第391話 √3-43 気になる彼女は○○○で×××で。
ここで井口召喚っ!
九月七日
二学期中間試験が一か月に控える中での文化祭準備、実際その多忙ぶりに頭から抜け落ちて、直前になって焦ることになるのだが……うん。
「クランナ、書類出来た?」
「はい、あと少しで……大丈夫です!」
「よし、職員室ゴー!」
二人行動が様になるというのも、当事者が言うのも難なのだが。初期に比べれば息が合っていると思う……まあ俺視点での話だけども。
俺とクランナは小走りに廊下を駆けながら
「下之君、これを学年主任にでしたよね?」
「だな、で次は生徒会室に戻って――」
「文化祭委員会の方に資料ですね」
「おう、急ぐぞ」
まあ、そんな感じで結構に関係は良くなっているんじゃないかと考察。
俺のことも一応名字かフルネームで呼んでくれるようになったしな、これは凄い進歩だと言える。
「やべ、資料止まってねえのあんのかよ――」
「ホチキスどうぞ」
「お、スマンスマン……あ、クランナ直ぐ先の床汚れてるから注意な」
「わかりました、ありがとうございます」
阿吽の呼吸とまでは行かないが、息は合っていると思う。
うん、結構嬉しいな。
「クランナは先に戻っててくれ、委員の方ちょっと手伝ってって会長に言われてるからさ」
「先に戻らせていただきますね」
とクランナを先に生徒会室へと戻すと、俺には文化祭委員の方で仕事があった。
俺が文化祭委員ではないものの、文化祭委員の補助も生徒会は行うのだ。
* *
「(最近はあまり事務的なこと以外話せませんけど、これでも悪くないですわ)」
ただ一緒にいるだけでも、気分が良いというのでしょうか?
相変わらず色々と気付いてくれますし……
「(文化祭時期なので一緒に行動することも増えましたし)」
悪く……ないですね。
「ふふっ」
ほんのり幸せな気分で私は生徒会室に戻りました
* *
「失礼します。生徒会でーす」
そうドアをノックして開けられたのは。放課後に主に活動をする文化祭実行委員本部(使用していない空き教室を利用)で、俺は資料の受け取りへと来ていた。
「はい……ちょっと待って……ください……ね」
「おー、井口だけか」
「!」
彼女はなにか少し驚いたような……表情が僅かだけ驚愕に変わったような気がするだけだか、おそらく驚いたのだろう。
「あ、こんにちは……下之君」
「ちは、井口」
名字だけしかしらないが――井口という、どこか伏見がちな彼女は、長い黒髪で表情を隠しながらあいさつ。
委員の際には何故か行動を共にすることが多い……どちらか言えばパシリ要員の俺と共にするというのは井口もパシられ要員なのだと邪推してしまうことがある。
大人しく、少しただたどしい喋り方で話す彼女だが、彼女は良い子であることはよく分かる。移動中にクラスの話題などで彼女とは話すことがたまにある。
それで、今は二人で書類を運んでいる最中。
井口が俺がどうして生徒会に入ったのかを、聞いてきたので経緯を少し話して。
「ほら、姉貴が――いや、副会長が俺の姉だからさ」
「……あっ、下之生徒会副会長。え、下之君って……えっ」
「ああ、俺の姉貴。それで拉致られた」
「ら、らららら拉致!?」
最初こそ事務的なことだけで、いつも俯きがちに前髪で表情を隠しながら喋っていたのだが、こんなことも最近は話すようになったのだった。
「そういや井口はどうして実行委員になったんだ?」
「私……いつの間にかクラスで決められてた」
「ああ、そうなのか……」
なんか、聞いちゃいけなかったパターン? 気になっていたとはいえ、少し考えるべきだった。
しかし彼女の返答は、
「でも……少し楽しいから……結果的にはいいの」
頬をほんのりと赤くして、ほんの少し嬉しそうなニュアンスで。
更に井口はこちらをチラチラと見ているように感じた。
「……そっか、そりゃ良かったな」
俺も笑みで返すと、少し彼女の頬の赤みが増した気がした。
……なんというか、井口は素朴だけど可愛らしいな。
なんて書類を抱えながら話す俺たちなのだった。




