表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十四章 神楽坂ミナの暴走!
334/648

第456話 √b-41 神楽坂ミナの暴走!

祝500投稿目だよ! 400からの道のりが自分の怠惰で長かったよ、消し飛べ自分☆

 若干眠くなりつつある頭で考える。

 体育祭の選択種目は「二人三脚」「障害物リレー」「借り物競争」「PK戦」の四つだ。

 ……リレー競技ばっかじゃねえか、と思うそこのアナタ! その通り、水増しでございます。

 障害物リレーと借り物競争とか混ぜられるだろうとか言われそうだが、まあ借り物競争ってのも面白い仕掛けがあるんで独立させた方がいい――とのチサさんの意見である。

 まあ概要見たから知っているけども、借り物競争だってのに途中で「コスプレ」があるってのが……うん。ちなみに女子専用競技である、男子のコスプレなんぞいらぬ!

 障害物リレーは大玉ころがしに二人ムカデ、網抜けやら盛りだくさん、サービスシーンはあるけどポロリはないよ!(※今√では尺の関係で描写しません)

 PK戦も基本的にボールを受け止めるような競技なので、それはもう痛そう。体育教師が「入れてみてくれないか!?」と頼んできたのと男子専用競技が有った方がいいかなと了承した、俺は出るつもり毛頭ないけど。

 すると二人三脚か障害物リレー、正直後者はチサさんが意気揚揚と新しいアトラクション持ってきたので嫌な予感しかしない。消去法で二人三脚ということに。


「俺は二人三脚で」


 実は熱血共に巻き込まれて男子大勢が即PK戦に決められていて「色々な服が着れるそうよ、アユミはどう思う?」「ミコトちゃん、それいいかも!」などと借り物競争を選ぶ女生徒も結構いるそうだ。

 障害物リレーは実は二人競技に近く、各クラス二人が走り途中のムカデは二人で行うものだからどちらが早かろう遅かろうと次の単独では種目に進めないと言う考えられた仕様。

 何人もいればサボれるだろうとお一人様を望む人たちと熱に任された男子の一部PK戦を選択していったのも事実だった。

 さらには傾向的には男女が一対二の割合で二人三脚を選び、障害物リレーは仲良い男子二人がつるんでの共同戦線のような構図が多いようで男女二対一、とクラスを見渡すとそのように理解できた。


 そして俺がざわざわと喧騒、委員長に進行を丸投げしてパイプ椅子に腰をかけて読書にふける担任教師などの教室でさりげなく手をあげた俺を一部の女子勢は見逃すことはなかった。

 コンマ七秒もなくすっと挙げられた二つの手と、それからあとに気付き挙げる二つの手。

 

「私はユウジ様に同じく二人三脚を希望します」

「私もユウくんと二人三脚ー」

「あ、じゃあ私も!」

「おお、なんとなくに参加ァ!」


 マイ、ミナ、ユキ、ユイと挙手した。それを見て手を挙げる俺以外の男子に対してマイとミナは非難の視線を浴びせた。ああ、あの二人の非難は特にキツイ。

 一部の特殊性癖を持つ男子を除いて手は下がり男女比率は一対三とグンと上昇した。


「はーい、人数多いので私にじゃんけんで勝った人が二人三脚ということで」


 委員長の提案は受け入れられ、挙手したクラスメイトは委員長の手に着目しながら上へと手をふりあげた。


「じゃーん!」

「委員長、フェイントは一回までな」


 今日の傾向的にフェイントを入れそうだった委員長を制したが時すでに遅し、しかし注意は促せた。


「了解。じゃーんけーん――」 


 ぽん。あ、勝ったわ。

 マイは負けたのか……なんだその悔しさに溢れた表情、チラとこっちを一瞥すると鞄に手を入れてキラリ光る何かを取り出そうとした瞬間に、俺は席を滑り落ちるようにしてスライディングしてマイの自殺を防いだ。

 彼女ならやりかねん。

 あー、ユイも負けたのね。微妙にションボリしているのがキャストオフ素顔のおかげで哀愁さを滲み出している。

 

「これで定員になりましたー、タッグは各々決めてください」


 そして委員長がそう言った瞬間に男子が動き「篠文さん俺と――」「ごめんなさい」一秒経たぬ間に玉砕だった、えげつねえ。次いでミナにも一部申しれたが「ごめんっ」と即刻拒否され灰となりて男は朽ち果てた。


「ユウくん! 私とっ」

「ユウジ、私と!」


 詰め寄られる俺、クラスの男子の視線を一同に集め殺意の波動で全身を八つ裂きにされたかのような錯覚を覚える中。


「いや、スマン俺は一人しかいないんで――」

「じゃあユキとジャンケンでっ」

「そうだね。ミナ、私が勝つよ」

「数秒後に一体どっちの女神がほほ笑むかな? じゃーん――」


 勝利の女神とかじゃなくて自分が女神なんだ。

 結果ミナ勝利、俺はミナとの二人三脚が決定したそうな。

 ちなみにユキは愛坂ひだまりとのタッグになったという。



* *



 生徒会以下略、寝室。

 略しすぎたのでいつも通りに過ごして深夜二時を迎えた俺は眠りに就くところだった。

 

 早速昼休みほぼ強制的にミナに連れ出されて二人三脚の練習を行わされたのは記憶に新しい。 

 まあ、ミナの性格的にこういうのに闘志を燃やしそうなタイプなんじゃないかと思ったがまさかここまでストレートとは。


 二人三脚、両者方足二つは括りつけて一脚にして、それぞれ片足で三脚。息が合わなければ進行そのものが致命的に不可能だ。

 阿吽の呼吸というのだろうか、思えば昔は俺も隣には――



 ここで眠りに落ちる。

 そして、なんでこのタイミングなんだという。

 最悪で最低で――思い出さなければ幸せだった夢。



* *



 それは夢の世界、真っ暗闇の世界。

 そして現れるのは晴天の下、空色に塗りつぶされたキャンパスに白い絵の具を転々垂らしたかのように青い空には雲が浮かぶ。

 まさに門出の日、祝福するように空を見上げれば延々と清々しい青が続く。

 そんな悪いことが起こるなんて想像も出来なければ、全てが壊れる日としてはあまりにも――


 今日は藍浜中学校終業日。

 三年生はエスカレータそのままに藍浜高校へ、市内唯一の当高校以外に進学する者など数えるほどしかおらず卒業したとしても変わらぬ面子がそこにある。

 そして俺らは中学三年生を迎える寸前で、終業式とホームルームのみで解散し晴れて春休みを迎える。


「よ、サクラ」

「おはようユウジ、今日は溜息の出るほどに晴れ晴れとした空模様ね。そんな日第一出会ったのがユウジだなんて落胆でさらに溜息が出るわ、ええ自分の不運を呪ってしまうほどに残念極まりないものね」

「相変わらずだなあ」

「今日も私こと上野サクラはこれ以上ないほどに平常運行よ、私が心身共に潔癖なるままに健全であることを心の奥底から祝福しなさい、そして敬い尊い、崇めなさい」

「ハイハイ」


 サクラとの会話はいつもそのような感じだ、憎まれ口を叩かれているようにも聞こえるが今日の彼女はとても機嫌がいい。

 ――ようにみえた。しかし俺はその時ほんの一瞬だけ、彼女に憂いの表情を見た。

 基本的にポーカーフェイスよろしくに時折見せる笑顔は悪態付き、そんな彼女が見せる表情としては初めてのものだったのだ。

 それがすべての予兆で、それが彼女なりのサインだなんて気づくこともできやしない。


 この時の俺は名実ともに鈍感男で相違なかった。




 

 俺が心に決めたのは、ある一大決心だった。

 それは長年連れ添った幼馴染……こう言えば非常に聞こえは良いが実のところは「腐れ縁」「悪友」というのがしっくりくる。


 上野サクラは孤高にして味方なし。


 彼女の口を開くとともに飛び出す罵倒の言葉を容易に許容できる者など幼馴染の俺らの他にいない。

 アニメの痛いキャラクターのような性格に成り果てた彼女はジャンルで当てはめるとすれば「中二病」以外にないかと思う。

 そんな彼女の言葉を真に受けて憤慨することなく衝撃をうけることなく嘲笑することなく付き合えるのは俺らだけだった。

 だから彼女の周りには俺らしかいなかった。

 妹のミユの交友関係は広くクラスメイトはもとより学年中の生徒とコミュニケーションを誇っていた。

 俺は時折クラスの男子生徒と話すときもあれば、いつもの俺らで行動し、時折一人ラノベ・コミックの消化に励む。

 姉貴は中学校でも生徒会に奔走し、時折下級生である俺たちのクラスに訪れては昼食を取り、そして遠慮のない俺への溺愛。


 この中で変わっていないとすれば姉貴だろう、それほどに俺の行動で全てが壊れてしまった。 


 俺の一大決心、それは上野サクラへの告白だった。

 仮に恋愛関係になり彼女になってもおそらく罵倒の日々は続くであろう、なぜそのようなマゾヒスト的な愚行に走るのかとすれば、分からない。

 ドラマやらアニメで見た「好きになったら止まらない」というヤツなのだ、乙女的な発想で可笑しいと思うなら笑うがいいさ。

 ある瞬間にサクラの横顔を気にして、彼女との会話のドッヂボールを娯楽として、彼女の興味を惹いた対象を同じように目で追って。

 友達の、幼馴染の、腐れ縁の、その先に行ってみたいと思った。


 恋は盲目、その言葉そのままだ。

 俺はその告白しか気にせずに、それからのことを一切考えてなどいなかった――あまりにも楽観的なご都合主義でも許されないような幸せな未来しか。


 



 終業式を終えて、俺たちは席を立った。


「ユウ兄かえろー」

「ちょっと待ってくれ」


 今すぐにでも帰りたいという衝動に駆られているミユが不満げな表情に変えながら、


「なんでよー」

「ユウジ、あなたはこうしてあらゆる流れを遮断する実に空気の読めない人として恥ずかしく非常に残念だわ。ミユや私の帰宅を阻害するほどにあなたがこうして一時停止をかける意味があるというのね、くだらない理由なら一秒につき三百円の損害だわ、私ミユともどもに支払う義務が発生することになるわよ」

「まあなんと言うかだな……サクラ、お前に用事がある」

「……そう、で何用かしら。この場で三秒以内に済ませなさい」

「いやここじゃダメだ、ちょっと来い」

「っ! 私の手を引くという、私の意思に反した行動を強要するなんて人の風上のもおけないわ、今すぐにこの地べたに這って謝罪の念を瀕死手前まで籠めて土下座することを強要します」


 俺はその長セリフを無視した。 

 訪れたのは一応上履きで歩くことの出来るコンクリート打ちのされた体育館裏だった、愉快なほどにベタで使い古された賞味期限切れ寸前な告白場所セレクトだ。


「……こんな人気のないところまで連れてきてどうするつもり? 社会的地位ならば手間を要すことなく優位に立てる状況ね。しかし肉体的での優劣ならばどれだけ貧弱なあなたの身体でも負けてしまうかもしれないわ、それでは悲鳴をあげようかしら」

「まあそう怒らないで」

「怒ってない」


 短文で返ってくるときは相当怒ってるパターンだ。

 これはタイミング的に失敗だっただろうか、いやでもここまで呼び出して……ここで引いたら男が廃る。

 

「サクラ、お前に話したいことがある」

「あらそう、私はないから帰路に就いていいかしら?」

「俺と付き合ってくれ」

「私のお言葉に返すことなくそんな………………ごめんなさい、今なんとあなたは言ったのかしら。ここ周辺の空気環境が悪いせいで耳が腐敗し始めているのかもしれないわね、ええそうよ。これはあなたに慰謝料を――」



「上野サクラが俺は好きだ、付き合ってくれ」



 俺は語気を強めて言い放った。遠くからは終業日で明日から春休みだと浮かれる生徒たちの喧騒が聞こえる。


「…………正気?」


 しかし静まりかえる体育館裏では俺とサクラの声だけが響く。俺はどことなく平然としていて、サクラは――


「ああ、正気だ」

「正気ではないわ、安易な発言すぎるわよ」


 声が僅かに震えていた。こんなこと今までにない彼女の反応だ、少し新鮮味を覚えてしまう。


「いや、正気だし安易なつもりはないぞ……俺は本気だ」

「…………身体が目当てね」 

「こんな性悪幼馴染、空前絶後のナイスバディだったとしても誰も食いつかない」

「誹謗中傷ね、訴訟」

「今までだったら、だけどな。俺が食いついてみた」

「…………残念だったわね、こう見えても私は数知れず男を貪り食ってきた、ネット社会では一番に嫌われる『ビッチ』と呼ばれる人種よ、あなたが何人目かも忘れてしまっ――」

「それはない」

「どうして断言できるの? そのような底の浅い発言は自分の価値を落とすだけだと未だに認識が無い当たり、正真正銘の残念男――」

「なんせずっとお前のこと見てきたからな」

「っ………………セクハラに該当するわ、訴えます」

「訴える前に答えを聞けると嬉しいんだが」


 俺は動揺を隠しきれていない彼女を内心楽しみながら、苦笑気味に返してみる。

 そしてしばらくの沈黙が支配した、未だに生徒は騒ぎ立てている。



「ちょっとまって」



 彼女はそう言い残すとその場を後にした。

 

「ちょ!」


 俺は追おうとしたが、さすがに即決断は難しいかと解釈して見送ることにした。

 どうせ明日当たりにでも呼び出すなり、呼び出されるなりして顔を会わせられるだろう。

 そう、彼女は幼馴染で家も近くいつでも会うことは出来るのだ。



 今日と言う日までは。



 翌日、彼女はこの町から姿を消した。

 ご近所づきあいも下之家以外見たことのない上野家はまるで雲隠れするかのように姿を消した。

 彼女は珍しく携帯を持っていなかった、そして頼みの綱の自宅電話番号も繋がるはずもなく。


 別れの挨拶なんて一つもなく、どこに行ったのかも知らされることもなく。

 上野サクラは俺とミユと姉貴を残していなくなってしまったのだ。



「答えは……”NO”なんだろうな」



 それからは絶望の日々。

 俺とミユが壊れ、姉貴が唯一感情を表に出して、俺に手を上げて、最初で最後に姉貴は弱音を吐いた。


 それからはゆっくりと修復されていく日々、しかしそこにサクラとミユの箇所はぽっかりと空いたままで。

 俺と姉貴だけが未来へと歩を進めていた。



* *



「っは!?」


 目覚めは最悪だった。

 汗も涙も出ているようだった、夢を見たはずだった。そうだというのに――


「何を俺は」


 どんな夢を俺は見ていたんだ?

 思い出せなかった、輪郭のようなものさえつかめない。本当に夢を見たのかさえ曖昧になってしまうほど。


「……準備しないとな」


 その時俺の携帯が鳴った。時は五時半、呼び出しの名は――


「……ミナ?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ