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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十四章 神楽坂ミナの暴走!
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第453話 √b-38 神楽坂ミナの暴走!

修羅場スキーなのにクソゲヱでは修羅場描写の少なさと言ったら、おじさん久しぶりだから筆が乗っちゃったよ。

「なあ桐」

「なんじゃ?」

「人を好きになるってどうすりゃいいかな」

「……それをわしに聞くのか?」


 どうすればいいんだろうな、いくら魅力的な女性でも――ミナの前提が元姉貴なのだ。

 近親での異性交流など白い目で見られる国、時代。例え世界が「幼馴染」と判子を押したとしても、俺にとっては姉貴である事実も消え去らない。

 強情だ、そんな考え捨ててしまえ。皆がそう言っているのにお前は未だに駄々をこねるのか? そんなことをしていればお前の周りには誰もいなくなる。


 可愛い幼馴染だと、今は「作られた」とか言っている記憶も受け入れるんだ。簡単なことだろう?


「(簡単じゃねえよ)」 


 俺にとって姉貴は姉貴であってほしいんだ。幼馴染であることは望んじゃいない。

 ……どうりゃいい、俺には姉貴の後姿が特別なんだ。憧れて、羨んで、敬って――そんな自慢の姉だと誇れる姉貴が俺は好きだった。


「もし」

「?」

「もし俺に――いや、なんでもない」


 姉貴の記憶が無かったのなら、こうして考えることなく、いつか俺はミナを好きになれていたのだろうか。

 

「…………」


 桐は俺がそう言いかかけた表情を見透かすようにしてじっと見つめる。しかし何も口には出さなかった。





 五月十七日

 


「ちょっと頑張ることにしてみました!」

「……いきなりどうしたんだ?」


 登校してすぐにミナが俺の机の前にやってきてはそんなことを宣言するように言い放った。


「いやー、これは快挙だよ? いつもならば放課後食品研究に明け暮れるこの私ことミナが!」

「いや、だからいきなり何を言うんだよ?」

「まー、気にせず放課後にこうご期待」


 言っていること逆じゃねえか。

 その後何回か聞き出そうと試みたが叶わなかった、こりゃ姉貴の頃からある時折ガンコモードなのか?

 数か月後でも数年後の予告でもないし、放課後だからまあ気長にミナの言う「頑張り」に期待してみるとしますか。





 しかし放課後はいつもと同じように「またねー」と手を振って帰ってしまった。

 ただの冗談だったのか? それにしては推しが強かったような。まあ、いいか。明日にでも問い詰めてみるかな――





「あ、ユーウーくーん!」

「え?」


 生徒会室から少し離れた廊下で手を振る制服姿の女子生徒が、それもなんと見覚えがある。

 声も聞き馴染んでいる。見えてくる顔も知らないわけがない。


「神楽坂さん、まだいらっしゃったのですか?」


 そう言って先制するように問いかけるのは、少し警戒の色を含んだマイだった。


「そうだよ、姫城さん。学食で暇つぶししてたんだー」

「ぬうー? ミナがこんな時間に残ってるとは珍しいぬえ」

「かもー」


 というような女子三人の会話、ちなみにミナとユキとユイは仲良く。姫城さんはいつものメンバーではあるものの会話そのものは少なく、未だにミナに関しては、である。


「こちらは? 時折見かけてはおりましたが」


 隣のクランナが純粋そうに「どなた?」というような表情で俺に疑問を投げかけてくる。


「ああ、ミナね。俺の幼馴染」

「幼馴染のミナ……さんですか」


 元姉貴なんだけどな、などと出かかったが。言っちゃいけない類のものなので自粛した。


「そこの金髪さんは前に生徒会の役員紹介で『ユウジは前世の~』とか言っていた人で合ってるかな?」

「っ……!? ひ、人違いです!」


 いや本人そのものだろう。クランナは過去の黒歴史を発掘されて真っ赤になっていた。あ、なんか可愛い。


「そう? 私はあなたの隣にいるユウくんの幼馴染であり――彼女です」


 その時生徒会から数十歩のこの空間が氷点下を超えて凍りつくような錯覚を覚えた。

 いや、空気が完全に硬直したのは確かだった。

 一切動揺していないわけじゃない、実際俺は小さく「え」という言葉を漏らしている。

 それでも俺はあくまでも冷静に、毅然として否定の声をあげようとした――



「――嘘ですね。ユキさんと神楽坂さんとユウジ様のデート来も特に変わった様子はありません」



 より毅然と言い放つのはマイその人だった。

 というかバレてるー!?

 正直最近の告白やら恋人宣言やらで感覚がマヒしていたこともあって今回のミナも冗談言ってんじゃねーよ。とオチを付ける筈が逆にマイが知り得ていたという今の事実の方に動揺を覚えてしまう。


「三人でデートとは言っても、人間関係が大きく変化しているという事実は当日の行動から見受けられません。現にユウジ様は今の私の発言で動揺しているようです」 


 どこまで見透かすんだこの人は!?


「……姫城さん、もしかして私たちのデートつけてた?」

「はい。――と言ったらどうしますか?」


 マイはより挑発するように無表情で返す、一方でミナは笑みを凄め。


「それってストーカーだよ?」

「自覚はあります。ですが反省はしていませんし致しません――好きな人を知りたいという気持ちは替え難いものですから」


 ここまで威風堂々に告白されると俺も反応に困る。そしてミナはというと、


「へぇ……姫城さんなりの愛ってこと?」

「その通りです。幼馴染という立場で話術も得ているあなたと私では違いますから」


 マイはまるで煽り、皮肉るような声音で答えた。そのマイの返しにもミナも相当に頭に来ているようだった。

 何をどうして皮肉っているのか分からないが、マイにその意図があることは理解でき、同じようにミナもわかっていた。


「……様子見ということで三人デートは見過ごしましたが、私も奇遇ですね」

「何が奇遇?」



「帰る道も、向かう方向も同じなんですよ」



「っ……!」 


 ミナは絶句した。俺は何がどうしてこんな状況に、なぜにミナは絶句しているのかなどと「え、え?」と内心動揺の限りを尽くしていた。

 ちなみにユイもクランナも同じような心境らしい。


「日数的にも食糧事情的にもユウジ様はそろそろお買いもの、と言ったところでしょう?」

「!? いや、まあそうなんだが」


 な、なぜにここまでオミトオシなんだ!?


「そ、そこまで行くと姫城さんはへ、変態だよ!」

「変態と言われようが、私は心変わりしませんよ? 二度目のデートだからと言って譲るほどの寛容さは持ち合わせていないんです」

「に、二度目!? ユウくんっ!」


 もはや怒りを隠さない、純粋に怒りに満ちた表情で凄まれれば俺だって素っ頓狂な声をあげるものだ。


「デ、デートというには語弊がありましてですね!」

「――とユウジ様と仰っていますが、私の認識としては断固としてデートであり、客観的に見てもデート他なりません」

「お、女の子と二人買い物するだけでもアウトなのか……」

 

 俺が純粋な疑問を口に出した瞬間に「アウトだよ!(ですわ!)」とユイとクランナからツッコミが入った。

 さ、さいですか。


「い、一度話し合ってみない? ひ・め・き・さ・ん」

「構いませんよ、神楽坂さん。ですが――数年の猶予を無駄にしているあなたには勝ち目はないと思いますけど」

「……っ、言ってはいけないことをいったよー? 姫城さんー?」

「何度でも言いましょう、あなたはこうして幼馴染止まりであるのが証拠です。脈はありません、潔く諦めるのをお勧めしますよ?」


 煽る煽られの大合戦、かつてないほどの超修羅場。それが嫌で三人デートを考案したのにまさかこんなところで!?

 とりあえず止めないと! いやでも二人凄み過ぎて空気に触れただけで皮膚が裂けそうだ、一発触発のこの状況どうしたらい――



「修羅場は外でおやりなさい、私たちが帰り辛いでしょう?」



 そう言って俺の知っている女性の中でもここまで笑みが恐怖感を植えつけるのはない。

 書記のチサさんのオーラの前ではもはや赤子の喧嘩レベルにまで落ち込んでしまった。


「と、とりあえず戸締りするから先に行っててくれるか?」


 そしてこれが俺ことユウジの根性なさとヘタレっぷり体言するセリフであった。

 ……はぁ、いつまでも戸締り出来たらなあ。

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