第403話 √3-55 気になる彼女はお姫様で未来人で。
十一月三日
……ということでオルリスの婿探し三日目。
正直進展がまったくないという酷い状況。もうどうすりゃいいのかと。
「てか学校はサボるけど集合て」
何かその理由は当日とかふざけたこと言ってたし、何がしたいのやら。
……当日ってことになってるしメールしてみるか。
そうして一分経たずにメールが帰って来た、
『学校の中を散策したいのです』
と来ていた。いやでも欠席扱いになってるらしいし、ダメだろう。
『そこはユーにお任せします』
いやいやいや!
クランナなら自分で考えて考えて行動するってのに……ああ、彼女は変わってしまった。
もうその反論もぶちまけたかったので電話に切り替える。
『生徒会室とかどうでしょうか?』
鍵ないって。
『屋上!』
空いてないから。
『……仕方ないですね、学校は諦めますか』
諦めるんかい。てか何で学校に行こうとか思ったんだ?
『懐かし――いえ、婿の候補として学生もいいかなーって』
「……真面目に探す気ないなら協力止めますよ」
『突然敬語に……ご、ごめんなさい! じゃあ予定は変更して町を廻りましょう? ね?』
「…………わかった」
『あと、すみません。私事なんですけれど――』
オルリスの行動原理が分からないと言うか、なんなんだろうな。
……こちとら、複雑な心境だってのに。
「……さて」
今日はどんな口実でサボろう。ぶっちゃけそこんところが一番不安だ。
昨日だって家族全員から質問責めにあったし……やり過ごしたけども。てかオルリスが学校だって言うから特に明日のことは言ってなかったし。
そしてもう苦しいとしか言いようのない言い訳を記したメールを俺は準備した――
「行ってらっしゃーい」
「お、おう」
玄関先で手を振る姉貴を尻目に家を出た。
ちなみに昨日の文面の後半部分はコピペで、ようは「発売日間違えちゃったテヘ」という言い訳に苦しさが止まらない。
今日は私服で出かけることにする……まあ、それも今朝の電話からそう読みとってしまうわけで。
『服を買いたいので手伝ってください』
いや、なんでだよって。
『クランナったらジャージと制服しか持っていませんでしたの』
……それおかしくね? 留学する際にどんな格好出来たのかと。
『制服ですよ? ほら言いますでしょう――家を出てからが遠足と』
言うけど何か違くないか!?
……というようなやりとりがあったとさ、途中で服を変えるとなれば俺も制服じゃ違和感があるだろう。
で、オルリスは一体どんな格好で来るのかと――
「ユーっ」
「ジャージ!?」
確かに考えたら制服だと持ち歩きにくいしシワもついちゃうから避けた方がいいとは思うけどさ、うん。
一国の姫がジャージ姿に長い髪はポニーって……いやさ、そのギャップがなんか俺にはクルものがあるけど、だけどもぅ!
「運動部と思われるでしょう?」
「……どうだろね」
そう話していた七時の十分頃の商店街近くのコンビニ。
この場所もオルリスが「ここだけは手早くいけるんです」方向オンチ凄まじいなと思いながらやってくると、俺の方が早かったらしく少し遅れてオルリスがやってきた。
もちろん早くに学校へ登校する生徒はいないわけではなく、注目もされていた……なにせジャーシ姿とはいえ金髪の西洋美人なオルリスがコンビニ前にいるのだから。
……それに比べて俺はぱっとしないからなあ、自分で言ってて悲しくなってくるけど。
「それでは、商店街回りましょう」
「まてーい、まだ七時っすから。商店街も少しぐらいしか空いてないって」
「あ、そっか。じゃー……スーパー山中?」
「いや空いてるけども……とりあえず行くとしますか」
「なんだかんだ言いながらも賛同してくれるユー、好きですよ」
「……いや、だから――」
そう二人時折通り過ぎる学生とは別方向に歩きだした、その時だった。
「あ」
オルリスがそう声を漏らしたのだった。
そして見れば目の前には仁王立ちとは行かないまでも、腕を組んで立ちふさがるように……女子生徒が
いたのだった。
「オルリス?」
「あ、あれ、いや、えと……」
この慌っぷりは……うん、オルリスぽくないな。
ちなみにその女生徒は、四角い黒縁眼鏡をかけた黒髪の美女まではいかないまでも、それなりに整った顔立ちをした――
「オルリス、婿は見つかりましたか?」
俺はそれを聞いて、ビクリとした。
それをなぜに知っているのかと、まさかオルリスが漏らすようなことをしたってのか?
「オルリス、なんで――」
その際に見たオルリスの顔は、
「…………」
どこか俯いて沈黙していた。
「岡さんでは……ないですね」
この時はオルリスだったのだと思う。
岡……? オルリスかクランナのクラスの友人とかか?
「クランナが動揺してますよ、でも今は違うのでしたっけ? ――アイシア=ゼクシズ」
アイシア=ゼクシズ? そんな名前初めて聞くな。
って、いやいや! 明らかに日本人の名前じゃないよなあ!
「わかりましたか、嬉しいですよ――大好きですよオルリス」
超・展・開! まさかの告白すぎるぞ。俺はどうすりゃいいのかと。
「……あなたがいるということは、連れ戻しにきたのですか」
連れ戻し? てーことは、もしかして。
「オルリス、甘かったですね」
「…………」
「タイムマシンは一つじゃないんですよ――そして、勝手に結婚相手を私から変えないでくださいね」
え、は?
「…………」
はい?




