第473話 √b-57 神楽坂ミナの暴走!
※本√は残り九話です(え!?)
一話でハーレムブレイカーは流石のユウジ
「……すーはー」
落ち着け……この電話で彼女を呼び出して、それから俺は思いを伝える。
すべての引き金がこの携帯に託された。
電話をかけない、この決意を無かったことすることもできる。
ただ、
「それは傷つけた彼女たちに顔向けできない」
振ってしまったユキ、マイにユイにクランナ。好きな人がいるからと振ったのに、俺はその行動を起こさない。
そんなことありえない。
「……かかってくれよ」
俺は電話帳内にあるミナの携帯へと電話をかけた――
八月二日
俺は燦燦と輝く太陽の下、校門前によりかかっていた。
二日泊りがけ合宿の翌日だ。突然俺が「突然悪い」なんて電話したもんだから「昨日の今日でどうしたのー?」と俺の起こす行動を分かるはずもないミナは能天気な声で聴いてくる。
『明日、会えるか?』
『別にいいけど……なんで?』
『…………』
『ユウくん?』
ここで止めやら何の意味もない、声を出せ。決意しただろ、多くの犠牲の上でその選択をしただろ――
『大事な話がある、朝十時に学校でいいか?』
『え……うん、わかった。十時だね?』
そうして電話が切れたのだ――
「(断られたらどうすりゃいいかな)」
今頃、そんなネガティブな感情が溢れはじめる。その後はどうなってしまうのか、まさかサクラのように消えてしまうのだろうか。
嫌だ……嫌だけども――決めたことだ。
「(能天気になってしまえ、そうだ付き合ったあとのことを考えればいい)」
ミナと恋人関係になれたら、どうなるだろう。ミナのまた違う表情を見ることが出来るのだろうか、今からそれが楽しみで仕方ない。
妄想だけなら無限に広げられる、例えばウィンドウショッピングを口実にしたデートだっていい、それから――
「おはよー、ユウくん」
彼女がやってきた、学校指定にしたので今日は彼女も制服のようだ。
合宿時こそ土日からして学校利用者が少なく私服も許容されるが、夏休みでも平日は制服が推奨されている。
当然の帰結である一方で、彼女の様子に特に変わった様子もないことからコーディネートしなくてラッキーといったところかもしれない。
「おはよう、ミナ」
「お、ユウくん。今日はなんか顔が引き締まって見えるけど……もしかして、顔洗った?」
「いやいや毎日洗ってるから。ここじゃなんだし中入ろうぜ」
「ん? うん」
そうして校門から歩いて昇降口を訪れ靴を履きかえる。
「ねえ、ユウくんどこ行くの?」
「場所はどこでもいいんだけどさ、出来れば人が少ないところがいいかもしれん……あ」
あそこでいいかもしれないな。
「飲み物の自販機もあるし、ベンチも柔らかいしでナイス選定だねユウくん!」
ここは以前勉強会の休憩にとユキと訪れた場所、小ロビー。
「私ドデカミーンっ、ユウくんはどうする?」
「ああ……俺はジャングルメンにするかな」
彼女の飲料趣味、栄養ドリンクを結構な頻度で飲んでいた姉貴を思い出してしまうな。
プシュとミナがきゃっきゃとドデカミンを開け、ぐびっと大胆に喉に流しこんだ。
「うーっ! この細かい泡とこの薬っぽさ全開の味が相変わらずいい感じ! で、ユウくんお話って何?」
こちとら買ったジュングルメンの結露して現れる水と緊張で溢れる手汗の判別がつかないってのに、まったく彼女は俺の人生でもなかなかない決意をする前まで平常運行だな。
ミナらしい。
「ミナのことが好きだ」
ストレート、前段なしの直球勝負。彼女の反応は呆気に取られて、また飲もうとペットボトルのキャップに手をかけた状態で硬直していた。
「………………え? えーと、今なんて」
「ミナのことが好きなんだが」
「それは友達として……とかじゃなく?」
「ああ」
俺は、
「一人の男としてミナが好きだ」
自分でも思うほどにも並べられる言葉もないぐらいに馬鹿で、最後にはこうして率直に自分の気持ちを伝えることしかできないのだ。
「……本気で?」
「本気だ」
「……冗談とか、ドッキリでなく」
「個人的には人生でも最大の勝負に出たつもり」
「…………本気、なんだね」
少し前までのからかいを含んだ疑問の物言いが、真面目なものへと変わっていくのが分かった。
「幼馴染だよ? もはや腐れ縁みたいなもので……新鮮さなんてないよ?」
「だからこそ俺は安心できる」
「と、というか私こう見えて恋愛経験皆無で! 気取っているけどもどうすればいいのかも!」
「これから考えていこう」
「…………ねえ、本当に私でいいの? ユウくんの周りにはたくさん魅力的な女の子がいるのに?」
「ミナがいい」
彼女がここまで反応するなんて、俺がこんなことを言ったばかりに困惑させてしまっている。
でも、後悔はしていない。ここで断られるなら、それでいい――
「……いいよ」
彼女の答え。それは短いながらも肯定の、承諾の言葉。
「むしろユウくんから言ってくれるなんて思わなかった」
「そりゃ俺はヘタレだからなあ」
ここまで甘えてきたのもそれゆえだ。しかしミナは首を横に振って。
「いつか私が、私から言おうとしてたんだよ――ユウくんのことが好きだって」
――嬉しい。ミナが俺を好いていてくれたことが、それを言葉にだしてくれたことが嬉しくて仕方ない。
「先越されちゃったな」
「空気読めてないか?」
「本当だよ~、もっとロマンチックな場所が良かった!」
「来たときナイスな選定って言ってくれたじゃん」
「愛の告白と雑談の場を一緒にするユウくんがわからないよ……でも」
まあ、俺もそうは思うがさ。経験皆無な俺にはどうしたらいいかも分からないんだよ、情けない話だ。
「わかりました。ユウくん、だから付き合おう?」
俺は言い知れない幸せを感じていた――彼女と結ばれることの出来た、最高の結果にこれからの未来に。
こうして俺とミナは付き合い始めた。
*エラー箇所の特定が完了。
*これよりエラー箇所の修正を開始します。
*第一修正項目、今試験世界の人物内からの原因不明の過去世界引き継ぎ記憶情報の削除。
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*第三十七修正項目、下之ミナの残存情報の削除。