第450話 √b-35 神楽坂ミナの暴走!
毎日更新するとお気に入りが逃げていくらしい。これは週一更新を望まれていると解釈して(ry
胃が狂ったように熱を放ち、辛さで体のあらゆる水分が抜け、目は冴え、涙目でさえなければ市民プールに特攻して一キロメートルは泳げそうなほどにハッスル状態。
ところどころ意識が遠のき、そうして俺は夢を見た――
――おいおい流石に回想含めた夢を多用しすぎだと、なぜかメタ的な理由で意識の陥落を意地で阻止した。
というか審査を強制した二人はそれぞれ自作のカレーを普通に食べてるし、なんだ食べ合わせが絶望的だったのか。
いやいやいやいやハバネロペッパーにあやしぃ薬品はいくらなんでも単体でもブラックだろう!
「え、死ぬ程辛かった? えー、私にとっても中辛だから皆にとっては厳しいかも」
「あれ、ユウくんってこういう薬品薬品した味嫌い? 私は美味しいと思うけどなー」
中辛……? 中ぐらいの辛さってことはこれの単純に考えて二倍以上が「辛口」なのか……もう辛さ関連についてはユキは変人でいいよ!
ミナはそういえば家事マニアな一方で飲んでいる飲料はどこか「栄養ドリンク」系を好き好んでいた傾向にあった。
思い出してみれば姉貴も飲んでいたっけ、実際に飲む瞬間は見てないけどもゴミだしの時に謎の大量の褐色瓶の数に「家で飲む人って言ったら、なあ」と栄養ドリンクで奮い立たせている姉貴の姿を想像して申し訳なく思ったこともあった。
ちなみに律儀にもミナはユキの獄辛(激辛の三段階ぐらい上位互換)カレーの味見をしたのだが、実際「結構イケる…………か、からっ!? うわあああああああああああああああああああああああ」と悶絶の後牛乳を胃へ流し込んだ。
ユキもミナのカレーを食べて「……不自然に元気になりそう」と苦笑いで語った。
ちなみに俺はもう意地のようなもので最凶カレー二皿を完食、しばし体の状態異常に悩まされた後、半ギレで「俺も作るから食え」と残っていた材料で小鍋にカレーを作った。
「あ、美味しい」
「ユウくん、普通に美味しいよ」
との評価。冒険心などいらぬ! 探究心などそこらのダストボックスにダンクシュート決めてしまえ、平凡こそが最良だ!
……と自分で作ったカレーの普通の美味しさに涙しながら内心熱弁する俺なのだった。
ちなみにミナは結構に大食いだった、思い出せば時と場合によって結構な量を食すミナの姿があった。
カレーライスは数皿目に突入していた。ユキはタッパーに入れて持って帰るとのこと、もう一度ミナの家に戻ることを前提にユキはミナにことわって冷蔵庫にカレー入りのタッパーを入れた。
ミナ家を出る、再びの商店街へと向かうべき歩を進める。
そんな頃に俺はと言えば。
「うおおおおおおおおおおおおおお、また商店街でいいいんだよなあああああああああああああああ?」
なぜかその場で異常に足踏みしながら歩いていた、うむ説明しにくいな!
「ど、どしたのユウジ」
「なんか過剰電力のごとく気力体力が満ち溢れてるっす、走ってきていい?」
「ユウくん体育会系だったっけ……?」
お二方のせいですがなー
少し発狂状態が続いた後、近くにあった自販機に缶のマッケスコーヒーがあったので購入し一気飲み、体の中で強烈な甘さと辛さもろもろが衝突し相殺した。
今では先ほどまでのノーマルユウジである。恐るべしマッケスコーヒーの脅威のスイートパワー。
「あ、ユウくんアイス忘れてないよね!?」
「忘れてないから、でどんなアイスをご所望で?」
「食べたいアイスかあ、うーん……」
決めてなかったんかい。
ちなみになんでも揃いそうな当商店街にも流石にアイスクリーム専門店はない、食べる術とすればコンビニかスーパーか喫茶店のどれかである。
「あずきバア!」
「さっきのスーパーで良かったじゃねえか!」
そして微妙になんだその渋いセレクトは! いや美味いけれども!
「あ、じゃやっぱなし……あ! じゃああそこのレトロ喫茶店のソフトクリームで!」
「ああ、あそこか。オーケー、食後すぐだけど大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫♪ 女の子には魔法の呪文があるんだからっ」
「き、気合いとかか? うおおおおおおお好きなものを目にした瞬間に私の胃袋は席を空けてくれるぞおおおおおおおおおおおお、みたいな」
「男らしさに溢れているよねユウジ!?」
「甘いものは別腹、女の子には通常の胃に更にもう一つお付けしてあるのよ!」
「ミナ、なんで通販番組風? というか単なる比喩みたいなものじゃないの!?」
と言った風にして商店街へと付き、どこか古びた喫茶店へと足を踏み入れた。
喫茶店でミナが微妙に俯きがちに腕だけを伸ばして挙手のポーズを見せる。
「ユウくん提案があります」
「なんでしょうか、ミナさん」
「三アイスと言ったな……あれは嘘だ」
「嘘申告の申し込み受け付けは終了しました」
「ぐぬぬ、じゃあ一と半アイスでパフェと交換というのは……?」
「……半分食べ始めてるじゃんか」
「くぅ、バニラ三連って結構クルよ! どうして先に言ってくれなかったの!」
「いやあ、主張なさったのはミナさんではありませんか。以前俺は忠告しただろ、腹を壊すぞと」
「っ…………」
まあここの喫茶店のアイスは妙に多い、いつか食べたことがあったが濃厚なミルクの美味しさながらもすっと抜けていく後味の良さはなかなかのものとは思った。
ただ、二つはやっぱり多い。その量の多さもデフォが某スーパーなカップ二つ分というからそりゃサービス精神に充ち溢れている。
「頼んだんだからそれぐらい完食しろって」
メロンクリームソーダの溶けかかったアイス部を突きながらユキが苦笑しながら俺とミナのコントを眺めている。
俺はアイスコーヒーをチビチビ飲みながら、ミナを詰問していた。
「二つ目は頑張るとしても、三つ目は冷やした口を温めるコーヒーにでも変えるか?」
「う、うんお願ひゃい……」
舌が氷漬けになりかかるミナに助け舟とばかりに提案した。
「えーっと、バニラアイスとコーヒーで。ユキはアイスいる?」
「あー、私はいいよ」
「じゃあチリエッグパンなるものがあるんだが、食う?」
「じゃあ、それで! って、え、ユウジが出すの? いいよー、私が食べたいんだし」
「まあここぐらいはさもしいと言われようが恰好つけさせてくだせえ」
「う、うん。それじゃあお言葉に甘えて……」
「あいよ」
と、俺はカウンターへと向かおうとする一方で。
「アイス!?」
「あ、俺が食う分ね」
ミナの目が「じゃあ私の分を食べてよ」と訴えかけてきていたがスルーした。
湯気たつ、良質なコーヒーの香りに鼻孔をくすぐられながら俺は二つ目のアイスに格闘するミナの前へと置いた。
俺はなかなかに重量感と圧倒される感のあるバニラアイスを切り崩すようにして口に運び始めた。
うん、甘い。そんで美味い。
ミナにもう一つお付けされた「別腹」というものの許容限界は少なかったようで。
ユキとトーク、アイスを崩しながら時折ミナも話題に入り、こうして以後数時間に渡りほどほどに空いた店内で駄弁り続けた。
こうして三人での休日は終了となった。
イベントだけで言えばの話で、
「近いうちに私と二人きりでデートね! 覚悟してよねユウくん!」
「そのうち、二人で出かけよっかユウジ」
などという提案が帰り際寸前に二人から切り出されたもので、
「お、おう。出来たらな」
という曖昧な答えで濁し、今度こそ帰路へ。
最後の最後で爆弾を投下する二人には完敗としか言いようがなかった。まあでも、
「(そりゃそうだよな)」
最近生徒会関連で持ち歩くようになった黒表紙のスケジュール帳を開いて多忙っぷりにうんざりしつつ、大体の時期を考え始める俺なのだった。