リア充とかアタシが一番嫌いな種族だからな」
「そんなリア充を生みだしたのもお前だけどな」
冗談混じりで言ってみる。なぜ、ここまでしてくれたのかと。
「そりゃあ、親友のユウジと姫城さんとあっちゃあ仕方ない」
「ユイ……」
「まあ、せいぜい幸せにやるんだな!」
と、言うとユイはユキ達のところへ戻って言った。
「本当に……ありがとうな」
一人、人に聞こえないぐらい小さな声で呟く。
こんな親友を持てて、俺は心底幸せだと思った。
昼飯。いつものメンバーでのランチタイム。いつもと変わらない他愛もない会話。
最近面白いアニメだとか、最近つまらないアニメだとか、ハマッたギャルゲーとか、集め出したアニメグッズなどの話題がユイ、マサヒロ間で繰り広げられている。
よく事情は知らないが、マイとユキが最近一気に親密になったようで、よく休み時間に話す光景を垣間見れる。マイも打ち解けてきたってことかな?
双方の話題に入ったり抜けたりして丁度中間地点に居るのが俺である。もっともユイ、マサヒロ側は最近はアニメを観る時間がないので話半分だが。
「あ、そうだ」
アニメのあの回がなんちゃら~と鼻息荒く熱弁していたユイが突然思いついたようにふっと会話を切る。
「どした?」
なんとなく飲みたいので買った紙パックの野菜ジュースのチューチュー吸いながら聞いてみる。
「ところで御二人さん、あの後から恋人らしいことはしたのかな?」
「ぶふっ! げほっげほっ」
噴き出す直前で口を固く閉じたまではいいものの、思い切りむせた。
「あー、それは私も気になる」
「え」
ユキが興味津々に箸を置いて身を乗り出して言う。
「あ、それは……」
「えーと」
まさかユキが食いついてくるとは……いやぁ弱ったなあ。
「ん? 何の話だ?」
先程まで興奮度マックスであのスタッフは云々~と語りまくっていたマサヒロが状況を読めていないらしく首を傾げて聞いてくる。
「いやさ、お二人さんって付き合い始めたばっかとはいえ、ここまで二人の態度があまり変わっていないのに疑問を持ってなあ」
「ん? はい? 付き合う? 誰が?」
「「!?」」
「な、なんだよ……そんな驚いた顔して」
「いや……え、マジですか?」
冗談だろうと問うが、残念ながらマサヒロは真顔だった。
「なんだよ! もったいぶらずに教えてくれよ!」
「「……」」
メンバー沈黙。えーと、まずは何処から話せばいい?
マサヒロの状況把握能力がここまで皆無だなんて……流石に気付いてくれるかと思っていたが。
確かに、態度もかつてと似たような感じだよ? だとしても、ユイに散々ネタにされた「動揺しまくりんぐな俺」を見てて何も思わなかったのだろうか。
「えーと、だな――」
言いかけたその時、思わず人物の横やりが入った。
「え、下之さんと姫城さん付き合ってるんだよねー?」
「な、なんだって!」
思わぬ人物とは、クラスメイトの女子。さも誰もが知っているかのように聞いてくる。
そして驚くはただ一人だけ。
「ユ、ユウジ! どういうことだ! 説明を要求する!」
「いや、話すけどさ……いくらなんでも気付かないか?」
ちなみに一応ファンクラブが存在するマイなこともあり、クラス中に知れ渡っている。
松葉杖時代に介抱してくれるマイの姿もクラスメイトしかり生徒には焼き付いているようだった。
「一応俺はだな――」
「まさか、副会長さんと姫城さんが付き合ってるなんて」
「「……はい?」」
「えっ」
皆が口を揃えて聞きなおし、マイはただ呆然とした。
「いやだって下之”さん”だろ? この流れだと、そうとしか思えん」
「いやいやいや! それじゃ女同士じゃねえか!」
「何か問題でも? ……それとも同性愛を貴様は否定するのかユウジッ!」
「いや、そう言う事言ってるんじゃねえ」
「じゃあ、何だ? 副会長と姫城さんは付き合ってないのか? そうなら誰と誰が付き合ってるか言ってみろ」
もろ上から目線な上に、周知の事実をさぞ胸を張りながら聞いてくるトンデモ勘違い野郎なコイツは何なのだろう。
「いや、だから俺とマイが付き合ってるんだって……」
「…………は? お前と姫城さんが付き合ってる?」
「ああ、受け取れる情報の通りのはずだけども」
「……ははっ、冗談言うなよ! それなら俺だって気付いてるはずじゃないかー、こんなに行動するのが一緒なんだからさー」
「「…………」」
「え、皆知ってたの?」
こくりと、揃いも揃って頷くメンバー。というか、さきほどのクラスメイトのみならず、教室中のクラスメイトが無言で頷いた。
「な、なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおお」
その驚愕の声は教室を抜けて廊下をも響き渡る。
ああ、俺が言えタチじゃないが。そこまで鈍感なのはどうなのだろうか。
「なんだって……あのユウジが、ついモテるけど付き合いはしない、結局は俺の仲間止まりだとばかり思っていたのに」と一人頭を抱えて呟くマサヒロ。
は、すかさず放置を決め込むことにした。
「で、ユウジ。恋人らしいことは?」
「いや、その……」
俺は素直に言ってみた。うん、素直なのが一番だよな! 嘘はイクナイ。
「ばっかやろおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「!?」
「舐めてるのか貴様わあああああ! そんだけ美人な彼女捕まえてきて、何にもなしぃ?」
「う」
確かに俺には勿体ないほどな美人さんなマイと付き合うことになった。……だとしても、あまり変わった感じがしないというか。
もう、一緒に居られるだけで、話せるだけでいいんだよな――
「ほ、本当?」
ユキも疑問気に聞いてくる。
「あ、ああ」
それを聞くとユキ、ユイともども心底呆れたように盛大にため息をついた。
「……いいのか姫城さん?」
「えっ」
「そこまで無情な彼氏で」
言われたもんだ……いや、まあ仕方ないか。誘うことも出来ない俺が悪いんだしな。
「え! えっ!? そんなことないですっ!」
「付き合ってから一週間ほどだ。だがしかし、デートどころかキスもないだとっ! この純情ロマ●チカ野郎!」
「それ意味が違ってくるから!」
必死にツッコむ。その解釈は色々とマズい!
そんな感じでもの凄い勢いで首をブンブン振って否定していた――
「幸せですから」
「え」
「私はユウジ様が隣に居るだけで、幸せですから」
「「……」」
「マイ……」
「怪我をしてしまったおかげと言うのは失礼なんですけど……ユウジ様と共に居れる時間も増えました。それに――」
そしてマイは本当に嬉しそうに、柔らかな表情でこう言う――
「ユウジ様は私に告白するが為に怪我してしまったのですから……私を考えていてくれたことが、心から嬉しくて嬉しくて」
「!」
そんな、彼女の気遣いが。笑顔に俺は惹かれていたんだろうな……彼女の温かさが、俺を包み込んでくれる。
「ユウジ、金のかからない彼女で良かったな」
内容こそ酷いが、なんともユイはユイで優しく言った。
「……マイ、じゃあ今日行くか」
「え、え?」
「デート」
「え、ええええええええええ」
「なんとも甲斐庄無さ過ぎてさ……これじゃ情けなさ過ぎる」
「いえ! ユウジ様、そこまで気を使わせては――」
「それに完治したからさ。……出来れば、ちゃんとした足取りでしたいからね」
「ユウジ様……」
もう超ベッタベタワールドが俺とマイでは展開されていた。
蚊帳の外に出されたユキやユイは呆然と聞いていたみたいだったが――
「イチャイチャすんなやああああああああっ!」
無言を決めこんでいたマサヒロがそう叫んだのだった。
そして俺は何回か殴られたが、倍にして返したのは正直悪いかなと今思ったり思わなかったり。