第442話 √b-27 神楽坂ミナの暴走!
久しぶりの更新がこのザマである
姫城と買い物がてらの傍から見たらデート確定だったシーン後、家に帰れば台所へと向かいホニさんとまずは顔を合わせた。
そうして買ってきた具材一式を冷蔵庫に突っ込むとエプロンをつけ以下略。
一通りに家事が終わり、ようやく訪れた休息の時間に俺は勉強机でぼーっとしていた。
「……はぁ」
忙しいなあ、ホント。生徒会の時にあちこち駆け回りもしたから、今になって足や腕に疲れが出てるし。
「大丈夫なんだろか」
そして更なる懸念事項がアレだ。
「……あね……ミナと付き合う、ねえ」
その言葉の意味は分かる、だけどもその光景がどうにも想像できないのだ。
俺の記憶に生まれ始める「神楽坂ミナ」との記憶。しかし姉貴としてのイメージの方が今は勝っている、それがミナを塗りつぶしてしまう。
元姉貴と恋人関係になる未来が想像できない。
「いや……出来ないってのは嘘か」
想像してしまうのは――確実に破綻の未来。それは自分の経験から浮かび上がってしまう、ある種のトラウマ。
今の元姉貴は幼馴染だ。そして俺はかつて幼馴染で大失敗をやらかした、修復不能の未だに癒えることのない傷が俺にもそしてその周りの登場人物にも刻み込まれている。
「……二度もあるとは思わない、だけども」
どうしても、考えてしまうのだ。その最悪の結末を。全てが壊れてしまう未来を。
「…………どうしたらいいんだろうなあ」
俺は弱音を吐いた、少なくとも俺はそんなことばかりだ。
姉貴のそんな姿は一度も見たことはない、いつでも学校では凛々しく、家ではしっかりとした姉を担い、そして俺だけにはその溺愛で素顔を見せる。
いくら生徒会で明け暮れようとも、家事に奔走しようとも……俺は姉貴の代わりには絶対になれないのだ。
その時のこと、
「っ!」
携帯が鳴った。聞き慣れない着信音……いや、あるらしい。これは、そう。
「ミナ……だな」
浮かび上がる記憶の中に、ミナからの着信音がそこにあった。
俺は先ほどまで噂をすればではないが、思考をすれば……だったので内心動揺している。
着信はメールのようだが携帯を開いて内容を見ようか見まいか、少しの躊躇をしてしまう。
どうやらこの「ミナとの記憶」はその出来事に関することを経験すると浮かび上がるらしい。
着信音こそ思い出したが、メールがどんな内容かは分からない。
おそらくはメール内容を見ることでそれを「思い出す」のだろう。
「……ええい、ままよ!」
俺は勢いよく携帯を開き、メールボックスを覗いた。
『このニブすぎユウくん! 今週末デートだからっ』
…………え。
「なんぞこれ」
ニ、ニブイ? 俺が? いやいやまさか縫い針の先端にも匹敵するほどの鋭利さを誇るこの俺が鈍いなんてそんな冗談――
「てかデート……?」
なぜデート?
……理由は分からんが、これはもしやチャンスなのか? トラウマで踏み出せないヘタレの俺としては結構な機会だ。
ミナを知るチャンスとしても見れるからな、これはまたとない――
さらに着信。
「ええっ」
着信音は異なるものだ、そうこれは――
「ユキ……どうしたんだ?」
時折メールで会話することもあれば「明日先に~」などの連絡にも使うこともある。
明日何かあったっけかな、または何か面白いことでもあったのだろうか――
『ユウジ、週末私の買い物に付き合ってくれないかな?』
…………え。
「なんでやねん」
俺の脳内をその文面が駆け抜け、先ほどのミナからのメールの文面と並列した。
”週末”と”デート(買い物に付き合う)”ちなみに同じ週末で重なってくれちゃってるわけで。
「ブッキングっ!?」
いやいやここまで被るものなのかよ! いや確かに最近忙しくて、いつものメンバーで外へ繰り出すこともなかった、なかったが!
まさかこのタイミングだとは。
いや、今週は学校の方針で偶数週なので土日が授業がなく空いている。これならば一日差でデートっぽい何かに――
「うおう、完全に二股ルートだコレ!」
アニメやゲームやってて、その展開後に良い未来があるとは思えない!
修羅場は回避したい、それも一日ずらしのことが色々伝わって二人の耳に入ったとしよう。
「……絶望しかねえ」
こうなったら――
謎の閃きだった。そうだコレはあえての!
『ユキ(ミナ)にも誘われたから三人で土曜に出かけよう』
メール送信。
あ、ユイとマサヒロはいいや。
そう、これはあえて二人組みにしないことでデートよりも”複数人で出かける”という方向に軌道修正する!
てか二人とも攻略しよう!
――――謎の疲弊感で前代未聞のテンションで冷静になれば理解不能な思考が働いたことで、こんな発想が浮かんだわけで。
色々と後悔するのはそう遠くないこと。
* *
「え、三人? ユキとかあ」
ミナはそのメールを見て複雑な表情を浮かべます。
「……いいけど、いいけどさ」
ミナは返信用のメールを準備しながら、
「ばか」
メール送信。
「ユキも――そうだから。この機会に確かめよう」
* *
「ミナとも……うん、そっか」
ミナとユウジと三人だといつもの感じになるよね……考えることは同じかあ。
「最近ユウジ忙しかったし、それに――」
ユウジ異常にモテてるし。
なんだろう、このままじゃユイやマイさんやクランナさんとユウジが――
「……なんで焦ってるんだろう」
確かにあの告白合戦は動揺したよ? まさか三人ともそんなことするような子には見えないし。
でも、
「……少なくとも冗談で言ったようには見えなかったんだよね」
三人とも真剣に言っているよう、私には見えたのだ。
「私はどうしたいんだろう」
幼馴染でいたいのか、それともユイ達のように。
「確かめられるといいな」
私はメールに文面を打ち終えて、ユウジに送信した。
* *
『ソフトクリーム一つで可』
『了解、じゃあ楽しみにしてるね』
何故か二人とも了承だった。
……いや、自分が言うのもなんだが無茶振りだとは思ったし。
「いきなり二人きりでのデートっぽい何かよりはマシか」
こうして俺とユキとミナでの土曜休日デートが決定したのだった。