第104~107話R √1-3 ※独占禁止法は適応されませんでした。
R版差し替え済み
「姫城さん、さっきはごめん」
「…………謝られる心当たりがまったくないのですが」
まず謝る相手として少しは身近な存在になりはじめた姫城さんに頭を下げた。
しかし謝られた当人の姫城さんは首を傾げており、謝られた理由にまったくピンと来ない様子だった。
「俺の軽率な行動で、姫城さんを動揺させて……俺にあんなことを」
「いえ、普通に私がしたかっただけですが」
「……冗談だよな?」
「半分冗談です」
半分は本気なのかよ!?
「それでも、あの記事を見て面白くなかったのは確かです。出来るなら――私の行為で上書きしてしてしまいたい、と思いましたが」
「そうか……悪かった」
「そもそも別に胸を触らせたところで減るものでもないと思うのですが」
そう、自分で言っていることをまったくおかしく思っていない様子に……俺はつい、聞いてしまったのだ。
「……それは俺以外にもか? ……いや、ごめん。無神経だった――」
本来そんな質問出来る立場に俺はない、何様だと思われても仕方ない。
でも俺は姫城さんの人間性というか、人格を――少し疑ってしまったのかもしれない。
彼女からの告白が撤回されたことに違いはない、それでも俺を好いてくれた彼女が”そんな子”じゃないことを祈ってしまった、望んでしまったのだ。
狭量だなぁ、女々しいなぁ、自分で言ってて後悔するなら言わなきゃいいのに。
「…………それは、そうですね。減るものでない、ということについては撤回します。これはユウジ様でなければ、ダメです……嫌です」
「そ、そうか」
きっと意識せずに俺が求めた答えだったに違いないのに、面と向かって言われてしまうとたじろいでしまう俺が情けない。
そして内心でほっとして、少しだけ嬉しく思ってしまうのは……ちょろいのかもな、俺。
「そういえばユウジ様。私としてはあの新聞の子と、私どちらが良かったかについては気になって仕方ないのですが――それはお答えいただけますよね?」
「いやー、それは……ごめんなさい、勘弁してください」
それからも執拗に聞かれたが、答えるわけにはいかなかった。
実際は俺の中で答えは決まっていても、これは誰にも言わず墓に持って行くべきだろう。
少なくともこの件でどちらかを比較して、更に傷つけるような・貶めるようなことは避けなければならないのだから――
そうして放課後がやってくる。
俺は生徒会室に入ると――
「ま、また……!」
既に生徒会室に居た転校生ヒロインことクランナさんが俺を見て顔を引きつらせる。
このままではクランナさんが逃げてしまうと思った俺は、リノリウム張りの生徒会室の床に瞬く間に正座し――
「す、少し席を――」
「すみませんでしたあああああああああ」
土下座を慣行した。
他の生徒会役員がドン引きしている様子が雰囲気で分かる、姉貴も困惑を隠せない様子だった。
「ジャパニーズDOGEZA!?」
顔を伏せているので分からないが、クランナはそんな反応……というかリアクションをしていた。
この意味が分かってもらえるなら、俺としては少しでも反省の意が伝わってくれることを祈る――
「OH……! と、ということは続けてジャパニーズ・ハラキリも……?」
「それは許してください」
ギャルゲー世界じゃなかったら俺の生涯が終わるというか……ギャルゲー世界でもバッドエンドやり直しだろうし。
「むう……残念。でも、分かりましたわ……誠意は受け取りましたわ」
「っ!」
まだ、顔はあげられない。
ここで俺が頭をあげて、ローアングラー化してチラっとな二次災害など引き起こしてはならないのだ。
「確かに……わたくしも、前方不注意でした。こちらも申し訳ありませんでした、だからこれで……終わりでよろしくて?」
「もちろん!」
「…………いつまで頭を下げているんですの!? ハッ! これは首を差し出す、ジャパニーズ・クビキリ!」
「勘弁してください」
そうして俺は頭を上げ――ずに、方向転換し生徒会室入り口方向へ身体を向けた上で立ち上がり事なきを得たのだった。
「あなたも生徒会役員だったのですわね。えーっと……」
「下之ユウジだ、よろしくな」
「下! ですわね! わたくしは――オルリス=クランナですわ。クランナとお呼びください」
「ああ、よろしくクランナ」
そうして俺と転校生ヒロインクランナとの和解は叶ったのだった。
それから生徒会が終わり姉貴と一緒に家に帰る。
部屋に戻ってみれば――
「こんぐらっちゅれーしょん、おめでとう……! おめでとう……! じゃ」
なんかざわ……ざわ……した様子の相変わらず桐が出待ちしていた。
「……いつも出迎えしてくれるけど、そんなに俺のこと好きなの?」
それとも、そんなに暇なの?
「好きじゃぞ? なんなら、わしのヒロインルートに入ってもいいのじゃぞ」
「あー、ごめんなさい。俺好きな人がいたので」
「なんじゃと!? わしに好意の有無を聞いておいて断るとか何様じゃ!? ……というか、好きな人がいたとはどういうことじゃ!? 誰じゃ! こんな短期間にヒロインに惚れるほどお主はチョロかったのか!?」
ちょ、チョロくねーし! ちょっと優しくされたからってコロっと落ちたりしねーし! さっきは感動しただけだし!
難攻不落のユウジさんとはよく言ったものだし!
…………彼女いない歴=年齢の自分で言ってて悲しくなってきた。
「というのは嘘」
「なにがしたいんじゃ!?」
……という嘘というのが嘘でもある。
好きな人が確かにかつて”いた”のだ――もう、その人はいないんだがな。
「まったく、幼女をからかいよってからにまったく!」
「まぁともかく桐の言う通り和解は出来た……というか、和解するような事態になってたのも知ってるんだな」
「もちろんじゃよ。どうじゃった? ……ピチピチJKの胸を二人分堪能できるなんて、無い事じゃぞ。実際のところ、どっちがお好みだったんじゃ?」
「ノーコメント!」
そんな桐に弱みの材料を献上するようなこと出来るか!
「……ふむ、姫城マイの方がデカくて良かったと。なるほどな」
「なっ! なんで――それも能力ってヤツか!? それは反則だろやめろ!」
「わしの二十の能力の一つ”心詠み”じゃ! 正直に話さないからじゃ、ほっほっほっほ!」
「こんにゃろー!」
そうして桐へのくすぐり、それを拒もうとする桐との戦いが軽く繰り広げられたのだった。