第485話 √4-0 テガミコネクト
更新する度にお気に入りが減っていく……ハッ! もしかして√bつまらなかったんですかね? なんというか期待を悪い意味で裏切ってゴメンナサイ。
『――ゲームオーバー、世界が終わります』
「お主ら! 集合はこの部屋じゃ!」
「うん! すぐに行くよ!」
二〇一〇年 九月**日
リセット。
二〇一〇年 四月一日
世界は再び始まる。
* *
ミユの部屋にて。
世界の始まりの日、それぞれ自分の部屋へと飛ばされた。
”過去の記憶を有す者”達は世界のリセットの度にかかる頭痛が遠のいた頃、ミユの部屋に集合を掛けるよう促していた。
そしてミユ、桐、ホニ、画面越しのユミジが揃ったところで桐が話題を切り出した。
「お主ら、特に異変はないか?」
「ユウジさんとの思い出も、みんなみんな覚えてるよ!」
「……私も覚えてるけども、これで引き籠り何年目かわかんない」
『――みなさん特に変化ないようです』
ホット胸を撫で下ろす一同、そこでミユがはっと気づき声をあげた。
「お、お姉ちゃんは!?」
下之ミナ、かつての世界で幼馴染へと転身し消えてしまったミユとユウジの姉。
果たしてこの世界では――
『――確認されました。下之ミナの部屋は復元され、同室に彼女は存在しています!』
「っ……ホント!?」
『画面越しにご覧ください』
ユミジの発現媒体となっているGBAには下之ミナの姿があった。
成長具合も神楽坂ミナと違う、真面目な表情で予習に取り組む下之ミナがそこにはいました。
「よ、よかった……お姉ちゃん」
安堵の表情を浮かべるミユの瞳には涙が浮かんでいます。
神楽坂ミナとして存在していたことに一応の安心を得たものの、やはり姉でない彼女を望んでは居なく、長い間気がかりだったようです。
『前世界ではゲームに現実逃避していましたからね』
「余計なこと言うとミュートするぞ!」
そうしてGBAの音量調節に手を触れると『冗談です冗談です、すみませんミユ』とユミジは茶化しを入れながら謝ります。
『とりあえず世界は元の形へと戻ったようです』
「じゃな……しかし前世界はゲームオーバーで本来ならばやり直しのはずなのじゃが、嬉しい誤算じゃな」
『ゲーム製作者がテコ入れでプログラムを途中に修正するほどに不完全な世界でしたから、匙を投げたのかもしれませんね』
「神楽坂ミナの世界が終わったから、ミナお姉ちゃんは戻ってきた……って解釈でいいんだよね?」
神楽坂ミナの世界が終わり、次の世界に移った。
下之ミナへの改変をして生まれた神楽坂ミナは抹消され、下之ミナが存在する元の世界ということです。
『おおまかにそんなところですね……ミユ、下之ミナの元に行かなくてもよいのですか?』
「む、むり!」
『顔を実際に見たいとは思わないのですか?』
「思うけど! ……外に出たくない。それに大丈夫、戻ってきた感じがちゃんとするから」
『いつかは克服しませんとね』
「ユミジはうるさいな!」
プログラムであるユミジにも変化が訪れているようですね。
リセットされて全てがなかったことになる――そういうことではないようです。
世界はゆっくりと、それでいて確実に変わり始めているのです。
* *
春休みを迎えて、そして目前には藍浜高校入学式の迫る。
勉学に励むこともなく、マサヒロなどと時折メールしながらインターネッツに明け暮れる非健康的な生活を怠惰に過ごしてきた。
そういえば姉貴によると今日の夕方に外国人の女子生徒がホームステイしにくるという。日本語が上手などと前情報に聞くものの、果たして良好な関係を築けるか不安だ。
母が再婚したことで同居することになったユイと、神石前で出会ったホニさん、この家は大分賑やかになってきた気がするな、
昼食も迫るお昼頃、マウスを動かしているとふと思い出す。
「(もうそろそろ姉貴が昼食作り始める頃かな)」
俺はパソコンをシャットダウンして席を立った、部屋を出た。向かうのはキッチン、そうなんとなく姉貴を手伝いたくなったのだ。
どうせいつも通り「いいの~、休んでて~」と軽くあしらうように断られるのがオチなのだが。姉貴は一人でなんでもしたがるというか、実際に出来てるからなんの問題もないんだけど。
でも俺は手伝えないことにもどかしさも感じていて、出来るならば俺は姉貴の手伝いをしたいのだ。
え、なんでそんな面倒なことに首を突っ込むのかって?
姉貴の役に立てるって嬉しいことじゃん?
「姉貴ー、何か手伝うことあるか?」
そう、期待半分に提案する。
「ユウくん! え~、いいよ?」
「いや、今俺は無性に労働したい気分なんだ! 是非に手伝わせてほしい」
こうは言っても、続きは分かっている。僅かな望みに期待をかけても無駄なのはわかっているんだが――
「じ、じゃあお言葉に甘えちゃおうっかな」
…………
「え」
しばらくその意味が理解できなかった。え、俺手伝ってもいいのか?
「あれ、ユウくんもしかして気を使ってくれた……とか?」
「いやいや! さあ、手伝えることというのはなんでございましょう!」
「本当! えっとね――」
少し前までの姉貴ならこうじゃなかったのにな。
突然の変化で、なぜ? と思うことはあるが――
「――やってくれるの!? ありがとねユウくんっ」
姉貴の笑顔でどうでもよくなったのだった。
俺は嬉々として野菜の皮剥きを手伝っている、上機嫌に鼻歌を歌いながら味噌汁を作る姉貴の隣で。
こういう救われ方もいいんじゃないかな~