第452話 √b-37 神楽坂ミナの暴走!
久しぶりの予約投稿だぜヒャッハー! 思いつきで面白そうな展開に方向転換するので一応の筋立てが吹っ飛んだ、再構成チュウ。
<マイとの場合>
休み時間のこと、ミナもユキも他の友人と話したりしている。
生徒会の今後のスケジュールでも確認するかと手帳を開こうと思ったその時だった。
「ユウジ様」
「マイか、どした?」
「ユウジ様は将棋が出来ますか?」
「将棋? ああ、人並みには出来ると思うけども」
「っ! 少々お待ちください!」
それを聞くなり自分の机へと戻っていくマイ、なにをするかと待っていると。
「対戦しましょう」
「わざわざ持って来たのか!?」
マイは恐らく将棋でも標準サイズの折り畳み将棋盤と将棋の駒入れを持ってきていた。
百円ショップで各々百円、二つ二百円で買えるような簡易なものではあったが、まさか持ってくるとは……。
「始めましょう!」
「いや、いいんだが……まあいいか十分休みの出来るところまでな。先行はマイでいいか?」
「はい、では僭越ながら――」
で対局開始。
「『歩兵』小さなことからコツコツと外堀を埋めていきます。まずは家族から――」
マイは当たり前に歩兵を進めた。盤上の説明は面倒くさいのでカット。
カツ、と木製の盤上に木製の駒を持ち置く瞬間が爽快だ。
「『香車』私の想いはあなたへ一直線です」
いやあ、たまにはいいもんだ。そういえば家でも桐とやったっけ。
「『桂馬』障壁も愛の前では容易く飛び越えます」
お、ここはどうするか。飛車を取らせる訳にはいかんな、飛車は将棋で一番強いしな(典型的な素人の発想)
「『飛車』私のまっすぐな気持ちを受け取ってください」
うわあ、桂馬取られた! くそー
「『角行』いつも素っ気ない態度ですが、角を取ってもっと素直になってください」
うわあああああああああああ、守りに固めた銀がっ!
「『銀将』あなたのお傍にいれれば私も変わりますから」
成ったぁ! うわあああ俺の陣が浸食されていくううううううううううううう!
「『金将』ずっと離れません、あなたと一緒です」
やばい。
「『王(将)』手。結婚してください」
あ、詰んだ。
「参りました」
「はい、私の勝ちですね」
「そろそろ時間だし片づけるか」
「はい」
駒を片づけて、盤上に何もなくなった。
「将棋楽しかったよ、ありがとな。そろそろ自分の席に――」
「あ、ユウジ様待ってください」
するとマイはおもむろに盤上から駒が姿を消した折り畳み式の薄い将棋盤をひっくり返した。
その裏には白い紙が貼りつけられていた。
「『婚姻届』あとはユウジ様の実印です」
そこには俺の実印以外の項目がビッシリと書き込まれた婚姻届が。
なぜか俺の筆跡も凄まじいほどに真似られて「下之祐二」と書かれていた、謎の技術過ぎるだろう。
「スルーしてたが結婚する気はないぞ」
「……っ! 散々弄んだ挙句に捨てるのですか!?」
「なんという人聞きの悪さ」
と、いうようなコントが最近普通になった。結構に親密なったのではないかと思う。
ちなみに授業開始直前に「将棋と言う手段を使ってイチャイチャしやがって下之だけ爆発しろ!」と罵倒されたのは言うまでもない。
<アイシアの場合>
そうだ、実は語ることがなかったのだが。
「ユーさん♪」
「おわぁっ!?」
時折やってきてはタックル寸前に抱き着いてくるこのアイシア。
それも基本的に規則性がないのでほぼ突発的にゲリラ的な襲来である。
「「「っ! …………」」」
そして凍りつくいつものメンバー、アイシアがここに来る際には周りの目線など気にせずにこんなことをしてくる。
ユキが何かを言おうとして踏みとどまり、ミナのこめかみに青筋を浮かばせながら「ユーウーくーんー」と恨めしそうに。
マイは表情を暗くして凍てつくような冷たい目線でアイシアを見つめるが何の効果もない、ユイでさえも「……またか」と不機嫌そうな表情。
「今このタイミングできたのはですねー、お話したかったからなんですよー!」
「そ、そうか」
「聞いてくださいよー! 今日家庭科でですね――」
本当にお構いなしに会話を開始、相槌など打つが周りの視線が痛いどころの騒ぎじゃない。
「あー、じゃあもう時間だね! また来るね、ユーさん!」
と言って自分本位で帰っていく。
分からん、この子は一体何がしたくて毎回こんなことを!? あ、悪意がないのか……?
ちなみに凍りついた空気のまま授業の時間と相成り、後ろの席から「銀髪美女に抱き着かれるとか砕けろこの野郎!」と罵倒の言葉が浴びせられるのは慣れた。
<クランナの場合>
「ちょっと下之君、お時間いいでしょうか?」
「うん? スマン呼ばれたから行ってくるわ」
「「「……う、うん」」」
女性陣から返ってくる返事からはそれほど良い心持でないことが伺える。
「生徒会のことでお聞きしたいことがあるのですが」
「おお、なんだ?」
「明日の――」
事務的な話の後、
「あの……ユウジ。か、家庭科でアーモンドクッキーを作りましたの、試食していただけます?」
二人きりになった途端いつもの他人行儀が吹っ飛び、名前呼び捨てにですわ口調になるのがクランナの面白いところでもある。
こっちのが気軽で個人的には好きだったり。
「俺の舌で良ければ」
「はい、これですわ」
「どれどれ……おお、前より美味しくなってるな。やるなクランナ」
以前も試食を頼まれたが、それよりも上達していた。クランナは上昇志向が実に好ましい。
「そ、それほどでもないですわ! 貴重な感想ありがとうございました」
高飛車の次にそんな懇切丁寧なお礼が来るもんだから、なかなか総じて面白い子だ。
「それでは失礼します」
「ごちそうさまなー」
ちなみにこの一連の会話もろもろ、廊下でのことである。
帰ってから男子が示し合わせた如くに「金髪美女の手作りお菓子にエラそうにするんじゃねえ下之溶けろ!」などと罵倒のお出迎え。
「「「……はぁ」」」
俺を見据えた瞬間にいつものメンバー全員が溜息をつくのが少し印象的だった。
<生徒会の場合>
「今日も生徒会かー(会長のお守もしなきゃならんし)気が重いなー」
『生徒会ハーレムじゃねえか吹っ飛べ!』
間髪入れずに罵倒連射。
<ホニさんの場合>
生徒会も終わり、時間も六時近い。個人的に仕事が終わらかったのでユイもクランナもマイも先に帰して、ほかの生徒会メンバーも帰って俺一人、昇降口を出るところだった。
しかし空は夕方から天気が怪しく、見計らったかとばかりに俺が生徒会室の戸締りをした頃に外から雨音が聞こえてきた、置き傘ないしなあ。二人を帰したのも空模様がヤバくなったからでもある。走って帰るかと考えていたところ。
「ユウジさん!」
「ホニさん!?」
傘を差したホニさんが校門から入って駆けてくるのが目に入る、なぜにホニさんがこんなところに?
「どしたの?」
「ユウジさん今日傘持っていかなかったの思い出して、届けにきました!」
うわあなんて優しい健気だ泣ける全米と全俺が号泣の限りを尽くした。
「ん? でも傘ってホニさんがさしてるヤツ?」
「……あ」
ホニさんが「しまった」というような表情をした。
「ごめんなさいユウジさん、もう一つの傘忘れちゃった」
「ホニさんが忘れるとは珍しい、今日は雨に違いない」
「我だって忘れることはあるよ! それに雨は既に降ってるよ!」
「ははははは、じゃあホニさんの五臓六腑に沁み渡るお気持ちだけでありがたいよ」
まあ来てくれたことだけで嬉しいし。ホニさんに濡れて帰らせたら俺は自分の情けなさに川に飛び込むね。
「よ、よかったらユウジさんも一緒の傘に……どうかな?」
「その手があったか、ホニさんがいいならば俺は全然構わないよ」
「っ! じゃ、じゃあ不束者ですが!」
「これはご丁寧に、それじゃ俺が傘持ちを。全身全霊をかけてホニさんを雨から守り切って見せる!」
「あ、ありがとうございます。それじゃあ」
「帰りますか」
ちなみに後日、その光景の目撃者がクラスにいたようで「可愛い妹がいるとかもう勘弁してください」と泣かれた。
* *
「――というようのが俺の日常なんだけどどう思う?」
「未来永劫蔑まれればいいのじゃ! この女たらしっ」
桐に話したところそんな返し、いや俺って女たらしじゃないだろ?
……じゃないことにしたい。
いや、さ。認めたら色々とダメだろう、これはあくまでも親密な間柄止まり!
……に、違いないといいなあ。
* *
『……今回のユウジはスゴイですね』
「塵となれユウ兄」
ミユ部屋にて。
* *
「――噂や実際の居合わせたこととか色々列挙してみるとこんな感じかな? ユキはどう思う?」
「……ちょっと焦らないとダメかもね」
「そうみたいだねー、私たちも負けずどころか打ち負かす勢いでやらないと」
「取られちゃうね」
「さあさ、私たちも積極的になるとしますか!」
「う、うん!」
以上ユキとミナの誰にも聞かれないよう厳粛に行われた会談のこと。
いやー、今回のユウジのハーレムっぷりは露骨ですねー!