第484話 √+1-4 彼らはこうして繋がっている。
二〇**年**月**日
「あちゃー、こういう結末になったかあ」
女Aが画面を眺めながら、そう意外そうな物言いで呟く。
「本来このシナリオは冬までありましたが、イレギュラーな形でゲームエンドとなりました」
「……修正箇所が適切でなかったようだ」
「というよりも世界構築の時点でかなり無理があったかもねー、なにせ姉を全く別の幼馴染に書き換えるなんてさ」
「このシナリオ開始が遅延した理由の主でもあるからな、しかしここまで派手に壊れるとは」
あくまでも他人事で続ける三人の会話。
「私のシナリオが相当に穴だらけですから、申し訳ありません」
「いやいや△△、少なくとも今回のケースは俺の修正プログラムの構築失敗だ」
「でも〇〇、実際のところかなりイレギュラーなことあったよね? というか私も忘れてたけど」
「私も後々になって思い出したのです。あまりにも不可解です」
「ああ不覚だった――攻略済みキャラクターを一人忘れていたなんてな」
攻略キャラクター、数えられるのはマイ、ホニ、クランナ、ユイ。
いえ……居たではありませんか。
「井口七美、その人物も攻略済みでありましたのにね」
井口七美、ここで初めて下の名前が出ましたね。
そう彼女のことです。確かにクランナの頃の”イフ”として攻略された事実は存在するのです。
――あれは決して誰かの妄想でも空想でも虚実でもなく、事実に起きただったのです。
「あとログを参照すれば分かるけども、なんか下之ミナのこと覚えてたんだよね」
「そういえばそうだった、プログラムは作用したはずだ。なぜ彼女だけが例外だった?」
「それに彼女は今までのシナリオでも時折プレイヤーNo.01と接触してますね」
「彼女はキャラクターNo.1にNo.3にNo.aと同じようにルートシナリオの記憶が残留する現象が起こっていたのだろうか?」
「下之ミナについての記憶が残っていることが確認されていますが、ルートシナリオをについては一切触れていませんね」
「んー、ちょっと変だよね。それじゃ彼女に対してプログラムが中途半端に作用したことになるよね」
ここで挙がっているのは井口の異常性。
本来なら消去されているはずの下之ミナの記憶が残留した、それも初期段階でユウジ以外が消去され、後にユウジでさえ消された情報が。
にしては既存シナリオの記憶は有している痕跡は見られない――というもの。
更には誰一人その攻略された事実を覚えていない、というこれまた偶然とも捉えられてしまうが異常の一つ。
「……少し彼女について、私は調べてみます」
「で、どうするー? 普通ならハッピーエンド以外はやりなおしでシナリオ再開だけど」
「いや、修正の余地はあるがこれ以上やっても自分たちの望む展開に進むとは思えない。次シナリオに移行した方がいいだろう」
「だねー。でも難しいなあ、文字だけみてたらそこまででもないことが、たった一つ消されただけでプレイヤーNo.1はああなっちゃうんだもんね」
「……記憶を少し弄っただけでは対処できないこともある、学ばせてもらった」
「そうですね。それでは少し休憩を挟んで監視に戻りましょうか――」
ここはとある場所のとある時での会話。
そしてとある世界が終わりを迎えることをあくまで他人事で、傍観者で考察している話。