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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十五章 テガミコネクト
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第505話 √4-20 テガミコネクト

無駄エピソードなど含めつつも550部分目ですね

本編だけでも500話すぎて、ようやくの展開?

六月十日



 突然だが、かなり重大な事件だ。

 

 というより、衝撃というか。

 ぶっちゃけ、ショックというか。

 いやまさかそんな、という予想だにしなかったことというか。


「お、おはようホニさん」

「っ!」


 朝起きてリビングを訪れたところにいるホニさんに声をかけると、俺を見るなり一目散にキッチン逃げ出してしまった。

 俺の顔を見た途端に、顔を真っ赤にして逃げられてしまう。


「食事当番お疲れさま」

「あ、ありがとうございます」


 キッチンで追いつめても、顔は明後日の方向を向いたままのお礼。

 あまりの異常に俺もさすがに気づかないわけがない!



 俺、ホニさんに避けられてる!?



* *



六月八日



 時間は遡って手紙を書いた日。

 その時にホニさんに手紙を読んでもらって、それから自分の夢のことを話した途端に、泣かせてしまった。

 

 もしかすれば勝手にホニさんのことを書いてしまったのがいけなかったのかもしれない。

 それをホニさんが部屋を出てから気づくなんて、とんだ阿呆だ。


「ああ……やっちまったなあ」


 夢には姫城さんもユキも姉貴も、ちょいと名前を変えて手紙に書いているのはかなりグレーだ、一応手紙を書くことについては話しているだけまだマシかもしれないけども。

 そんな中で更になぜかホニさんや桐は名前を変えておらずに書いてしまうというミスを侵していた。

 桐に関しては俺の一存で著作権フリーだろうから放っとくとして、問題はホニさんだった。

 俺の空想によってキャラ付けされたというか、脚色された自分が別の見ず知らずの人間に手紙を介して伝わるかもしれないのだ。

 そう少し考えればひどい話だと思う。


「ホニさんはうれし涙言ってくれたけれどなあ」


 それをバカ正直に受け止めるのもどうだろうか?

 本当は怒っていたり、悲しかったりしていたかもしれない。

 俺に気を使って、そう言ってくれたのかもしれない。

 

「……それでも、な」


 今思えば明らかにやらかしてしまったと思っている一方で、ホニさんの言葉が気になってしまうのだ。

 俺がそんな手紙を書いたことにショックを受けたから、俺に手紙の才があった?

 ……ねーよ、大事なところでふざけんなよ俺。


「消えてなくなる? 無駄じゃなかった?」


 嗚咽混じりに連ねる言葉だけにすべて聞き取れたわけでもなく、完全な記憶能力も持っていない俺が気になって頭の隅に残っている二つのフレーズ。


「消えてなくなる……ってのは」


 なんだろうか? 

 消えてなくなるもの、と考えてふと思い出という言葉が思い浮かんだ。

 ほかにいくらでもあるというのに、真っ先に思い浮かべたのが思い出だった。

 人は思い出を忘れる、というよりすべての思い出を今この時瞬間、毎日毎時間毎分毎秒、頭の中で思い浮かべているというのはあり得ない。

 ふと思い出すから、思い出であるはずだ。

 

 本来ならば消えてなくなっていた思い出、記憶。


 そこであまりにも突拍子もないことを思いついた。

 桐はこの世界をゲームとリアルの混ざった世界、という風だったっけ? そんな感じで呼んでいたのをなんとなく思い出す。

 リアル混じりというのは一度置いておくとして、ゲームというのが指すのはおそらく俺が起動したギャルゲーの”ルリキャベ”だ。


 多くのヒロインが出てくることを推していたルリキャベで、たぶん各ヒロインのルートが存在していたかもしれない。

 または一本道で、そこにヒロインがたくさん出てくるだけなのかもしれないが、なんとなくそんな気はしなかった。

 たぶん、かもしれない、なんとなくなどの言葉が物申すように根拠がなく、あくまでの仮定でしかない。

 それも、そうだったら驚きだろうとか、そうすれば面白いかもしれないという好奇心によるものでもあるかもしれない。

 それでも、俺はある疑問を抱いて、仮定を考えてしまったのだ。

 そして口が勝手に開いた。

 

 

「俺は何回目だ?」



 桐が言うように俺がギャルゲーの主人公として考える。


『おはよう主人公、とりあえず女を攻略(オトセ)。でないと世界は止まったままじゃ』


 そう桐は言ったのだ。

 そして攻略したらどうなるのか、繰り返し続ける一年を超えることができるのか、世界が動きだすとどうなるのか。

 確か、更に桐は言ったはずだ。いや言っていないかもしれない、聞いていないかもしれないが、言っていないとおかしいことだ。

 それに対してよくわからない自信があった。


 ルリキャベを攻略し終わるまで、未来がないからのう。


 ルリキャベのヒロインは複数人、おそらくは各ヒロインのエンディングまでをゲームでは攻略する。

 ……ゲームではのこと、だったらリアルと混ざった今の状況ではどうだろうか。

 夢の中でホニさんと出会ったタイミング、そして実際の俺がホニさんと出会ったタイミング。

 それに関しては時期が少しズレているが、シチュエーションは殆ど一緒だったはずだ。

 夢の中では四月のある日神石の前で、実際には三月末に神石の前で。


 夜に見る夢というものは記憶を繋ぎ合わせて作られるもの、だから中途半端にリアルな場面もある。

 もちろんアニメや映画や友人との会話の中で存在した、要素も含まれることでファンタジーを帯びることもあるだろう。


 そう、例えば俺とホニさんと桐とで、敵に立ち向かうような。

 

 しかし最近見る夢は少し変だ、というよりあまりにもリアリティがありすぎる。

 連続性もあり、展開というか話に破たんがなく、まるで本当にあったことを回想しているだけのような。



 俺が今まで思い出していないだけで、実際に経験したかのような。



「……まさかな」


 

 それを仮定して考え続ければ、ならホニさんの消えてなくなるという言葉を再度考えてみる。

 俺から消えてなくなっていたはずの思い出、記憶をもしかするとホニさんは覚えている?

 その次にホニさんが言っていたことで記憶に残る、無駄じゃなかったという言葉も引っかかる。


「いやおかしいだろ!」


 俺の記憶は、物心ついてから連続性のあるものだ。

 なにもなく、空虚に途切れている部分は思いつかない。

 だけどもユキについての思い出などがその連続性の中に溶け込んでいるからして、考えるべきだったのかもしれない。

 

 そんな記憶の中にでも、三人で戦った記憶はなく、夢で見たのが初めてだった。


 割り込む余地のない記憶に、夢で見た場面が入るタイミングはない。

 更に思えばいろいろと不思議に思うことがある、実際に出会ったホニさんは神石前で初対面のはずだった。

 しかし初対面から時間が多くは経たずに、かなり早くに俺に懐いてくれたのを思い出す。

 

 

「もしかして俺が覚えてなかっただけで、ホニさんたちは覚えてるのか……?」 


 前の記憶を、前の世界を、前の物語を。

 俺は毎回忘れているだけでギャルゲーのルリキャベを、世界を繰り返して攻略し続けている?


「…………流石に飛躍しすぎか」

 

 と、ここで一旦冷静になる。

 すべてが妄想と言っていいことに熱中して考えているに過ぎない。


「もし本当なら、俺だけは忘れておいて、毎回違う女の子を攻略していることになるな!」


 ……俺、最低すぎる。

 毎回忘れるのは都合がよすぎる。

 うん、さすがにないわ。

 

「それでも、どうにかして謝らなきゃな……」

 

 せめて本人の許可は貰うべきだった、それだけは確かだった。

 それを怠ったことで、ホニさんを泣かしてしまったというのがあり得ないわけではない。


「とりあえず手紙を出すのはやめておくか」


 こうして手元にあった手紙を一瞥してから、封筒へと再度しまったところで机の引き出しに入れる。

 文通も続けたい、がホニさんが大事だ。

 まずはこの問題を解決してからでも遅くないはずだ、それからその手紙は数日間眠り続けることとなる――





 少ししてから自室を出たところで、居間に行くと見当外れだったようでホニさんはいなかった。

 そしてホニさんを家中探すというのも何か違うため、今度会った時でいいと自室に再び戻ろうとした時のこと。

 丁度階段を降りようとしていたホニさんと出くわした。


「あ、ホニさん」

「っ!」


 まだ階段を降り切っていないホニさんは、長い髪を地面すれすれまで揺らしながらこちらを固まったように凝視してくる。

 俺はまだ一階の廊下に足を付けているために、本来ならば背丈の差でホニさんが見上げる格好になるそれぞれの目線がちょうど同じぐらいになっていた。


 俺の顔を見るなり驚きや羞恥などが満ちた表情と、耳の先まで真っ赤に肌を染めたホニさんが目の前にいる。

 不謹慎というか失礼極まりないのだけども、一瞬の時見つめ合っただけでだというのに、そんなホニさんがすごい可愛いかった。

 何言ってるんだテメーどころじゃないが、その表情に思わずドキっとしてしまったのは確かだった。


 しかしその気持ちを抑え込んで、平静を装ってホニさんに声をかける。


「ホニさん、実は――」

「あっ、ああああああの! 夕飯の支度がありますのでえええええ」


 と急いで階段を降り始めようとした、その時。

 ホニさんが僅かに足を滑らせてよろけた。

 

「あっ!」

「危ないっ!」


 このままでは階段に頭をぶつけるかもしれない、階段の目の前の廊下に頭を打ち付けるかもしれない。

 俺の中でとある記憶が再生する、それは――


「っと!」


 どうにかしてホニさんを抱き留めた。

 ものの勢いづいたホニさんに押される形で地面に尻餅を付きつつも、咄嗟に伸ばした両腕でホニさんが倒れないように背中を抑えていた。

 それは傍から見ればまるで、二人抱きしめているようにしか見えなかった。 


 それでも俺は必死だったのだ。


 ホニさんは何が起こったか分からないような表情で呆然としていた。

 そんなホニさんが不安で俺は声をかけた。

 

「大丈夫か、ホニさん?」  

「ご、ごめんなさいユウジさ――」

 

 そう謝りかけたところで、言葉が詰まった。

 なぜかと言えば現在の自分の状況を理解したところだった。


「あ、ああああああ!? あのっ、そのっ、ごめんなさいっ!」

「ああ、悪かった!」


 抱き留めている腕を俺は慌てて引っ込めると、引っ込めた途端にホニさんは立ち上がった。


「ごめんなさいいいいいいいいい」

「ホニさああああああああん!?」


 そして猛ダッシュ、居間前の扉衝突寸前に扉を開けると瞬時に扉を閉めた。

 この時バターンと閉めるのではなく、きちんとドアノブを持って、優しくかつ早急に閉めたホニさんはさすがだと思う。

 ……って、いやいやいやそういうことじゃない!


「謝れなかった……」


 ……動揺故に違いない、というかまたホニさんに嫌な思いをさせてしまったのでは!?

 許可もなく抱き留めてしまったわけで、あくまでも緊急時とはいえである。


「というか、順調に罪を重ねてるのか……」


 気が重くなってくる、しかしそれでも謝らなければ! と心に決めて、立ちあがって自室を目指した。




 

 それからというもの、食事時でも微妙に話題が続かなかったり、それ以外の話題もあっさりと終わったりと、謝るまで行けなかった。

 というかね、いや現実逃避というかね、そう思いたくなかったというか。


「いやいや、まさかまさか」


 十分ありうるというのに、それを信じたくないが為に忘れようとしていた、一つの可能性。


「次頑張ればいい!」





 そうして、その一つの可能性が確信に至るのは二日後のことである。

 というよりもう信じなければいけないというか、逃げちゃだめというか。

 

 確信せざるを得ない、ホニさんに俺が避けられているという真実……!


「俺、ホニさんに嫌われた!?」

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