第095話 √0-ALL 1から7のダイジェスト。
1~7総集編です。すぐに√1に跳びたい時や、序章部分を思い出したい時はこちらをどうぞー
プロローグのプロローグ。
下之ユウジ、それが俺の名前だ。
俺はとあるゲームを買った。
最近オタク趣味に目覚めがちな俺は、中古店を訪れると真っ先に可愛い女の子の絵が描かれたパッケージの「ギャルゲー」というものを手に取る。
それは「恋愛シミュレーションゲーム」と言われる、プレイヤーが主人公となって恋愛疑似体験を行うゲームのこと。
Ruriiro Days ~キャベツとヤシガニ~……?
そしてある作品に俺は惹かれ、そのソフトをレジへと運ぶのだった。
しかしそれは俗にクソゲーと言われる代物で、インターネットで評価を調べてみれば散々だった。
野口さん一枚に満たないほどに安く購入したが、やはり自分でやってみないと分からない。
そう思って俺はゲームをパソコンのCDポケットへと挿入した――
* *
そうして俺は主人公になった。
まったくもって意味が分からないと、言われたらそこまでなので、少し説明しておくと――色々あって俺は買ってきたギャルゲーの主人公になってしまった。
と、いってもゲームの世界に入った訳ではなく、ゲームのキャラクターやシナリオが現実に紛れこんだ……らしい。
不確定なのは、それがどうにも胡散くさい話だからだ。誰から聴いたと言えば――
「おはよう、主人公」
そう言われて気付くと、俺の部屋には小学生ほどの容姿をした女の子が仁王立ちをしていた。
「お主が存在する現実世界に、お主の起動したゲームのシナリオやキャラクターをスライドさせた形になっておるのじゃ」
高い声と、幼い顔づくり。見た目には、やはり女子小学生にしか見えない。
しかし喋り方には、素晴らしいほどの違和感が付いて回る。
「貴様のせいじゃ主人公! あのゲームを起動したのがそもそもの始まりだったのじゃ!」
マセガキでさえも引くほどの見事な老人喋り。それが容姿相応の声と合わさり、圧倒的なミスマッチ。
「わしは貴様の攻略対象である上、何故か一回目のリセット時の記憶も保有しておる。それに何故かはわからんが今後のわし含めた各ヒロインの攻略情報がわしの頭に入っておるな」
一人称が”わし”という、もはや何もいうまい。
桐。俺の妹という”設定”で、下之桐となる。
「じゃがヒントを言うならば”選択は貴様によって作られる”ということじゃ」
このエセロリが言うように、俺は選択を強いられていた。
それは間違うごとに繰り返される、ゲーム仕様。選択肢が目の前にテキストとして現れるはずもない。
ある最初のヒロインの生死の選択。
* *
俺がその最初のヒロインと出会ったのはゲームを起動して、何故か朝を迎えた時のこと。
聞き慣れぬ声が窓の外から聞こえ、その声は俺の名前である”ユウジ”を呼んでいた。
篠文由紀。
黒髪のポニーテールに、少し幼い顔、スラリとした体に、どこか活発そうな性格。
一目で、美少女と分かるヒロインだった。
その子と俺は幼馴染という”設定”になっているらしい。
可愛い幼馴染と登校出来るなんて、なんと夢のよう。浮かれていたその直後に、まったく予想も出来ないし、そんな展開が信じられなかった。
目の前で、彼女が死んだ。
前を走る車にはねられた。出会ったばかりとはいえ、少し前まで親密に過ごしていた彼女が息絶えて行く様を見るのはショックだった。
そして、世界は繰り返される。
まるで、それがゲームオーバーで。最初からやり直しを強制されるように。いつしか暗転していた世界から目覚めると、窓の外から死んでしまったはずの彼女の名前が聞こえた。
俺は、何度も試した。ゲームの不可避のバグのように、彼女は死ぬ運命だった。
しかし、一回。たった一回の成功例を俺は見つけだし、彼女の死なない、世界が進む未来へと辿りついた。
* *
学校には友人が元からいる。
と、いってもオタク趣味を繋がりにしているようなものなのだが。
一人はスレンダーな長身で、茶色の短髪、きっと顔の作りもいいはずなのに。全てをブチ壊すグルグル模様の入った眼鏡がデフォルトの残念女子だった。
もう一人は男。オタク的な会話をする、まあそれだけ。
そこに”幼馴染”という設定からユキが溶け込んだ。
二人の会話でも程良くついて行く様、まるで最初から居たかのようだった。
どうやら新しくゲームを起動したことで現れるヒロインは、この世界に違和感なく溶け込んでいるらしい。
そうしてユキ、桐に続いた三人目のヒロインが現れる。
最初に顔を合わせた時には、俺は殺される寸前だったのだけど。
俺達の戦いはこれから、だと思ったら既に始まっていた。
その三人目のヒロインは姫城舞と言った。
長い黒髪に、起伏に富みながらもスタイルの良い体。同学年の女子と比べると大人っぽい雰囲気を漂わせる、見た目はクールビューティな女子だった。
そんな女子に俺は、刃物を突きたてられた。
「あなたを殺すためです」
そして俺が好きだと、それでいてユキと抱き合う場面を見て危機を感じた。
……説明すると、あれは不慮の事故だった。階段で足を滑らせたユキを受け止めるようにしたところを、彼女に見られてしまったのだろう。
ストーカーまがいのことをして俺のことをずっと見ていて、それ故に思った。このままでは私の想いは遂げられない――ならば結ばれる前に殺してしまおう。
どんなスプラッタな発想だ……それでも、彼女が俺に向ける気持ちは強く熱く真っすぐなのは確かな事だった。
しかし、彼女はそれでいてそんな気持ちを上回る程に猟奇的だった。果てには、自分が死ぬとも言いだす始末。
だから俺は自分の気持ちをぶつけた、彼女の気持ちに応えることは出来ない――でも、ここでどちらかが命を絶っていいのか、と。
* *
姫城さんとの出来事が終わり、俺はまたもや良く分からないことなっていた。
俺には姉が居て、その姉は生徒会役員だった。ちなみに姉貴と呼んでいる。役員な上に、母親が放任しているようなものなので、実質家事は姉貴と俺で回していた。
そんな最中のこと、姉貴に放課後に呼びだされてみれば――
拉致され、謎の質問責めの末、生徒会へと入れられた。
役員にはレベルがかなり高いであろう、美女が揃っていた。
もちろん入る気なんてさらさら無かったのだが、姉の日々の負担を考えてしまうと出て行く気持ちにもなれない。
放課後には、ツッコミしがちな俺を弄ろうと言わんばかりの生徒会会議が始まるのだ。
ルート分岐は、気付かぬ内に。 超展開、目前に。
「これからアタシら家族になるらしいからな、よろしく頼むぞ」
そう告げられたのが生徒会に入れられた直後のこと。それも女の友人ことユイからだった。
俺のモノゴコロつく前に父親は亡くなり、未亡人状態の母親が再婚した。その相手が偶然にも、ユイの父親だった。
世界は狭い物だなあ、と思いつつも。ユイも俺の家に住むことになり、一応学校の生徒にはバレないようにと、警戒しながら、日々は変わり始める。
「アタシとユウジは、これから家族だ」
肝試しとお揚げの意外すぎる関係。
男の友人は春先なのに肝試しをしようと言った。
訳の分からなさに辟易しつつも、なんとなく参加。ユキや姫城さんも呼んだ。
ある寂れた神社の目の前に広がる墓地を突っ切るコースで、俺は姫城さんと組んで歩くことになる。
美人の隣にいるのは悪くない気持ちなのだが、先日の猟奇的行動思いだし複雑な心境だった。
肝試しの折り返し地点、神石前に辿りつき。形だけとも言える神へのお供え物を置いて帰路につく、その時のこと。
『わ、好物のお揚げだ♪』
少女な声が途端に響き、中学生ほどの少女が現れる。
地面までつかんばかりの長い長い黒髪を持ち、ともかく童顔で、なんとも愛らしい空気を漂わせる少女だった。
「うん! 我こそ美桜山の農作物を護る神! そして我の名前は”ホニ”! 我の姿が見えてる……決めた! 我は、あなたたちについて行く!」」
そうして俺は、彼女と出会い、彼女と過ごすこととなる。
彼女は俺が確認した中では四人目のヒロインで、ホニ。
神様だった。
来訪者と疲労な主人公
俺はセクハラをした。
それも転校したきたばかりの女子生徒に。俺はまったくもって不可抗力で、不慮な事故だと考えているが、現実はそんなことまかり通らない。
平和かは疑問だけど楽しい数日間。
その転校生とは生徒会室でその後ばったり出くわし、彼女も生徒会に入ったとのことだった。
「悪いですわっ! 私のむ、胸を揉んだ挙句に……生徒会室まで乗り込んで来るなんて! 言い訳は結構! ともかく、私に今後関わらないで頂けますこと?」
最悪の出会いだった。転校生な彼女こと輝かんばかりの金髪を長く伸ばした、どこか”お嬢様”と言った呼び方がマッチしそうな第五のヒロイン、オルリス=クランナ。
そして先程のセクハラ事件が、校内新聞へと載り。それを俺への好意が独特な姫城さんの目に入る。
そうしたところから、更に世界は変わり始める――
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