第562話 √5-43 より幸せに
水着回
いつ以来でしょう
空は快晴、絶好の行楽日和。
鼻につくのは磯の香り、目の前に広がるのは砂浜と波揺れる海。
そして――
「マイ、そーれ!」
「ユキ相手でも手加減はしません」
「もう猫被ってるのも限界じゃ! 幼女相応に遊ぶんじゃあああああ」
「ああああ、桐待ってー」
「アイシアは泳ぎませんの?」
「あとで泳ぎますよー、今はちょっと」
「ユウくんにお姉ちゃんアピールするチャンス!」
目の前ではキャッキャウフフとそれぞれ個性豊かな水着に身を包んで露出面積が極端に増えた女子たちが海や砂と戯れている。
「のほほ……ええねえええねえ」
隣で呟いているのは――自称ユイだった。
そう、つまりは水着回。
* *
七月二十三日
終業式を終えて一度家に戻り、そのあと再度雨澄と公園で落ち合って昼食を食べたあとのこと。
家に帰って部屋でクーラーを入れればいいものの、無駄な意地あって扇風機で乗り切るべく奮闘していた矢先のことだった。
「ユウジ、友人誘って海行こうZE!」
「よしきた」
ユイが俺の部屋をノックもせずに開けたかと思うと開口一番がそれだった。
まぁ神裁もちょくちょくして貢献度に余裕もあるし、こうやって友人たちとの時間も大事だろう。
しかし一瞬の思考も必要せず俺は即決する、そうして夏休み最初のイベントは海へ行くことに決定した。
七月二十八日
ユイ曰く俺に話す前まで色々と女子の間では話していたそうだが、クランナやアイシアも誘うこととなり水着の買い出しなどで日にちは延期した。
そうして全員の都合が付くことの分かった水曜日である。
ちなみに祝日の公園で、月曜に当たる日に雨澄も海はどうかと誘ってみたものの「――申し訳ない」と断られてしまった。
雨澄の水着が見たかったがしょうがない……少し残念だ。
そういえばこの町は海と山がそれぞれ徒歩圏内にあるという、絶好のロケーションに関わらずどうにも最近海に行っていなかった。
実際この町の人々がその海に集合するからして、そこまで穴場というわけではない地方の海岸なりの盛り上がり方はしているように思える。
そして適当な場所に荷物スペース兼休憩スペースのシートとパラソルを設置して、俺とマサヒロは女子勢の更衣室の着換えを待っている最中だった。
ちなみにマサヒロは一応は来たものの、目線の先は手元のゲーム画面 (ギャルゲーっぽい)ものに注がれて、目の前の男女が水着姿でキャッキャウフフしてる光景には目も向けていなかった。
「お待たせしましたユウジ様」
「おー……」
姫城さんは水着にパーカーを羽織っているようで、前の空いたパーカーの間から豊満な胸が覗いている……でかい。
どうやら黒色のビキニを付けているようで、実際に前から見る姫城さんの胸はビッグバン!
胸によって大きく押し上げられるパーカーは決して肌面積は広くないというのに……エロい、より姫城さんの水着の全容を見れないのが惜しまれる。
それでも水着にパーカーを羽織って、そこに麦わら帽子というのはどこか涼し気で見ていて良い。
「パーカーで申し訳ありません。私、泳げませんから……」
「そっかー、でも涼し気な格好で俺は好きだな」
「……っ! あ、ありがとうございます」
そういえば姫城さんは水泳の授業も休みがちだと聞く、少し気になるが個人のことなので踏み込まないでおこう。
続いてやってきたのはホニさんとユキと姉貴だった。
「お待たせー」
「ユウジさーん」
「ユウくーん」
「おおっ!」
ホニさんはというと白地に黒いドットと裾などに茶色の線が入った落ちついた色合いのワンピースタイプのAラインという姉貴のお古の水着。
露出度は高くないものの健康的かつ可愛らしさも備える、ホニさんは中学生のヨーコで考えると意外にもスタイルは良く将来性を感じさせる。
ユキの水着は赤色ホルターネックのツーピースという、上半身と下半身で完全に分かれた構造の水着で、ストラップを首に吊るしている。
姫城さんと比べてしまうと厳しいがユキも歳相応に女性的な容姿をしている……これはなかなか。
姉貴はというとこれまた際どい水着でやってきた。
チューブトップと呼ばれるビキニの一種らしく、肩紐の代わりに水着の正面中央から出ている細い紐を首に結びつけるという、構造的に背中が大きく露出する水着だ。
しかしそれだけではなくチューブトップは布面積が小さく、姉貴の豊満な胸をすべて覆うことは叶わずに下乳がはみ出ている……正直一番エロい。
「……姉貴、本気出しすぎだろ」
「ユウくんを本気で悩殺しようと思って」
本気出してくれたところ悪いんだけど残念、俺弟なんです。
本当姉じゃなかったら、何枚も写真撮ってその……なんだ!
「ユキの水着いいな、綺麗で似合ってる」
「そ、そう? ならよかった」
「ホニさんは可愛い水着だな、よしよし」
「か、可愛い!? ユウジさんに、そう言ってもらえると嬉しいです!」
いやー、やっぱ間近で見るといいな女子の水着って。
一応男子高校生であって、こう女性にも興味はありますからね、うん。
少し遅れて桐もやってきたが……まぁ単純な幼女水着などで描写は省く。
「着替えるのに手間取ってしまいましたわ、どうでしょう下之ユウジ」
「……なんかオルリスがごめんねユーさん」
「ああ……」
アイシアと並んでやってくるクランナの水着を見てとにかく落胆した。
金髪! 西洋美女! スタイル良し! 胸だって大きい! そんなクランナの水着に多少は期待していたのだが……結果は凄い残念である。
「これならスク水来てくれた方がよかったかもねー」
俺は心の奥底から禿上がるほどに同意した。
というかスク水はいい、むしろスク水が良い!
「何を言うんですのアイシア、これは立派なジャパニーズ水着でしてよ」
「まぁそうなんだけどな……」
クランナが着てきたのは昭和臭溢れる、全身を覆う囚人服のような水着だった。
というかこれは水着なのか、テレビでは水着と言っていたがどう見てもズボンとシャツが一体になった赤色ボーダーの服である。
極め付けはサイズも余裕があるため体のラインがくっきり出ることもなく、胸部と臀部の盛り上がりだけが分かるという残念さ。
そして期待していなかったがアイシアに関しては水着さえ着ていない、何故か体操服だった。
「あ、ユーさん。ちなみに私も透け対策はばっちりです」
「ああ、そう……」
地域とかによっては水着などを着ずに着衣永に近いものをしていると聞いたが、よもや体操服とは。
そしてアイシアから釘を刺されてしまった、どうやら体操着の下にTシャツを重ね着しているようだった。
「課金するとTシャツが減ります。見たい?」
「いや……別に」
そうして落胆している中で、俺もこれで大体全員かと思った矢先のことだった。
「おーい、ユウジ!」
振り返ると、なんとスク水美少女が走ってきたではありませんか。