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第526話 √5-7 より幸せに


 

 桐の夜襲ならぬ朝襲を受けたその日、いつものように学校に行き朝のホームルームまでの時間を俺とユイと高橋が集まって適当に話していた時のこと。


「ところでユウジさんよ、女の子の髪についてどう思う?」

「……いきなりどうした」


 ユイの口からアニメやゲーム以外の話題が出てくるなんて……!

 天変地異の前触れか、ヒョウが降るだけで済んでほしいものだが。


「世の中には色んな髪型があるもんなー、それを見てユウジがどう思うのか聞きたいもんなー」


 その語尾なんだよというのはユイの前では無意味なのでスルーを決め込むとして。


「どう思うって言われてもな、まぁいいんじゃね」

「ふむふむユウジ、髪型に無関心ではないということでおk?」

「そりゃな」


 それはもちろん、視界に映るものだし、少し目線を上げれば自然と目が行ってしまうものでもあるし。

 というかぶっちゃけるとポニテが好きだけど、三度の飯よりポニテだけど、ユキのポニテ似合いすぎてたまんないんだけど。

 でもそんなぶっちゃけは内心に仕舞っておくとしよう。


「それでユウジはどんな髪型がお好きで?」

「ポニテ」

「早押しだとぅ!?」


 ポニテ好きなのを隠すことは叶わず、仕方ないよねだって好きなんだもの。

 隠せないさ、誤魔化せないさ、だって好きなんだもの。


「……よし」

「…………」


 いつの間にか俺たちの近くに居たユキがガッツポーズをしていた一方で、姫城さんはポケットからヘアゴムを取り出すとそそくさと髪を結い始めていた。

 

「ぬぅ、こういう時短いと不便だぬ……伸ばそうか」

「ユイ?」

「いやいやなんでもないぞい!」 

「俺がポニテ好きなのは置いておくとしても、結局は慣れてる髪型がいいんじゃないか? きっとそれが一番自然で良く似合う」

「ふむ……」

「そっか」

「さすがユウジ様……」


 ユイ、ユキ、姫城さんがそう答える。

 少なくとも姫城さんの特に結うことのないさらさら前髪ぱっつん気味のロングヘアーも魅力的だし、姉貴のハネ気味の髪型もなかなか嫌いじゃないし、ユキのポニテは神だけど。

 

「まあでもユイのポニテってイマイチ想像できないな、そもそも髪長いユイを知らないし」

「面倒だからバッサリ切っちゃうからぬ。見たい?」

「いや……別に」

「そこは嘘でも見たいって言えYO!」

「ユイのポニテ見たいなー(棒)」

「心が入ってないじゃんよ!」


 嘘でも見たいと言った結果なのに。


 正直な話ユイを女子として見たことは一度たりともないのでしょうがない。

 あくまでも気兼ねなく話せる友人であり今は家族なのだ、一応の義妹相手にそういう感情を抱くというのはどうかとも思うし、現状のユイがそういう対象に見れないのも確かだ。

 確かに姉貴は美人だし、ホニさんは可愛いし、桐だって黙っていればぶっちゃけると可愛いが、そういう対象にはなりえない……それは家族だから。

 ホームステイ組のクランナやアイシアはどうかと言えば、そもそもまだ会って早々なのでそういう感情もないのだ。


 とは言ってもユイって素材はいいはずなんだがなあ、このグルグルメガネが全てを台無しにしているようにしか思えない。

 ちょっと背丈が高めで、スタイルは細すぎず悪くない、髪も手入れされていないわけではなく、肌もほどほどに健康的な色をしていて好感を持てる。


「ぬ? アタシのことじろじろ見てどした」

「いや……別に」

「なんかその返しイラっとくるんDEATHが! ぬー……ユウジ調子に乗りやがって、見てるがいいぜい!」

 

 ユイはいつものおちゃらけた言い方と裏腹に、僅かにむっとした表情を口元に見せながら去って行った……そんな気に障ること言っただろうか。

 すると丁度チャイムが鳴りホームルームの時間がやってくると各々が自分の机へと戻っていった。

  


* *



 それはふと休み時間にトイレに向かったその帰りだった。

 そういえば家にトイレットペーパーの予備はあっただろうかと、内心で記憶を巡らせているその時だった。


『―――――』


 まただ。

 十数日前に学食に行く道中で身に覚えた言い様のない感覚にして、不可思議な体験。

 俺を拒絶するかのようなぞわりとした得体のしれない空気が俺を包み込んだのだ。

 その主を俺はまずは探し、すぐさま見つかることとなる。


 不健康手間とも言えるほっそりとしたスレンダーな容姿、整った顔立ちと片目を隠さんばかりの前髪の深い緑色の髪に、他人を拒絶するような冷たく沈んだ色の瞳。

 

「えと」


 つい俺は話かけようと試みる、その瞬間だった。 


『――あなたは(ことなり)の匂いがする』

「!?」


 初めて彼女の声を耳にした、少し低めで決して大きな声でなかった。

 しかしその声はまるで心を侵食するかのように俺の中に響き、警戒と敵対心を孕んだ口調が俺を少し震わせる。


『このままではあなたに良くないことが起こる……不可思議な存在と共に居るのはやめなさい……』

「は、はぁ」


 そう言うだけ言って彼女は去っていく、言い終わった瞬間に拒絶するかのような空気はなりを潜め、気づけば休み時間の喧騒の中に彼女は消えていた。


「(ことなり……?)」


 ”ことなり”と言われてもなんのことだか分からない。

 ならば次に言った不可思議な存在のことだろうか、不可思議な存在といえば――


「(ホニさん……がどうかしたのか?)」


 思い当たるのは出会った神様のホニさんぐらい。

 しかしホニさんほどの人畜無害どころか、素晴らしい神様もいないだろう。

 なにせいつの間にか大人数となった下之家を姉貴と共に支えてくれている子なのだから。


「良くないことねえ」


 ホニさんがいることに不都合はなければ、むしろいてくれて本当に助かる存在だ。

 ホニさんがいることで良くないことが起こる、というのが自分の中ではつながらないのだ。


「ま、変な人なのかもな」


 俺はそう勝手に結論付けて休み時間終了を示すチャイムを聞いて自分の教室に駆け込んでいく。


 楽観視する一方で、心の片隅には言い知れない違和感が残りつつあった。

 それは嫌な予感とも言うべき、胸騒ぎに近しいもの。

 さきほどの女生徒との邂逅で、俺はふと思ってしまうのだ。


 今すれ違った女子生徒とは――今度も違った形ですれ違うことがありえるということを。


 あくまで感覚的なものでなく、その胸騒ぎもすぐにふっと和らいでいったことで意識は薄らいでいく。

 そうして先ほどの出来事もあくまで一日の中のちょっと変な出来事でしかなく、また普通の日常に俺は戻っていった。

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