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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十四章 神楽坂ミナの暴走!
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第419話 √b-5 神楽坂ミナの暴走!

誰だよ、って? 

四月二七日



 寝起きは最悪だった。

 それもきっと一晩中姉貴のことを考えたいたからだろう。

 俺は昨日の生徒会終わりの帰り道、基本的に怒ることのない姉貴を怒らせた。


 でも、その理由が見当もつかない。


 ……俺は色々と人に気を回す癖があるけども、こういう時にそれが発揮されない。

 

「……俺は姉貴の元気がなかったから」


 励ましたくて、姉貴の突破口になればと思って――姉貴に好きな人なんじゃないかと言った。


「もしかするとそれが原因なんだろうか……」


 でも、それがどうして姉貴を怒らせる結果になるのかが分からなかった。

 本当に俺は肝心なところでダメ過ぎた。


 時計を見て今が七時一歩手前なのを知り、姉貴が朝早く起きている時間であろうと認識する。


「…………ああ、どう顔を会わせたらいいのか」


 とりあえずは起床しよう。




 俺は居間へとやってきた。 


「……ん?」


 いつもならば生活の音、主に姉貴がキッチンで調理している音が聞こえてくる……はずなのだ。

 しかしその今には誰もおらず、ひっそりと静まり返っていた。


「今日早く出る用事とかあったんかな……」


 とキッチンを覗いてみる。


「んー?」


 そこにはやはり生活の空気がなかった。

 いつもならば姉貴が先に家を出ている際には、作りおきされラップがしてある朝食の皿があり、巾着に包まれている弁当があった。

 本来なら朝食や弁当の香り立つキッチンに、何もなかった。

 水切りにも皿はなく、誰かがキッチンを使った形跡はなかった。


「……寝坊か?」


 俺はそれしか思い当たらなかった。

 しかしそんなこと今まで一度もなく、あくまでもこの状況で有り得るとしたらそれぐらいのことだった。


「姉貴ー」


 いまだに静まり返る家の中を歩き二階へと階段を上る。

 そうして姉貴の部屋の前へとたどり着く。まず声をかけようにも……何もなかったかのようにするのはダメだ。


「姉貴、昨日は……本当にゴメン」


 俺はもし謝れるとしたら、それしか思いつかなかった。


「姉貴はタダでさえ家のことも生徒会も色々やってて忙しいのにな、姉貴の気持ちも考えずに安易に言ってゴメン」


 そんな恋する暇なんてないから、気持ちを抑えなきゃいけない。だから、あの時俺の発言で怒ったんだろう?


「……これからは、俺も姉貴をもっと手伝えるようにするからさ。姉貴の右手とは行かないまでも……左手にはなれるようにするからさ」


 俺はこれから姉貴だけにすべて押し付けないから。


「なあ、だから――」


 俺はあまりにも返答のない姉貴の部屋の扉のドアノブを回した。

 ガチャりと開いた音がした。


「姉貴……?」


 姉貴でも一応一人の時は内側からカギを締めているはずで。

 しかし開錠した。

 その意味が色々な可能性を俺に考えさせる――姉貴の身に何か起こった、とか。姉貴がいなくなった、とか。

 でもそれは半ばオーバーな冗談だと内心思って、それでも何故か焦りだす俺がいて。

 そうして俺は扉を開いた。



「……あ、ねき?」



 そこにはいつ以来か忘れたが、どこか整頓されていて落ち着いた雰囲気の姉貴の部屋――――は、なかった。


「あ、あれ? 俺部屋間違えたかな?」


 そう思わざるを得ないほどに部屋の様子は様変わりしていて、改めて扉を閉めて俺の部屋まで戻って。

 一歩二歩三歩……確かに足で覚えた姉貴の部屋の場所。


「…………どういうことだよ」



 その部屋に生活の匂いはなかった。

 鼻をつく、長い間誰にも使われていないかのような埃の臭い。


 そこは物置だった。




「……なぁ、なぁ。姉貴、なあどこだよ。姉貴っ!」

 

 俺は家中探し回った、空き部屋も探した。

 その俺の異常さに家の人々も起き始め、


「……どうしたのじゃ、ユウジ」


 桐がまず俺に話しかけてきた。  


「な、なあ桐。姉貴知らないか?」

「姉貴……ミナか、知らぬぞ。どうした?」

「姉貴が……姉貴が」


 俺は桐を連れて行った、かつての姉貴の部屋で。今はただの物置と化した。


「ど、どういうことじゃ……?」

「なあ、姉貴はどこ行ったんだろうな? 部屋まで片づけるなんて冗談が過ぎるよな?」


 俺はとにかく混乱していた。

 こんなこと今までになかった、姉貴を家出させるほどに怒らせるなんて。

 

 その一方で桐は物置と化したこの部屋のダンボールを漁って、アルバムを取り出していた。

 そうして桐がページをめくる、めくるめくるめくる、止まる。

 表情を硬直させて、声も出さずにアルバムを俺へと差し出す。


「これって俺と姉貴やミユの……」


 家族のアルバム。そこには――


「ない……ない、ない……ないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないっ!?」


 姉貴の写真が一枚もなかった。

 記憶にある俺と姉貴とミユのスリーショットも、まるで姉貴が最初からいなかったようにツーショットへと姿を変えていた。


「……ミナが消えた、ということか」


 桐がぼそりとそう呟いた。

 俺はしばらく呆然と立ち尽くした。





「姉貴? ぬう……アタシはユウジに姉がいたとは知らないな」

「姉貴……? ユウジにはお姉さんがいるのですか?」


 ユイやクランナに聞いた結果はそれだった。

 姉貴のことについての記憶が二人とも消え去っていた。


「どういうことなのかな……」

「……わからぬ」


 知っているのは俺と桐とホニさん。アイシアとは話すことが出来なかった。


「ユウジ、ショックは痛いほどわかる。じゃが状況確認が先じゃ」


 頭ではそれが優良の行動だとは分かっても、心がそうはさせてくれない。


「…………でも俺の姉貴が」


 姉貴がいなくなったショックは今までのどんなことよりも大きかった。

 父親がいないことを知らされた、ミユが引き籠った、初恋の彼女に振られた――そんなどんなことよりも。


「ユウジっ! しっかりせい! お主は主人公なのじゃっ、ここで立ち止まって何か変わるというのかっ」


 桐が声をあげて俺を叱咤した。そこでなんとか俺は正気を取り戻した。


「ああ、そうだな……とんだシスコン野郎だよな」

「そのシスコンの方向をわしに向けてくれてもよいのじゃぞ?」


 桐が微笑みながらいつものように俺へと好を向けてくるが、それが今回ばかりは励ましに思えた。





「姉貴のことを覚えているのはおそらく、俺と桐とホニさんだけで。姉貴がいた証拠は全てなくなっていたってことか」


 姉貴の部屋に姉貴の写真。もうこれだけで、姉貴の存在の証拠が消失していることを確定できる。


「しかしそれでなぜ突然にこのようなことになったのかじゃな」

「ねえ、ユウジさん。最近のミナさんって変じゃなかった?」


 思い当たる節がありすぎる。ここ最近の姉貴はあからさまに変だった。


「それに、もしかしたら要因の一つかもしれないけども。姉貴を昨日怒らせたんだよ」

「ふむ、確かにお主とミナの会話はぎこちなかったのう」

「ミナさんはユウジさんを避けているように見えたかも」


 やっぱ、そう見えるよな……


「で、なぜ怒らせたのか?」

「それは――」


 そのことについて話すと、途端に二人とも呆れ顔になった。


「……ユウジ、仕方ないがのう」

「ユウジさんて時折、惨いぐらいに鈍いよね」

「そ、そんなにか……?」


 ホニさんに呆れられるって中々のダメージだな……割と本当にメンタルブレイク寸前だ。

 

「それでも直接的要因はそこではないじゃろうな、もっと他にあるはずじゃ」

「そういえばユウジさん”けいたい”ってどうなってるの? ほら”あどれす”かな?」


 そこではっとホニさんに気づかされた俺は部屋に戻って携帯を見る。

 基本的に携帯を扱うことが下手な俺は「名前順」で見て「し」の行の「下之ミナ」を探した。


「……ないな」

「そっか……役に立てなくてごめんね」

「いやいやありがとうホニさん」


 若干落ち込みそうだったホニさんの頭を優しく撫でながら、


「でもお主は学校に行くべきじゃな。ミナは生徒会の副会長の役柄でもあるからの、ミナのクラスがどうなってるかも知っておいてよいじゃろう」


 本来なら町内走り回ってでも探したいぐらいだけども……まずはその学校での状況調査が先だな。


「わしはわしで色々と当たってみる」


 今の桐はなぜか頼もしく思えた、言葉の威厳が地味にあるからかもしれない。


「了解……じゃあホニさん、とりあえず朝食作りに行こっか」

「う、うんっ! そうだね、大忙しだねっ」


 時間は七時半を回った。そろそろ準備しないとマズイ気がする。

 というかやっぱり姉貴の存在って大きかったんだな……


「じゃあ桐も少ししたら降りて来い! 飯準備しとくから」

「楽しみにしておるぞー」


 そして俺とホニさんはてんてこ舞いに料理と弁当を作りだしキッチンは大混雑を極めた。

 昨日のうちに食材の買い出しを済ませ、クランナとアイシアの好き嫌いを聞いておいてよかったと今思った。


 その桐がミユの部屋に向かったことを俺は知らない。




「文句言う立場ではないがぬ、ユウジ。朝食は早めに頼みます、お願いします」

「悪かったって」

「ああ、この国に来てあまり時間が経っておりませんのに遅刻だなんて!」

「ごめんなさい」

「責めているわけではなくて……ご、ごめんなさいユウジ君」

「……ユウジのせいですね、最悪です」

「おおう、本当にごめんなさい」


 ユイにはとにかくそう頼まれ、クランナにはなぜか謝られ、アイシアには罵倒されていた。

 まあ俺が悪いけども、みなさん知らないようだけどもハプニングがあったんですよ? 言っても分からないでしょうけど。


「(てかユキは先に行ってたか、よかった)」


 俺はあのあと携帯が着信を知らせた、どうやらユキは日直だから早くに行くとのこと。

 マサヒロにも一応メールしておいたから読んでいるはずだ。


「皆、本当に悪かった!」


 俺はとにかく走って息が上がりながらも謝った。

 グルグル眼鏡、金髪碧眼美女、銀髪灼眼美女が通学路を必死に駆け抜けていくという光景は大層異様だったという。




「せーふっ」


 ユイが先に教室に滑り込んだ。俺が遅れて教室に突入する。

 扉越しにはすでに生徒が集まり始めている、下手すりゃラスト組か?


「ユウジー」

「セーフ…………っ!?」


 ユキの声に俺が顔を向けると、



「ユウくん! おはよー」



 姉貴がいた。



「え……姉貴?」

「ん? どうしたのユウくん、私が姉貴だなんて」


 え、は、うん? どういうことだ?


「姉貴じゃないのか……?」

「いくら私がお姉さん級の包容力があっても、その言い方はどうかなー?」

「いやだって、俺の姉貴が」

「だーかーらー」


 意味が分からない。何がどうしてそうなった。

 てか姉貴じゃない? いや、あなた俺にとって姉貴だって!



「幼馴染なのに失礼だなー、ユウくん。私には”神楽坂カグラザカミナ”っていう名前があるんだから、ミナかミナちゃんって呼びなさいっ!」



 か、


「神楽坂……!?」



 昨日まで姉だった存在は、

 今日からクラスメイトで幼馴染になった。



「はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」


 

 俺はクラスの喧騒がピタリと止まるほどの驚きの声を上げざるを得なかった。


  


* *



 

 「ファーストワールドver.α」起動を確認。

 媒体ソフトに「はーとふるっ☆でいず!」を指定。

 


 キャラクター書き換えの準備が整いました。



 メインキャラクターデータ―― 


 適合する人物No.1「神楽坂かぐらざか美咲みさき」の検索――該当1件。

 「下之美奈」への移植・書き換えの実行。プロフィールの大幅書き換え――実行中21%――49%――78%――100%完了。

 人物の適合化に成功。


 現状の整合化――実行中23%――57%――71%――100%完了。



 「神楽坂美奈」のキャラクターが今シナリオ上に出現するのを確認しました。

 


 「ファーストワールドver.α」起動成功。


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