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第552話 √5-33 より幸せに

クソゲエ強化月間継続です

ストックが尽きるまで毎日投稿になります

 六月一日



 さすがに深夜に狩りだして(コトナリ)狩りを行ったことで、早朝ランニングは止めた。

 どうせならこのまま起きてしまおうと冷蔵庫にある栄養ドリンクを飲んで、一応最近は気温も上がってきたこともあって汗もかいたのでシャワーをさらっと浴びる。

 そうしてさっそく溜まっている家事を始めた、まずは洗濯物を畳む作業だ、それから少ししたら朝食の準備を始めるとしよう。


「おはようホニさん」

「おはようユウジさん……ってユウジさん!? まだ、四時半なんだけど……」

「あー……」


 どう説明したものか、そういえば一度もホニさんに聞いたことはなかったが異という括りでホニさんの仲間のような者は存在するのだろうか。

 俺が異を狩ること自体をホニさんはどう思っているのだろうか、大事なことなのに考えたこともなかった。


「そうだな……深夜ちょっと出かけて異を浄化してきた」

「っ……ユウジさん、それじゃ疲れてるよね!? 大丈夫?」

「大丈夫大丈夫、帰ってきたのも四時前だし中途半端に寝てもしょうがないからさ。ところでホニさん」

「何かな?」

「その、だ……俺が勝手に決めたことで、今更すぎるんだが。ホニさん的には他の異達のことはどう思ってるんだ?」

「他の異……うーん、正直ピンと来ないかな。だって我はヨーコと出会うまで一人だったしね、大昔に関わった神様とかもいるかもしれないけれど、もう覚えてないなぁ」


 何気ないことであるが、本来ならば知っておくべき情報だった。

 良かれと思って、ホニさんを守れるからと思っていたことが、結果的にホニさんを傷つかせる結界になってはいけなかったのだ。


「……俺が異を倒すのってホニさんは嫌か?」

「あんまり……良くはないかも」 

 

 そうなのか……そうだよな。

 自分と似た立場の存在を倒して回るなんて――


「だってユウジさんが、危険な目に合うかもしれないと思うと……不安で」

「……俺が?」


 しかし俺の予想とは違って、ホニさんは俺を気にかける上での考えだったのだ。


「そうだよ! でも我の為にしてくれたことで、それで異を浄化しなきゃいけないなら我は反対なんて出来ないよ」

「そうか……分かった」

「うん……無理しないで、頑張ってね」


 ホニさんのその不安そうで儚げな笑顔が脳裏に焼き付いてしまう。

 こんな表情させるべきでないのに、俺の行動がそうさせているのがひどく申し訳ない気持ちになった。





 それから一通りの出来る家事などを行って、学校に行き授業を受け昼休みは友人たちと過ごし、放課後が訪れた。

 

「だいぶ速くなってきたなー、下之」

「マジか。嬉しいな」


 毎週火曜の同じクラスメイトにして同じ生徒会役員の福島戸夏に、走競技のトレーニングをお願いしている。


「だいぶ板についてきたというか、むしろ私は数回しか教えてないのに見違えるほどだな」

「おお、お墨付きだ」


 福島の教え方も上手い……スパルタで普通に授業を受けた後には堪えるが。


「他にもトレーニングとかしてるのか?」

「ああ、早朝ランニングとかをな」

「へー、熱心。私としても下之がこう本気で取り組んでるのは意外だなって」

「意外?」

「ぶっちゃけるとさ、生徒会に入ってきたのも姉の副会長に誘われてじゃん?」

「そうだな」

「それにクラスだと女子に囲まれて、でも自己主張をそこまでするわけでもなくさ……偏見なんだけども、流されやすい性格なんかなって思ってたんだ」

「まぁ、それはあるな」


 俺はよっぽどのことが無い限り率先して動くタイプではない。

 少し前はアグレッシブだった気がするのだが、中学の途中からはユイとかと関わって流されるままだった気がする。


「……散々失礼なこと言ったけど、実際どう? ここまで熱心に走る理由が成績以外にあったりするのか?」

「あー」


 確かに福島が思う事はもっともだ、俺がここまで熱心になる裏があるに違いないと踏んでいるのだろう。

 実際教える側としても、別に運動音痴というほどでもない (はずの)俺が走競技の成績を上げたいからと同じクラスメイトで、運動が得意そうだからと福島に頼む理由が分からない。

 正直に”異を倒すために体力底上げしています”などと言えるはずもなく、福島には申し訳ないが適当なことをであっちあげることとした。


「実のところだけどさ……次の体育祭で良い順位とって、そのだ……気になってる人に注目してほしいんだよな」

「……マジで?」

「マジマジ」


 適当にでっちあげたと言ってもすべてが嘘ではなかった。

 体育祭は全生徒参加であり、ほか学年はもちろん他のクラスの生徒も一堂に会する機会だった。


 そこで俺は雨澄に見て欲しいと思ったのだ。

 なぜかは分からないが、俺が短距離走で一位を取る姿を見た雨澄がどんな反応をするかを見てみたかったのだ。

 ……もちろん、雨澄のことだから何の反応も示すことはないかもしれないが。

 というか俺が見てもらえるという大前提が自意識過剰なのだが――何故俺はこんなことを思うのだろうか。


「下之好きな人いるのか! いやー、ビックリ! ……で、誰よ?」

「い、いや好きな人というか……」

「嘘だぁ、見てほしいなんて好きと同義だろ」


 そうなのだろうか。

 俺は雨澄のことが好きなのだろうか、確かに気になりはするが好きとまでは――


「篠文? それとも姫城? ……まさか大穴で巳原!?」

「いやー、ユイは無いわ」


 ユイは完全に友人というか悪友だし、グルグルメガネだしで恋愛対象はないわー。

 ……それに今では義妹だし、嫌いじゃないしむしろ人としては好きだけど女子としてはなぁ。


「マジかー、じゃあホームステイしてるって言う外国人二人のどっちか!?」

「ないない」

「……しかしこう挙げてみると下之って女にばっか囲まれてるな、私もそうだし」

「なんでだろうな」

「隅に置けないヤツめー。まぁその気になる人にいいとこ見せたいってなら納得だ、私も協力しよう!」

「おう、頼む。そういうことだから、体育祭までは付き合ってくれ」

「おうよ! それまであと二週間ぐらいだけど出来る限り教えてやんよ!」


 そうして二時間ほど福島にはトレーニングに付き合ってもらった。

 福島とはあまり話す機会もなかったが、少し男勝りな快活系の福島でも色恋沙汰というのは好物だったのが意外だった。

 そして福島に説明する上で、雨澄に俺がどんな気持ちを抱いているかを考えさせられるいい機会になったのだった。




 

 それから家に帰って家事をして夕食に風呂に入って考える。


「……流石に深夜異狩るのはのはしんどいな」

 

 ”神裁”なったことで体力が底上げされ、そして結界内では運動神経も向上するとはいえ人間である。

 不眠不休ではいつか倒れかねない、睡眠は少しでも必要だと考えた。


「早朝ランニングのついでに異を狩ることにするか」


 早朝ランニングは三十分ほど、それを一時間にして異を狩るついでにランニングもしようと決めた。


「そうとなれば風呂あがって早く寝ないとな」


 そうして俺は風呂を上がると、ホニさんや姉貴との三人態勢で家事を終えるとすぐ眠りに就いたのだった。

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