第487話 √4-2 テガミコネクト
# イフノウリミックス? #
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クソゲヱのもし「ユウジがギャルゲーを最初に起動しなかったら」という世界。
ユキもマイも桐もホニさんもいません、だけどもそんなもしものお話。
梅雨に始まる物語よりもちょっと前。
四月の初め頃から、俺ことユウジは色々な出来事を経験していたのだ。
ホニさんが同居することになった、ユイが義妹になった、外国人二人がホームステイすることになった。
この中では時系列的にはクランナとアイシアがここに来たのが最後だ。
その直後、三女であるはずの桐が部屋を訪れて「この世界はギャルゲーとのハイブリッドな世界じゃ」と言い放つ。
ゲーム脳なのかと当初は笑っていたが、ところどころ思い出す違和感に、そして桐の言うことが間違いでない……直感的にもそう感じたのだ。
それでも完全に信用出来ない自分がいて、それを見た桐はあくまで真剣な表情で「予言してやろう、お主は四月××日ユキが珍しく迎えにきて、それで彼女は轢かれるじゃろう」などと、あまりに意地の悪い冗談を告げた。
それにキレた自分は「嘘をつくならもっとマシなものにしろ」と突き返した――しかし、それは本当だったのだ。
俺はそこで世界を繰り返した、ユキが轢かれる場面を見せつけられ。そして桐は真剣な面持ちで「間違っておらぬじゃろう? お主はユキを死ぬ運命から救う必要があるのじゃ」と。
時計を見た、四月一日。そして外国人二人がホームステイしてくる。確実に時は巻き戻っていた――ユキが死んで世界はやり直された。
それから桐と話し合い、その運命を回避することに成功した。ギャルゲーなのだから、その場面で好感度をあげてしまえばいい。そうすれば何か変わるんじゃないかと考えたのだ。
俺の幼馴染と思っていた篠文ユキはギャルゲーのヒロインだった、思えば俺にこんな可愛い幼馴染がいるわけがない、そして好意的なわけがない。
まあ幼馴染はいないことはなかったが、美人の枠組みではこそあったが彼女はクセが強すぎた。
それから姫城マイへの命の賭けた告白などなどを予告され、それもまたその通りで、この世界が「現実とギャルゲー」のハイブリッドであると確信した。
それでも彼女らヒロイン達ははあくまでもごく自然に、まるで本当にクラスメイトとしてそこにいたかのように、違和感なく溶け込んでいた。
また話を戻して、姫城マイの告白の前。入学直後に姉貴に相談し、生徒会を志望した。
俺は前々から姉貴の役に立てたらと感じており、姉貴が副会長を務める生徒会に入ろうと考えたのだ。結果はすんなりと拍子抜けに生徒会入りを果たした。
書記のチサさん曰く「ミナから相談は受けていたの、その内捕まえに逝く予定だったの」と妖艶な笑みを浮かべて言われ、自分も冷や汗を浮かべたのは言うまでもない。
少ししてクランナも生徒会を志望し、役員となっていた俺にどうにか入れないかと頼み込んできた。姉貴や会長やチサさんに相談し、これまたすんなり。
そういえば桐にホームステイ二人組も生徒会の一部もヒロインだという、さすがにユイはヒロインではなかったが義妹展開はギャルゲーのようで少々疑ったりもした。
生徒会に参加しながら、藍浜中学と変わらない面子での学園生活。まったくもって普遍的に時は進んでいた――
と、ここまでが梅雨のあの時までのこと。
入学式の時だけに見た、銀髪の目立たない「中原蒼」という彼女のことも完全に忘れ切っていた頃だった。
掃除の際に拾い、そのまま流れで持ち帰ってしまった。というより拾って忘れていた、帰り際にポケットまさぐって気づいた時には家に着くころだったと弁明しておく。
持ってきて良かったのだろうか、立派な窃盗罪に該当するのではないか、でもあそこの席は入学式を最後に欠席している――
「あ」
その机の主を少しだけ思い出す……確か名前に「蒼」って文字があった気がする。
そして……うーん外見はどうだったか、銀髪だったような気がするが、それにしては目立っていなかった。光の反射でそう見えただけかもしれない。
「うーむ」
掃除で拾った手紙を机に置いて眺める、表面に書かれた「拾ってくれた誰かへ」とは。
新手の勧誘チラシのようなものだろうか、はたまた何かのイタズラか。しかし書かれている文字は丸っこく女性が書いたかのようで、それにここまで手の込んだ冗談もないと思いたい。
「封を切ってしまうか」
いやいや他人の物だろう、しかし文言通りに受け取れば拾った人は誰でも読んでいいことになる。それは拡大解釈のしすぎか。
いいじゃないか、好奇心のままに任せてしまえという心の声と。いや、明日にでも元の場所に戻すべきだとの声が拮抗する。
しばらくの脳内論争の上で、好奇心が勝利を収めた。
「ええい、ままよ!」
カッターを引き出しから取り出すとシールの封を切った。開かれた封筒からは折りたたまれた手紙が姿を現す。
現れたのは二枚の手紙、どちらも開いてみると片方が文言が連ねられ、一方は白紙だった。文言の書かれた手紙に目を移す。
『どなかが存じませんが、手紙を開けてくれてありがとうございます』
『私は一年二組出席番号△番の中原蒼です』
『身体の都合で学校に行けるのはごく僅かになりそうで、入学式の日に手紙を机に置かせて頂きました』
『あるタイミングで糊が弱まるの考えて机の天板裏にくっつけてありました』
『長々と自己紹介をごめんなさい、私がこの手紙を書いたのは――』
『誰かとお話がしたいのです』
五月三十一日




