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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第八章 ※独占禁止法は適応されませんでした。
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第129~132話R √1-11 ※独占禁止法は適応されませんでした。


「ユウジー」


 ダダンダダンという雑なノック音とユイの声がドア越しに聞こえる、ドアに向かってカギを開けて──


「ユウジ、海に行こう」

「よし、行くか」


 ……なんともグッジョッブな提案に俺は即承諾した……考えてもみようか。

 暑さに悩まされている最中に、夏休み限定イベントこと海水浴。

 それは太陽光線降り注ぐ真夏の地上で許された贈り物――海だ。


 正直インドア派っぽいユイが思い切りアウトドアな海水浴を提案するのには違和感があるとか……こまけえこたあいいんだよ!

 ギャルゲーのイベントってヤツなのだろう、そうに違いない。

 

「ユウジ氏にはコネクションを使って海水浴に行くメンバーを集めてほしいぞい」

「負かされた」


 水着という爽やかかつ開放的な衣類を身に付け海へと飛び込めば、最高に気持ちのよいことだろう……更に目玉ポイントは美少女勢だ

 なにせ皆が美少女なのだから、何を着せても似合いそうな女子勢なだけに、彼女たちの水着姿には期待は右肩上がりのごとく膨らんでいく。


「楽しみぞい」

「ああ、全面的に賛同しておこう」

「今回ばかしは見事なまでなナイスアイディアだな、ユイ」

「へへ、アタシがアニメを何本見たと思っている」


 一応の裏付けとしては「アニメ見てたら海行きたくなった」と、いったところだろうか。

 ラブコメ系深夜アニメなら大抵はあるであろう、プールor海による水着回に影響されたのだろう。


 そしてギャルゲーでも多くのヒロイン、はたまたメインヒロインの水着姿を自然に披露することが出来る恰好のシチュエーション、海にして水着回である。


「流石ユイさん、格が違うぜ!」

「のほほ、崇めるがいいさ!」

「ははー」

「素直!」


 ということで、夏休み最初のイベントとして海水浴が決定。

 そうして今からメンバーを呼び集めるとこととなったのだった。




「海だ。」


 風に乗って漂う磯の香りと、空から照りつける夏の太陽の下、水着姿の男女が砂浜ではしゃぐ姿が俺の視界には映っている――

 ということで海にやってきたのです、やってきたのだ、やってきたのだそうな。


 藍浜町という名前が指す通り、この町の名物に今も変わらず砂浜を持った”藍浜海水浴場”が存在している。

 近年は防波堤やら埋め立てなどで失われつつある砂浜が、今も広い範囲で現存しているのがこの藍浜だという。 

 名前の由来は、今でこそ普通の海ではあるものの昔には海が透き通るように綺麗で藍色に見えたとか、見えなかったとか。


 そんな海水浴場だが、なんと俺らが済む住宅街から徒歩五分。

 この町民にはすっかり慣れているのもあるが、街を歩けば磯の香りが鼻孔をくすぐるようなそんな土地柄である。

 そしてすぐ歩けば山がそびえているという、ある意味では山と海の間に存在する切れ目に出来たような町なのだった。

 海水浴場は隣県から観光客が訪れるほどであり、山は山でキャンプ場が存在することから夏には海と山を満喫できる、そんな町と言えよう。

 そしてちょっと商業施設を歩けばスーパーから本屋にファーストフードと映画館まで揃う充実っぷりは、まさに映画のセットのような凝縮感だ。


 そんな町であるからして、幼少期は海と山を遊び尽くす。

 そして中学生になる頃には当たり前すぎて飽きてしまい、高校生になればリア充の増加に伴い海や山でパリピ、大人になればまた遠ざかる……そんな町民性だったりする。

 観光客から見たら貴重な砂浜付き海岸に、背中には緑生い茂る山がそびえ立っている絶好のロケーションかもしれないが――町民には当たり前の海と山でしかないのである。

 だから別にありがたみもなく、毎年夏シーズンになれば町民こぞって海に行くというわけではない。

 夏のシーズンはむしろ縁日などのお祭りが盛んになる傾向にあるようで、その流れで砂浜に来るというのはおまけだったりする。

  


 と、まぁ俺の町のどうでもいい傾向について話したところで。

 

 この海水浴場には観光客向けに海の家もあれば、割としっかりとして更衣室も準備される

 しかし観光客で更衣室もとい水着の着替えスペースは混雑するので避けたいのが町民といったところ。。

 そこでポイントは海水浴場まで徒歩五分といったところで――むしろ家で着替えを済ませて海に行けばいい、というのが町民の共通見解になっている。

 だからこそ夏真っ盛りでは水着姿の半裸で歩いていても特に奇異な目で見られることはない、サンダルに水着にパーカーを羽織るだけで町を歩く女性もいるぐらいだ。


 ということで各自水着を着てから来るとして、海水浴場での現地集合ということを連絡した。

 ……まぁ、着用した上にTシャツやらズボンやらスカートやら履くのは自由だし、そのまんま水着で来る人は流石に居ないだろう――


「来たぜー!」


 ちょっとした住宅街を抜けて駆けてきたのは、スクール水着姿のユイ――


「まずはお前かよ!」 


 居たよ! 確かに自由って言ったけど、するのかよ!


「ぬわ! アタシが二番乗りじゃいけなかったのか!」

「いやいや!? ……その姿で家から来たのか?」

「もちろん! 最初は全裸の予定だった」


 露出予備軍は通報した方がいいのだろうか。

 しかしユイがスク水なんて着てもだな……正直――


「……そう言いつつも、その口元の涎はなんなんだい?」

「くっ……!」


 口元を拭うと確かな水気。


「アタシのこの水着に欲情したか? それともアタシに――」

「もし可能性があるとしたら水着です」

「……そうきっぱり言われると、なんか複雑だぬ」


 すると微妙に口を尖らすユイ……少し珍しい表情ではある。


「へー、お前に乙女心的な繊細なもの持ち合わせてたんだ」

「いくらなんでも失礼過ぎないかそれはっ! ユウジ!」

「ウソウソ、お前スタイルは良いから似合ってる似合ってる」

「そ、そうなのか!? うん、いやまぁ、どうも……」


 なんかユイがちょっと照れていた……うん、新鮮。

 割とスク水が好きらしい俺としては誰が着ていても割とグッとくるらしい……あ、女子に限りますよもちろん。

 ユイはギリギリ女子というか、意外とスクール水着などの身体のラインが出る服を着ると女子しているというか、なんと言いますか。


 首から下見たら十分イケる!


「それでも、その眼鏡はそのままなんだな。このまま海に入るのか?」

「いや、ちゃんとゴーグルは持っているぜい」

「ほう天…ゴーグルを付ければ、お前の素顔見れるかもしれんな」

「はっはっは! ぬかりはない! 渦巻き模様の入ったゴーグルを持ち合わせている」


 そんなの何処で売ってんだよ、


「それで、アタシが何故この水着を着てきたか分かるか?」

「いや」

「そのほか家にある水着はマイクロビキニにスレンダーショット、穴あき――」

「なるほどな、危ないものしかないな」

「そこにアタシの美貌を組み合わせたら……それはもう」

「それはもう、言葉に出来ないだろうな」


 眼鏡と水着のアンバランスさで。


「ということから消去法で、これ。と、言いたいところだけどもう一つ」

「ん? なんだよ――」


 そしてユイは衝撃的なことを言い放った。



「ユウジが好きそうだなー! って思って!」



 な。


「なななななな、何を言いなさる! そんなことははははははは」

「ユウジは女子のプール授業の時に見惚れてたからね、スク水に」

「いや、あれは女子を見ていただけで!」

「それはどうかな……あの見る目はケモノの眼をしていたぞ」

「くっ!」

 

 まさか俺がスク水好きなのがバレているなんて、それもユイにバレたというのが微妙に弱みを握られたみたいで嫌すぎる。


「それに実際に着てみてはっきりした……」

「いや、だから――」

「ユウジはスク水好きだと!」

「大声で言うな!」


 よりにもよって、そこ大声かよ! なにその最悪なチョイス!

 すると、後ろから「ドサッ」という何か落ちた音が――



「ユウジ様……そうなのですか?」



うわー、最悪すぎる……姫城さんに聞かれてしまった。

 「着替えてきます!」とか言いだしそうだから困る……まぁ流石にないよな。

 

「そうだったのですね……」

「いや、それは、えと」


 どう言い訳すればいいのか、まぁ確かに真実には変わりないけど……ちょっとそれは特殊な気もして――


「……うう、私にはどうすることも出来ません」

「しなくていいから! そそういえば、姫城が持っているのはクーラーバッグ?」


 なんとか話題を逸らすことにする。


「えーと、皆さん泳ぐでしょうし。スポーツドリンクを買い込んできました」


 そうしてクーラーボックスを開けると五百ミリリットルペットボトルに入った各種スポーツドリンクが氷水の中に浮かんでいる。

 姫城のそれは相当重いんじゃないだろうか。


「いくら近くに水があるとしても油断はなりません! 水分補給は別なのです!」

「おおー」


 姫城、なんというかすごい気が回っているなぁ……俺は少し高いけども海の家で済ませる予定だったからな。


「じゃあ悪いけどさっそく一本貰おうかな……いくら払えばいいか?」

「そんな! 私が勝手に買って来たんですから気にしないでください!」

「いやいや! それは流石に悪い!」

「いいんです! ユウジ様はもちろん、皆さんが倒れては意味がないですから! もしユウジ様からお金をもらうことがあれば、そのもらったお金は生涯使うことはないでしょう」

「タンス預金!」


 いい子すぎる、というか本当に悪い気がするんだがなあ。


「でも……本当にいいのか?」


 そう、しつこく聞いてみると姫城さんはもじもじとしながら――


「……じ、じゃあユウジ様が飲んだものを一口飲ませてください!」

「えっ、いや、それは全然いいんだが……飲みかけってこと?」


 なんか失礼な気がしてならないんだが。


「はい、そしてユウジ様が口を付けた!」

「……それに何の意味が?」

「か、間接キスを!」

「……」


 凄い、間接キスを堂々と狙っているのは初めてみた。

 しかし、姫城が買ってくれた訳だし……これぐらいはどうってこと――


「ああ、わかった。それでいいなら」

「本当ですか! ありがとうございます!」

「じ、じゃあ頂きます……」


 ごくごく……水分が体に染み渡るようだ! っと、っここまでにして。


「えと、はい。姫城」

「は、はいっ!」


 ……あ、あれ? なんかムショウに恥ずかしいぞ? 分かっているとはいえ、分かっているのだが……うーむ。


「いただきます!」


 彼女がペットボトルに口を付けて、ゆっくりゆっくり……飲もうとしない。

 ずっとペットボトルに口を付けたまま、顔を真っ赤にして硬直させていた。


「ユ、ユウジ様の味……」

「っ!」


 違うから! それスポーツドリンクの味だから! ……とはツッコめない俺が居た。

 悦に浸る姫城を見て、なんとなく動揺してしまっている俺が怖いというか悲しいというか……。

 

 そしてちょびっとだけ飲むと。


「あ、ありがとうございました!」

「い、いや! こちらこそ(?)」


 と、姫城が口を付けたペットボトルを受け取る。


「……」


 あ、あれ……?

 間接キスごときで、何故ここまで緊張しているのだろうか、小学生じゃあるまいし。

 って、姫城が小学生ってことではなくて……あれ? 


 いや、もうなんか暑さで頭が回っていないんだろう。

 水分補給の為に遠慮なく――飲んでしまえ。


「っ」


 ごくごく……? 心なしかさっきより甘く感じるな……気のせいだろうけどな、だよな、うん。


「ユウジ様と私の唾液が混ざり合って……それを言い値で売ってください!」

「いや売らないよ!?」

「何故ですか!? 売ってください、後生です!」

「俺がお金受け取っちゃダメだろう!? 普通に返すから、な!」

「そんな! それをタダでもらうなんてとんでもない」


 姫城さんが買ってきたスポーツドリンクを俺が飲み、それを買い取ろう姫城さんという謎の図。

 色々あって姫城さんに俺の飲みかけを返したのだが、そのスポーツドリンクを大事そうに抱く姫城さんに色々……悪い子ではないけど、やっぱり変わった子だなと。


 




「やっほーユウジ!」

「ユウくーん」

「ユウジさーん来ました」

「ユウジ来たぞー」

「おにいちゃーん☆」

「シモノーこんばっぱー」

「ユウ、なんだかんだ来たわ」

「おっしゃ来たぜぇ!」


 上から。 

 ユキ、姉貴、ホニさん、マサヒロ、桐、会長、チサさん、福島……というマサヒロとユイ以外は美少女美女が揃ったという。

 

 いや、会長達はまさか呼んだら来るとは……。。

 愛坂は俺を手当した頃から仲良くなったけど、生徒会メンバーに呼びかけたらクランナ以外来るんだもんな。 

 まぁ確かに生徒会の仕事も一応こなしてるし、有る程度は馴染んできたってことなんだろうか


「ホニって言うんだ? 下之くんの妹?」「はいっ! 神様……妹です!」

「どうチサ似合う似合う? 大人な女性に見える?」「ええ似合ってるわ、可愛いわ! 可愛らしい!」

「おっしゃ! ユウジ、後でビーチバレーすっぞ!」「え、まぁいいけど」


 早速皆は着替えはじめた……というより既に着ている水着になるためにTシャツやらを脱ぎ始める。

 ……しかし皆遠慮なく水着になるけど、まぁなんというかその、ありがとうございます。


 ちなみにユイはスク水姿で、微妙に周囲の視線を浴びつつも準備体操をしていたのだった。



「やっほ-い!」



 バッシャーン。飛び散る波しぶきがなんとも涼しい。


「ユウジー、パスッ!」


 目の前に現れるのは某ピンク色した生命体な柄のビーチボール。


「あああ、よっと」


 とっさに来たボールをなんとか回す。


「ナイスパスァ、ユウジ殿下」


 誰が殿下だよ。

 このボールパスはユキ、ユイ、マサヒロでやっていたようで、出遅れた俺がそこに入った形だ。


「ユイー、パスパス」

「喰らえマサヒロっ」

「えぇー、なぜにー!」


 ボスッと顔面にビーチボールが当たる音が響く。


「ぶふっ、マサヒロどしたー?」

「高橋くん、何してんのー?」

「ぬはは、これほどのボールを受け止めることも出来ぬとは……この軟弱者がッ!」

「お前の投げたボールだろうが! てか水上でシュート打つなや!」


 なんともにぎやかな光景だ。こういう風に外ではしゃぐのも悪くないな……てか、ユキと遊べるのが嬉しいぜ! 

 ……ユキも胸あるなー、ユイもそこそこあるし、幼児体型な会長ぐらいだ。


「シモノ! セクハラだよ!」

「何も言ってませんけど!」


 浮輪で浮きながらリラックスしてる会長を見たけど、特に意味はないぞ……うん。


「そういえば姉貴は何してんだろ……」

「ユウくーん、海の家のおじさんにおまけして貰っちゃったー」

 

 姉貴の声に振り返ると……姉貴は有る場所をとにかく揺らして走ってきた――見ちゃダメだ見ちゃダメだ見ちゃダメだ。

 なんというか、姉貴が物凄く誘惑な体つきで少しばかりとはいえ悶々としてしまったのは弟としてやってはいけないことな気がする。

 視線を逸らして手元を見る、おぼんに乗った大量のかき氷――


「おお!」

「皆で食べよー」

『はーい』


 砂浜とじゃれ合う会長を嬉しそうに見守るチサさんに「向こう岸まで泳いできたぜ!」という福島……向こう岸? ここら岸なんか見えないんだけども。

 バレーしていた俺達と、プカプカ浮いてた愛坂が姉貴のかき氷に反応し、集まって来る。


 各自姉貴のおぼんから好きな味を取って行くと、さっそく食べ始め。

 「フクシマサーン、かき氷競争シマセンカ?」「おう、ユイか! いいぞ、やろうぜ!」とか

 「アスちゃん、あーん」「あーんもぐもぐ……ちべたい、でも美味しい」「アスちゃん可愛い!」や

 「ユウジ、先食べてるよー」「下之くんも早くねー!」

 


「ユウくん、ちょっとこれお願いできる?」



 渡されたのは二つのかき氷。一つは貰っていない俺として、もう一つは……そういえば、姫城の姿が見えないな。

 来た時にスポーツドリンク貰ったし、居るはずなんだけど……もしかして。


「これって姫城の分?」

「うん、水着忘れちゃったらしくて荷物当番任せっきりにしちゃったんだよね、悪いと思ったんだけど……だからユウくん持っててくれる?」

「いや、いいけど……アイツ、水着忘れてたのか」

「んー、でもユウくんと会いたかったから! って言ってたから、ユウくん行ってあげて?」

「わかったー。じゃ行ってくるわ」

「お願いー」


 少し歩いて、姉貴の言ったパラソルを目指す……ここ、だろうか。

 ちょっとした荷物が陳列し、姫城が持ってきたであろうクーラーバッグに姉貴が持ってきたであろうクーラーバッグなどが並んでいた。

 その荷物の中心に、彼女は居た。


「ここに居たのか」

「ユ、ユウジ様!?」


 俺がパラソルを覗くと驚いた様子をみせる姫城……まぁ、いきなりだったしな。


「ここで何してんだ?」

「ここで……ゆっくりしてます」

「そっかー、じゃあ、はい」

「え?」

「どっちにする?」


 俺が両手に持つのは二色のかき氷。

 赤と緑……いやきつねとたぬきではなくて、ドッキリでさえなければイチゴとメロンだろう。

 そう言って二つのかき氷を姫城の前に差しだす。 


「え、えと……じゃあ赤で」

「んー、じゃ、はい」

「あ、ありがとうございます」

「隣、いいか?」

「は、はいっ! もちろん!」

「じゃ、失礼して」


 陽射しを遮断するパラソルの中は思いのほか涼しかった。

 そしてそんなパラソルの中に姫城は体育座りで座っていた――私服姿で。


「姉貴から聞いたけど、水着忘れたのか?」

「は、はい」

「マジで?」

「え、えっ?」

「いや、本当ならいいんだけども」

「……」

「姫城さ、体育の授業もプールだけ入らないからさ……何かあるのかなと」

「っ! 私のことを見ててくれていたのですか!?」


 そこかー、普通ドン引かれそうなことなんだが。


「まぁ、な……プールの授業はいつも見学してて、ちょっと心配だったんだぞ?」

「それは、すみませんでした」

「いや、いいんだって……今日も水着を忘れたのって――」

「……実は、嘘です。ごめんなさい、嘘です」

「そっかー」

「幻滅しましたか?」

「いやー、真面目な姫城がしないんだからさ……なんか事情があるんだろ?」

「…………」

「ま、言いたくなければ言わなくていいからさ……それよりかき氷溶けるから食べちゃおうぜ?」

「え、えと、はい!」


 二人してかき氷を食べ始める……すると。


「ユウジ様は……本当にお優しいんですね」

「んなことないさ」


 海水浴に来て水着にもならず、クーラバッグを担いできては荷物番をする姫城の方がよっぽど優しい。


「だから……きっと私は、あなたのことを――好きになったのでしょう」

「…………」


 何度目かの告白、それでも今までで一番気持ちがこもっている気がしてならなかった。


「こんな愛が――もっと早くに欲しかったです」


 憂いを帯びた表情で彼女をそう言わせるのは、何故だろうか。

 思えば俺は彼女、姫城マイのことを殆ど知っていない。


 邪推・下衆の勘繰り……だとしても、姫城がいわゆる”極端にものを考える”キッカケになったことがかつてあったのかもしれない。

 そんなことを考えさせられる姫城の言葉だった。


「……溶ける前に、食べちゃうか」

「はい」


 二人で食べるかき氷、真夏の太陽煌めく空の下、パラソル広げて二人座って海を眺めながらかき氷……久方振りに食べたかき氷。

 もう溶け始めているはずなのに、姫城と並んで食べるそれは何故かいつもよりも冷たく美味しく感じた。

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