第463話 √b-47 神楽坂ミナの暴走!
伏 線 皆 無 回
あっ、ユニークアクセス13万超えましたあざーっす……じゃなくてありがとうございます本当にありがとうございます、これからもがんばります
「ノ、ノリで言ってみてはみたものの……」
「流れで言ってしまいましたが……」
茶の間にて頭を抱える女子二人、ということで自宅にて。
ユイとクランナがお通やムードになっていた。
「ア、アタシ的には飯作りは守備範囲外なのだぁ」
「わたくしもまだその域に達していないのですわ!(泣)」
その二人を横目に俺とホニさんは絶賛トーキング、
「へー、ユウジさん学校でお弁当交換会やるんだー!」
「そうなんだが……はぁ、そこの二人も勢いで参加表明しちまってさ」
「あー……クランナは勉強中だけどユイは……?」
ホニさんの感想に同じ、クランナは生粋のお嬢様からして料理ベタなのはホームステイ時に明らかになった。
そして俺からしてもユイに関しての実力は未知数だ。ゲームにアニメにマンガとエンジョイしながら成績トップを維持する器用な性格からして案外出来るのかもしれない。
今の反応もとりあえずクランナと同じくしてみたとか……? または一切の未経験だったとしてもすんなりと出来てしまうのかもしれないな。
そんな時、茶の間に人が集まる習性からして、桐が流れるニュースをつまらなさそうに見ている最中のこと。
「ハズレ枠じゃの」
桐煽るなよ面倒くさい。
ビクリ反応する通夜組二人、ほぼ同時に顔を上げ。
「……負けないから」
「オルリス家の名にかけて最高のものに仕上げますわ」
桐の煽りで火が点いた二人、時を同じくして呼びかけはハモり。
「「ユウジっ」」
「ん? あー、はいはい」
まあ流れで読めてたけども、俺は二人にキッチンへと連れて行かれるのだった。
「なあ、ユイ弁明は一応聞くことは出来るが」
「ハイ、アタシトシテハハンセイノイヲシメスダケデス」
俺が試食として口に運んだそれは強烈なものだった。
オカズ三品すべて鮮血に染まる――オールケチャップ、全ての食材が唐辛子由来とは違った鮮やかな赤色を発していた。
「ケチャップライスは米は妙に柔らかいし何故か白飯そのままにケチャップを突っ込んだだけなのは許そう」
「いや、あのっすね。やはり調和を取るにはですな!」
「オムライスの卵もケチャップに染め上げてどうするんだよ! そしてオムライスじゃなくケチャップライスの香ばし卵焼き乗せでしかねえし!」
「絶対に(合うのは)間違いないと思いましたんす」
「そりゃ合わないわけないよな、ただ全てケチャップの味に飲み込まれてで素材の味も何もねえ! そして、だ」
「流行にのるべきだと追いケチャップをば……」
「もはやケチャップの含有の塩分だけで一日分の塩を摂取できた気がしてくるほどに悪い意味での濃厚さ! ……よっぽどのケチャラーでもここまではねえよ」
「スミマセンっす」
「そしてなぜ鮭をケチャップで和えた!? 一番はそうだな……なぜトマトスープならまだしも味噌ベースにケチャップなんだよ! 気が狂ってんのか、アアァン!?」
「えーと……誤魔化せると思いまして、濃い味付けで塗りたくってしまおうかと思ったっす」
「もう最低限ケチャップとマヨネーズにソースで分けるぐらいしてくれ……逃げ場がない」
「あっ、忘れてたっす。ミキサーでトマトジュースも作ったっす」
「うるせえ黙れ、トマトアドベンチャーでもしてろ」
すっげえ、万能調味料をこういう使い方で台無しというか能無しにしてしまうとは。
統一感がありすぎて味覚が破壊されそうだわ。
「さあユイの鮮血に口が染められたトマトパーティのおかげでハードルは下がったはずなんだが」
「…………」
皿には黒、葉、スープカップには僅かに白濁したところにぷかりと浮かぶコーン、見た目だけはまともなニンジンとキャベツと肉の炒め物。
「これは?」
「……お米の焦げた何かですわ」
「おこげを通り越して黒くて苦くてボロボロしたものを食べている気しかしない。で、これは?」
「レ、レタスアンドソルト」
「フッシュアンドチップスみたいだがただの塩かけレタスだ、普通に美味いが料理ではない」
「コーンスープを!」
「まさかコーン缶の粒コーンを水で茹でただけでコーンスープを名乗るならケノールやボッカに謝るべきだ」
「で、では肉野菜炒めはどうでしょうっ」
「純粋無垢な素材の味とたっぷりと染み込んだサラダ油の味が混ざり合って、シンプルイズバッドッ! 味ない! くどい!」
「うう……」
まさかこの二人がここまで散々なものとは。
「ハズレ枠でいいんじゃないか?」
「「ぐぅ」」
ぐぅの音が出て、双方ともにダメージを受けていた。
「そりゃまあ『料理? ヨユー(笑) 味付けさえどうにか出来れば万人が普遍的に食せるし(笑)』と大見得を切ったユイさんと」
「ぐはぁっ」
「もうお人方は『今までの経験を活かす絶好の機会が訪れましたわ! 食を制すものは家庭をも制しますわ! ユウジ、ご期待なさい!』との高らかな有り難きお言葉を頂戴した次第だが」
「あぁぁぁ」
「二人とも、付け焼刃じゃどうにもならんから。うん、当日は二人の弁当も作るから、安心してくれ」
「「うぅ……」」
今回のクッキングで懲りてほしいんだがなあ、絶対的に嫌ではないがもう夕食作り始めないとアイシアが凍てつく視線でディナーを要求してくるもんで。
「いや、ユウジ! ワンモアーチャンスをばぁ!」
「私にももう一度、お願いしますっ」
「夕食が八時まわっていいならいいぞ」
「は、八時……」
「それは……」
魔法の呪文「~になるけどいい?」は効果覿面のようだった、腹の虫は正直だからな。
そして追従するように、先ほどまでテレビに意識を向けていた
「わしもそんな夕げの遅さは断固拒否じゃ! 弁当対決なぞコンビニの弁当を詰めてしまえばよかろう!」
「そ、それはアタシ的なプライドがっ」
「それは許せませんわっ」
「わしはお主らの意地に付き合って空きっ腹にはなりたくないのじゃ!」
……まあ、クランナはプライド高いだろうし。思いほのかユイも負けず嫌いな要素があるようなプライドも結構にありそうだからなあ。
「ホニさん、夕食後に頼める?」
「え……あ、はい。わかりました、ユウジさんはユイですかクランナですか?」
「クランナを頼めるか? 一応ゴリ押しで料理経験ほぼ皆無のユイをやってみる、時間割いて申し訳ない」
「ううん、頼まれましたっ」
調味料一辺倒のユイと調味料さえ足せばなんとかなりそうなクランナか……と、いうことで。失意に濡れる二人の肩を叩いて、
「そこのお二人さん、夕食後に残ってたらラッキーなことがあるかもな」
「……あ」
「もう一度チャンスを頂けるのですか!」
「そゆことで、時間短縮の為にホニさんにも救援頼んだからあとで礼言っとけよ」
いやはやお人よしだなあホニさんも。
そうして俺とホニさんはまずは、と夕食作りに励むのだった。