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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十三章 気になる彼女は○○○で×××で。
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第392話 √3-44 気になる彼女は○○○で×××で。

巷で空気のタイトルセンスのない小説! 絶賛連載中!

「え、俺に彼女がいるかって?」


 俺が井口と荷物運びをしているとそんな質問が、相変わらずなたどたどしい声で飛んできた。


「なんでまた?」

「えっと……ね。下之君、女子に人気ありそうだから」

「え、なんで? あー、まあ親じゃなくて姉の七光みたいな感じか」

「そうじゃなくて……下之君、かっこいいから」

「ありがとな、でもカッコイイ奴ならこの学年でも五万と……いやそれじゃキャパオーバーだな、三十人ぐらいいるんじゃないか?」

「そうかな……私は……し、下之君が一番だよ」

「お、おう。そうなのか……?」


 井口はそんな事を隣で見れば丸分かりに頬を染めて言うのだった。

 世辞でも言ってくれるのは嬉しいけども、少しむず痒いねえ。


「それで……答え」

「ああ、俺に彼女ね。いないいない、フリーすぎて寂しさと今年の冬も越すこと確実だろうな……はぁ」

「……そうなんだ」


 彼女はそれを聞くとほんのり、小さな笑みを浮かべたように俺は見えた。


「じゃあ……好きな人はいるの……かな?」

「好きな人……そう言える人はいないな。ただ」

「ただ……?」

「気になってるヤツはいるな」


 真面目すぎて自分のことを二の次で、頑固で方向オンチで……遠くはるばるやってきて、一人奮闘する彼女。

 なんというか、つい心配になってしまうというか。娘を心配する親のような……まあ、俺が深く考え過ぎなんだろうけども。

 それでも気になる彼女には違いない。 

 井口はそれを聞くと押し黙り、三十秒ほど経ってから口を開いた。 


「……ねえ、下之君」

「なんだ?」

「中学一年の夏休み……の少し前。覚えてる……かな?」

「中一の夏……」


 中一というと俺もミユもアイツもいた頃か。あの頃は家に籠りたい俺をミユとアイツに引っ張り出されて、商店街巡りはまだいいとしても、遠出して散在することがいくつか有った。


「覚えてるよ……下之君のこと」

「俺……? あれ、井口と俺って同じクラスの時あったっけ」

「…………うん」


 今度はあからさまじゃなくとも、僅かに機嫌を悪くしたような。


「本当に悪い……なんというかさ、中学の時のこと殆ど覚えてないんだよ」

「何か……あったの?」

「ああ、ちょっとショックな出来事がさ。中二の終わりにあったせいかもな……」


 何故か学校での思い出はおぼろげにしか覚えていない、隣町に出かけたこととかは結構に覚えているのに。

 学校という場所が、悪い思い出の舞台となってしまったからかもしれない。


「そういえば……下之君には妹さん……に、上野さんと親しかったよね」

「ああ、ミユにサクラだな……っと、もう着いたか」

「うん、お手伝いありがとね……下之君」

「あいよ、いつでも来るぞー」


 目的地である文化祭委員委員の集う部屋まで到着し、書類の束を置いて井口にそう言うと俺はその場を後にした。


「……懐かしい名前だ、まさか井口が知ってるとは」


 上野サクラ。

 彼女は俺にとっての幼稚園からの幼馴染であり、毒舌でいつも近くにいると手厳しいお言葉を俺に浴びせられた。

 それでも彼女には魅力があって、容姿は地味だけども確かな……優しさもあって。


 そして俺の初恋の相手であり、俺が玉砕された告白相手でもある。


 その彼女はもうこの町にはいない。

 関係の修復が出来ないまま、彼女は俺とミユの前を去ったのだ。



* *



 下之ユウジが知らない女と親しげですの。


 言い方がいけません、女だなんて……女性の方です。女性です、はい。

 いえ、ちょっと最近気になることがあるのですわ。

 生徒会のおかげで下之ユウジと一緒にいる機会は一気に増えました。

 その一方で……文化祭実行委員の女生徒の方と、どこか親しげに思えててしまうのですわ。


 実際何度も見てしまうのです、あの女生徒と下之ユウジが荷物運びをしながら会話している光景を。

 一応顔は知っています篠文さんや姫城さんでもなく別の方なのです。

 

「(私が以前挙げた他にも女性の方がいますの……!)」


 生徒会委員という役柄を共有している以上、生徒会以外の女生徒との交流も少ないと考え。 

 立ち位置は安泰かと――


「そうじゃないですわあ!」

 

 な、なぜ私はあの男の為に自分のポジションを意識しなければなりませんの!?

 というか私はあの男といても、悪い気分にならないだけです。それ以上でもそれ以下でもないのですわ!

 いいじゃありませんか、どんな女生徒あの男が仲良くしようが私にはなんら関係のないこと。

 もはやこの思考した時間こそ無駄に違いないのです。私は下之ユウジとはただの……仕事仲間なのですから。


「(それでもなぜ、こんなに腑に落ちないというのでしょうか……決してなんでもないことだというのですのに)」


 この、モヤモヤとした心地の悪い感じはなんなのでしょうか。


「あーもう! 全部下之ユウジ君のせいですわっ」


 もう知りません! あの男のことも私の今の気持ちも!

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