第448話 √b-33 神楽坂ミナの暴走!
三日間連続更新出来たら峠のようなものを越える(?) そういえばPV164万アクセスとユニーク12万越えありがとうございますー
商店街入り口に待ち合わせを指定、休日だけに商店街はそれなりの賑わいを見せていた。
「あ、ユウジおはよー」
「よっす……って、早っ」
ユキが先に待っているという大きな誤算に慌てて腕時計を覗くと時刻は八時半手前、まだ集合時間まで三十分ほどあった。
「えへへ、楽しみだから早く来ちゃった」
頬を少し赤みがかせ照れながら言うユキ、可愛すぎだろ結婚してくれ。
……いやまあその願望は心の内にしまっておこう、南京錠で鍵をかけて。
「……待ったか?」
「ううん、今きたとこ」
普通逆のシュチエーションだこれ!
「実際のところは今より三十分前に来てたに百五十セント」
「惜しいっ、四十分前っ!」
「…………」
「…………」
うん、はええよ!
「はしゃぎすぎ」
「あた」
先に来ていた女子を軽くチョップする俺の図、しかしされた当人満更でもなさそうだった。
「いたいな~、お返しえいっ」
「ハハハ、こやつめ」
などとしばらくじゃれる。老夫婦の温かなまなざしと明らかにおひとり様オーラ満載の青年からの痛い視線。
それが気にならないほどに二人生徒会のことやら、ユキの友人の話題などを話したりしていた。
「おまたせ~、ユウくんユキ~」
「おはよー、ミナ」
「ミナ……きっかり九時に来るとは偉いな」
「そう褒められるとアイスが三つに増えちゃうぞ☆」
呆れ顔で皮肉を言ったせいで、ミナからのお出かけ条件のアイスが増加した。
文面で見れば理不尽さが溢れるが、まあ状況を想像してもらえれば、である。
「……で、お二人さんはいつからここでイチャイチャを?」
「「イチャイチャしてねーよ(してないよ!)」」
「昔のラブコメマンガみたくベタだぞー」
「……うるせー」
「で、何時に来てた?」
「俺は八時半」
「私は八時」
「……暇人だねえ、何かすることないの?」
こうして来た時間を答えたのになぜか蔑みのお言葉。
陳謝はなかったとしても、最低でも「そんなにはやく!?」などと驚くなどしてほしいんだがな。
「そういうミナは何してたんだ? さぞ有意義な時間をお過ごしだったんだろう」
「うん、ギリギリまで寝てた!」
……ここで出すのも難だけどな――
姉貴なら二時間前に来てる! ああ、絶対そうだと思えるね!
現に日常的に五時起きが基本の姉貴がギリギリ起きぃ? 変わってしまった、跡形もないぐらいにな。
……帰ってきてくれ姉貴。こんなふとした拍子に心が折れそうだよ。
「よく眠れたか?」
「うん、バッチリ! ……と、言いたいところだけど半寝不足なんだよねー。夜遅くまで目玉焼きの焼き加減の絶妙加減を試してたら」
「いいの出来たか?」
「どーだろ、二人は白身の端がパリパリになってるのとしっかり厚みと弾力あるのどっちがいい?」
「俺パリパリ派」
「私は厚みと弾力派かな」
「ユキとは気があうね~、それに比べてユウくんは……」
なぜかユキとミナが示しを合わせたかのようにヤレヤレ顔で見る。
「目玉焼きで人の価値は計れんぞ」
「でも私的には価値観の違いは残念だな」
「相性占いでもそういう類のものはあるし、ねーユキ!」
「「ねー」」
な、なんぞこれ。なぜにアウェー!? というか目玉焼きの好みで非難されるとか理不尽にもほどがあるわ!
てか仲良いなこの二人! 少し前まで見えない壁があった気がするんだが、すげえ打ち解けてるぞ。
そういや名前で、それも呼び捨てになってるし……んん? そういや思い出してみるとミナとユキが二人帰った翌日には少し二人の雰囲気が変わっていたような。
「目玉焼きのことはどーでもいいからはやく、ゴーだよ!」
「そそ、引きずってる男は嫌われるんだよユウジ」
「うう……」
なんか色々な俺の要素が否定されたんですがねユキさん。
半ば放心状態にありながら二人進み始めたので俺も商店街に入っていった。
「ウィンドウショッピングねえ……」
こういう高校生でのウィンドウショッピングというと衣服やらアクセサリーを扱う店に入って買い物を済ませるものだと思ったが――
「ユキ、ヤバイ。挽肉一〇〇グラム六〇円」
「安っ! ちょっと私行ってくるねっ」
「じゃあ私はニンジン行ってくるっ」
スーパー山中、もろスーパー。
今のカゴの中? 食品、生野菜、牛乳とか。
ちなみにお出かけプランは謎は謎を呼んでいた、というか俺が立てかけていたのだが。
『いや、私とユキで決めるから』
と半ば数日前、強引な主張で任せる形に……いやこの時点で仲睦まじいじゃねえか気づけよ俺砕けろ。
「あぁぁっ! S&Dのハバネロペッパーが入荷してる……! いやでもこれは常時販売のはず、それに噂だとギャグのような辛さだとか……気になるぅ……! てグリーンペッパー!? 通販でしか――」
「激乙くんのキングサイズが売ってるんだ……っ! だめだめ、タマネギがぁ……くうう! これは見るからに食べやすく、すくいやすい、汁モノを飲みやすいレンゲ……! こんなところで売ってるんだ――」
スパイス職人と日用品マニアが一同に会した結果がこれだよ!
現に俺はカートをがらがら押して女子勢の投入する食材やらを見守っているだけにすぎないよ!
「ああ、こりゃ本当にただのお出かけだわ」
などと出かける直前まで考えたことが吹っ飛んで行った。
なんとまあ、実際の女性のパワーとかもろもろ底知れないですね。