第420話 √+1-1 ・まわる世界でこんにちは
人は何度繰り返しに耐えられるだろう。
二回か? 十回か? 百回か?
千回か? 万回か?
少なくとも人はそこまで強くない。
百に届く前に壊れてしまう者もいるだろう。
その繰り返される部分が長ければ長いほど辛さは苦しみは大きくなっていくだろう
思うよりも恒常的にこの世界は繰り返されることは非常に多い。
それは機械的であったり、結果的であったり。
だがこれは全て故意によるものだ。全て思う通り。
ハッピーエンドは一度は迎えさせてやろう。
だがこれからは終わることのないバッドストーリーを見せ続けてやろう。
恋を想いを一度実らせてやろう。
だがこれからはそんな恋を想いを抱いたままにズタズタに壊してやろう。
一番の幸せは、幸せで終われること。
次を期待すれば期待したその時点が幸せの頂点で、あとは下り坂。
一度空高く昇った幸せは雲を突き破り、土を掘り返し、底へ底へ。
そしてその幸せを一度知ったものはそれをまた求めようとする。
だが言っただろう? それは一度きりだと。
ループ世界で、記憶を抱くのは身を自ら削っていく愚かなことだ。
ナイフで皮膚を裂いていくように、その出血は愛という痛みは時が経つにつれ増していく。
ハーレム?
ラブコメ?
ファンタジー?
お前が知らないだけで、知らないお前は知っている者を傷つき続けていく。
分からないだろう?
分からなくていい。
だからお前は主人公でいられるんだ。
お前は生かされているんだ、守られているんだ。
傷つき続けるヒロインたちに。
なにが純愛がいいだ、なにが気遣いが出来るだ。
まったく主人公、お前はとんだピエロだよ。
箱庭の、掌の上で愉快に回る道化さ。
そんなピエロにとって相方なのは「道化道具」のヒロイン達。
そしていつしかピエロの道具達は壊れ始めるだろう。
さあ、いつまでその想いを秘められるかな?
さあ、どこまでその苦しみに耐えられるかな?
その壊れる様が、箱庭の外から見下ろす俺にとっては実に痛快だ。
この繰り返される世界はバグだらけのクソゲー世界。
イレギュラーなことが時折起きて、ふいにその繰り返しに気付く人もいたりするかもしれないな。
――クソゲー世界はお前たちの想像以上に残酷なんだよ。
さあ、主人公思うままにやり直せ。
自分が考えているところはそんなところです。




