第458話 √b-42 神楽坂ミナの暴走!
絶☆不☆調――ええと、PV一七〇万アクセス突破とユニーク十二万と六千突破、総文章量百三十万文字突破しましたありがとうございます。そしてまさかの四年目突入です、三年目は怠惰に過ごしまくったので四年目はどうにかと思っていたのですが、連載開始記念の日に投稿できなかった時点で阿呆なことを言っていると思うことを承知で、どうぞこれからもよろしくお願いしますー
「六時……」
はええ、はっやい、ああビックリだあ。まさかなあ、こうしてこんな理由で朝家を飛び出ないといけないとは、人生とは数奇なものだ。
相も変わらずの下之家の朝支度をマッハで終えての自分で握ったライスボールを頬張りながら、片手に昨日から冷やしていた麦茶を五〇〇ミリのペットボトルに詰めて朝を駆けている道中のこと。
ちなみに今の俺の恰好はというと、学校指定の紺ジャージである。
学校制服一式は畳んで袋に詰め込んであり、まあ事が終わり次第着替えて晴れて授業を迎えることとなる。
そして、昇降口を抜けてグラウンドに足を進めていると、そのグラウンドには人一人。足音に気付いた彼女は振り返った。
「おっはよー、ユウくーん」
学校指定のエンジ色のハーフパンツに白い体操服の恰好の神楽坂ミナその人だ。
快活少女よろしくに準備運動からの俺に気付いたことからの手を振りコンボ。
「いくらなんでも唐突すぎねーか?」
「いいや、善は急げだよユウくん! 運動大明神様は口を揃えて言うに違いないっ」
「そんな近代的な名前の神さんがいてたまるか」
「じゃあ可愛い幼馴染の姿を見れた上に自分自身は体を温められるという早起きは三文の得!」
「可愛いのは否定しないが自分で言っちゃなあ」
「え」
「え?」
何故か拍子抜けに聞き返してくるミナ、そして続けて。
「さりげなく私、評価された的……な?」
微妙に照れながら言ってくる、自分で言ったクセして。
「俺は常時全力で評価してるぞ”おお、早朝のミナは制定服でベーシックだがハーフパンツに白シャツ、足の露出度が多くなり実に喜ばしい”と」
ズボンの布地とふとももの境界線が誠に魅惑的、白シャツを隆起させる胸の存在感もなかなかに。
「なんかエッチな方面でされてるー!?」
「まあ、そんなセクシャルハラスメントはおいておいて」
「思い浮かんでた言葉だけどユウくんが自身が言った上に即棚上げするとか斬新すぎる!」
「練習やるんだろ?」
「うん! 二人三脚の練習をば! さあユウジはさっさとグラウンド十周走ってきて」
……目覚めの悪さからの携帯着信による叩き起こし、アポなし招集にそしてこの要求である。
いくら可愛い幼馴染の頼みでも萎えることこの上ない。
「……えー、走るの? 帰っていい?」
「完膚なきまでのテンションダウン!? じゃあ五周! 五周でいいから!」
「もう一声」
「じゃあ二周でいいから!」
「妥協する、じゃあ行ってくる」
確かに協調性が要求される二人三脚前に少しは体をほぐしておかないとな。
――トラックのギリギリを早歩きと小走りの中間辺りの速度で駆ける、体温も上がってきたし少し体をほぐせてきたようだ。
「じゃあ密着三脚するか」
「じゃあ始め――ってわざとだよね!? なんでそんな意味深な言い方に帰るのさ! ……う、うんじゃあ横に並ん――」
「ん? 俺はずっと隣にいるぞ?」
「言葉だけ聞くとドラマチックだけど言い終わる前に並んでるのが怖いんだけど!? 走り終わった場所からニ十数メートル離れてるのに数秒足らずに来てるよね!」
「ミナは細かいなあ、裁縫針の穴に糸を通すぐらいに細かいなあ。あ、ちなみに裁縫針はワンタッチタイプね」
「上部から糸を落とすだけで糸が通るあの針だったらまったくもって細かくないっ! ……じ、じゃあ始めよっか」
「おう。足首と足首をさっさと触れ合わせようぜ」
「だからなんでそっち方面!?」
ということでコント交えての二人三脚。
しゃがんでミナが用意した紐で二人の足首を結ぶ、
「ミナ、きつくないか? いや……ミナ的にはキツイ方がいいのか?」
「ユウくんの中での私がどういうものなのか時々分からなくなるんだけど……ほどほどで、ね?」
「ちょいっと、おーけーミナ?」
「オーケーユウくん、さあ立ち上がるよ! いち、に、の」
「「スリー!」」
二人同時に立ち上がった、それはもう阿吽の呼吸で。てかカウントのフェイントまで被るのかよ!
「せーの――」
それから俺とミナは一時間ばかり二人三脚の練習をした。
練習初日だというのに、ひどく息の合うもので、何回か双方にコケそうになったものの、練習時間も終盤の頃には双方早歩きが可能となっていた。
「燃えてきた、燃えてきたよユウくん! 実は私こういう運動みたいなことが大好きなことに全力で気づいたよ!」
「おう、見た目通りだな」
「ユウくんはちょっと休んでていいよ! ちょっと一人で走ってくるっ」
返答を待つことなく走り出すミナ、火が点いてしまったようだ。
一度のめり込むと暴走機関車のごとくになりそうなのは目に見えていた。
「姉弟だからな」と言うミナは元姉貴だからという心の声がある一方で、
「幼馴染だから」長年共に歩んできたからこその今だ――などといったような頑なに拒絶する「幼馴染であるという事実」に俺自身に浸透しつつあるようでもあった。
というか誰かと運動するってなかなか気持ちの良いことなのかもしれない。
隣に気兼ねなく話を交わせるミナだからこそなのかはわからないけども、少なくとも二人転んだ際に苦笑したり、俺が変なところで大勢を崩しそうになったのに噴出されたり――一緒にいることで安心感を得られることには違いはなかった。
今のミナと姉貴、もしミナの”人”がゲームで作られた幻想一色でなく本質だったとしたら。
あまりにも快活な彼女を見ていると時々どちらが本当の”ミナであり姉貴なのか”分からなくなる。
余談だが六時も終わりに近づくころには生徒も数が現れ始め、それも制服でなく俺やミナと同じ制定体育着に身を包んでの明らかに部活とは違った走り込みをする生徒が目につく。
ミナの行動力の早さも去ることながら、ここの学校もやはりお祭り気質よろしくに競技決定翌日に練習し始める生徒が少なからずいることを改めて理解した。
「皆に負けてられないよ、ユウくん!」
「そうだな」