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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十四章 神楽坂ミナの暴走!
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第470話 √b-54 神楽坂ミナの暴走!

完結は流石に無理そうだぜウァーイ


 勉強終わりの気が抜けた数十分後には夕食支度が始まりミナ&俺で飯作り。

 結果、やっぱうめえなミナの料理。他女子勢も一同に戦慄を覚えるほどの美味&衝撃だったという。


 恐らく運動系の友人がいたのならば「体育館でドッジボールしようぜ!」などと言ってきそうだが、全員がそろってのインドア。

 この熱帯夜に誰が好き好んで冷暖房完備とはいえ効くのに時間を要し、無駄に汗を流す所業に挑まなければならないのかと、口に出しただけで大ブーイング必須だろう。

 もちろん俺もそんなこと御免、出来るならば俺は一生寝て過ごせたらと思うぐらいのぐうたら性からしてもありえない。


 女子勢のシャワータイム「ぬ、ユウジ覗くか? 三分間だけは許してやる」「ノリが風俗じゃねえか」とユイと会話キャッチボール。

 次に「……ユウジ様、覗いてくださいと言えない私をお許しください」「いやいやなんか俺が強要してるみたいだから」と誤解を生みそうな言い方で謝るマイにツッコミ。

 そして「ロリコンは犯罪じゃぞ」「十年経ったら検討してやらんでもない」といつものようにからかう桐でお送りするとして。


 アニメとかの男友達なら「ハァハァ、男の至上の楽しみを謳歌しに覗きにいこうZE!」などと言いそうなものだが。

 俺以外の男要員というか俺ハーレム状態回避の為にしか存在意義のないマサヒロは「最近は冤罪が多いからなー」と興味なさげに呟きながらギャルゲーをやる始末。

 いつものメンバーはなんというか、そういう感じである。


「さてっと」

「おう、ユウジどこ行くんだー」


 マナーよろしくに片耳イヤホンでギャルゲーをプレイするマサヒロが俺が腰を上げたことに気付いて問いてくるが、


「少しばかり風に当たってくる」

「いってら」

「いってきま」


 という特に感情も抑揚もない会話劇の後、俺は窓越しの月灯りに照らされる蒸された廊下で歩を進め、いつもの授業を行う教室棟にたどり着くと、階段を上がり階段を上がり――


「生徒会権限発動:マスターキー」


 なんてわざとらしいセリフを吐きながら開錠。

 ガチャリと扉を開けられた瞬間に突風が吹きこんでくる、そうここは藍浜高校の屋上だ。 


「おお、なかなか涼しい」


 藍浜高校一の高台であるおかげか蒸し暑いこの夜でもなかなかに風のおかげで涼しさがある。

 ここに来た目的は今は女子勢が占拠する湯気立つシャワールームを俯瞰で眺めようなどというサービスシーンをご丁寧に演出する為じゃない。


「ふぅ」


 俺はコンクリートの無機質な地面をぱっぱと軽く埃をはらうと、そこに仰向けに寝転んだ。

 見上げるはいい感じに澄み渡る星と月が織りなす夜空、今日は空気が澄んでるようで視界良好。


「…………」


 俺は、こんなことをかつては何度もしていた。

 こんなこととは、こうして屋上に上がって空を見上げる。見上げる空が青空だろうと夜空だろうと関係なく。

 一癖も二癖もある幼馴染と妹を持つと休息を求めて、こうして一人寝転んでいることがいくらかあった。

 個性的メンバーとの対峙に伴う脳内作戦会議の時間、僅かながらもこれが慣習化していたほんの休息。

 こうして家を抜け出して藍浜中学に忍び込み、姉貴の生徒会権限を濫用してカギを入手し屋上へと向かう。 

 

 あの告白の前日も、聞こえるのは風の音だけの屋上で最後の決心を決めたものだ。


「結果は散々だったがな」


 苦笑する自分、苦笑できる自分がそこにはいた。

 すべてに絶望して、すべてを失いかけていたあの頃に比べれば俺も変わったのかもしれない。

 いつか笑い話に出来る時が来るのではないかと思うほどに――


「いや、それはないか」


 そんな風に片づけられるほどに俺の器も大きくないし、いい性格もしていないし、そこまでバカにはなれない。

 俺にとっては彼女は掛け替えのない存在だったのだ。


 幼馴染というカテゴリーだけでは括り切れないほどに、彼女は俺の中で大きく占めていた。

 幼馴染は替われても、上野サクラには替えられない。



 俺はそんなことを考えている内にウトウトし始めた、今日はなかなかに動き回った。

 少し一人になって、休んでもいいだろう。心配しないように合宿部屋には書置きもある、少しは姿を消しても捜索隊は出動しないだろう――



* *



 夢は見なかった。

 何の騒音もなく、誰の会話もなく、気を削がれるほどの景観もなかったことで俺は何か月ぶりかに。


 しかし目覚めは、ある声と共に。



「おはようございます、下之君」



 見上げるとそこには学校制定のジャージに身を包んだ委員長がいた。



* *



「これまた珍客だ、おはよう委員長」

「てっきり姫城さん辺りが来るんじゃないかと思いましたか? 残念ながら彼女たちは今頃湯気に包まれているでしょう」

「委員長はと言うとカラスの行水に一番乗りにシャワー明け、と。俺が寝てたのは数十分もなかったのか」

「そういうことですね、でなぜ私が来たのかと疑問に思いますよね?」

「思わない」

「思ってください、そうでないと下之君がここからシャワールームを俯瞰していたことを声高々に叫びますよ」

「委員長って脅迫癖とかあんのか?」

「安心してください、向けるのはあなただけです」

 

 これが単なる好意だったらドキドキギャルゲー展開だったのに。


「で、どうしてまた」

「それは簡単ですよ。私も一度はここに来てみたかったからです」

「本当に簡単……だけども屋上は基本的に施錠、俺がカギを開ける保障なんてどこにもないだろうに」

「それは容易に考えられることです――決して集団の中にいるのが嫌じゃない、けども休みたい時だってある。ここで生徒会権限――といった具合でしょう」


 ……読まれすぎだろ俺ィ!


「そこまで行くと委員長を超能力者と疑うレベルなんだが」

「そんな大層なものじゃないですよ、委員長の勘です」

「女とかそんな定義が広いものでなく、ピンポイントで攻めてきたな」


 そんな会話も途切れる。委員長は寝転ぶ俺の隣に体育座りをして、空をぼーっと見上げる。


「何か考え事でしょう」

「”ですか”でなくほぼ断定と来たか……まあな、そんなところだ」

「女性関係と見ました」

「もうお前俺のカーチャンだろう」

「私が下之君の母ということになると、色々な意味で人間関係の図がカオスになることでしょうね」

「ああ、少なくとも俺はこの町を出ざるを得ないだろうな」

「照れなくていいんですよ」

「いや、恐怖してるから」


 にしても委員長には御見通しのようだ、案外相談すれば解決するのかもしれない。


「なあ委員長」

「はい下之君」


 いっちょ聞いてみるか。



「もし好きかもしれない人が、かつての好きな人と色々な面で被ってるっていうのはどう解釈すればいい?」



 ミナと姉貴。


「解釈とは?」

「それは……なんというかだな。今好きな気持ちは偽りで、ただの懐かしみだけなのか、それともまったく別なのか」

「…………」


 俺はぶっちゃけミナのことを好いている、惹かれている。

 いきなり過ぎるかもしれないが、ミナといると俺は楽しくて仕方ないのだ。

 ミナがトンデモ企画を打ち立ててそれに振り回されながらもいつの間にか俺もエンジョイしている。

 ミナの表情がコロコロと変わるごとに俺は嬉しいのだ。ミナのことを知れる度にちょっとした感動を覚えるのだ。

 

 でもこれは”姉貴”の違う一面を見れたように思えることによるショックで錯覚を覚えているのか。

 それともこれは純粋に彼女に惹かれているのか。


 わからない、わからないのだ。どうしてもミナには姉貴が重なってしまう。

 あまりにも性格は豹変してさえいるものの、僅かな面影に重ねて自己補完しまうことだって多々とある。

 

 これは姉弟愛なのか、それとも何の理由もなく幼馴染に恋をしているのか。


「下之君の意図することは分かりませんが」

「まあ、あまりにも断片的すぎてしょうがな――」



「あなたの好きな人は、かつての好きな人とは全部が全部同じなのですか?」



 …………俺は、

 



「好きになるキッカケは似ていることだったかもしれません。でも今冷静になって、その被っている部分をすべて忘れて――それでもあなたはその人が好き?」



 っ!


「同じ人なんて誰一人いない、皆個性があるものですよ。似ている人だって相違点なんていくらでもあります」


 そうか。



「大事なのは、彼女のどこが好きなのか。ですよ」

 

 

 ミナの好きなところ、姉貴の好きなところ。

 一部はそれは重なってしまう、けれども全部は重ならない。ミナにはミナの、姉貴には姉貴の個性がある――


「……ああ、なんとなくわかった。ありがとな委員長」


 でも俺はまだ決定打に欠ける、好きになれない口実を失くした。

 だが俺はまだ今の関係を失ってしまうほどに先走りたいとも思えない。

 

「お役にたてて光栄です」

「しかし委員長は親切だなー、もしかしてクラスメイトの相談役で繁盛してたりする?」

「そんなことはないですよ、単なる親切心と――」

「と?」


 その先を言おうと口を開いた委員長だったが、思いとどまるように唇を結んだ。

 すると「屋上繋がりで思い出しました」と立ち上がりなら話は始め、


 

「そういえば藍浜中学の頃、下之君は屋上で一人の女の子を偶然助けたんでしたっけ」



「え?」


 そう言い残して委員長は去っていった。

 

「……俺が助けた?」


 女の子を? それまたどういう状況で?



「――――ん?」



 まるで委員長の言葉がカギだったかのように、突然ボヤけた記憶が断続的にスライドショーのように再生された。

 そこには――



『リボン、いい感じのところに留まってくれて良かったな』



 と笑いながら頭をポンと叩く男がいて、照れているのか頬を赤くして俯く女子がいた。

 それはサクラじゃないミユじゃない姉貴じゃない、ユキでもマイでもホニさんだってない――


 これは、誰だ?

 

「んー……思い出せん」


 結果的にこの僅かな取っ掛かりもまた記憶の海に飲み込まれていき、この疑問は次第に消え失せていった。

 その後俺は女子全員がシャワーを浴び終わったことを何度も確認した上でシャワーを浴びた。    

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