第380話 √3-32 気になる彼女は○○○で×××で。
サボってましたスンマセン
えとミナです。こ、こんな感じでいいのかな? あんまり一人語りはやったことないから……あ、でもユウくんとの仮想会話は何度もしt
昼食時に私は家庭科室の一角を貸して貰えることになりました。
唐突だったけれど幸運にも料理研究部は今日休みで、それに友人の料理研究部員にも一応連絡を入れて許可を貰っておきました。
家庭科室使用許諾を家庭科担当の宣誓と副校長先生から取ってから、私とクランナさんは家庭科室に向かいます。
その時私ははっとあることに気付き――
「食材は──」
「副会長、準備はしてあります」
そうクランナさんは言うと半透明のビニール袋の中から見慣れたものが出してきました。
「卵?」
「はい、もし教えてもらうなら"卵焼き"がいいと思っていまして」
「卵焼きね……うん、わかった!」
「は、はい! よろしくお願いしますっ」
うーんユウくんとは私のは少し味付けが違うはずだけど……というか今日のお弁当には卵焼きがあったような。
少し心配かなぁ。いっそ言っちゃえばいいのにと思うけど、ユウくん照れ屋だから言いたがらないだろうし……うーん。
「副会長?」
「あ、じゃ始めよっか」
――調理過程は省略しようかな。
クランナさんは真面目な子で私が卵焼きを作っている間は無言で私の手元をみながらメモ帳に何か書き込んでいたみたい。生徒会も入ってからすごい良く働いてくれるもんね、それに一人暮らしってのも……偉いなあ。
ということで、できあがり……うん、いつも通りに作ったし美味しいはず!
「どうかな?」
「いただきます――――っ」
クランナさんが卵焼きを一摘みにして口へと運んだ箸を止めて、表情が固まる。
あ、あれ? もしかして失敗……?
「お、おいしいですっ!」
「よかったぁ」
「焼き加減も塩加減も……すごいです。卵や塩以外にも何か使っているのですか!?」
「ありがとう、えーとね卵と塩とサラダ油だけだよ?」
「そんなにシンプルなのに……!」
そこまで驚かれて、褒められると照れるなあ。
そういえばユウくんも毎回褒めてくれる……だからつい力が入っちゃうんだよね。
「……?」
「クランナさん、どうかした?」
「少し気付いたことが……いえ、やっぱりなんでもないんです、ごめんなさい」
「そう?」
クランナさんが少し怪訝な表情をしていたのはなんでかな。
とりあえず作り方の工程は披露したから、あとはクランナさんの作り方かな。
「じゃあクランナさんはどう作るの?」
「え、えと私はですね――」
スーパーの袋から取り出したのは、
「あ、あのクランナさん? なんで”ウズラ”を取り出したの?」
「あ、えと自信がないので小さい卵の方がいいかと思いまして」
さ、さっき普通の卵焼きで作ったのに?
というかウズラで普通の卵焼きを作ろうとしたらどれだけ使うの!?
「ミニチュアな卵焼き……というか難しいと思うから! 普通の卵で作りましょ、ね?」
「は、はい」
それでクランナさんは家庭科室の備品のボウルを軽くすすいで、卵を割り始める。
カンカンカン、パリッ。すこし割るの失敗しちゃったみたい、透明な白身と黄身には浮く白い欠片があって。
「卵の殻が入りましたけど――些細ですね。」
「些細じゃないよ!? クランナさん、ええと殻は食感を大きく崩すから入れない方がいいと思うんだ」
「――考えようによってはカルシウムが摂れますよ?」
「単純にとりあえずは作ろうよ!」
卵焼きでカルシウムを摂取する必要はないと思うよ……うん。
卵をといて、大体混ざり合ったところで――
「香り付けの為に生姜を――」
「クランナさん! そういうのはとりあえずおいておいて!」
「油は……香り付けならごま油ですね」
「美味しいかもだけど、今はノーマルな卵焼きをつくろうって!」
「フライパンを操って空中で筒上に巻ければ、箸を使わずに――」
「はい菜箸! これでやろう!」
……クランナさん、なかなかに曲者なのかもしれません。というか少し頑固なのかも。
「……やはり焦げてしまいますね」
それでも真面目で、何かを考えてそれぞれやっているようには見えるなあ。
……最後のフライパン云々は、少し奇をてらっただけのように思えるけどね。
「この調子でやってみよ!」
「はい!」
それからといた卵を消費して、さらに卵を割ってといてを繰り返して何度も何度も卵焼きを作った。
「……おいしくなってきました!」
「クランナさん覚えがよくて嬉しいな」
「いえ、副会長の教え方がとても上手なんですよ!」
教え方かあ……そういえばユウくんにも結構前に料理を教えたっけ。
「ふふ」
「どうかしました、副会長?」
「ちょっとユウくん……あ、ユウジくんのことを思いだしてね、ごめんなさい」
「し……副会長の弟さんですか?」
「結構前にユウジくんにお料理教えてって言われて、それで教えたことがあるの」
ここでユウくんのことを出しても、ユウくんがクランナさんのお弁当を作ってることはバレないよね……?
きっと大丈夫なはず。というかクランナさんの意志は分からないけど……ユウくんのこと話したい!
「そうなのですか……(このように教えてもらっても、下は下手と言っていましたね……なぜなのでしょうか、あの男は)」
「今は教えることはないぐらいに上達しちゃって……嬉しい半面、寂しいかな」
「え(以前下は料理が下手だと言っていたはずですが……?)」
ここでもクランナさんはどこか訝しむような表情をするのだけど……はぁ、ユウくんとお料理したいなあ。
最近ユウくんはホニさんに料理教えて貰ってるんだよね……ホニさんの日本料理は美味しいから、教える人としては適正なんだけど……うーん。
「ホニさんいいなあ……」
「ホニさん……?」
「あ、ホニさんはね。私たち下之家の居候さんなの」
「い、居候?」
「うん、ちょっとした事情で今下之家で預かっている子なんだよ。それでホニさんと最近ユウくんが仲良くてね……ちょっと寂しいかなって」
「そ、そうなのですか(ホニさん……女の子なのでしょうか? いや男の子? というか歳は……?)」
そ、そうだ! ユウくんに料理を教えて貰えばいいんだ!
ユウくんは味付けが得意だし、色々な調味料の調合を教えて貰おう! うん!
これは探究心なんだからね! 決してユウくんと近くにいれる機会ためなだけじゃないよ!
それから少し経って、チサや会長からのメールでまだお昼ごはんを食べていないと言うことで家庭科室でみんなで食べることになりました。
そしてユウくんきたあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
「おー、やってるやってる」
「いらっしゃいユウくん!」
「邪魔します……おお料理の痕跡が」
ユウくんのワイシャツ姿はいつみてもカッコいい……はぁ。
……いけないいけない”学校”では副会長だもんね、お姉ちゃん我慢我慢!
と、考えたけどユウくん接近! き、きたあ! 告白? 告白なの! そしてユウくんは耳打ちを――
「副会長」
「ユウくん?」
姉貴って呼ばなかったことで、うん。理解した告白じゃないよねそうだよね分かってたもんショボン。
「(クランナどーよ?)」
「(クランナさん? うん、上達してるよ! あ、ちなみに卵焼きだからね)」
「(げ、卵焼きか……やっぱりそうか。まさかクランナが今日料理指南を希望するとは予想しなかったからな)」
「(やっぱり?)」
「(いやさ、前に卵焼き味見してって言われてさ。味見したら殻がごっそり入っててさ、しょっぱいし焦げくさいしで……うん)」
「(今日はそんなことなかったよ? ……スコシアレンジヲクワエヨウトシテタケドネ)」
「(少し……?)」
というかそうなんだ……クランナさん、ユウくんに味見させてたんだ。
た、たしかに会長指示で行動を共にしてるみたいだけど……まさかだよね。
だって、こっちに来たばっかり……と言ってもニカ月近くは経ってる……ないって、ないよね、ないでしょ?
そ、それになんか理由は分からないけどユウくんクランナさんに嫌われてるみたいだったし……うーん?
「あ、クランナさん。お弁当ね」
「ありがとうございます」
「でも食べれる? 結構卵焼き食べたけど……」
「大丈夫ですよ! 副会長のお弁当を食べないなんてもったいないですから!」
お弁当つくってる人冥利に尽きる言葉なんだけど、ユウくん作だからどう反応すればいいのかな。
複雑になっちゃってる気がするんだよね……ユウくん、これからどうするつもりなんだろう?
「ごめんね、卵焼き被っちゃった」
「いえ! いただきます――――っ」
クランナさんは上品に食べるのだけど、美味しそうで見ていて喜ばしい。
……うう、やっぱり騙してる感じがして仕方ない。
「……?」
「ど、どう?」
「美味しいですっ」
そう笑顔でクランナさんは言うのだけど、卵焼きを食べた時の表情がさっきの怪訝な表情と似ていたような……まさか。
まさかだよね?
「(美味しいには違いないのですけれど……どこか違うような気がしますわね。少し風味があるというか、卵や塩とは違うコク……?)」
その後、皆でのご飯を終えて後片付けをして家庭科室を後にしました。
ユウくん、もう少しで夏休みになって生徒会の活動も少なくなるんだよ? それからは――どうするの?




