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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十三章 気になる彼女はお姫様で未来人で。
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第408話 √3-60 気になる彼女はお姫様で未来人で。



「さあ最後に争奪戦と行きましょう? ――どちらがオルリスへの愛が強いのか」



 廃教会の長椅子仁王立ちして、俺を見下ろすようにそう言い放つアイシア。

 しかし俺が鉈を構える一方でアイシアは手ぶらだった。さらには黒服が教会周りこそいたが、教会内には一人としていなかった。


「……こっちから行くか?」

「あーちょっとまってくださいねユーさん……じゃなかった、そこの男!」


 手のひらを突き出して「待って」のポーズ。

 しかしこれが時間稼ぎで、相手にとって有利になる可能性も捨てきれない俺はアイシアに問う。


「オルリスに何をしたんだ?」

「何も。ただ眠らせただけです――オルリス、起きてください」


 なにもなかったかのように平然とした態度で眠るオルリスの肩を叩いて起こさせるアイシア。

 ……連れ去るなら寝ている方がいいんじゃないのか?


「…………ユウジ……っ! アイシアっ! ユ、ユウジはどうしましたのっ!」

「落ち着いてくださいオルリス」

「だってあなたがユウジを消すなどと! ……! ユウジっ、あ……でもそんなに傷ついて……っ!」

「……まあ、見てもらいましょうか――」


 俺のことを心配しアイシアを睨み付けるオルリスの一方で、アイシアが突然に指を鳴らした。


「…………は?」


 目の前の教会の中央に現れる……というより降りてきたのは巻き取り式のスクリーンで、おおよそ横だけで三メートルはあるであろう大きなもの。

 そしてそのスクリーンから直線状に手前、さっきまでは無かったプロジェクターが設置されていた。

 …………コイツは一体何を始める気なんだ?



「――第一回”オルリス争奪戦”っ! 審査たぁーいむ」



 どんどんぱふぱふー…………はい?

 

「ということで、私ことアイシアはオルリスを愛しています。だが、だがしかしです!」


 どこからともなくマイクを取出して、教会の中にそのアイシアの声を反響させながら司会染みたことをし始めた。


「――その男こと下之ユウジ君の、オルリスの愛もこれまた本物! それではまず、告白シーンからです! 私アイシア謹製のディレクターズカット版!」

「こ、告白シーンですって!?」


 オルリスが驚きを隠せない。俺も驚きは隠せないが、どちらかといえば言葉がなかった。

 スクリーンにはどこで撮ったんだよと言うべき……そう、俺がオルリスを神石の背後まで連れ込んで告白するシーンが流されていた。



『オルリス。クランナも聞こえてるかもしれない、俺は。俺、下之ユウジは――あなたのことが好きです』



 俺の勢い付いた告白シーンだった、うわあ俺必死な顔、てか恥ずかしいってレベルじゃねえぞ。


『……言いましたよね――』 

『一生……オルリスを守っていきたいんだ』

『一生……などと軽率に使っているのではないですか』

『俺はあなたを一生お守りします。好きです――あなたの傍にいさせてください。オルリス=クランナ。俺はあなたのことが心から好きです』

『ふふふ……相変わらず面白い方です。きっとあなたは本当は真面目ですから、きっと私を守れるようになってくれるでしょうね。だから――何年経った今も忘れられずに、好きなのでしょうね』

『え――』

『え、未来の私! 突然変わるなんて…………ええええええええと!? ほ、本当に私なんかでよろしいですの!?』



 俺のそれはもう出る出る恥ずかしい言葉のオンパレード、まさか告白シーンを当人の俺とオルリスがこうしてまた見ることになろうとは。

 オルリスにいたっては、


「な……な……っ」


 言語機能が吹っ飛び顔は真っ赤としか言いようがなかった。


「下之ユウジの告白、いいですねえ……この覚悟だけで私は濡れました」

「ぬれ……!? ア、アイシアっ!」

「ですが! 姫を守るのならば力も持ち合わせてなければいけないんですよ! そしてここからはオルリスも知らない未公開シーン!」


 そしてスクリーンには俺が鉈を手にして、ホニさんと共闘する姿。

 うお、はええ。俺こんなにブンブン振り回してたんか。てかホニさんすげー、植物操れてるんだー


『ホニさんに刃を向けたことと、本人の意思さえ知らずにオルリスを連れ去ったこと――俺はお前らを許さない』


 画面には壮絶な怒気を含んで黒服に対する俺の図。いやー、ブチギレ状態だな。

 てかこれ見せられたら引くよね。どんだけ約束に固執しているんだよとかさ。オルリスもきっと引いて――


「こ、これがユウジ……」


 頬を紅潮させて画面に見惚れていた。おお、そうなんか……


「ここからは空中なので音声のみですっ」


 アイシアなんでこんな嬉しそうにしてんだよ。

 てかなんだ、俺の痴態を公開すのがそんなに楽しいんですかい。


『いやさ、俺の友人を本人の有無も言わさず連れ去ろうとしたから俺は抗って、それで――あー……俺のワガママだな。俺が頑固にも約束を守るって、オルリスに約束したもんだから』

『オルリス……? えーと……あ! ユウジさんがお弁当を作ってあげてた女の人だよね?』

『ああ、で俺はそのオルリスのことを守る約束をしちまったからさ』

『ユウジさんが……かあ』

『……ユウジさんはその人が大切?』

『ああ、俺にとって大切な存在だ」

『……そっか』


 俺とホニさんでの空中での会話までも……い、いつの間に!

 ちょくちょくホニさんとの会話が削られてるけども、なんという編集。

 まあでもよくよく考えればホニさんとの過ごす約束だからカットしてくれてよかったかもしれん。


「あうぅ……」


 オルリスも俺の声が音声が再生されるたびに照れてそんな声をちょくちょく漏らしていた。


「最高です! イケメンですっ」


 アイシアはなぜかその音声を聞いて盛り上がっていた。


「さあさ、クライマックス!」


 といって音声が止まり、改めて映像が再開する。

 


『俺の姫を取り返しにきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』



 まあホニさんから降ろしてもらった直後だろう。 


「俺の……姫……ぁ」


 オルリスはダメージ受けまくり。もうどこまで赤くなるんだろうっていうほどに耳の先まで。


『どけぇっ、オルリスに早く俺を会わせろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』


 うわ、斬られてるとこ痛そ……って俺か。てか暑苦しいよ俺!


『アイシアァッ! オルリスを返してもらうっ!』


 と映画バリのカッコイイ撮り方で俺が教会に参上しアイシアに迎え撃つ――というところで映像が終わった。


「いやー……さすがユーさん、カッコイイ!」


 アイシアが茶化すようにそう手を叩いて言った。

 ……ほ、本当に拍子抜けすぎるぞ。さっきまでのヤンデレ要素てんこ盛りのお前のオルリスへの発言はなんだったんだよ。

 するとアイシアはよっと長椅子を降りて、俺の目の前にやってきた。そして表情を俺へは見せたことのない――優しい表情へと変えて。 



「もうこれなら私は引くしかないですね。オルリスを頼みます」 



 と一言。頭を俺へと下げる。


「いやいやいや! ……どういうこと?」

「つまりあなたことユーさんは私のお目に叶ったのです。すごいねえ、この二十数年でもダントツ!」

「いやそうじゃなくてさ……え、なに? さっきまでの俺を消すとか、オルリスを連れて帰るとこはなんだったんだよ?」


 明らかに本気の目というかさ、黒服は殺す気で来てたし。



「え、茶番ですよ?」



 ………………っ!?


「はあああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

「ええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」

 

 俺とオルリスのが一斉に驚き声をあげる。


「だから言ったじゃないですか――その男こと下之ユウジ君の、オルリスの愛もこれまた本物! と、その時点であなたを認めて。こうして映像を見て改めてあなたを認めたのですよ」

「だーかーら! あの黒服なんだったんだよ!? 俺を殺しに来てたじゃねーか」

「確かに殺す気がなかったとは言えませんが――少なくとも黒服は本気を出していませんよ? それでもあなたは予想以上に力を発揮してくれましたが」


 予想……? 


「……俺は一概の学生だぞ? 予想って言ってもそんなものタカが知れてるだろ」

「あなたは確かに学生。ですが――かつての戦いはそうは見えない動きをしていましたから」


 ……かつて? それはもしや、俺の謎の戦いの記憶と何か……?


「下之ユウジさん、ここまで傷つけて申し訳ありませんでした。しっかりと私、アイシア=ゼクシズが治癒までサポートいたします」


 そう言いまた頭を下げるアイシア。


「それでも私にとってオルリスは大切な存在で、生半可で覚悟も力もない者に……親しい友人の私としては渡したくなかったのです。あなたを試すようにしてしまい、このたびは心からお詫び申し上げます」


 ……いくらなんでも俺への対応はキツすぎると思うのだけども、オルリスへの友情として思ったのは確かなのだろう。


「許してもらうつもりはありません――ですが! ユーさんのオルリスとの王室ライフはサポートいたします!」


 …………ああ。


「……これまでのことはアイシアが俺をオルリスにふさわしいかを試すための、茶番って解釈でいいのか?」

「はい、そして私も改めて惚れちゃいましたよユーさん♪」


 …………ああ、なんか気が抜ける。

 こんな拍子抜けのオチとか聞いて――


「ユーさん!?」

「ユウジっ!」


 俺は体の節々に痛みが戻り始め、あちこちの激痛に意識を失った。

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