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第563話 √5-44 より幸せに

 なんということでしょう。


 振り返った先にいたのは、派手さはなくとも地味ではあるが整った中性的な顔立ちで、それもスク水を着ているという素晴らしい美少女だった。

 スクール水着は今でいうところの旧仕様、程よく使い古された紺色の地に縫い目の線か飾りかは分からないが縦線が日本入る……伝統的なスクール水着である。

 ショートヘアーかつ全体的に細身で長身ではあるが、女性的な身体つきに違いは無くスクール水着の特性ともいえる身体のラインを目立たせることによってスタイルが良いことも良く分かる。

 先程のホームステイ組で裏切られ、落胆の最中にあった俺を救ったのは名も知れないスク水の美少女であった……この胸の高鳴り、もしかして:恋。

 そんな美少女が近づいてくる! まさか、神の恵み……これが見返りというやつか! 神様も粋なことしてくれるっ!

 

「……どうしたユウジ? そんな作画崩壊しているような顔して」


 そんな美少女は俺の名前を知っている!?

 マジか、ギャルゲーか! というか神ゲーか! どこで売ってるんです? 神裁となったことで金に余裕はあるんだ、一五kまでは出す!


「ど、どちらさまで?」

「……え? 本気で言ってる?」


 スク水美少女(仮)は、驚きの表情でそう聞いてくる。

 いやいやいやこんな美少女と知り合いな気がしないぞ!? むしろこんなスク水がバツグンに似合う美少女を俺は知らない。

 しかし俺の名前を知っていて、どうやら俺が彼女を知らないことがおかしいようだ。

 俺の脳内ハードディスクに検索をかけるが、これまた該当なし!


「……ユウジと話してる子誰だろう」

「ユウジ様と親しい間柄のようですが……?」


 ふとユキと姫城さんがそんなことを話しているのが聞こえた。


 いやでもそんな、まさか幼少期にフラグが。

 いやいやそもそも幼少期からずっと美優と姉貴と桜と過ごしていたから、そんなタイミングなんて。


「ぬふふ……そうかそうか。ところでユウジ、今のアタシの水着って似合ってる?」

「ああ! 凄い似合ってる、本当に感動したっ! ここ数年見たどんな水着姿の中でも一番だ!」

「ふ、ふーん。そっかー、そっかー」


 満更でもなさそうな表情をするスク水美少女(良)。かっー! この町にこんな逸材が居ようとは俺も盲点だった!

 それにしてもこのスク水美少女、出来ればお近づきになりたいというか、フラグが立っているならこのまま恋愛一直線したい! 

 そんな頭のねじが何本も抜けたようなことを思っていると、駆け寄ってきたホニさんが衝撃的なひと言を発した。



「あ、ユイ遅かったねー」



 ホニさんはそうして、そのスク水美少女 (神)をユイと呼んだのだ。

 ユイ? それは何かのあだ名で? またはハンドルネーム的な何かで?


「ホニさん、この人知ってるのか?」

「ユウジさん何言ってるの? ユイだよ、ユイ。我たちと一緒に住んでるユイのこと忘れちゃったの?」

「ユイ…………?」


 ユイ、おかしいな。

 俺の知っているユイという人間は女っ気がなく、細身かつ長身でいつもグルグル眼鏡をかけている、最近義妹になった存在なのだが。

 この人がユイ……?


「ははは、まさか」

「……おうふ、マジで気づいてないんか。嬉しい反面ショックだ……」


 するとスク水美少女は、どこからともなくいまどきパーティグッズでも見ないようなグルグル眼鏡を取り出して――装着した。


「ユイイイイイイイイイイイイイイイ!?」

「アタシだ」


 眼鏡をかけるとあら不思議、一瞬でユイになってしまった。

 確かに背丈もこれぐらいだし、ショートカットの髪もそのままだ……まさか、いやそんな!

 さっきまでスク水美少女と崇めていたのがユイだったなんて!


「本邦初公開、アタシの素顔の感想は」

「……ユイと知らなかったら結婚したかったぁ」

「アタシ、キレていいよね」


 胸が大きい人のスク水はたまらないが、異様にスク水美少女 (ユイ)のスク水は似合っていたのだ、そりゃあもう結婚を申し出たいぐらいに。


「しかしユイ……」

「な、なんだよぉ」

「……せっかく綺麗な顔してるのにメガネですべて台無しにしてるのはどうかと思うぞ」

「き、綺麗!? アタシがか!?」

「ああ、少なくともメガネ外してればだいぶモテると思うぞ」


 幾らか現実を受け入れはじめると、俺も冷静に自分の感じたことを話していく。

 実際ユイと知らなければ結婚したかったが、それでも十二分に美少女に違いなかった。

 メガネは拘束具と偉い人は言っていたが本当だった。


「そ、そうかぁ……?」


 ユイは何を自信がないのかと思う、少なくともひいき目に見ると姫城さんやユキとは別ベクトルながらも美少女度合いとしては負けないぐらいだった。


「……まぁ参考にするぞい」


 そう言ってユイは俺の隣に座って、またメガネを外す。

 するとスク水美少女が姿を現す、いつものどこで売っているのか分からないグルグルメガネを持っていなければユイの双子の妹だと言われても疑問に持たないほどに。


 



 そして前話冒頭に戻る。

 隣に座って、美少女だというににへぇとしただらしない顔で目の前をキャッキャウフフする美少女たちを眺めている。

 俺もこう……ユイ(自称)のスク水姿は隣にいるとつい何度も見てしまうわけで。


「アタシが気になる?」

「っ! べ、別に」

「ユウジがスク水好きなのは知ってたからぬ。どうよ、アタシいけてる?」


 別にイケてねーよ、だってユイだし。


「今まで見たスク水の女の子で一番のストライクかもしれん……」

「え」

「え?」


 しまったー! 口に出していることと内心考えてることが逆転してしまっている!?


「そ、そうかぁ……ふーん」


 そんなユイはそれから黙ってしまったが、少しだけ見た表情は満更で無さそうに思えた。

 それでも結局ユイ=美少女=スク水の似合いどストライクという信じがたい現実を俺は最後まで受け入れられなかったのだった。 


 気を紛らわす為にシートを立つ、近くに目を向けるとクランナに呼ばれてもこんな炎天下の中で体操着を身にまとったアイシアはノートパソコンで何か作業をしているようだ。

 アイシアは同じ家に住んでいるというのにクランナに比べると家事には非協力的、留学生で銀髪の美少女でクランナを好ましく思っている、ことぐらいしか彼女について俺は知らなかった。

 そんなアイシアがふと気になって、なんとなく聞いてみることとしたのだ。


「アイシアは海に来てなにやってんだ?」

「そうですね、因果律の操作でしょうか」

「……お、おう」


 なにいってんのこの人。

 というかあまりアイシアのキャラが掴めないのだが、これはきっと俺はアイシアに軽くあしらわれたのだろう。


「クランナがそろそろ寂しがるから行ってあげた方がいいぞ」

「言われなくても、少ししたら行きます」


 どうにも接点が無さ過ぎてアイシアに俺は嫌われてるんだろうかと思う時がある、実際に家で話すこと機会も殆どないのだ。


「ところでユーさん。雨澄さんとは最近どうですか?」


 アイシアからの予想外の問いに俺は純粋に驚いた。

 アイシアの口から雨澄という名前が出ることも意外であれば、俺とその雨澄のことを気にかけているようなアイシアの口ぶりも不可思議だった。


「っ! 雨澄なんて知ってるんだなアイシア」

「ふふ、私はなんでもは知りませんけど知っていることは知ってますよ――過去も現在も未来もね」


 そう不敵に笑うとノートパソコンを閉じて「今行きますよ、クランナー!」っと歳相応の笑顔で駆けて行った。

 アイシアの思わせぶりな態度のオチとしては、雨澄の名前をなんとなく耳にしたからとかだろうか。

 終始俺はアイシアにからかわれて、手のひらの上で踊らされているような……なんとも掴みどころのない人だと、改めて思った。


 それからパラソルの荷物番を交代でしつつ、浅瀬で遊んだり、ビーチボールで遊んだりと海を満喫した。

 遊び終わってから気づいたことだったが、こうしてユキ達だけでなくクランナや桐なども集まってほぼ全員が集まって遊ぶ機会はなかったように思える。

 そう考えると、なおさらこの場に雨澄が居ないのが少し残念に思えてしまったのだ。

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