第538話 √5-19 より幸せに
クソゲエ強化月間です
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ナレーションのナレーターです。
突然ですが放課後の生徒会室です、今現在会長と初期の先輩組二人しかいません。
これから少し経って福島が、その後にユウジが、最後に日直だったというミナの順番にやってきます。
そしてこれは会長と書記のとある会話。
「最近出番皆無だと思ったら、こんな時だけ使ってくれるんだって知沙」
「ええアスカちゃん……既にパロ元も忘れられかける頃に、思い出したように都合よく使われる私たちってなんなのかしら」
「メインヒロイン昇格も遠くて、私めげそう」
「頑張ってアスカちゃん……ところでアスカちゃんって呼び方で合っていたかしら」
「もう私も覚えてないよ……時の流れは残酷だね」
とメタメタな会話をしているのはマスコット会長こと一時期は深夜アニメで有名だった作品キャラのパロディこと葉桜アスカと、その同作品の腹黒系お姉さんパロディの紅知沙。
ことごとくカットされる生徒会描写のせいで、彼女らの出番は最近に至っては皆無だったのですね。
「ちなみに私のこのあとの台詞はユウジのモノローグの中で一行だけ、割に合わないなー!」
「まだアスカちゃんは良い方よ……私に至ってはセリフなしで、紹介すらされないんだから」
「……今度”あいつ”と話せたら出番増やすように言おう」
「そうね、私も協力するわ……”異能抑制”発動してるだけで肩が凝ってしょうがないんだから」
彼女たちが話すあいつとは、まぁそういうことですね。
そして福島がやってきたので、そんな二人の会話は打ち切られます――以上生徒会室からでしたー。
* *
そうして迎えた放課後。
生徒会があるからとホニさんはユイと一緒に帰ってもらった、ユイになんかんだで世話かけてるな……まぁ本人が『おうふ! ホニさんとの下校デート楽しみにゃしぃ』と喜んでいたので良しとしよう。
放課後俺は生徒会室に生徒会の業務をこなすべく向かった。
いつものように生徒会活動に参加するだけでなく、俺には頼りたい人が居たのだ。
生徒会室をノックして生徒会長のアスカ会長の「入っていいよ~」というロリロリした声と共に迎え入れられると、目的の人物が居た。
「よー、下之。そういえば下之の従妹が転校してきたのなー、お前に似なくて可愛いじゃん」
いや俺に似ないからこそ可愛いというか、そもそも従妹なので似る以前の問題というか……。
話し方次第では嫌味に聞こえそうなことを言う彼女だが、快活そうに男勝りともとれるようにスパスパと喋るので不思議と苛立ちは起きない、そんな生徒会の会計を担当する福島戸夏だ。
見た目まんまにスポーツ少女で、俺と同じクラスのはずなのだが教室では殆ど会う事のない不思議な女子生徒でもある。
生徒会室ではこんな風に普通に会って話すのだが、どういうカラクリがあるのだろうか。
と、まぁそこは置いておいて。
俺はそんな福島に頼みたいことがあったのだ。
「なぁ福島、お前って運動得意か?」
男女別の体育授業の際には、外でサッカーから陸上に水泳に至るまで元気溌剌に授業を楽しんでいる様を何度か見たことはあったのだ。
そして実際のその体育の成績はかなり良好そうで、職員室でふと体育の成績で飛びぬけているのが福島だと聞いたこともある。
「ん? 得意だぞ、三度の飯より運動・スポーツと言っていいな!」
「そんな福島に折り入って聞きたいことがある」
「な、なんだよかしこまって」
俺のらしくない態度に微妙に引き気味に喋る福島。
まぁ仮にも頼る立場であって、高姿勢というわけにもいかない。
「早く走るにはどうしたらいい?」
「……へ?」
俺と福島のこれまでの生徒会活動の中でもフラグの欠片もなければ、伏線も微塵のない言葉に福島はしばし呆気にとられていた。
「早く走るって……なに、今から陸上選手でも目指すのか?」
「いや単純に体育の走競技の成績を上げたい」
「えらい率直だな……そうだな、どう説明したもんかなー」
うーんうーんと唸る彼女、会計業務こそこなすが彼女はおそらくどちらかといえば体育会系。
理論で説明するより、実践したのを見せる方が性にあって居そうな気もしているからこそ――
「……下之って火曜の放課後空いてる?」
「ああ、生徒会の無い日だな」
「その日なら放課後アタシがみっちり教えてやれるんだけど、どう?」
「ああ! 願ったりだ、頼めるものなら」
「なら決まりだな! アタシも放課後はどうにも暇……おおっと、じゃあまず明日から早速な!」
「よろしくお願いします、福島コーチ」
「いいねえ、いいねえ! アタシのノってきたぁ!」
と、言った具合に福島に走り方を教授してもらうこととした。
半ば無理やりに入れられた生徒会の伝手を使わないのはもったいない、福島が引き受けてくれるなら俺も少しは走れるようになるだろう。
そうしてまずは走る為のトレーニングを福島に頼るとして、もう一人はなんとも身近な人物である――
生徒会帰り、俺と姉貴とクランナで夕焼けの中を下校する。
そんな時に俺は姉貴に話しかけた。
「なぁ姉貴」
「なにかなユウくん?」
「剣道教えてくれない?」
「いいよ」
「実は俺……って理由も聞かずにいいの!?」
「だってユウくんのお願いだもんっ、断る理由が見つからないよ」
あ、ありがたいことだが。
こうもあっさりと聞きいれられてしまうとなんとも言えない気持ちになってしまう。
俺の中で積み立てた言い訳もとい理由付けがぁ。
姉貴はブラコンのきらいこそあるが生徒会副会長としての職務は全うしている上に、文武両道で成績も学年トップクラスという才色兼備な人間である。
中学校の頃でも生徒会副会長を務めていたが、その際に片手間に応援かつ欠員が出たことで参加した剣道の県大会では優勝に導いたほどなことを覚えている。
他の運動もおそらくは卒なく平均以上にこなす姉貴に、剣道を習いたいと思ったのだ。
「剣道教えるなら、放課後剣道場抑えちゃうけどけど?」
おおう、姉貴が生徒会副会長なことを忘れていた。
副会長だけにそれなりに権限も持っているのだろう……頼もしい見方だ。
「出来ればそれが良いけど、剣道部の邪魔にならない場所があればいいかな」
「うん、わかった。それで生徒会がある日は遅くなっちゃうから、木曜とかどうかな?」
「それが良いと思ってたんだ! ありがとう姉貴、これからよろしく頼むよ」
「いえいえ。でも教えるからにはちゃんと教えるからね!」
「みっちり扱いてくれ」
ということで、福島に続いて二人目に頼るのは姉貴だった。
剣道というのも、俺が扱うのは鉈でこそあるが剣術も少しは扱えるというか知識もあればと考えてだった。
実際異能力的バトルで、現実でどうやってパワーアップトレーニングをすればいいかと言えばそれぐらいしか思いつかなかった。
……火曜福島との走競技トレーニング、木曜姉貴との剣道指南。
更には早朝ランニングもするので一気に運動少年になりそうである……桐の作る謎ドリンクが筋肉痛に効くことを祈りたい。