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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十四章 神楽坂ミナの暴走!
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第449話 √b-34 神楽坂ミナの暴走!

やればできるじゃないかあ!

 そーしてスーパーで食品を買い込んだミナとユキ。満足気にホクホク顔の二人、どうやら思わぬ収穫があったようで。

 え、あれ? 普通に冷凍食品もあるんだが……持ち歩けんよね? これからどうするのかと!

 

「生鮮食品買い込んでどうするんだ?」


 重い牛乳やら野菜などが詰められたビニール袋を提げながら二人に問うてみる。


「決まってるでしょー、マイハウスに持ち帰って昼食がソレね」

「え、まさかのミナハウス?」

「うん、ミナの提案でねー。なんとなく料理勝負をすることになった」


 なぜに……?


「私の家、商店街から近いからさ、ゴーゴー!」

「ほろほら行くよユウジ」


 言われるがままに付いていくしかない。この幼馴染二人のような妻を持ったら尻に敷かれるのがデフォになるんだろうか、などと考えながら商店街を抜けた。





 ミナの家? いや下之家はそこじゃないだろ。

 などと平然と思ってしまった。そうなのだ、今のミナは姉貴であった下之ミナその人ではない。

 神楽坂ミナ、クラスメイトで幼馴染なのだった。


 ミナの家を知っているかと言われれば……曖昧な答えを返さざるを得ない。

 俺は”知らない”が”いずれ思い出す”のだ。

 道を歩くごとにミナ家までの風景が脳内で再生される。じわりじわりと実体を出現させるように思い出されていく。

 そうだ、こんな風景が道中にはあったなあ。そういえば、昔は俺の方から遊びに行ったんだっけ?


 ――偽りの記憶が捏造されていく。


 いや、この世界ではそれが「本物」には違いない。未だに「偽り」を称するのは俺ぐらいのものだ。

 百人が「本当」と言い、一人が「嘘だ」と言う。客観的に見て多数決理論を持たずとも、結果は明快だ。

 姉貴であることを忘れないように、姉貴が戻ってこれるように奮闘する俺に「無駄なことだ、諦めろ」と諭すように”その”記憶は増えていく。

 

「(ミナと関連性のあることに出くわすとこうもあからさまに思い出されるのか)」

 

 記憶喪失から解放された人の感想とはこんなものなのだろうか、いやどうだろう。

 それとは違うな……うーん、ともかく俺は――


「どしたのユウくん、らしくもなく難しい顔して」


 気づくとミナが俺の顔を不思議そうに覗き込んでいた。


「グリーンミントとペパーミントどっちがいいのだろうと思案してた」

「私グリーン! ペパーはすーっとしすぎだよ!」

「私もグリーンミントかな? その味のガムって噛んでて飽きにくいよね」

「そそ、んで味長持ち。ん~、しかし眠気覚ましには――」


 他愛のない会話で誤魔化して、話題を展開して。

 俺はこうして一人悩み続けるのだ。




 

「あー……久しぶり?」

「だね、もうユウくんは二年近く来てないかな」


 ミナの家にたどり着く前には、既に家の輪郭から”知っている”内部構造まで思い出していた。

 さながら思い出ナビゲーション。

 

「私は来るの初めてだな。ミナの部屋楽しみかも」

「面白いものなんてないよ? あるとしたら、消しゴムコレクションとか。ほら食べ物とか乗り物とかあるヤツ」

「あー! あったあった、懐かしい」

「そんなものもあったっけなー」


 ここで話しているのはもしかすると一部しか知らないかもしれないが、俺は「おもちゃ消しゴム」と呼んでいた。

 普通の四角い消しゴムが紙のケースに入っているのでなく。時にはラーメン、時には携帯、時には車などなどを模したゴム素材で作られた一応名実ともに「消しゴム」そのものだ。

 消し心地はそこまでも良くもないが、小学生ぐらいの頃は「先生、これ消しゴムですから!」と言い訳に使って友人を遊んでいたような。


「そういや俺はねり消し集めてたっけ、そのものを買うのは途中からバカらしくなって自分で作ってたけど」

「あったねー、結構文具っておもちゃになってたね!」

「私は香り付きケシゴムとか持ってたなあ」


 などと懐かしい遊戯に花咲かせつつ、ミナ宅へと着いた。

 家の大きさは大きくもなく小さくもない二階建て一軒屋だった――ことを思い出した。





「ここで勉強したなー」

「ユウくんはそこまで捗ってなかったけどね」

「いやいや、大抵話持ちかけてくるのはミナだったろうに」

「定期テスト直前に泣きついてきたのはどこのユウくんだったでしょうね~?」

「悪かった……って伏せる気ねえな!」


 こうして何気なく、さりげなく、違和感なく”思い出を共有”する俺がそこにはいる。

 まるで空中から傍観するようにその様子を見て「なんでそんなペラペラ話せるんだよ」と疑問を抱く俺がいた。

 理由はほかでもない、この世界での記憶は紛れもなく「それ」なのだから。


「ミナー、冷蔵庫に勝手に詰め込んで良かったの?」

「いいよいいよー、基本私一人の砦だし」


 思い出すとミナは両親が共に出張しているとのこと。何度か会ったことがあるが結構な頻度で両親は家を留守にしているようだ。

 ――その方が都合がいいからな。冷静に姉貴に固執する俺はそうツッコミを入れていた。


「で、メニューはアレでいいんだよね?」

「そそ、アレ!」


 メニューと話している当たり昼食のことを話しているのだろうか、女性の買い物一店舗だけでも長いと言うが……気づけばミナの家に着くころには十一時ほどになっていた。

 しかし考えてみるとこのまま解散ではミナのお出かけ条件の「アイス」がどこぞにふっ飛んでしまう。

 別に財布の総重量を横ばいに推移することが出来るので俺はまったくもって構わないが。


「(まあ、飯食ったら繰り出すんだろうな)」


 非効率的ィ!

 まあなるようになればいいさ。


「ユウくんはテキトーにつまらないワイドショーでも見てればいいよ!」

「ユウジはそこでおとなしくテレビでも見てればいんじゃない?」


 俺も「後学の為にキッチンを拝見に」と歩を進めた瞬間になんと冷たいお言葉。

 仕方もなしに途方に暮れながらテレビのリモコンを手に取った……ワイドショー内でテレビショッピングやってんじゃねえよ。

 携帯を弄る習性もない俺は本当に興味の惹かれない番組をぼーっと見ながら、時間は過ぎていった。



 


 流石に退屈だと立ち上がり、様子を見に行くことを心に決めた。

 罵倒がなんだ! 喜べよ俺! 嬉しいんだろ? もっともっと欲しいんだろ~? ほらほらほらほら~!

 ……などと内心謎テンションで迎え行った。うん、あらかじめ免疫というかそれなりに奮い立たせないとさ。

 なぜかこの二人のダブルお言葉には痛いところというかエグく抉られる気がしてならないのだった。





 そしてカレーである。

 いやまあ、そのままメニューの王道カレーライスだ。野菜などを煮詰めてさあルーを入れて完成手前といったところだ。


「え」


 ユキが持つカレールーは――


「LEE……!?」


 いや、それならヒイヒイ言いながらもギリギリ食べられる気がする。あくまでも希望!

 だが更に左手に持つ小瓶といえば、


「ハ、ハバネロパウダー!?」


 ”ダー”のところで声が裏返ってしまうほどに衝撃だった。

 なんだそれは! ちょいちょいさっきのスーパーでの伏線かよいれるないれるなああああああああ赤いいいいいいいいいっ!


「もーユウジ、来ないでって言ったのに」

「いや、そのな。はやまるな!」

「? 急にどうしたの? もうすぐ出来上がるから待っててね」

「いやヤメロユキ! それは――」


 ハバネロ、かつて世界一の唐辛子と巷で話題になりましたね。

 後にジョロキアが掻っ攫っていきましたが、普通に辛いです。てか調理次第ではモノホンのハバネロ入れたら即死だっての!

 そのパウダーである。パウダーだからと侮るなかれ、


 一振り三〇〇ミリリットル。


 なぜかそんな某キャラメルのキャッチコピーが浮かんだ。ちなみにこのとき一粒で走れる距離でなく一振りで食した際に溢れ出すであろう汗の量だ。

 本能的にそれは入れるなと告げている。  


「俺は少し辛いだけでいいからさー」

「少し辛い? うん、わかった――」


 そうして瞬く間にカレー鍋に名人様もビックリの十連射。


「オワタ」 


 少しの猶予なく訪れるであろう口内の崩壊に絶望している一方で、更なる絶望因子が。

 同じくカレールーを準備し始めたミナの方であった。


 カレールーはゴールデン。うん、あれはスパイスの調合が丁度いい――というかさっきからS&Dの商品ばっかりでステマ扱いされそうだ。

 その中辛、ふむ無難かと思うぞ。しかしそうだその右手に持つ―― 


 おいおいミナ。

 その怪しい褐色の瓶ってなんだなんなんだ!? ラベルにドクロがあるんだがおおおおおおおおおおおおおおおいっ!


「なあ、ミナ」

「なにユウくん、というか来なくて良いって言ったよね? 罰として御かわりさせちゃうぞ☆」

「いやいやその瓶の中身入れることで罰の自覚あるのかよ! と、とりあえずそれってなんだ?」

「ミナ特製ドリンク♪」


 デジャブだああああああ、聞いたことないはずなんだけどなんか同じニュアンスの聞いたことあるううううううううううう!

 なんか前のは痛みと疲れが吹っ飛ぶヤバそうなヤツだったような――


「いや、せっかくのカレーだから普通に食べようぜ!」

「えー、面白くない」


 姉貴はそんな返しをしないッ! 返せッ、俺の姉貴を返せッッッ!


「……どうすればお止めいただけますか?」

「どうすることも出来ません♪」


 ドブァ、微妙に粘性の液体がカレーに溶け込んでいった。



 ということで料理対決、審査員は強制的に俺。で結果はどう言えばいいのか。

 まあ舌は死んで胃は発狂して体が火照って汗とか涙とか鼻水がががががががががががが。

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