第490話 √4-5 テガミコネクト
リハビリにつき云々。
先制しツッコミをご馳走にならないように予防線を張り、保険とばかりに言い訳を思考錯誤し、まさに甘えで保身第一自分の人格が凝縮された↑の文であった。
要は、久しぶりに書いたのでお手柔らかに頼みます。ハイ、ソウイウコトデス、スミマセン。
「さて……」
桐に宣告された攻略法に動揺しつつも、俺は机に向かった。
手にはHBのシャー芯が装填されたシャーペンと、よく消えると評判の激落ちプンプン君。
机に広げられたのは、自分の机の引き出しから引っ張り出してきた未使用の大学ノート。
いざ準備万端、この俺にかかれば、今ここに一人の女の子を一瞬で射止める激烈ナウい雅な文章を書けるはずだ!
「いやいや……」
一瞬にして突伏した。
無理だろ、小学校の頃は作文書くたびに毎回涙目になりながら書いてた俺がだぞ?
手紙なんて祖父母に書く年賀状ぐらいなもので、女子への手紙? ハハッ、笑える。
ああ、こういうゲームシステムならクソだわ。クソゲーだわ、実際にプレイヤーが文章考えるんだろ?
このシャイボーイに何を求めると言うんですか、勘弁してほしいもんだね!
「うーん」
しかしこのまま内心の葛藤ばかりしていてもどうしようもない、一度書いてみてはどうだろう。
まず最初に筆を走らせてみようではないか、よし行ってみよう!
『今日はお日柄もよく』
俺はその手紙が届く日の天候を予知しているぞ!? いや雨かもしれんよ、梅雨だし。
雨の日にお日柄もよいって、なかなかに珍しい趣向じゃないだろうか。
いや雨の日好きの人を批判しているわけでない、どちらかというとお日様が出ている日柄の方が多数派に違いない、それが俺の意見だ。
というか、この件やめよう! これはボツでバツでペケだから、さて次の書きだしを決めよう。
『お手紙拝見させて頂きました』
固い!? が、いいのか? いや同じ学級のハズだし、固すぎるかもしれん。
もうちょい柔らか目にしてみることを提案する!
『うーっす、俺ユウジな』
それはもうメールレベルだよな!? 軽い軽い、軽すぎて文字が浮いてしまいそうだ!
その中間はないのかと、自分の文章能力に問い合わせしたいところだ。
『どうも、ユウジです』
もうこれでいいかー、当たって砕けて塵ゴミと化してゴミ箱行きになるぐらいの覚悟で、やってみるのもアリか。
半ば諦めの境地でカリカリと書き連ねてみる、というか中原アオという人物像がほぼ見えない自分にはムリゲーでしかない。
いいだろう地文でしつこいぐらいの弁明をしても、俺は悪くない! 悪いのは俺を主人公に選んだ誰か!
『どうも、ユウジです。一年二組男子生徒のユウジです。教室であの手紙拾ったので、勝手に読ませてもらいました』
カキカキカキとシャーペンが大学ノート上を滑る、ところどころシャーペンのプッシュ部分を顎に当てて考えてみたり。
『それで自分も手紙を書いてみました。携帯メールに頼り切った現代っ子には勝手がわかりませんね、変な点があればご指摘をば』
と、ここまで書いて「朱ペン先生へのお便りかよ」と自己補完ツッコミを入れ、現代っ子云々から消しゴムでゴシゴシゴシ。
『――書いて見ました。文字が汚くて申し訳ないです、これからも大いな上達は見られません、断言します。謝っておきます』
実際汚いし、女子からの手紙を期待されてるとガッカリだよね、なんかスミマセン。文句はこんなシステムにしたゲームのシナリオライターかプログラマーにでも言ってくれ。
『ということで、こんな自分でよろしければ文上でお話しましょう、お返事は↓ココまで』
郵便番号と住所を書いて、っと。
普通に個人情報だわー、でもゲームのハイブリッド世界だから大丈夫だろう、という謎の考え。
文章自体は……な、長くなくていいよね。
「はー、これでいいか」
と、何回か読み直して一応納得して。
「さて、清書するか……」
そうして貰った手紙にポールペンが走る。
あとあとパソコンのメモ機能かワードで下書きした方が楽だったと言う事実を、桐に指摘されて。
俺ぐぬぬ。